46 / 83
迂闊な少年2
しおりを挟む「ううん……、いい」
まさかこの世に、こんな行為をみずから望んで人前で平然とできる女性がいるということが信じられない。
そんなアベルの想いなど露ともかえりみるわけもなく、アイーシャは恍惚とした表情を顔に浮かべ、腰をゆっくりと動かしはじめる。
化粧をほどこしているために、身体より色が白く見える顔が、愉悦に赤く染まっている。
「ああ……ん。ああ、いいわぁ……」
アベルにはひたすら驚倒ものの光景だった。己の取らされている苦しく恥ずかしい姿勢もわすれて、ただただアイーシャの姿を凝視していた。
サライアもアーミナもエリスも驚きもせず平然と見ていることは、彼らはすでに見慣れているのだろう。
彼女の動きに合わせて手足の銀輪も揺れる。アベルのものとおなじく檜皮色のサンダルが、ひどく猥褻に見える。あのように浅ましい姿を自分もつい先ほど晒したのかと思うと、アイーシャの淫猥なすがたに自分自身がかさなり、アベルはいたたまれない。
目を逸らしたい。だが逸らせない。
「ん、んんん、ああ、ああ……陛下ぁ」
耳をおおいたい。だが、出来ない。
「ああっ、ああっ、ああっ!」
アベルの前で、アイーシャという妖艶な毒花が、開花しはじめている。
アベルは恐怖すら感じながら、つい先ほどまでは、まがりなりにも人の形をしていた生き物が、なにか別の生物に変成していく様を魅入られたように見つめつづけた。
(私も……あんな風になっていたのだろうか?)
強制されたとはいえ、不様な姿で死ぬほどの恥辱をあたえられた果てに、快を得てしまった。その様をすべて見られていたのだ。
自分もまた、今のアイーシャを見ている自分とおなじように、見る者からそう思われていたのかもしれないと思うと、全身から火が吹くほどの羞恥を感じる。
「うう……、いい、いい、いいわぁ!」
と言いつつ、アイーシャの黒い眉が歪んでいるのは、激しく極めた快楽には、ときに辛さも含んでいるのだろうか、とアベルはぼんやりと考えた。
「ああ! はぁ……っ」
天井に向けて放った彼女の吐息は、桃色に染まっているようだ。
女性と本物の接吻すらまだしたことのないアベルには、ひたすら異様な見物で、アイーシャのみならず、グラリオンというこの国が、この国の宮廷が、さらに後宮というものがつくづくおぞましく思えてきた。いや、女という生き物がそのものがおぞましく思えてきた。この世のすべての女性というものは、こんな魔性を身の内に持っているものなのか。そう思うと空恐ろしくさえなってくる。
まさかこの世に、こんな行為をみずから望んで人前で平然とできる女性がいるということが信じられない。
そんなアベルの想いなど露ともかえりみるわけもなく、アイーシャは恍惚とした表情を顔に浮かべ、腰をゆっくりと動かしはじめる。
化粧をほどこしているために、身体より色が白く見える顔が、愉悦に赤く染まっている。
「ああ……ん。ああ、いいわぁ……」
アベルにはひたすら驚倒ものの光景だった。己の取らされている苦しく恥ずかしい姿勢もわすれて、ただただアイーシャの姿を凝視していた。
サライアもアーミナもエリスも驚きもせず平然と見ていることは、彼らはすでに見慣れているのだろう。
彼女の動きに合わせて手足の銀輪も揺れる。アベルのものとおなじく檜皮色のサンダルが、ひどく猥褻に見える。あのように浅ましい姿を自分もつい先ほど晒したのかと思うと、アイーシャの淫猥なすがたに自分自身がかさなり、アベルはいたたまれない。
目を逸らしたい。だが逸らせない。
「ん、んんん、ああ、ああ……陛下ぁ」
耳をおおいたい。だが、出来ない。
「ああっ、ああっ、ああっ!」
アベルの前で、アイーシャという妖艶な毒花が、開花しはじめている。
アベルは恐怖すら感じながら、つい先ほどまでは、まがりなりにも人の形をしていた生き物が、なにか別の生物に変成していく様を魅入られたように見つめつづけた。
(私も……あんな風になっていたのだろうか?)
強制されたとはいえ、不様な姿で死ぬほどの恥辱をあたえられた果てに、快を得てしまった。その様をすべて見られていたのだ。
自分もまた、今のアイーシャを見ている自分とおなじように、見る者からそう思われていたのかもしれないと思うと、全身から火が吹くほどの羞恥を感じる。
「うう……、いい、いい、いいわぁ!」
と言いつつ、アイーシャの黒い眉が歪んでいるのは、激しく極めた快楽には、ときに辛さも含んでいるのだろうか、とアベルはぼんやりと考えた。
「ああ! はぁ……っ」
天井に向けて放った彼女の吐息は、桃色に染まっているようだ。
女性と本物の接吻すらまだしたことのないアベルには、ひたすら異様な見物で、アイーシャのみならず、グラリオンというこの国が、この国の宮廷が、さらに後宮というものがつくづくおぞましく思えてきた。いや、女という生き物がそのものがおぞましく思えてきた。この世のすべての女性というものは、こんな魔性を身の内に持っているものなのか。そう思うと空恐ろしくさえなってくる。
107
お気に入りに追加
2,656
あなたにおすすめの小説
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
愛しい番の囲い方。 半端者の僕は最強の竜に愛されているようです
飛鷹
BL
獣人の国にあって、神から見放された存在とされている『後天性獣人』のティア。
獣人の特徴を全く持たずに生まれた故に獣人とは認められず、獣人と認められないから獣神を奉る神殿には入れない。神殿に入れないから婚姻も結べない『半端者』のティアだが、孤児院で共に過ごした幼馴染のアデルに大切に守られて成長していった。
しかし長く共にあったアデルは、『半端者』のティアではなく、別の人を伴侶に選んでしまう。
傷付きながらも「当然の結果」と全てを受け入れ、アデルと別れて獣人の国から出ていく事にしたティア。
蔑まれ冷遇される環境で生きるしかなかったティアが、番いと出会い獣人の姿を取り戻し幸せになるお話です。
よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜
高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる