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第1部
うちの母ちゃん少し理不尽じゃない?
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エミリア視点
翌日の四月十三日(土曜)の朝十一時、あたしはシュークリームを三つ購入し、八神宅のインターホンを鳴らしていた。
十秒ぐらいすると、緩くウェーブ掛かった長い髪をした女性が出てきた。
「はいはい。どなた様。あら、三日ぶりかしら。エミリアちゃん」
「お久しぶりです、お義母様。誠いますか?」
「誠ならまだ寝てるわよ。昨日夜中までゲームしてたみたい。もしかして何か約束してた?」
あたしはおば様の言葉に頷く。
「昼から一緒に遊ぼうと約束を……」
「約束より早く申し訳ないです。誠と少しでも一緒にいたくて……お忙しいようなら出直しますが。」
あたしがそう続けると、おば様は笑いながら
「誠は寝てるだけだから大丈夫。さあ、上がって上がって。」
と答えてくれる。
「失礼します。あ、これはつまらない物ですが」
あたしは買ってきたシュークリームを渡すと
「いつもありがとうねえ。本当、気使わなくて良いのよ。エミリアちゃんは私にとって娘みたいなものだし」
と返してくれた。
彼の家族等は気づいてくれているが、肝心の本人が全く気付いてくれないのだ。
ため息をつきたくのを堪えてあたしは一歩を踏み出した。
玄関を上がるとおば様が
「昼御飯どうするの?」と
尋ねてくるので
「近くのコンビニとかで買って来ようかなと考えてますけど」
と答えた。
連絡もなく早く来ているため、昼御飯は買ってきていない。どうなるか解らなかったから。
「それなら一緒に作るから食べていきなさいな。二人分も三人分も対して変わらないから。チャーハンで良い?」
「ありがとうございます。でも、お世話になってばかりだと悪いですからあたしが作りますよ。」
あたしがニッコリと笑いながら言うと
「そう、何か悪いわね。」
と返してくるので
「いえいえ。お邪魔するんですからこれぐらいは」
と笑みを崩さずに返す。
料理上手とアピールできる機会を得られるのだからあたしにとってむしろ有難い。男を落とすならまず胃をつかむ事と昔から言うのだから……
「全然気にしなくても良いんだけど……じゃあお願いしても良いかしら?」
「はい、お任せください。」
それにおば様も印象も良くなるだろうし、一石二鳥だ。
ただ、たまに誠に作ってあげているんだけど、恋愛に全く寄与している気配が今の所ないのは気にしない事にする。そのうち、効果が出るだろう……むしろお願いですから少しでも良いので出てください。
エミリア視点終了
☆☆☆☆
「誠、いつまで寝てるの。いい加減起きなさい!」
大きな声と共に布団がめくられる。
「今日学校休みじゃん……もう少し寝かせて」
俺は布団を取り返そうとするが母ちゃんはそれを許さない。腰に両手を当てて仁王立ちを俺を見下ろしている。
勘弁してくれ。
朝の四時過ぎまで、ゲームしていたから眠いんだよ。
「駄~目。ほらさっさと起きる。エミリアちゃんも来ているんだから。」
俺は目を擦りながら何とか身体を起こして母ちゃんの方を見る。確かに母ちゃんの後ろにもう一人確かにいる。
ノースリーブの、ブラウスに裾が緩く広がったスカートと言う服装の幼馴染エミリアが。
「おはよ、誠。駄目だよ、休日でも朝からきちんと起きないと……」
エミリアが笑みを浮かべて言ってくるが
「ん。なんでお前がいるの?」
と思っている事を俺は何も考えず口に出す。
「駄目だよ、誠。まず、朝の挨拶をしなきゃ。親しき仲にも礼儀ありだよ」
エミリアはジト目で見てくる。
「おはよ、エミリア。」
俺が挨拶すると金髪の幼馴染みはニッコリと笑う。
「うん、おはよ。誠」
「で、なんでお前がうちにいるの?約束は昼からだよね」
俺は目を擦りながら尋ねると
「誠と少しでも長くいたかったから……」
エミリアは笑みを崩さずぶりっ子が言いそうな口調で続けてくる。
「だから来ちゃった。」
うん、恋人ではなくただの幼馴染なのに一緒にいたかったからと約束の時間より大幅に早く来るって常識的におかしくない?
