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攻防戦
民家攻防戦 4
しおりを挟むハク「晴!いるんだろ!返事してくれ!」
「……」
雨の音とゾンビの呻き声で掻き消される声
誠「クソ、拡声器使っても聞こえねーのか」
3人は豪雨の視界の中に身動きの取れないもどかしさに雨は容赦
無く彼等の邪魔をするーー
ーー晴達ーー
滑る瓦に足元がおぼつかない……なるべく中央の真ん中 大棟
(屋根の上の中央の高い部分、冠部)に四つん這い状態で並んで
移動する3人、晴は背中に鈴を背負い慎重に進む。
隣との隙間は狭く日本家屋の良くある感じだが、隣に移動するの
も一苦労だった、落ちれば、何かの本で見た、まさに地獄である、
ゾンビの大群、何よりも落ちた時に体に受ける衝撃、更に囲まれる
事は終わりを意味しているからだ。
真美「……ちょっと待って」
美優「どうしたの?」
雨で聞き取り難い声を懸命に拾う真美
真美「……誰かの声がする!雨とゾンビの声で聞こえ難いけど」
濡れた長い髪から耳をだし辺りを探る、
美優が雨で視界の悪さもあり必死で辺りを注意深く見る先に__
美優「!!」
美優「いたいたいた!ハクだ!それに、それに他の人も居る!」
真美と美優は顔を見合わせ喜ぶ
「鈴……助かるよ私達……」
晴「……来たか、ハク!よし美優ちゃん、鈴ちゃん持って」
オンブする際縛った紐を解き、美優に丁寧に鈴を渡す。真美が
そっと鈴のオデコに手を当てた、
真美「……熱が酷い」
雨は鈴の体を濡らし、そして容赦無く体温を奪う……
2人の女は雨から、鈴を守る様に包まり自らの背中で雨を受け止
め体を密着させ鈴を温めた、その光景を晴は温かい目で見る。
晴「……守らなきゃな」
晴はバールで屋根の瓦を割り、外し、屋根から投げつける、なん
とかハクにこの場所を知らせる為だ。
ーーハク達ーー
誠「クソ!何処だ!屋根ったって雨が酷くて見えねーぞ!」
ハク「……」
(不用意にもう移動できない……これ以上進んだとは考え難い、予
測範囲外になったらもう声も届かない……)
「声が聞こえてるが、向こうが伝えられないとしたら……相手に伝
える方法、僕ならどうする……ハク」
自分に言い聞かせるように自らを問う、ハクは閃いた様に屋根を見
ていた視線をゾンビに向けた。
(ゾンビが集まってる場所……民家前……何処だ)
「!」
一部ゾンビが集中して集まろうとしている民家場所を発見、
ハク「いた!ここより5件先の民家の下に瓦が落ちてる!ホラ!ま
た落ちてきた!」
裕太「成る程、瓦を落として晴、やるなぁ」
誠「おし!行くぞ!ドケ!ゾンビ!」
次々とゾンビを倒し民家に辿り着く3人、
ハク「此処からは数が多いゾンビを分散させて中から救助する、2
人はこの民家から3軒隣に左右に分かれて……」
リュックから小型ラジオを取り出し2人に分ける。
ハク「着いたらドアを開けて音量最大にしてゾンビを民家の中に誘
導するんだ」
誠・裕太「了解!」
2人は指示通りドアを開けラジカセをセットして民家の中にゾン
ビを誘導に成功、裏から脱出する、晴達の居る民家からゾンビが数
を減らしたのを見極めた後、ハクは中に飛び込んだ、中は階段へと
続く通路にゾンビが2体、ハクはリュックからビニールに入れて雨
に濡れない様にした壁紙を取り出し、こちらに向かってくるゾンビ
の進路に合わせ足元にシールを剥がし散乱させる。
足を引きずるように歩くゾンビはハク目掛け歩き出した。
『ズルズル……』
ゾンビの足に密着したシールはゾンビの足に付くも、歩みを止め
る事はない。
やがてシワクチャになった壁紙が足を絡める様に付き転倒、這い
つくばりながらもハクに近寄るたびに壁紙はゾンビの身体中に付着
最早シワクチャのミイラ状態だ、視界もやがて壁紙が覆い、身動く
事もままならない状態になったゾンビを飛び越え先へ進む。
もう一体、二階に向かい階段を上がろうとしていたゾンビを手袋
をした手で背後から突き落とし、すぐ様壁紙を切り下へ投げつける。
振り返る事なく2階へ到達したハクーー
屋根へと続く押し入れから屋根へと晴も互いに協力し中と外両方
から破壊し、無事屋内へと女性3人を引き入れに成功した。
ハク「無事で良かった……」
美優はハクに抱きついた、
ハク「ビショビショだね……よく頑張った、あとは僕達に任せて」
