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第1部
面倒な事になるかなと思ったけど案外何もなかったよ
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山口・陽平視点
友人の誠やエミリア、そして武田薫さんの三人は一緒に教室を出ていった。
三人が出ていくと黙りだった教室も騒がしくなった。
無論、このクラスの話題の大半は先程出ていった三人だが。
「普通に香月さんと八神がくっついて終わりと思っていたけど、ここに来て思わぬ伏兵か。何か面白くなってきたよな。」
隣にいた友人の山崎哲也が笑いながら言ってくる。
「まあ、仕方ないさ。エミリアはともかく誠は恋愛対象として見ていないから。仲の良い兄妹みたいな感じが一番近い感じだから、誠に手を出す奴が出てくれば、まあこうなるさ」
俺が苦笑を浮かべながら答えてると
「しかし、あいつらほんと釣り合わないよな。八神も悪い奴じゃないんだけど、香月さんとは付き合いが長いだけじゃん。そもそも陽平お前だって」
もう一人の友人である小田辰昭が話に入ってくる。
「誠、付き合って見ると良い奴だぞ。それに今行っても振られるだけだから。まあ、振られるだけなら良いけど……」
そう、振られるだけなら良い。ただ距離を取られて相談されなくなったり、一緒に行動とれなくなったりしたら目も当てられない。
だけど、今はもしかしたらチャンスなのかも知れない。
今までは諦めるしかなかった。しかし、誠に告白する女の子が現れ、エミリアに負けないぐらいの美人だ。美女と言う点では十分に対抗できる。
もし、武田さんと誠がくっつけば、エミリアと仲の良い俺が彼女にくっつける可能性も高い。
誠に振られた彼女を上手く慰めて取り入る事が出来れば俺だって……
そこまで考えて俺は自己嫌悪を覚える。
そんなのクズが考える事だ。
しかし、そう考えても俺の頭の片隅からそれが離れてくれない。
「他人の恋路も良いけどさっさと昼飯食おうぜ。ちんたらしていると昼飯食わずに部活に行くはめになっちまう。」
黙った俺を気にしてくれたのか哲也が手を叩いて話題を変えてくれる。
今日からサッカー部に体験入部し、来週からは正式入部だ。
部活やれば気も紛れてさっき考えた事も離れるだろう。
俺はそう甘く考えてしまったのだ……
山口・陽平視点終了
☆☆☆☆
俺達は学校の近くのファミレスで入り、それぞれ注文する。
俺は何となく豚カツ定食。この状況に打ち勝てれば良いなと思って。
二人のせいで何か腹が痛くなるかなと思う状況になるのかなと思っていたけど、幼馴染みがニコニコと話を色々振っているので、想像と違ってほのぼのとした雰囲気である。
エミリアは料理が来ても食べながら話をふってくれていた。
「武田さん、どこ中学出身?」
金髪の幼馴染みがサンドイッチを飲み込んだ後、ニコニコ笑みを浮かべて尋ねている。
相変わらず、フレンドリーだね。俺も見習いたいぐらいだ。
そして女子って何で軽食なんだろう?……お腹すかないのかな?……まあ、口には出さないけど。
武田さんがサラダを食べ終わった後に答える。
「東京の桜里学園です」
うん、桜里学園って確か……
「うわー。有名女子学園じゃん。エスカレーターで高校に上がろうと思わなかったの?偏差値あそこ高かったよね」
金髪の幼馴染みが驚いたように言っているが、もう少し遠慮と言う物も覚えようよ。俺も驚きだ。
まあ、俺も疑問に思うけど知り合ったばかりの人にそんな深い事情がありそうな事を聞くか、普通。
「色々事情がありまして……」
武田さんがコーヒーを飲みながら答えにくそうに答えている。
「あ、ごめんね。答えにくい事だったかな。」
両手を合わせてごめんと軽く幼馴染みが謝り、話題を変える。
「でも、県外から来たのならこの近辺の事解らないよね?今度この街の紹介も兼ねて一緒に回ろうよ?」
少し間をおいて武田さんが微笑んで答えた。
「是非お願いします。」
その後も穏やかに話が進み、一時間ぐらい喋ってお開きとなった。
俺は自宅に帰ると、ゲームのフレンドである空のしゃもじさんにラインを送る。
「久しぶりにBF(FPS)しませんか?」
☆☆☆☆
エミリア視点
あたしは自分の部屋に戻り、ベットに座り込んだ。
「あたしの名前を知っていながら初めましてと言った所から恐らく誠の周りを調べているね。」
さて、どうした物か?