流石にこれは口に出せない。出したらめんどくさくなりそうだし……主に母ちゃんのせいで
俺が沈黙していると、幼馴染みが困惑したような表情となる。
「もしかして、何か予定でも入っていた?」
エミリアは人差し指を口に当て、少し首を傾げ、目を潤ませながら
「それならごめんね。あたし帰るから。」
と続けてくる。
おい、お前はこの程度の事で困惑しないし、第一涙流さないだろうが。
冗談なんだろうけど止めて欲しい。
「馬鹿息子、エミリアちゃんを泣かせるとはどう言う了見だ?」
俺の母ちゃんが本気で信じちゃうだろう。母ちゃん、エミリアが虐められて気が弱かった頃から知っているし、何より自分の娘みたいに可愛いがっているんだから……もしかしたら息子の俺よりもね……
「誠、あんた昼からエミリアちゃんと出掛けてきなさい。」
母ちゃんがいきなり訳の解らない事を言ってくるので
「はあ!?来月C〇Dの新作出るから、そんなにお金に余裕ないんだけど」
と反論すると
「どうせゲームでしょう。買わなくても問題ないじゃない?」
問題大有りだ。スタートダッシュに遅れたら大きな差になるんだぞ
俺が反論しようとすると幼馴染みが母ちゃんの袖を引く。
「お義母様。あたしは大丈夫です。無理に出かけなくても」
エミリアは白い頬を赤くしながら
「誠と一緒にいるだけであたしは充分嬉しいですし」
と続けた。
それを聞いた母ちゃんは何故かエミリアに抱きつく。
「ほんとに馬鹿息子はもったいないわ。本当にこれで良いの?」
母親からまさかのこれ扱いされるとは思ってなかった。どうせ、俺にエミリアはもったいないですよだ……
うん、でも俺で良いとはどう言う意味?
ああ、幼馴染みで良いのと言う意味か
「はい。むしろ、あたしにとってもったいないぐらいです。」
エミリアの答えに少し俺は安堵する。
流石にエミリアから幼馴染みで親しくするのが嫌と言われるのは辛い物があるからね。
エミリアが俺の事を自分にはもったいない『幼馴染み』と思っていてくれた事は素直に嬉しかった。
翌日の四月十三日(土曜)の朝十一時、あたしはシュークリームを三つ購入し、八神宅のインターホンを鳴らしていた。
十秒ぐらいすると、緩くウェーブ掛かった長い髪をした女性が出てきた。
「はいはい。どなた様。あら、三日ぶりかしら。エミリアちゃん」
「お久しぶりです、お義母様。誠いますか?」
「誠ならまだ寝てるわよ。昨日夜中までゲームしてたみたい。もしかして何か約束してた?」
あたしはおば様の言葉に頷く。
「昼から一緒に遊ぼうと約束を……」
「約束より早く申し訳ないです。誠と少しでも一緒にいたくて……お忙しいようなら出直しますが。」
あたしがそう続けると、おば様は笑いながら
「誠は寝てるだけだから大丈夫。さあ、上がって上がって。」
と答えてくれる。
「失礼します。あ、これはつまらない物ですが」
あたしは買ってきたシュークリームを渡すと
「いつもありがとうねえ。本当、気使わなくて良いのよ。エミリアちゃんは私にとって娘みたいなものだし」
と返してくれた。
彼の家族等は気づいてくれているが、肝心の本人が全く気付いてくれないのだ。
ため息をつきたくのを堪えてあたしは一歩を踏み出した。
玄関を上がるとおば様が
「昼御飯どうするの?」と
尋ねてくるので
「近くのコンビニとかで買って来ようかなと考えてますけど」
と答えた。
連絡もなく早く来ているため、昼御飯は買ってきていない。どうなるか解らなかったから。
「それなら一緒に作るから食べていきなさいな。二人分も三人分も対して変わらないから。チャーハンで良い?」
「ありがとうございます。でも、お世話になってばかりだと悪いですからあたしが作りますよ。」
あたしがニッコリと笑いながら言うと
「そう、何か悪いわね。」
と返してくるので
「いえいえ。お邪魔するんですからこれぐらいは」
と笑みを崩さずに返す。
料理上手とアピールできる機会を得られるのだからあたしにとってむしろ有難い。男を落とすならまず胃をつかむ事と昔から言うのだから……
