落ちこぼれの魔術師と魔神

モモ

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第1部

初登校

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「もう7時30分だぞ。早く起きないと遅刻するが良いのか?」
 翌朝、俺は兄貴の無機質な声で目が覚めた。
「……へ」
 7時30分……?
 ああ、8時に家を出なくちゃならないんだっけ……って、まずい!
 入学初日から遅刻しちまう!
 まずい! 本当にまずい!
 飛び起きた俺は、猛スピードで家中を駆け回る。
 俺にとってここは新しい家みたいなものだから、どこに何があるのかまったく分からない。
 そして案の定、自室の段ボールの角に足の指を打ち付けまくった。
「馬鹿か?」
 もうとっくに準備を済ませたスーツ姿の兄貴が俺に冷ややかな視線を注いでくる。
 だが
「くっ、なんとでも言え!」
 今の俺は止まれない。適当に言葉を返した後、俺は洗面所へと走った。

 ちなみに兄貴が働いているのは高等警察とか言う、魔術師の凶悪犯罪やスパイ対策、凶悪テロ行為等を担当する部署だ。
 当然、そんな凄い所に就職できた兄貴の実力は計り知れない。
 俺とは大違いだね。兄弟なのに、何故こんなに差があるのだろうか。神が存在するのであれば、一言文句を言ってやりたい。



 そんなこんなで洗面所に着いた俺は顔と歯磨きを済ませ、髪型を整え始める。

 鏡の前に立った途端に、口から溜息が漏れた。俺の髪は黒く、若干くせ毛気味。だから、長くなると裾辺りの髪が外側に跳ねてしまう。

 この春休みは忙しすぎて、散髪どころではなかった。
 ちなみに俺の瞳は紺色。
 魔人は特徴として、髪の色や瞳の色がそれぞれ違う。何でも、体内にある魔力の影響だとか。

 髪型も何とかマシな程度に直せたし、部屋に戻ろう。
 制服を着なければならない。
 またあの段ボールの山と対面と思うとため息が出てくるが、まあ仕方ない。



「さて、これで準備は終了だな」
 学園の制服である、黒のブレザーと黒のズボンを着て、俺は玄関に立った。
 ブレザーの下に着ているのは、赤のネクタイを着けた白のカッターシャツ。
 鞄は自由らしいので、中学生の時から愛用していたシンプルな黒色の手提げ。
 準備は万全。さあ、初登校といきましょうか。

 玄関に向かうと兄貴が出てきた。
「今日は昼までなんだろ? なら昼飯は帰り道で何か買ってこい。俺は夜まで帰れないからな」
「了解、行ってきます」
 兄貴から差し出されたお金を受け取り、俺は言葉を返す。
「行ってらっしゃい」
 返ってきた無機質な兄貴の声を背中で聞きながら、俺は玄関の扉を開けた。
 少しワクワクする。
 昨日は寝てたから尾崎市の町並みを見ることができなかった。
 尾崎市はどんな所かを観察しながら行こうかな。あんまり時間は無いけどね。


 俺の兄貴の家が建っているのは、普通の住宅街だ。
 見渡す限り家。所々マンションがある。
 学園があるのは、住宅街から離れた商店街を抜けた先。自転車で行けば近く、歩けば少し遠いという微妙な距離だ。
 都心部があるのは、学園のもうちょい向こう。いつかは行ってみたい。

 住宅街を歩きながら、ふと思う。

 問題は山積みだなと。謎の少年の意味不明な言葉だけでなく、名門校桜魔魔術学園の授業についていけるのかと言う問題がある。
 偏差値はここよりはるか下の地元の学校にも落ちた俺だからね。

 それに友達だって出来るのだろうか。
 当然、知り合いなんているわけがない。
「もう少し真面目に受験勉強をしておくべきだった」
 軽く後悔の言葉を口にしながら歩くこと約10分。商店街が見えてきた。

