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夢じゃない2

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「セブさん…?」

 信じられない気持ちで彼を呼ぶ。返事の代わりに腰を揺すられて「あうっ」と高い声が出る。

「嫌だと言う割に、君は肚の中でも感じるのだな」

 具合を確かめるように奥を捏ねられて、普通じゃありえない圧迫感に体が驚いて勝手に跳ねる。でも、嫌じゃない。

「んっ、だって…」

 この行為の相手がセブさんだと、今俺は彼の性器で貫かれてるのだと思うと、先程まであった嫌悪感が一気に吹き飛んだ。

「まだ入るぞ。抵抗してみるか?」

 首をかすかに横にふると、セブさんは満足気に短く笑った。時折俺の名を呼びながら、極々ゆっくりと腰を使われ、更に奥まで腹の中を押し上げられる。拷問じみた行為のはずなのに、俺の口からは甘えたような嬌声しか出ない。

「はあっ、お腹、いっぱいです。あうっ、苦しいっ、んん」

 彼の性器が全て入ったらしく、尻に彼の肌の熱を感じた。セブさんを受け入れられたことが嬉しくて、涙がまたこみ上げてくる。ひくり、と喉をしゃくり上げた。

「まだ泣いているのか。だが、君には私との行為を拒む術も権利もない。死ぬまで私のそばで、私のものとして生きるんだ。君の愛らしいかんばせも、この白い項も、赤毛の一本ですらも、全て私のものだ」

 赤毛の、男の俺でも、彼のものとして生きていいのか。それがただただ嬉しくて、幸せで、目眩さえ覚える。涙でシーツ湿っていく。
 背後から、項に小さく音を立てて口付けが落とされた。彼が体を傾けたことで腹の中が抉られ、俺はまた高く喘ぐ。興奮した俺の体が、この内臓を暴かれ押し上げられる感覚を快感だと捕らえ始めている。
 彼が腰を大きく引いて打ち付けた。

「ひぃん、ああっ、ダメっ、待って」

 動かれる度に多幸感と快感が足先から上がってくるようで、じわりと全身が痺れる。

「あっ、あっ、どうしようっ。気持ちい。んっ、セブさん、あんっ、セブさん、セブさん」

 彼が欲しくて仕方ない。勝手に俺の中が彼の性器を締め付ける。はしたないとはわかっていても、自ら腰を振ってしまう。
 彼の性器が更に膨張したような気がする。

「くっ、ハバト、煽るな」

 声が掠れているのは、欲を感じてくれているからだろうか。もしそうなら嬉しい。

「もっと、して、いっぱい」

 あなたにだったら、例え乱暴にされて壊されたって構わない。

「君は、何もわかっていない…」

 喉で唸るように言い捨てると、彼は腰を引いてから強く打ち付けた。俺は手足を動かせず、腰も大きな手で掴まれたままだ。俺の体はひとつも衝撃を逃がすことが出来ず、彼の激しい抽送を全てその強さのままに受け止めた。

「あっ!ああっ!はうっ!あんっ!んん!」

 自分の体がよくわからない。暴力みたいな行為なのに、なんでこんなに気持ちいいんだろう。
 一際奥に性器を突き立てられて、俺は射精をせずに達した。こんな気持ちよさ知らない。びくりびくりと、無様に何度も体が跳ねる。それでも彼は腰を止めてはくれず、いっそ更に激しく押し入ってくるから、俺は怖いくらいに気持ちよくて「ダメ」と何度も繰り返し口走った。
 目の前がチカチカして、俺は「ダメ、気持ちいいから、ダメ」と鼻にかかった悲鳴を上げながら、更に深く深く二度目の絶頂を迎えた。そこでやっと彼の腰の動きが緩慢になり、熱い吐息を背に感じた。セブさんも、俺の中で射精したようだった。最奥に塗り込めるような動きをしばらくしていたが、優しく俺の名を呼びながらそれを引き抜いた。
 同時に俺の手足も自由になり、俺はゆっくりとシーツに体を沈めた。

「ハバト…」

 彼の少し弾んだ息が生々しい。俺は全く整わない呼吸の合間に「はい」とかろうじて返事をした。

「私が恐ろしいか?」

 ベッドが軋み、セブさんの硬い指先が俺の横顔を撫でた。俺は気だるい体をよじって体を横向け、彼を仰ぎ見た。
 暗過ぎる部屋の中では、セブさんの表情は見えない。それが悲しくて、腕を伸ばして彼の輪郭を探す。厚い胸板に触れ、肩、首、顎、頬と恐る恐る触れていく。途中、長い絹糸のような髪が爪先に当たり、より彼を感じた。

「怖くないです。セブさんなら、怖くないです」

 吐息の音で、彼が極小さく笑ったのがわかった。

「口付けていいか、ハバト」

「はい。俺も、したいです」

 ゆっくり唇が重なって、深く交わってから離れた。セブさんが微笑んでいる気配がする。するり、と彼の胼胝のある手のひらが俺の頭を撫でる。

「……あの、セブさんは、俺でいいんですか?」

「何を言っている。また逃げる気か…?」

 彼の声が急激に冷たく刺々しくなる。逃げるつもりなんてもう微塵もない。俺は慌てて上半身を起こして、彼の手を手探りで握った。

「違います!でも、えっと、俺、男ですよ?ちんちん付いてますよ?いいんですか?触ってみます?男の顔とか、ちんちんとか、見たら俺のこと嫌いになりませんか?」

 俺が涙目で必死に言い募ると、セブさんが息を飲んで黙り込んでしまった。「やっぱりちんちん付いてる俺は嫌ですよね」と鼻声で呟くと、セブさんは大きく溜め息を吐いてから「少し待っていなさい」と、俺の手をやんわりと剥がした。ベッドが軋み、彼がベッドから降りたのがわかって、悲しくて心臓が擦り切れそうなほど痛んだ。
 そのまま部屋から出て行ってしまうかと思ったが、意外と近くから魔法灯が灯される音がして、部屋全体がぼんやりとした常夜灯の橙色に包まれた。ベッドは広いが、部屋は家具もなくあまり広くない。
 長い髪を背中で緩く括った、筋肉質な長駆がこちらに戻って来る。一糸もまとっていないのだが、見苦しいところがひとつもない羨ましい体をしている。
 俺が間抜け面で見惚れていると、「そんな可愛い顔で見つめるな」と苦笑いされた。
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