美優「アンタだって……ビショビショじゃない……」
涙が止め処なく溢れる美優の頭を優しく撫でた、ハクは晴の方を向
いて懐かしい笑顔をした。
「晴!久しぶり!でもおしゃべりは後だ、先ずは鈴ちゃんの服全て
此処にある服でもカーテンでも何でもいい、脱がして早く着替えさ
せて、容体が心配だ、髪の毛は特に早く乾かせて、電気はつかない
なら、悪いけど、文房具のハサミでも何でもいい、ともかく体温が
下がる原因になりかねない、今は命の方が大事、必要があれば坊主
にでも、真美さんに判断は任せる、晴、女性が着替えてる間に、こ
の家を封鎖する、付いてきて」
頷く晴
2階から一階へと急ぐ晴と白取り出した先程の壁紙ロール20メー
トルを5本
ハク「一回の床全体に、これの粘着する側を敷き詰めて、あとゾン
ビの体半分くらいの高さにも並行して貼りまくって、あとは天井に
も貼って、どんな動きしても絡まってしまう様に、これで数体入っ
たとしても身動き出来なくなる筈だ」
晴「了解、ゴキブリほいほいだなこりゃ」
ハク「だねw」
こうしてハク達は一階を封鎖、窓にも内側から壁紙を貼りゾンビ
からは見えない安全性を保ちつつ、侵入したとしても安全だが侵入
しない家屋作り(興味のない)にした。
美優「震えてるわ鈴……」
真美「貴方も早く着替えなさい、じゃないと鈴ちゃんの体を抱きし
め私達の体温で温める事も出来ないのよ!」
美優「はい」
急ぎ2人は着替え鈴の服を脱がし、濡れた体を丁寧に拭いたあと、
なるべく暖かそうな服で覆った、床はフローリングな事もあり地面
からの冷気を防ぐ為、服を敷き詰めた。
顔は赤いが唇を見ると乾燥気味だった。
真美「美優ちゃん、私が温めるから暖かい水を用意して、あとハク
から貰ったカイロかして!」
カイロに乾いたタオルを巻き鈴の足の付け根を押さえ動脈から血
液自体を温め、鈴の冷えた体を温める真美、その間に2階のキッチ
ンから持ってきた鍋2個、大きめの鍋に燃える物を入れライターで
火を灯し、ペットボトルから出した水を温めた後、スポイドで吸い
取り、それを鈴の口へと流し込む。
美優「だめ飲まない」
真美「飲まなくても口腔内に入れれば少しは体内にも入る、続けて」
美優「ドライヤーがあれば、鈴ごめんね、すぐ生えてくるから……」
髪の毛を短くし髪の毛を切った……
真美「あら可愛いじゃない、この子顔がいいからショートも似合う
わよ」
泣きながら髪を切る美優に語り掛ける真美、
美優「うん……この子母親似だからね、私は父親似だから私より可
愛くなるよ鈴」
真美「貴方も可愛いわよ、お姉さんが保証する、それに貴方は私に
は無い強さを持ってる、それは持って生まれたモノより遥かに気高
く美しいわ……」
『美優ちゃん……ありがとう』
美優「?」
「私何もして無いよ」
真美「……ううん、貴方は私に、諦め癖が付いた私しに希望をくれ
たわ、貴方があの時私に言ってくれた事、そしてドアを開けるのを
私に譲ってくれたのもそう」
「本人は意識して無くても他人の人生を左右する言葉は知らず知ら
ずの内に伝染するものってホントね……でも本心で言ってくれたか
らだと思う」
美優「うん……」
真美「私も強くなるわ、いやもうなってると思う、私も貴方みたい
に言葉には出来ないけど揺るがない何か……もう感じてるもん」
(お父さんお母さん私がきっと助ける、会う前に私は胸を張って会
える真美になる)
真美「2人で鈴ちゃん助けるわよ!」
満点の笑顔で答える美優、
美優「うん!!」
【今日のポイント】
濡れた髪の毛は体温を奪う、
状況によって変わるが最悪の場合、
勿論人命を優先しよう、論理はファッション
羞恥心も生きてこそだ。
前提は揺るがない命の為に、それ以上に
優先するものは無い。
そして冷えた体を温めるのは遭難した雪山
でもよく言われる話だが人間のもつ、基本
忘れ物ができない物、常備しているものは
体温だ。
感覚が密集し、更に冷えやすい場所、つまり
末端部分は暖かさを感じる事が気持ちの上
でも余裕が出る。頭は温め過ぎても
いけないが、足先や指、この部分に触れる
体温を感じる姿勢がとれれば、状況判断を
優位に働かせる事ができ、より冷静に行動
出来るだろう。
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