 その手前の交差点で赤信号に捕まり、俺は足を止める。

 このルートは学生がよく使っているのか、様々な学生服を着た人達が俺と同じように信号が変わるのを待っている。
 通勤ラッシュならぬ、通学ラッシュと言った所か……
 取り敢えず、間に合いそうで良かったよ。

 やがて信号は赤から青に変わり、回りの人達は一斉に横断歩道を渡る。
「なあ」
 足を横断歩道へ踏み出そうとした時、背後から声を掛けられた。
「?」
 必然的に足を止め、俺は顔だけを後ろに向ける。

 そこにいたのは、爽やかな笑みを浮かべている少年。なかなか気安い雰囲気で満ちた少年だ。
「よぅ。見た所、同じ桜魔の一年生だろう?」
 声もどこか親しみがあり、活気で溢れている。ただ、少し馴れ馴れしいが。
「そう……だけど?」
 取り敢えず、こう返してみた。しっかし、何で俺が桜魔の一年生って分かったんだ?ってバッチか。制服の胸元には、学園の校章が刺繍されている他に、学年別のバッチを着けなくちゃいけない。
 男子生徒の制服に『Ⅰ』の形の小さなバッチが着けられている辺り、彼も一年生なのだろう。
 というか、着崩し過ぎ。

「お? やっぱりそうか!? 流石俺!」
「はは……良かったな」
 朝からテンション高いなぁ
 俺は朝に弱い訳じゃないが、とうていここまではなれない。
「オレは渡瀬・陽平。よろしく!」
「よ、よろしく、渡瀬。俺は坂本・翔護」
 男子生徒改め、渡瀬に圧倒されながら俺は言葉を返した。
「渡瀬じゃなくて、陽平でも良いぜ、翔護」

「名前で、しかも呼び捨て!?」
「同学年だから良いだろう。」
「まあ……そうだね」
 まあ、確かに名前で言い合っても特に問題がある訳ではない。

 陽平の容姿は制服を着崩していて、背は俺より少し高い。肌は焼けていて、体格は意外にスリム。
 瞳は緑色。茶色の髪はワックスで固めているのか、はたまた寝癖なのか分からない。ただ、その髪型を例えるなら
「パイナップル」
「やかましいわ」

 ああ、やっぱり気にしていたんだ。悪い……とは思わない。


 何はともあれ、一瞬で打ち解けた俺達は商店街の中を雑談しながら進む。
 どうやら陽平は学生寮に入ったらしく、今日からこの道を通って通学する予定とのこと。
 ちなみに俺は毎日家からの徒歩。
 ちょっと寮生活が羨ましかったり。
 と言うか一人暮らしを一度で良いからしてみたい
「でよ、翔護はどんな魔術が得意なんだ? 火属性か? はたまた水属性? 雷属性?」
「いや……その……」
 目を輝かせる陽平に、俺は思わずたじろいでしまう。

 困った。非常に困ったぞ。
 陽平が言った、火属性やら水属性やらの魔術の大半は、戦闘魔術に分類される物だ。
 はっきり言って俺は戦闘魔術が大の苦手だ。
 ここは素直に答えるべきなのだろうか?

 かなり抵抗があるぞ。ぶっちゃけ論外じゃん、俺。
 でも大丈夫。
 陽平ならきっと分かってくれる筈だ。
 彼は良い人に違いない。

 そう思った俺は口を開き、陽平にこう告げた。
「いや、俺が得意なのは、補助系なんだ」

「へ?」
 凍り付く陽平。俺の答えが予想外過ぎたのだろうか、目を丸くさせている。

 やっちまった。

 それからしばらく時が止まったような感覚に襲われたが、陽平がそれを破った。

「お、おぉ……補助系か。補助系って、強化魔術とか捕縛魔術だよな? 中々、マニアックな」

「すまん。俺が得意な補助系はそんな戦闘寄りの魔術じゃないんだ」
「……マジで?」
 再度、凍り付く空気。完全に俺は墓穴を掘ったようだ。

「はは」
 またこの妙な空気を破ったのも陽平だった。何つーか、本当にごめん。

「そんなんでよく入試に合格出来たな。よっぽど補助の魔術が得意なんじゃ」
「いや全然。ここに入学したのは、推薦状が届いたから」
「……マジで?」
 陽平と空気が凍り付くのも、これで三回目だ。うん、本当にごめん。

