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静岡編
ひととき
しおりを挟むハクは名も知らぬゾンビ2体を(カナと太一)公園に埋葬し手を
合わせた、毎回、何かある毎に寝る前に手を合わせ祈るハクではあっ
たが、花を添え祈るのであった。
ハク「……」
こんな時代でも傷の無く静かに眠る2人の想い、背景は何となく
想像は出来た。真新しいその指輪に込められた意味、本屋で並行に
カナの後を追う様に徘徊してきた事、それはタダの偶然であったか
も知れない、意識が無いゾンビがただ、ハクという獲物を追って来
ただけかも知れないが、彼女と離れたく無い、という思いを信じた
かったのかも知れない。
ハクは廃墟となった場所から原付で移動し目的の茶葉を取りに、
袋に詰めた茶っ葉に意気揚々と歩き、山林へと入って行った。
お茶は摘みたては熱がある、ビニールに穴を開け、クルクルと回
しながら拠点になりうる場所を探す。
無論用心の為だ。
程良く囲炉裏のある、小さな小屋を見つけた猟師の休憩に使われ
ていたのだろう、実はこの時、ゾンビ数体がハクの後を追っていた
がハクは気にする事もなく、淡々と部屋に入ると窓が少ない小屋を
リッュクから出した数本の釘とトンカチで封鎖する。
鍋でも使われていたのだろうか、屋根には煙突もあり、煙が篭ら
ない事を確認、鼻歌混じりに、音楽を鳴らす、民家攻防戦で持って
きた小型CDプレイヤー、そこに適当に持ってきた洋楽を鳴らした。
曲はカントリーロードハクのお気に入り曲だ、ジョン・テンバー
1971年のものだ。
以前の拾った日記にあったこの曲が気になっていたハクは民家攻
防戦で立ち寄った電気屋で偶然見つけ、聞いてみたら、かなりのお
気に入り曲になったようだった。
家まで連れて行って、故郷の道よ
遠く離れた実家へ想いを寄せる曲だ歩く道を辿れば帰れるかも知
れない、という感じの曲だ。
ハクは帰る故郷も今は解らないが、その思いがつのる。
感傷に浸っているようでハクはお茶に意識が90%程傾いていた、
ハク「あぁ日本の味お茶……ほっこりとした顔で窓の方を見るとゾ
ンビが唸りこちらを見ていた。
ハク「……」
くるりと振り返り、見なかった事にする、音楽になは歌を歌いな
がら淡々とこなす、英語の歌に間違い、誰も居ないのに5分に一度
は顔を真っ赤に恥ずかしそうにするハク、純衣が入れば悶絶してい
ただろう……
そして窓から手を出すゾンビは一撃で倒されていただろう、しか
し生きてるとは言えないが、生かしておいた方が、まだ細菌は体内
にうじゃうじゃいる、わざわざ撒き散らす必要性は無い。
音楽に鼻歌、知らぬ間にゾンビは3体増えていた、が、最早、そ
んな事はどうでもいい、どうせ入ってこれないのだから。最早、
ゾンビに対し自分の歌を聞かせるような歌声で歌う、
ハクの目にはゾンビも音楽の強弱に合わせ反応するよいうに呻く
から面白い、食欲に反応しているのであろうけど、ハーモニーのよ
うに人間とゾンビの合唱会である。
ゾンビの前に立ち、指揮棒の様な物で顔を誘導する、棒の先にサ
バ缶のサバが刺さっている事もあり、声が大きく歌うと呻くも棒を
上に上げるとゾンビの声帯も圧迫され呻く声が高くなる。
うぉぉぉ…
うぉおお…
見事である、最早世紀末とは思えない楽しい時間を過ごすハクで
あった。
「さてとお茶蒸れたかな~」
火を焚き、その上に鍋に水を入れ金網に乗せた茶葉に、ビニール
で包む、気化された蒸気はビニールを膨らませ蒸し器状態を作り出
した。
予め茎や葉の大きさを丁寧に選出しておいたので、そのまま待つ、
グチャグチャになったら水とビニールをどかし乾燥。
ハクの感覚で水分が10%位になると、地面に穴を開けた中に入れ、
ゴミ袋の上に広げて、上から焚き木を金網で敷いたものを置く、そ
して乾燥、30分したら出来上がり。
「さて一口……」
「……」
「苦い……青臭い……」
やり方は合っている筈だがそこはプロ、何か工程がまずかったの
だろう、しかしお茶はお茶、香しい香りだけは成功味もまぁお茶だ。
湯気がまた、愛おしい……焚き木の燃える匂いも不味いお茶を美味
しく感じさせるスパイスとなり、また一口……
ハクの口はおかしくなったのだろうか、一杯めを飲み干し、
追加のお茶を入れる頃には美味しくなっていた。
ハク「……」
「うまっ……」
どうやら癖になったようだ。
ため息を一つ、苦しみの溜息とは違う安堵の溜息、顔はホッコリ、
頬が赤くなり身体が温まっていくのを血が感じる、脳が感じる。
ハク「ちあわせ……」
興奮すると幼児言葉を混ぜるハク、皆には引かれたが純衣には悶
絶するほどのツボに入った姿だった様で。
これから研究の価値があるものを見つけ1人ゴロゴロとするハクで
あった。
合唱のお礼にお茶をゾンビに振る舞うように落ちていた茶碗に入
れ、ドアを開けそっと置くとゾンビも記憶にあるのか、暖かい内に
四つん這いになりながら飲んでいた。
人もゾンビも生けるものには体温、つまり暖かさが心にも体にも
必要なのかも知れない、冷たさは快適さ、だが暖かさは人にとって
生きる熱そのものである事を感じた。
季節は秋を迎え少し冷えてきた、暖かい囲炉裏に感謝しつつ夜は
ロードと囲炉裏の灯、月明かりもあり、楽しい雰囲気の中深々とし
ていた。
【今日のポイント】
音楽は自分を取り戻してくれるアイテムの一つだ。
音楽は人類の歴史においても常に側にあった空気の振動の奏でる音
楽は、勇気や希望、そして心を助けてくれる。
悩み苦しんだ時も、誰もが音楽に心を救われた事だろう、1人になり
たい時にも実は他人が関わっているのだ。
そしてそれは自分を悩みから解放、そして強さを与えてくれる。
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