「全然気にしなくても良いんだけど……じゃあお願いしても良いかしら?」
「はい、お任せください。」
それにおば様も印象も良くなるだろうし、一石二鳥だ。
ただ、たまに誠に作ってあげているんだけど、恋愛に全く寄与している気配が今の所ないのは気にしない事にする。そのうち、効果が出るだろう……むしろお願いですから少しでも良いので出てください。
エミリア視点終了
☆☆☆☆
「誠、いつまで寝てるの。いい加減起きなさい!」
大きな声と共に布団がめくられる。
「今日学校休みじゃん……もう少し寝かせて」
俺は布団を取り返そうとするが母ちゃんはそれを許さない。腰に両手を当てて仁王立ちを俺を見下ろしている。
勘弁してくれ。
朝の四時過ぎまで、ゲームしていたから眠いんだよ。
「駄~目。ほらさっさと起きる。エミリアちゃんも来ているんだから。」
俺は目を擦りながら何とか身体を起こして母ちゃんの方を見る。確かに母ちゃんの後ろにもう一人確かにいる。
ノースリーブの、ブラウスに裾が緩く広がったスカートと言う服装の幼馴染エミリアが。
「おはよ、誠。駄目だよ、休日でも朝からきちんと起きないと……」
エミリアが笑みを浮かべて言ってくるが
「ん。なんでお前がいるの?」
と思っている事を俺は何も考えず口に出す。
「駄目だよ、誠。まず、朝の挨拶をしなきゃ。親しき仲にも礼儀ありだよ」
エミリアはジト目で見てくる。
「おはよ、エミリア。」
俺が挨拶すると金髪の幼馴染みはニッコリと笑う。
「うん、おはよ。誠」
「で、なんでお前がうちにいるの?約束は昼からだよね」
俺は目を擦りながら尋ねると
「誠と少しでも長くいたかったから……」
エミリアは笑みを崩さずぶりっ子が言いそうな口調で続けてくる。
「だから来ちゃった。」
うん、恋人ではなくただの幼馴染なのに一緒にいたかったからと約束の時間より大幅に早く来るって常識的におかしくない?
流石にこれは口に出せない。出したらめんどくさくなりそうだし……主に母ちゃんのせいで
俺が沈黙していると、幼馴染みが困惑したような表情となる。
「もしかして、何か予定でも入っていた?」
エミリアは人差し指を口に当て、少し首を傾げ、目を潤ませながら
「それならごめんね。あたし帰るから。」
と続けてくる。
おい、お前はこの程度の事で困惑しないし、第一涙流さないだろうが。
冗談なんだろうけど止めて欲しい。
「馬鹿息子、エミリアちゃんを泣かせるとはどう言う了見だ?」
俺の母ちゃんが本気で信じちゃうだろう。母ちゃん、エミリアが虐められて気が弱かった頃から知っているし、何より自分の娘みたいに可愛いがっているんだから……もしかしたら息子の俺よりもね……
「誠、あんた昼からエミリアちゃんと出掛けてきなさい。」
母ちゃんがいきなり訳の解らない事を言ってくるので
「はあ!?来月C〇Dの新作出るから、そんなにお金に余裕ないんだけど」
と反論すると
「どうせゲームでしょう。買わなくても問題ないじゃない?」
問題大有りだ。スタートダッシュに遅れたら大きな差になるんだぞ
俺が反論しようとすると幼馴染みが母ちゃんの袖を引く。
「お義母様。あたしは大丈夫です。無理に出かけなくても」
エミリアは白い頬を赤くしながら
「誠と一緒にいるだけであたしは充分嬉しいですし」
と続けた。
それを聞いた母ちゃんは何故かエミリアに抱きつく。
「ほんとに馬鹿息子はもったいないわ。本当にこれで良いの?」
母親からまさかのこれ扱いされるとは思ってなかった。どうせ、俺にエミリアはもったいないですよだ……
うん、でも俺で良いとはどう言う意味?
ああ、幼馴染みで良いのと言う意味か
「はい。むしろ、あたしにとってもったいないぐらいです。」
エミリアの答えに少し俺は安堵する。
流石にエミリアから幼馴染みで親しくするのが嫌と言われるのは辛い物があるからね。
エミリアが俺の事を自分にはもったいない『幼馴染み』と思っていてくれた事は素直に嬉しかった。
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