 あと無意識に口が滑っちまった。
 推薦入学のことはあまり他言したくなかったんだけどなぁ。

「す、すげぇな翔護……推薦状が届くなんて有り得ねーよ。何か物凄い実績とか残したのか?」
「それも全然。寧ろこっちが聞きたい」
「はは……」
 苦笑を浮かべる陽平。
 これ以上自虐ネタを並べるのも虚しいし、ここはちょっと話題を変えよう。

「話は変わるけど、学園ってどんな所?」
 これは聞いておかなくちゃな。パンフレットと写真でしか見たことが無いけど、かなりでかかったのは記憶にある。
 それに陽平は学園の入試を受けた筈だから、きっと学園がどういった所か知っているに違いない。
「何って……でかいよな?」
 陽平は少し悩んだ素振りを見せ、ポツリと小声で呟いた。
 しかも、疑問形。
 俺に聞かれても解らないぞ。

「まあ、実物を見りゃ一番早いんじゃねーのか?」
 苦笑混じりに言葉を紡ぐ陽平。まあ、確かにその通り。

「実物ね……。まさかあれか?」
 気付けば商店街はもう終わり。代わりに大学のような建物が真近に見える。
 推測に過ぎないが、学園は間違いなくあれだろう。
 にしてもかなりでかい。もう言葉で言い現せないぐらいに。
「ん。まあそうだな。バカみたいにでかいだろ? 確か学園に投資している、なんちゃら財閥がかなり金を出したんだっけ」
「へ、へぇ……」
 何やら学園が、醜い欲望の塊に見えてきたぞ……
 きっと多額の裏金が……
 いや、これはワイドショーの見すぎだな。

「んと、まずはクラス表を見て、それから各クラスに行くんだっけ?」
 顎に手を当て、陽平は思い出すように言う。

 ん。ふと思ったけど、クラスって中学みたいに番号なのかな?
 もしかして大和の友好国であるビザンツ帝国やベルガ王国が使用しているローマル語かな? 
 だとしたらE組が良いな。良い組とかけて。
 はは、春なのに今日は寒い。

「翔護は何組だと思う? オレ的にはE組がベストだな! 良~組みたいな?」
「……」
 やはりクラスはローマル語のようだ。ただ悲しいのは、俺と陽平の思考回路が同じだったということ。

「校門はあれな」
 少し進んだ所で、陽平は学園まで続く道の先を指差した。
 その先に見えるのは、シンプルな黒塗りの門。
 何人かの生徒達が吸い込まれるように、門を経由して敷地内へと入っていっている。

 さ、俺らも遅れずに行かなくちゃ。と言いたい所だけど、入った後はどこに行けば良いのさ?
 クラス表を見に行くのは分かる。ただ問題はそれがある場所だ。あの校舎の大きさだと、宝探しに行くような物だぞ!
 取り敢えず今は行かなくては。
 陽平がクラス表の場所を知っていることを祈ろう。

「さて……と」
 学園の校門を潜り、俺と陽平は学園の敷地内へと踏み出した。
 真っ先に飛び込んできたのは、校庭全体に広がる桜並木。それもかなりの本数。
 かなり綺麗な校庭だ。校庭だけでも結構な広さがあるぞ……

「教室はあっち。中央校舎な」
 陽平は、敷地のど真ん中に建っている建物を指差す。建物が二つぐらい引っ付いて見えるのは気のせいかな?
 疑問を抱く俺を余所に、陽平はまた別の所を指差した。今度は左側だ。
「んで、あそこが職員室がある西校舎。でも今は関係ねーな」
 そう言い、陽平は中央校舎へ向かって歩き出す。どうやら陽平はクラス表の場所を知っているみたいだ。
 本当、良かったよ。

