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攻防戦

民家攻防戦 5

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雨の中倒れた剛田それを見つめる純衣……

言葉はもう無い、家は2階部分をほぼ全焼床は崩れ落ちた。轟々と
降る雨も業火の家を鎮火するまでもいかない程燃える。

純衣の顔と倒れた剛田の背中が赤く光る……
 剛田は懐に忍ばせた銃を抜く準備をしていた念には念を入れて純
衣がハク達の元へ行こうとするその隙を背後から狙う為に、純衣は
暫く無言で振り仕切る雨の中、剛田の背中を見続けた。

剛田もそれを理解した、剛田に緊張が走る。
剛田(バレてるのか?なかなか行きやがらねぇ……)

時にして3分、しかし剛田には長く感じる時が流れる。
純衣「……」
純衣はその場でくるりと剛田に背中を向けハクのいる道を見た。

剛田「!」
 その瞬間を見逃さない剛田懐から銃を取り出し銃口を純衣の背中
に向け構えた……


ーー浅井達ーー

手下「なんだ!このゾンビの群れ!この町に、こんなにゾンビいた
か?」
浅井「火事に物音だろう、周辺にいたゾンビが集まってきやがった
な……」(最早、女とか言ってる場合でないな)

 しかし浅井達周辺にもゾンビは集まり、彼等の退路も塞がれた状
態だった、浅井はカバンからマシンガンを取り出す。
浅井「こんなけ集まったらもう発砲音も関係ないな、オメーら、こ
れで道開くからアジト迄戻るぞ!」

 浅井を守る様に4人はゾンビを退治、進むべき進路に居るゾンビ
に向けマシンガンを撃ちまくる、ゾンビは体を弾かれ、モーゼの様
にゾンビに道が出来る、しかしそれも長くは続かない……やがてマシ
ンガンの弾も底を付く……
浅井(弾が大分減ったな……これはアジトまで持たない、俺1人なら
何とかなるか)

手下「数が多い!リーダーもっと撃って数減らしてくれ!」
手下の1人のバットは折れ、尖った先でゾンビの頭を刺す。
手下「駄目だもう倒れない、脳にダメージを与えられる程の力が」

 折れたバットを持つ手下の背後から、位置を確認すると、ためら
い無くマシンガンを撃つ浅井、不意を撃たれ状況が理解出来無い手
下が口から血を吐きながらリーダーの方へと振り向いた……
手下「な…なんで……」

倒れる手下に群がるゾンビ、ハラワタをだし 貪り食うゾンビ達、
浅井「奴はもう満身創痍だった!こうするしか残された手は無かっ
た!」

手下に不信感が漂う(俺達も背後から撃たれるんじゃ……)
浅井「早く倒せ!生き残りたいのだろ!俺達だけでも到達しないと
全滅だぞ」

 手下は最早、腕も疲労でバットを振る力も弱まっていた、が、現
実は確かに1人が食われる事によって目の前のゾンビの数は減った、
自分は大丈夫、このまま到達出来ると信じるしか手は無かった。

アジトまでの距離はまだ長いーー

 残り3人でも厳しい状況は続く浅井の配下の1人、向井は剛田に
次ぐ幹部の1人、彼の右腕とも言えるコミュニティでは重要な人物
であった、もう1人も幹部で名前は澤部、実力者3人だけあって、
戦闘能力は高いが、やがて数の多いゾンビに息が切れ始める。

浅井(チッもう1人犠牲がいるな)
向井が左から来るゾンビを撃退し、向井の視界から浅井と澤部が消
えた瞬間、ゾンビを撃っている筈の浅井のマシンガンの銃弾が澤部
の足を撃ち貫いた……澤部は足をやられ一瞬で膝まずき、のしかか
るようにゾンビが山なりに澤部を襲う。

浅井「向井!さっ澤部がやられた!」
向井「……」
向井(……まさか浅井のやつ)向井は浅井に警戒しはじめた。
そして残りは浅井と向井だけになった。
浅井「おい、お前は俺によく着いて来てくれた、感謝するぞ……こ
の地獄を2人で切り抜けアジトで酒でも呑み交わそうな」

熱い眼差しで向井をみる浅井、極限状態の向井は自分の良いように
考える状態になっていた、普通なら、浅井の裏切りに気付いた向井
だったが、彼自身がそう思いたくない思考が彼から冷静さと命を奪
う事となる。

その言葉に自分は大丈夫だと確信する向井、
向井「そうだなハァハァ……」
息も絶え絶えになりながらも返答する
「俺はお前の忠実な手下として奮闘した、そして……それはこれか
らもだ、リーダー」
浅井「そうだな……頼りにしてるし、お前はこれからも俺の右手に
なって貰うからな」
「……頑張って行こう」

 その見せかけの温かい言葉に、弱り切った腕の力が蘇る冷静さを
失った向井は元々持ち合わせた浅井への忠義心と自分を認めてくれ
た事への感謝に心を震わせ、いつも以上に奮闘を見せる、
向井「リーダーには近寄らせねぇ!」
(どうせ終わりなら……リーダーだけでも)

 しかし数の多いゾンビはさすがに奮闘するも向井は複数箇所噛ま
れ、肩の肉は抉りとられ次第に意識は朦朧とする中、最早、陶酔状
態で戦う。

 フラフラとおぼつかない足取りをしながらも転倒を繰り返すも……
懸命に、懸命に……浅井を守る様にバットを振り続ける向井、

……だが突然、背中に強烈な痛みが向井を襲う。
彼の胸からゾンビが使うとは思えない日本刀の刃先が視界に入る。

向井「なんだこれ……」
状況の掴め無い向井、
背後から浅井が向井の背中を貫いたのだった。
向井「な……ぜ……」
倒れる向井に浅井は言った。
浅井「よく頑張ってくれたな、思った以上に働いてくれた、人間は
希望を持つと思わぬ力を発揮するもんだな」

向井「……」
浅井「お前の代わりなんぞ、また作りゃいい人間にはな、使う者と
使われる者の二種類しか居ねぇんだよ、俺は人を使うのが上手いだ
ろ?」
いやらしい顔で笑い、向井を見下した言葉は続く……
「ちょっと褒めただけで、こんなに活躍してくれんだからなぁ」
向井「お、俺を利用……したのか」
浅井「まぁそういうなって、お前らも俺を利用して生き延びて来た
ろうが、美味しい思いもできただろ?」

浅井「同じこった」
向井「……」
浅井「お陰でもうゾンビの群れの切れ目も見えた、後は俺1人で大丈
夫だ」
向井「……せ、せめてトドメを」
浅井「……弾が勿体無いじゃねぇかアホかおっと急がないと」

 走り去る浅井、向井に振り向く素振りも無く向井の体はやがてゾ
ンビに埋もれ辺り一面に雨で薄まった血が流れた。


【今日のポイント】

本当の悪い奴はいい奴ぶって近づいてくる
本心は解らない。

言葉より態度、そして絆を作らねば真の仲間
は作れない喧嘩しようが、最後まで相手の
心理を探り、分かち合う事が重要ではないか
イザとなった時、薄っぺらい人間関係が救い
主となる可能性はほぼ無い。

意外な人物が助けてくれたりする事が人生の
中でもあっただろう。

人は言葉や見た目では解らないモノである
信念に従い100やって1返ったらいいほう
だろうが、やらねばそれは0だ。

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