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旅路

日記

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僕は、あの出来事以来、実は記憶が無い……家族探しが目当てだが、
思い出せないモノはどうしようもない、という事で当て所ない旅に
いるのだ、情報も無く彷徨うだけの日々が続く。

「まさか!異星人に記憶操作されたのか」
等とたまに思うが……

思っても解決しないので考える事をやめた、割と早く……5分位で。

 今日は以前拾った日記のような物を読む事にした。拾ったのはい
いが薪のアテにするつもりで拾ったのだが、どう見ても日記……

 悪いな……と思いながらも、もし、生き残りの家族が居たなら届
けよう、そう思ったから手掛かり探しで読む事にした。

所どころ破れている……

どれどれ……

ーー内容はーー

 起きたら病院で、人は既に見かけなかった、運が良かったのか、
ゾンビにも見つからず今こうして生きてる、そして何か行動すべく
動いた。

彷徨って、取り敢えず彷徨って……
彷徨うしか出来なかった。

そして車を見つけた。
三日間程かけてようやく街に辿り着く、アメリカは広い。
                                           
 病院の側の周りは建物を出るとうようよ居て対処の仕方も今ほど
わかって無かったから見つからないように、そこから逃げ出すのが
正直精一杯だった。

 廃墟と化した町は静かで風の音だけがする、端から家に片っ端に
入り人が生きるのに必要な食料と水を探した、常備する食べ物は意
外とあった、この辺は昔からハリケーン等の対策で地下に部屋があ
る家が多く、避難する場所を確保するのが当たり前のようだった。
 
 ふと思う。、缶詰などの期限がきれた時、人はどうやって再興す
るのか考えねばならぬ時期がいつかくるだろう、僕も目的を果たし
安住の地を確保しなければならない、そんな事を考えていた。
 
一刻も早く成し遂げなければならぬ状況に不安しかなかった。 
 
やっと辿りついた食料を貪るよういに腹に詰め込み、水分を補給す
る渇いた喉にビールが懐かしい、だが究極の渇きにはやはり水だ、
体に染み渡る細胞が元気を取り戻す感覚が今も忘れられない。
 
 お腹いっぱいなんて至極の贅沢であった、ここに着くまでに、こ
こはもうゾンビらしきものは見なくなった。
 
 時が経ち彼等の肉体は硬直し、もはや歩き回ることもままならな
い、動きを止めた者は、あるべき場所に帰ったのだろう。
 
人は土に帰る。

その土はやがて新たな生命となりて命を繋げてゆくのだ。   

 しかし全く見ない訳では無かった、地球全土に恐らく放たれた、
あの緑の霧は大気に混じり、雨となって再び惨劇を繰り返す、一度
腐敗したゾンビは蘇る事は出来なかったが、肉体が滅び時間の浅い
ものは、ゾンビとなった感じだ。
 
 人口密度の高い都会などはまだまだ危険ではあったものの、いず
れ世界の人口は減少の一途を辿る、蔓延した疫病のように、そして
ゾンビの数が減少していくとゆう事は人類の数の減少でもあった。
雨の日、其れは今の世界で一番危険な日なんだ。
 

 一定の場所で防護策無しに安易に寝る事は出来なかった、厄介に
は変わらなかった。
 
 窓が少ない家の一件を決め、他の家から取ってきたものを使い、
家の窓やドアを封鎖する。缶を紐で結び、出入り口としたドアの前
に取り付ける、ゾンビ対策だ、夜は蝋燭があったのでそれに灯りを
灯す、ベッドのある二階にはこの家の住人が使っていたと思われる
スマホを天井に取り付け灯りを確保した。
 
 雨が降ると何処からともなく大量のゾンビが現れるが彼等が壁を
壊し中に侵入する事は工具でも使わない限り釘で打ち込んだ板を破
壊する事は不可能な事から安心できたな、探索は毎日した。
 
確保出来たのは食料だけでは無かった。

食料


武器
ライター
衣服
近接武器、重いけど斧を選んだ。
  
 先ずは車を選ぶ、農業が盛んであったと思われるこの場所には荷
台付きのトラック型が多かった、ガソリンを周りの車から抜き取り
予備のタンクに入れ替え荷台へと詰め込む。
 
 一番重要な食べ物、水は出来るだけ封の空いてない新品を選ぶ、
保管された場所からは三件も家を回れば詰め込めない程の物資が手
に入った。
 
 一つ一つ缶詰に至っても消費期限を確認し長い物と短い物を選択
した、次はいつ手に入るか解らない味のついた食料はバカにならな
い、意外といけるのはドッグフード、人間が食べても大丈夫とテレ
ビで見たことがあるその通りだった。これはあえて此処を通り過ぎ
た生き残った人も少ないのか、結構手に入りやすかった。

 後は調味料、大概の食事は野ウサギや食べられる植物や果物の類
だ、特にやさいや肉、魚といったものには調味料は有難い、文明の
中でも特に有難く感じた。

 臭みも誤魔化せるし何より味が付いた食べ物じたいが貴重なので
ある、果物を除き大概の食べ物には癖もあり、飲み込むのが苦痛に
なる位の不味さである。
 
 特に塩は取りすぎ注意とよく耳にするがこの状況ではもはや摂取
する機会など殆ど皆無である、多少重くても大目に持ち歩いていた。
探索にあたっては土に埋めまた、わざわざ戻り回収する位の貴重な
ものである、水に関しては消費期限が短いものを選択、いざとなっ
たら濾過の方法もある。
 
