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後日談

【後日談13】帰宅4(セブ視点)

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 足元に落ちたままになっていた小瓶を手に取り、中の潤滑油を高く上げたままのハバトの臀部に惜しまず潤沢に垂らした。怯えと甘えの混じった「ダメ」を繰り返す少年を無視して、潤滑油を纏わせた親指で、愛らしい淡橙色の肛門を押し開く。久しい行為ではあるが、挿入されることに慣れた排泄口はもはや性器と言って差し支えない柔軟さで容易く指先を飲み込んでいく。直腸をゆっくりと丁寧に開き解しながら、まだ硬さを残した陰茎でゆるりと膣奥を突くと、益々ハバトの呂律が怪しくなる。その拙い声で何度も名を呼ばれて、愛おしさに胸を焼かれる。
 肛門を慣らす間に更に達し随分とぐったりとしたハバトの、今にも崩れ落ちそうな細い腰を両手で掴む。陰茎をゆっくりと膣から引き抜くと、どこもかしこも敏感な私の伴侶はその刺激にも感じるらしくひくひくと太腿を震わせた。

「君が望むなら子などいくらでも産めばいい」

 子が生まれたとしても、私の最愛がハバトであることに変わりない。子は育てば親から離れる。乳母や教育係をつければ尚更だ。早々に指南役をつけて騎士団に放り込んでもいい。

「ただし、君を壟断するのは何があろうと変わらず私だけだよ、ハバト」

 硬度を完全に取り戻した陰茎で、入念に解したハバトの肛門を割り開いていくと、靭やかな背が反り、一際高い声が押し出された。ハバトが感じる度に繰り返す肛門の強い締め付けと、柔らかくうねる直腸が堪らなく悦い。陰茎を根元まで押し込むと、それだけで再び絶頂したハバトの肚の中は更に巧みに私を愛撫した。
 弛緩し切った細い身体を、貫いたまま引き起こして、座した私の膝上に乗せる。自重でより一層深く私の陰茎を咥え込まされてつらいのだろう。ふらりと首を傾いで私の首元に頭を凭せ掛けながら、自身の腹に巻き付いた私の腕を何度も掻く。もっと強く縋り付けばいい。君を愛すのも、苦しめるのも、縋り付くのも、全て私であるべきだ。
 下から強く突き上げて、ハバトの特に敏感な直腸奥を攻め立てる。力の入らない脚では腰を浮かすことも出来ず、暴力じみた行為を逃げ場なく受け止める少年の悲痛な嬌声が寝室に響き渡る。
 私だけのものだと実感出来るこの瞬間が、永遠に続けばいい。

 力任せの突き上げに少年が悲鳴を上げ、短い爪が私の腕を抉る。ハバトの陰茎からは精液でない透明な液体が吹き出し、直腸がその絶頂に合わせて強く強く締まる。彼の耳元で名を呼び、呪いのように低く重く愛を囁き、私は愛おしい少年の肚の中で射精をした。





「セブさんが、そばにいないと、不安になるんです…」

 精疲力尽の体で、寝台にうつ伏せに寝転びうつらうつらとしていたハバトが、夢うつつで譫言のように呟く。喉を潰してしまったらしく、その声は痛ましい程弱々しく掠れている。
 寝台の端に溜まってしまっていた掛布を引き寄せ、薄手の羽織りに袖を通しただけのハバトにそれを掛けてから、私もその横に腰を落ち着ける。

「私もだ」

 はふり、と欠伸に満たない愛らしい息を吐いてから、どういった意図か、ハバトはシーツに額を擦るようにして酷く緩慢に首を横に振った。私がハバトを恋しく思う気持ちとは違う、という意味だろうか。

「あなたを、俺より幸せに出来る人が、いるんじゃないかって…」

「私にはハバトしかいない」

 相当に前後不覚のようだ。ハバトは物を知らないが、地頭がとてもいい。普段ならば、そんな議論の余地のない仮定の話など、不用意に口にしたりはしない。

「ここに………俺…………」

 尻すぼみに消えていく言葉を、残念ながら最後まで聞き取ってしまう。
“ここにいるのが俺でなくてもあなたは幸せになれる人だ”と。
 何とも酷い戯言だ。
 何故、ハバトのいない場所に私の幸せがあると思うのか。そんな、地獄のような場所に。

