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夢じゃない3

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「それで、男の顔と陰茎の話だったか?」

 ベッドに再び乗り上げたセブさんは、まるで流れるような自然な動きで俺の顔をじっと見つめたまま口付けた。そして、さも当然のように俺の性器をやんわりと掴んでくにくにと揉む。

「あっ、ダメ」

「君が触るかと聞いてきたんだろう?」

 こころなしかセブさんの口の端が上がっていて、なんだかすごく楽しそうだ。

「そう、ですけど、あっ」

 平然としているセブさんと裏腹に、ひとり感じてしまっている自分が恥ずかしい。でも自ら言った手前、セブさんの手を振り払うのも気が引ける。俺はセブさんの腕を柔く掴んだままはふはふ喘いだ。

「伝えなかった私も悪かったが、私は君が男であることは最初から知っている」

「えっ、それって、あんっ、あっ」

 彼をもっと問いただしたかったのに、完全に勃ち上がってしまった性器を皮ごと上下に擦られて俺の頭は気持ちいいことでいっぱいになってしまう。

「私が君を女扱いしたことなど一度もないだろう」

 あれ?そうだったかな?
 気持ちよくてふわふわした頭ではうまく考えられない。

「ふぁっ、んっ、でも…」

「叙爵式の場では君が目立たないよう女物を贈ったが、君に初めて贈ったものは全て男物だっただろう」

「そ、おです、けど、ああっ」

「君が女だと認識していたら、あの女癖の悪い男を友人として黙認したりしない」

「んっ、わかっ、たから、手を止めてぇっ、ダメっ」

「私は、男だということも、その幼い顔立ちも、全て含めて君を愛している」

「あ、んん…っ!」

 彼の真摯な告白の直後に射精してしまった。気恥ずかしくて、彼の胸に体をくたりと預けながらもぞもぞと顔を隠す。

「ハバト、君からの返事が聞きたい」

 ゆっくり顔を上げて、しばし言葉無く彼の端正な顔を見つめると、白金色の長い睫毛が作った影の下、エメラルド色がゆらりと不安げに揺れた。そんな顔をさせたいわけじゃない。
 背を伸ばして彼の鼻先に小さく口付けてから、もう一度宝石の瞳と見つめ合う。

「あなたから逃げてごめんなさい。男だってバレたら、セブさんに嫌われると思い込んでたんです。あの、えっと、俺もあなたを愛してるので、ずっとそばにいてください」

 俺の顔はさぞ真っ赤になっていることだろう。それでもなんとか目をそらさずに言い切る。
 セブさんの手が、俺の背を撫で、腰を抱き込み自身の胡座をかいた足の上に俺を引っ張り上げる。そして、何度も角度を変えて啄むようなキスをしてくれた。夢じゃないかと疑うほどに、幸せだ。
 いつまでも触れていたくて、彼の首筋に額を擦り付けると、セブさんの手が、跳ねているだろう俺の赤毛を優しく撫でつける。

「……君が眠っている間に、もう逃げられないよう両足の腱を切ってしまおうかと何度も思った」

 懺悔のように、低く暗い声だった。
 彼の目を覗き込むとゆっくりとそらされ、それが冗談や嘘でないのがわかった。そして、それは今も彼の中にある欲求なんだろうとも思った。あえて俺に告げたということは、俺にそれを拒絶して、間違っていると止めてほしいのかもしれない。


 彼の真意がどこにあっても、俺の答えは変わらないけど。
 俺は笑って彼に頬を寄せた。

「もう逃げません。でも、あなたが不安に思うなら、俺の両足を切り落としてください。その代わり、どこに行くにもセブさんが俺を抱えてくださいね」

 セブさんが不安にならなくて、俺もセブさんとずっと一緒にいられる。それはとても幸せな気がした。
 俺の緩んだ頬をセブさんが長い指の背でさらさらと撫でながら、「やはり君には敵わない」と困ったように笑った。 

「それは、君が私を捨てる時まで取っておこう」

「んふふ。俺がセブさんを捨てる前提なの酷いです。俺、こんなにあなたのこと大好きなのに」

「君が愛らし過ぎるから不安なんだ」

「俺にそんなこと思うのはセブさんだけです」

 俺が彼の唇に何度も噛みついてから、その首に腕を回してぎゅっと抱きつくと、彼が楽しそうにくつくつと笑った。そして、徐ろに彼がわずかに腰を浮かせて“それ”を押し付けてくる。
 恐る恐る少し体をずらして、彼の下肢を直視すると、俺のものと比べものにならない立派なものが勃ち上がっていた。これは性器ではなく凶器ではないのか。

「…お手伝いしましょうか?」

 俺は右手で輪を作ってそれを上下させるという、かなり直接的な表現でお手伝いの意思表示をするが、セブさんは微笑んで首を横に振った。でも、それは手伝わなくていいという意味でないのは、彼の右手が触れた先ですぐ知れた。
 彼の出した精液でぬかるんだ尻の穴に容赦なく指を突き入れられる。ぐりぐりと中で指を折り曲げるようにされて、俺の腰が強い快感で大きくビクつく。なんで俺の尻の中はこんなにセブさんに知り尽くされてるんだ?

「ハバト、駄目か?」

 俺の大好きな優しい微笑みを浮かべたセブさんが、ゆっくりとだが確実に俺をベッドに押し倒していく。体は正直つらいが、彼に求められてると思うと気持ちよくしてあげたい欲求がむくむく湧いてきてしまう。

「セブさん、あの、聞いてもいいですか?」

「…なんだ?」

 この流れで質問されると思わなかったらしく、セブさんがわずかに眉尻を下げた。少し可愛い。
 俺はベッドに仰向けになったまま、膝を胸の前に引き寄せ、自身の尻を両手で割り開く。

「向かい合ったままって入れられますか?キスしながら入れてもらえたら、もっと気持ちいいかなって思うんですけど、変ですか?」

 セブさんは答えてくれず、じっと真剣な目で俺を凝視している。
 キスしながら入れて欲しいってやっぱり変なんだろうか。でも俺がちゃんと尻を上げられたら入りそうなんだけどな。そう思って試しに指を一本入れてみたら、中から精液らしきものが溢れてきて慌てて指を抜いた。なんか漏らしたみたいで嫌だな、と思っていたら、セブさんの喉から、ぐっとツバを飲み込むような音がした。珍しい反応だ。

「……無知なところも魅力的で困る。煽ったのは君だからな。私が満足するまで付き合ってくれるのだろう?」

 そう言いながらセブさんは枕を俺の腰の下に差し入れてくれた。すごく頭いい。これなら入りそう。

「嬉しい。いっぱいキスしてください」

「……君は本当に怖いもの知らずだな」



 その後俺は「萎えない」とかいう恐ろしい状態の彼に本気で付き合わされて、何度も意識が飛んでぐちゃぐちゃにされて死ぬかと思った。やっぱりセブさんのものは凶器だった。
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