 西校舎もそこそこ大きい。中央校舎の比にならないけど。

 中央校舎にある程度近付いた時、ある光景が俺の目に飛び込んできた。

「ん?」
 ガラス張りの扉に貼られた一枚の紙を見ようと、玄関に集まっている多くの生徒達。
 その数は……ええぃ、数え切れん!
 なんとなく一年生だということだけは分かった。

 ともかく、あの紙の正体はなんだろう?
 サイズ的にポスターみたいだけど……
「うわ……あの様子じゃ、全然見えねぇじゃんかよ……」
 陽平が頭を抱えている辺り、結構重要なものだということは分かる。
 もしかしてクラス表?
 完全にそうだよな。あんな数の新入生が普通、玄関に集まる訳無いだろうし。

「あっ、分かるとは思うけど、あれがクラス表な。でも流石に人が多過ぎだろ」
 溜息混じりに陽平は落胆した様子で言った。
 もしかして陽平は人混みが苦手なのかもな。ちなみに俺も人混みが苦手だ。地元の祭りもほとんど行かなかったからね。

「それに集まってんのは野郎ばかりじゃん。あれが皆女子なら喜んで突っ込むんだけどよ……」

 陽平よ、お前はそんなヤツだったんだな……
 なんとなく、そうかなと思っていたけど

「……」

「な、何んだよ、その目は!?」
 俺の生温い視線に耐え切れなくなったのか、陽平が叫んでいる。


 しかし、あの人だかりを何とかしたい。
 でも一向に減りそうにも無い。

「行こう、陽平」
「了解です、切り込み隊長!」

「おう、俺に続け……じゃないよな? どう見ても俺を盾にする気満々だよな?」
「……チッ」
「おいそこ! 舌打ちが聞こえたぞ!」
 とまあ、そんな感じのやり取りを終えた俺達はクラス表の元へと歩を進めた。

「うおっ、一緒のクラスじゃん!」

「あっ、E組だ」

「俺だけ違うクラスじゃねーかよ……」

「見えん! 見えんぞ!」

 歓喜する者や落胆する者、クラス表の元に集まる生徒達は多様な反応を見せている。
 中にはパイナップル頭で必死に背伸びをしている者もいる。

「あっ、今パイナップルが背伸びしてるとか思ったろ!?」
「え? ん、んなこと思ってないよ!?」

 な、何故バレた!?
 まさか実はエスパーだったとか?

「んー」
 それにしても、こうもクラス表が見えないと結構焦れったいものだ。
 少し悪い気がするが、ここは割り込ませていただこう。どうか恨まないでほしい。
「すみません……ちょっと……」
 そんな言葉を連呼しながら俺達は人混みを掻き分け、クラス表が見える場所まで移動する。
 男達にサンドイッチにされ、非常に窮屈してて苦しいが、今はそんなこと言ってられない。

 必死に目を凝らしてA組の欄から見ていった結果、俺の目はD組の所で止まった。

『坂本・翔護』

「えっと、俺は……D組か」
 D組の欄に俺の名前があるからそうなんだろうけど……
 何かぱっとしないな。中学の時は結構ドキドキしたもんだが。
「陽平は何組?」
「およっ!? 翔護もD組じゃん! やったな、おい! 流石俺!」
 俺の言葉を遮り、陽平が勢いよくガッツポーズ。どの辺りが流石になるのかはともかく、さっき陽平は何て言った?
 翔護も
 ……

「マジかよ!!」
 思わず声が出た。
 よし、クラスでぼっちと言う最悪の状況は回避出来た。


「翔護。もうちょい声のボリュームを下げようぜ?」
 どこか言いにくそうな陽平。
「へ?」
 ああ、そうか。
 俺は人混みのど真ん中。周りは人で一杯。
 そこでかつてない程の大声を発した。
 つまり……
 周りの『何こいつ?』と言いたげな視線が俺に突き刺さるのは避けられない訳で……
 案の定、そのような目で見られる。
 まあ、人混みの中で大声出せばそうなるよね。
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