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第2部

誠が一生懸命選んでくれた物なら何でも嬉しいよ。むしろ、どんな豪華なプレゼントを貰うより嬉しいかな……

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 俺達は12時過ぎてから家を出て近くのスーパーによった。
 
 お土産のショートケーキ等は母ちゃんが買っていたので、昼飯の菓子パンと、後コーラや烏龍茶のペットボトルを購入するためである。
 購入終わった後はエミリアの家に向かう。

 スーパーを出て車で20分くらいして目的地に到着。
 丘の上にあり、自宅より三倍以上は大きく、庭も広い。
 
 毎年、夜は駐車場でバーベキューしているから、今年もそうだろう。
 駐車場に母ちゃんは止め、俺達は車を降りる。
 駐車場にはクラ○ンとアル○ァードと言う高級車が止まっていた。

(普段はそう見えないけどエミリアもお嬢様なんだよな)
 と心の中で呟きながら、玄関のインターホンを鳴らす。
 インターホンから
「はーい」
 と女性の声、恐らくアイナおばさんのが聞こえてくる。

「こんにちは、八神です。」

「誠君、久しぶりね。とりあえず、上がって」
 ロックが外れ、俺はドアを開けて母ちゃんとともに靴を脱いで玄関に上がる。
すると、エミリアが二階から降りて来ていた。

「この度はあたしのために来て頂いてありがとうございます」
 エミリアはまずそう言って頭を下げて来た。
 その態度何か怖いんですけど。普段と違い過ぎて……
 エミリアが頭をあげると
「良いのよ。むしろ、毎年呼んでくれてありがとう。」
 と母ちゃんは笑いながら言っている。
 そして、何故か肘で俺をついてくる。
「お誕生日おめでとう。」
 と言うとエミリアはニッコリと微笑んで
「ありがとう」
 と答えた。

 忘れないうちに誕生日プレゼント渡しておくか。
 リュックから2日前に買ったプレゼントの箱を取り出して渡す。
 するとエミリアは
「ありがとう」
 と礼を言ってきた。
「ごめん、結局ぬいぐるみとかしか思いつかなかったけど……」
 途中でエミリアから遮られる。
「ううん。誠が一生懸命選んでくれた物なら何でも嬉しいよ。」
 エミリアの普段真っ白な頬は若干赤くなっている。
「うん、まあ……そこまで喜んでくれると嬉しいかな。」

 そして訪れる沈黙。この状況で気の効いた事を言える程、俺は女性に慣れていない。
 しかし嫌な雰囲気ではなく、ケーキみたいに甘い空気だ。

 母ちゃんを見ると、苦笑いを浮かべている。

 そうこうしているうちにリビングからアイナさんが出てきた。
「こんにちは、誠君とついでに勝枝。」

「私はついでかい……」
 母ちゃんの突っ込みを聞き流しながら、俺も挨拶する。

「本日はお呼び頂きありがとうございます。アイナおばさん……」
  真剣な表情でアイナおばさんに途中で遮られた。
「誠君、おばさんと言う呼ばれ方は嫌だな。」

 まあ、確かにアイナおばさんは高校生の子供を持っているとは思えない程若く見える。まだ、30台前半で通じそうなぐらいに……
 だからこそ、おばさんと言われるのは嫌なのだろう。

「解りました、アイナお姉さん」
 俺の答えを聞いたアイナおばさんは苦笑いを浮かべながら呟く。
「嬉しいんだけど、そうじゃなくてね……」
 突如エミリアが顔を真っ赤にしながら、アイナおばさんの言葉を遮る。
「もう良いでしょう、お母さん」
 そして、俺の右手を繋いで歩きだした。
 俺はエミリアに連れられ、エミリアの部屋に入った。

 部屋に入るとリュックを壁際の床に置き、買ってきたパンと500ミリリットルのコーラと烏龍茶2つ、後紙コップ一袋を取り出している間にエミリアは勉強机に俺が渡したプレゼント箱を置いていた。

「とりあえず、差し入れ。」

 勉強机とは別に置かれている2~3人用のテーブルにそれらを置いた。

「誠がコーラ以外買ってくるとは珍しいね。」
 とエミリアが青色の瞳で俺を見つめながら言葉を紡ぐ。

「俺は気がきく男だからね」
 と冗談で返しながらテーブルのそばの床に座った。
 まあ、コーラだけ買ってくるとエミリアが不満そうにするのを流石に学習した。

「気が利く男なら昨日ぐらいに昼に来ると言って欲しかった所だけど」
 とエミリアも座りながら呟く。
 それは母ちゃんが朝いきなり言い出しただけであり、本来夕方まで自宅で宿題するつもりだった。
まあ、それは言うつもりはないけどね。
「ごめん。」
とりあえず、謝っておく。


「それで昼ご飯は?」
 俺はメロンパンの袋を開けて口をつけながら、尋ねる。

「もう食べたよ。でも昼ご飯ここで食べるなら言ってくれれば作ったのに……」
 エミリアも対面に座りながら、そう呟く。

「それは流石に悪いだろう……」

 俺の言葉にエミリアは首を横に振る。
「ううん。むしろ、あたしを頼ってくれた方が嬉しいかな」

「ありがとう……なのかな」
 と俺が半ば意味不明な言葉を言うと、エミリアは苦笑いを浮かべて
「そこは素直にお礼を言おうよ。」
 と返してくれた。

 昼食を食べ終わった後、宿題をやり始める。
 俺が数学を担当し、エミリアは英語を担当する。

 そして、終わったら交換して写せば英数は終わる。まあ、少し変える必要はあるけどね、特に英語は。
 後は時間が余れば現代文や古文等も済ませる予定だ。


 2時間ぐらいでお互い済んだので、お互いやった宿題を交換して写す。
「そう言えば誠があたしんち来たのっていつ以来だっけ?」

「確か、今年の1月3日じゃないかな。夕飯ご馳走になったし」
 エミリアがした英語の宿題を写しながら、答える。
 俺んちは31日から1日は親父の実家に泊まり、2日は母ちゃんの実家に行く。
 そのため、毎年3日エミリアと神社へ参拝にいって、その後はエミリアとともにおれんちで昼食をとって過ごし、夕方からはエミリアんちに行って夕飯を御馳走してもらい、そのまま泊めてもらう事が多かった。
今年は受験だったけど、まあ冬休みはお互い勉強ばかりだったし、3日だけは金髪の幼馴染とだらだらと過ごしていた。
 まあ、エミリアは俺んちでは皿洗い等を手伝いをして、エミリアんちでは逆に俺がしていたりしていたけど、結構だらだら過ごしていた覚えはある。

「そんな物よね。逆にあたしが誠んちに行く事は多いんだけど」
 登校する日は基本的に来ているし、休みの日もバイトがなければ結構来ているからね。そりゃ、多いだろう。

「まあ、ここからだと市内に行き来する場合俺んち通り道にあるからね。仕方ないんじゃない……でも子供の時は良く行ってたな。」
 俺は冗談で子供の頃の事を付け加えるとエミリアは微妙な表情になった。嬉しくもあるし、悲しくもあるような……

「あの時は……ありがとう」
 エミリアが礼を言うと、微妙な雰囲気に包まれた。
 しまった。この話題ふるんじゃなかったと若干後悔しながら宿題を進める。
 結局、宿題写し終わるまで、妙な沈黙は続いた。
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