「ハバト、眠ってしまったか?」

 我が伴侶の、卑屈で不安定な情緒もまた愛している。彼が求められることに慣れていない、他人の手垢を付けられていない証だ。稚拙で従順な彼の愛らしさも、その孤独と卑屈さから来ていると、よく理解している。
 だが、私がハバト無しに生きられるなどという、愚にもつかない思い込みは正さねばならない。万が一、ハバトが私の為と称して身を引くようなことがあれば、今度こそ私は彼の手足を斬り落とすことになるのだから。


 完全に瞼を閉じて眠りの入口を彷徨っているハバトの腕を強引に引いて、その身体を無理矢理胸に抱え込む。薄っすらと開いた眼が、眠気の中でとろとろと瞬きを繰り返す様が愛らしくも憎たらしい。

 右腕は腰に回しハバトの身体を支え、左の手でその頼りない首に掛かる柔らかな赤毛を掻き上げた。そして、露わになった青白い首筋に激情のままに歯を立てた。

「いっ!あ!何?」

 私を灼く苛立ちを全て吐き出すつもりで更に顎に力を込めれば、じわりと鉄錆が香り、血の味が口腔に広がった。さぞ痛かろうに、ハバトは私の腕から逃げ出そうとするでもなく、ただ小さく呻いて私に懸命にしがみつくだけだった。その健気さに私の溜飲は幾分下がる。
 顎の力をゆっくりと緩めて離すと、一目で噛み跡とよく分かる痕がくっきりと刻まれていた。白い肌に痛々しい赤がよく映える。血と唾液で濡れたそれは所有印のようで悪くない。情を込めるように、滲んだ鮮血を時間を掛けて余すことなく舐め取る。
 その間、ハバトは擽ったそうに身を浮つかせはしたが、意図を問うでも逃げるでもなく、ただ静かに私の背に流した髪を梳いて手遊んでいた。

 首筋から顔を上げて、愛おしい伴侶を見つめる。垂れた眦の大きな目には怯えも怒りもなく、その頬には僅かに朱が差している。徐ろに彼は私の唇に触れるだけの口付けを寄越して、「うとうとしててごめんなさい」と眉尻を下げて微笑んだ。どうやら先程の失言は記憶にないらしく、自身のうたた寝に私が腹を立てたと思っているようだ。
 悪戯心の湧いてしまい、ハバトの謝罪の言葉に答えずに、その色素の薄い瞳をじっと見つめ続ける。最初にその小作りな口の端が下がり、次に大きな目が泳ぎ、その後すぐに涙の薄膜が張られて透明感のある薄茶色が揺らめく。
 些細なことで不安になってしまう、この幼くて質朴で愛され慣れていない少年には、その度に言い含め、何重にも囲い込まなければ。
 涙が雫になってしまう前に、私は口元を緩めて彼の目元と唇に口付けた。



「私は君に出会うまで、生涯の伴侶など断じていらないと思っていた」

「…そうなんですか?」

 私の腕の中でくたりと胸に頭を凭せ掛けたハバトが、如何にも信じ切っていない声色で相槌を打った。

「今まで誰にも心動かなかった。唯一、生涯そばにいて欲しいと思ったのが君だ」

 欲しくもない領地を受領したのも、ひいてはハバトの為になるからだ。英雄の肩書ですら、この世間知らずで無防備な少年を囲い込む為の道具でしかない。
 じっと聞き入っているハバトに、「信じてくれるか」と問えば、思い悩むような沈黙の後に「信じます」と答えた。

 冬眠前の寝床を均す動物のように、私の腕中でしばらく身動いでいたハバトが徐ろに顔を上げた。赤らんだままのまろい頬が美味そうだ。

「あの、俺、あんまりセブさんをがっかりさせないように気をつけます。俺鈍くさいからイライラさせちゃうだろうけど…」

 申し訳なさそうに一度きょろりと目を泳がせてから、再び私の胸に顔を埋めた。
 先程思案していたのはそういう部類のことなのだろう。悩み行き着くところすら可愛らしくてつい頬が緩む。

「君はそのままでいい。そのままの君を好ましく思っている」

「…それは、さすがにお世辞ですよね?」

 まだわかっていないのかと、苦笑が漏れる。なかなかに手強いものだ。

「では、ハバトは嫉妬深く君を束縛する私は嫌いか?」

「え?もちろん好きです。セブさんの優しいところも、ちょっと強引なところも、全部」

 愛らしい模範解答に私は微笑んで頷いた。

「そういうことだよ。私も同じなんだ、ハバト」
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