 車に至っても知識のない自分でも出来る限り調子の良さそうな物
を吟味した。ボンネットを開け、見える範囲の液状の確認、バッテ
リーに関しても予備は必要だ、配線をしっかり頭に叩き込み、念の
為、ノートに図を書き込む。
 
 車は此処に来るまでにも時折、拾う事はあったが常に乗り捨てが
基本だ、灯油等の入れ替え出来るポンプを此処で見つけるまでは、
ガソリンの詰め替えする方法が解らなかったからだ。

 しかし歩くと違い距離が稼げる車は本当に便利だ。
音には気を付けねばならないが、基本、人口のある都会を中心に徘
徊する異星人との遭遇を避ける為に、あえて人里離れたところを選
び移動を繰り返す。
 
 勿論タイヤに至っても充分な溝も確認、予備タイヤをワンセット
荷台に乗せる、ノーパンクタイヤと言えど安心は出来ない、1人だ
と車を2台持って行くことも出来ず何かあった時は色々と覚悟をしなければ
ならない、詰め込む車にも限界がある断捨離を繰り返し念密に、慎
重に選んだ。
 
 しかし嬉しかったのは、飲食物、車の他に使い込まれた年代物の
カセットテープだった文明にふれない期間も長かったせいか音楽の
ある生活が、こんなにも気持ち安らぐ物なのかと改めて感じる、ス
マホには音楽は入っていたものの、著作権上、既に保管という概念
はなくネットが繋がらない今は其れを聴く事すら出来なかった。
 
 この車の持ち主の趣味なのだろう、オールディーズが流れる。
わざわざカセットで聞くこだわりようだ、聞いた事は殆ど無いが、
安らぐ曲が多く、開拓時代あとの故郷を離れた人々が多い時代だっ
たのだろう、今の自分にはハマりすぎる曲だった。
 
 たまに涙が溢れるが今は恥ずかしがる隣人もいない事が余計悲し
みを増す、それでも少しの羞恥心を持ちながら大声で泣いて見るこ
ともあった、こだまする荒野に音は最後にまた悲しさを連れてくる
……風が少し憎くもある。
 
空き家に入ると居ないとわかりつつ、
 
「お邪魔します」
「こんばんわ」
 
などと呟く日も多い。

 散乱した部屋の子供部屋に入ると人形が落ちていた、家庭の匂い
はもうしないが心の残り香が香る僕もこうやって何時か、こんな空
間を作っていたのかなぁ……なんて思いと、自分の家族を思い出す。
大人になって振り返る事もなく、ただ幸せだったこの子供の時の守
られた空間が今はとてつもない感謝と、今の僕を支える生きる目標
だ、会ったらちゃんと「ありがとう」を言おう。
 
 俺はこの町に来て三日が経った、準備もそれなりに整えた、新調
した。何かあった時の為のリュックに最低限の物を詰め込み武器の
チェックをする。
 
 今ある武器は倉庫にあった古典的銃と思われるレバーアクション
タイプのライフル弾は45口径、狩で使われていたのだろう、弾は大
量にあった、練習もかなり出来て感覚は掴めたと思う、二箱……
計100発以上はある。後は小さいながら警察署から頂いたピストル。
 
 医療品もあるだけ集めた、この世界だ、怪我は即、命に関わる、
消毒薬は常に持ち歩いている、ガーゼはあるにはあるが貴重な品物
である。

 毎日が体調が良いわけではない、風邪を引いた時は本当に焦る、
ベッドで暖かくなんて事は、このような状況になった時だけだ、硬
いコンクリートに薄いキャンプ用の寝袋、なかには敷き詰められる
だけのその辺に落ちている新聞紙を詰め込んだ。

 敵を恐れ車の下に潜って寝る事も多かった特に道路しか無いよう
なところではかなり隠れる所も少なく獣への警戒も同時に取れた、
閉鎖空間も少し安心出来た状況によっては火を焚くことも出来ない、
無論、重症化しても病院はもう無い。
 
 都会で暮らしていた頃、全く気付かない事も多かった、月明かり
がある時はまだ良い、夜道の暗さには驚いた。月明かりに照らされ
る獣の目も恐怖だった、僕には見えないけど相手は僕を見ている、
昔はお化け等、テレビで見て怖いなんて思っていた時期もあった、
最初の頃は、そう言ったものも怖かった時期もあったが、今は恐怖
の対象は捕食動物、そして侵略者、そして人間……お化けと言った
仮想のものに恐怖を抱く心の余裕もないのだろう……
        
 そんな事を考えながら音楽を奏で銃の練習、そして誰かのベッド
で暖かく眠りにつく、身体を包み込む毛布が頬を優しく包む、暖か
さを感じる今は至極の安らぎの日々であった、しかし此処も準備が
出来次第出立する。

 出発の準備は整った、少し名残惜しい生活に心引きずられるも、
英気は養えた。

 地図を確認し人気のない、車が通れそうなルートを割り出す。
久しぶりの音楽に自然と顔がほころぶ、リズムに身を任せハンドル
を手に廃墟の町を出発した。

手紙を読みキョトンとした目で綺麗に畳み封書に直すと空を見上げ
呟いた。
ハク「……俺の今の生活これでいいんだろうか……」

「……」

シリアスは苦手だ……
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