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静岡昔話道場編
昔話 道場編①
しおりを挟む俺は順調に試合を進めていた、ハクの試合は丁度重なって見れな
かったが彼も順調に勝ち進んでいた。
次の試合はハクvs仲君
これは見逃せない、前回の乱取りからのハクの提案だ、何かある
に違いない、自分の試合も大事な筈ではあったが、彼から目を逸せ
ない晴の目はキラキラしていた。
「双方、前へ今回は敷地内なら自由だ、解ってるな?三本勝負、先
に二本取った者が勝ちだ、では……」
師範「試合始め!」
審判の持つ旗が高々と上げられた、互いに礼をし、構えに入る、
先ずは互いに様子見だ、此処までは前と同じ展開だ……仲君も何か
あると思い、いつもより慎重である、対してハクは師匠にも怒られ
ながらもまた手は出さない、しかもだ、そもそも構えてもいないの
である、うちの道場は実戦形式で評判だ、かつての芦◯空手や極◯
空手の様に1人対多人数での想定の乱取りもやる。
無論防具はつけるが……
仲君もハクに勝てば次は俺と、そして、この道場最強の桐生君と
の試合が控えている、負ける訳にはいかない筈だ、構えも無い下級
生のやる気の無さに見える、その見栄えは仲君でも平常ではいられ
ない、苛立ちを見ている俺でも感じる、師範の声にも焦らせる感の
怒号が飛ぶ。
師範「コラァ!やる気あるのかっ手出さんかい!」
声に反応し焦る仲君に対しそんな事気にも留めないハク、互いの
性格は見てもわかる様に真逆だ、そして遂に動く。
先に仕掛けたのは、やはり仲君、掛け声と共に飛び込んでの突き
を放つ、それを知ってか一定の距離を保つハク、一度、間を離し、
また様子見、息を整え仲君は下段蹴りをフェイントに先程同様、飛
び込んでの突きに入った、其れに対し避けるハク。
仲(次は逃がさない)
猛追に注ぐ、右拳、すかさず繰り出す左拳、更に中段蹴り、仕留
める為の追い込みに入った、何時もならこれで追い込まれ試合は終
わるが今回のルールは道場全体である。
ハクはバックステップを繰り返す、普通なら2、3回で詰まって
しまう事が殆どの状態に、ハクは一切スピードを落とさず広い道場
を生かしドンドン距離を離していった、今までの試合でこんな動き
をする奴は居ない、初めての出来事に仲君も少し驚いた表情でハク
を見つめた、だが簡単に出来る物ではない、後ろ向きのステップの
速さに驚いた、余程練習したのか……
それ程迄に早い、そして追い付かない、通常隙を見てカウンター
を繰り出すか、もしくは、つい反撃に出てしまう心情に避ける事し
か考えて無い今のハクに追い詰める事は容易では無い思い返してみ
ればドッジボールの時、決められた陣地と言う枠の中ではあるが、
あの狭い敷地範囲を大野達に狙われる事で毎日で練習したのか、あ
のメモには確かにいかに早く動けるか、つまり狭い枠の中でどう生
かし止め処なく動くにはが書かれていた、そしてそれがドッジボー
ルという場が最適な訓練なのかも知れない……そんな事を考えてい
た。
おっと仲君の素早い蹴りがハクの胴体を狙う中段回し蹴りだ!し
かし蹴りの繰り出す速度は早いとはいえハクのステップの方が蹴り
の動きが多少早くても蹴りを繰り出す際は動きが止まる、更に動作
が大きい事からハクが感知し下がる方が遥かに早いそして距離は一
気に離れる。
仲(……捕らえられない)
俺には蹴りの間合いを感じ蹴りの時だけ後方に下がる距離を過剰
に離しすぎる程の距離を避けるハクにワザとらしさを感じる……試
合に前のめりに観戦する俺の手もとに何かが当たった……それはハ
クのメモ帳だった、コレだ!俺が覗き見たのは!いけないと思いつ
つ、それを見てしまう。
中には「ペラペラ……あ、あった!」
バックステップ、相手が動くと同時にコチラも予測を立てて動く
とある、ふむふむ……
突きの距離、蹴りの距離、立ち位置から始まる距離はほぼ一定、
人が反応する速度の限界は0・2秒、これを一気に詰める攻撃は無
い、それは距離が関係するーー
(成る程、いくら突きが早くても届くには拳の当たるまでの距離が
いる、そのタイムラグで敵の攻撃は反応が早ければ追い付かないな
確かに……)
その距離を0・2の遅れでも詰める速さは無いので、反応すれば
すぐに反応、つまり、最初から避ける事、を前提にすれば迷いが無
く、考えた分の脳の伝達の遅れも無いという事になる。
(後は早さかーー)
構えながら来る、もしくは、他の動作をする瞬間は必ず動きは止
まる、気を付けなければならないのは、体重ののる勢い任せの直進
のみ、避ける方向は後ろへ、真後ろではなく左右に余裕があるなら
真横の左右、それ以外は止まる事から、止まればコチラの方が早い
成る程、理屈ではそうだ。
なになにーー
ーー歓声があがるーー
い、いけない!試合に動きがあった!クソ、忙しいぞ!ハク!
仲(蹴りはダメだ……拳の方が臨機応変に対処出来る!)
仲君はバックステップに異常に早いハクを見て、距離を取られる
事を避けるためにいつしか突き攻撃が主体となっていた、というか
突きのみと言った感じだ、仲君もハクの動きにいち早く反応出来る
様に蹴りではなく体ごと移動し臨機応変に対応出来る突きに変える
のも当然だ。
仲君(いつもと勝手が違う……やりにくい)
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