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第1部

幼馴染は具合が悪いようです

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 日曜日もバイトで終わり、今日からまた金曜まで学校かとため息をつきたくなる月曜日。

 本日は遠足だから授業はないのは嬉しいけど、歩き回らないといけないのはだるい。
 今日は気分転換に食パンにチーズをつけてやいて納豆つけてみたら以外と美味しかった。
 何事も挑戦が大切だなと改めて悟ったよ、今日の朝から。

「エミリア、遅いな。」
 制服に着替終わって七時十五分。
 いつもは七時過ぎには来るのに。
「体調でも崩したかな。」
 俺が呟いた瞬間、インターホンがなる。
 玄関のドアを開けると金髪の幼馴染が
「おはよ、誠。」
 いつものようにニコニコと微笑みながら立っていた。

 ただ、いつもよりほんの少しぎこちないような気がする。
 ああ、これは体調悪いなと何となく感じた。根拠は勘と経験。
 玄関に上がったエミリアのおでこに俺は手を当てる。
 思った通り少し熱い。
「少し熱い。調子悪いだろう?」

「誠の気のせいだよ」
 エミリアは最初苦笑いを浮かべながら否定するが、俺が
「調子悪いんだろう。顔色いつもより悪いぞ」
 と食い下がると
「微熱ならあるけど」
 としぶしぶ認め、
「微熱だから全然辛くないし平気だよ」
 と言う彼女にさらに俺が
「体温図るよ」
 としつこく何度も言うとしぶしぶ体温を図るのを認めた。

 ソファーに座ったエミリアに体温計を渡す。
 それを脇にいれながら金髪の幼馴染は俺に心配をかけたくないのか
「心配性だね、誠は」
 と軽く言う。しかし、いつもより言葉に元気がない。
 結構調子悪いのではと思えてくる。

 体温計の電子音がなり、体温計を確認してみると三十七度三分。
「ほら、言った通り微熱でしょう。あたしは大丈夫だよ、これくらい」
 とエミリアは微笑を浮かべて言う。
 エミリアの言う通り世間では微熱だが、しかしこの幼馴染の普段の体温が三十五度五分前後ぐらい。なら、この熱でもかなりきついはずだ。
「微熱でも辛いだろ?というか、エミリアにとって微熱じゃないよな?」

「誠が心配してるほどあたしは別に辛くな……ごほっ!」

「ほら咳も出てきた、今日学校休まないと。アイナおばさんは仕事?家に誰かいる?」

「いない……けど本当に大丈夫だよ」
 幼馴染の言葉を無視して俺はポケットからスマホを取り出しアイナおばさん……エミリアのお母さんに電話をかける。
「もしもし、誠君久しぶりね。どうしたの?」

「お久しぶりです、アイナおばさん。実はエミリアが僕の家に来たんですけど、少し熱が出て体調悪そうだったので、学校休ませた方が良いと思うのですが、良いですか?」

「あらあら。でも私仕事で昼過ぎまで抜けられないのよね。家には誰にもいないし……どうしたものかしら?」
 まあ、急に言われても困るよね。
 俺はそう思いながら続ける。
「僕の家に来ているのでエミリアは僕の家で休んでもらおうかなと。僕も看病します……あ、僕の家で僕と二人っきりと言うのは心配ですよね」

「そこは心配してないわ、誠君の事は信用してるから。それにエミリアがそんな状態じゃなかったらどんどん手を出して良いからね」
 手を出して良いと言う事は即ちそう言う事だよね?
 俺達はただの仲の良い幼馴染なだけなんだけどな。
 まあ、アイナおばさんも冗談で言っているだけなんだろうけど
「じゃあ、私が迎えに来るまでエミリアの事任せて良いかしら?」

「はい、お任せください。」

「ありがとう。エミリアが学校を休む連絡と勝江にも連絡もしておくから。何かあったら遠慮なく連絡してね」
 通話が切れると金髪の幼馴染が不満そうに
「誠が休まなくても良かったのに」
 と言う。

 しかし、逆の立場ならこの幼馴染は俺と同じ事をするだろう。
「でもさ、もし逆の立場ならエミリアは休んで俺の看病してくれただろう?」
 俺がそう問うとエミリアは
「それは……多分そうなるけど」
 しぶしぶそれを認めた。
「じゃあ、それを俺がしても何の問題もないよね。」
 俺が微笑を浮かべながら言うと
「ありがとう」
 と幼馴染は観念したように呟いて頷いた。






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