武田財閥のご令嬢となれば物理的に排除するのは無理に近い。虐めを誘導すると言う手もありもするが、下手打ったら自分や家族は破滅である以上それは現実的ではない。
「一時様子見するしかないか……な。残念だけど」
まあ、外堀はほぼ埋めている以上余裕がある。リスクが大きい手を取る状況ではない。
彼の自宅に積極的に通い誠やおば様にどんどんアピールしていこう。後は相手の出方を見て柔軟に対応していくしかない……
☆☆☆☆
武田・薫視点
寝室に入ると、私は机の上に置いてある木箱を開ける。
そこに入っている壊れたガラケーを見つめる。
「やっとここまで来たわ。でも……」
彼と出会った時の物を見ながら私はさらに呟く。
「調査報告が上がってきた時から思っていたけど、あの幼馴染が厄介ね。」
あの女一見フレンドリーだが、実質自分と身近の人間以外はどうでも良いと言うタイプだ。後は利用価値のあるなしでランク付けしている。しかし、それを上手く隠し皆と仲良くと言う姿勢だから一部の女子から嫌われていても、基本的に人気者である。
しかし、あれはよほど人を見る目がないと気づけない。
どうしたものかと考えていると、私が普段使っているスマホではない方のスマホからラインが入る。
「久しぶりにBFしませんか?」と。
私は二十二時からならOKですよと返事をした。
友人の誠やエミリア、そして武田薫さんの三人は一緒に教室を出ていった。
三人が出ていくと黙りだった教室も騒がしくなった。
無論、このクラスの話題の大半は先程出ていった三人だが。
「普通に香月さんと八神がくっついて終わりと思っていたけど、ここに来て思わぬ伏兵か。何か面白くなってきたよな。」
隣にいた友人の山崎哲也が笑いながら言ってくる。
「まあ、仕方ないさ。エミリアはともかく誠は恋愛対象として見ていないから。仲の良い兄妹みたいな感じが一番近い感じだから、誠に手を出す奴が出てくれば、まあこうなるさ」
俺が苦笑を浮かべながら答えてると
「しかし、あいつらほんと釣り合わないよな。八神も悪い奴じゃないんだけど、香月さんとは付き合いが長いだけじゃん。そもそも陽平お前だって」
もう一人の友人である小田辰昭が話に入ってくる。
「誠、付き合って見ると良い奴だぞ。それに今行っても振られるだけだから。まあ、振られるだけなら良いけど……」
そう、振られるだけなら良い。ただ距離を取られて相談されなくなったり、一緒に行動とれなくなったりしたら目も当てられない。
だけど、今はもしかしたらチャンスなのかも知れない。
今までは諦めるしかなかった。しかし、誠に告白する女の子が現れ、エミリアに負けないぐらいの美人だ。美女と言う点では十分に対抗できる。
もし、武田さんと誠がくっつけば、エミリアと仲の良い俺が彼女にくっつける可能性も高い。
誠に振られた彼女を上手く慰めて取り入る事が出来れば俺だって……
そこまで考えて俺は自己嫌悪を覚える。
そんなのクズが考える事だ。
しかし、そう考えても俺の頭の片隅からそれが離れてくれない。
「他人の恋路も良いけどさっさと昼飯食おうぜ。ちんたらしていると昼飯食わずに部活に行くはめになっちまう。」
黙った俺を気にしてくれたのか哲也が手を叩いて話題を変えてくれる。
今日からサッカー部に体験入部し、来週からは正式入部だ。
部活やれば気も紛れてさっき考えた事も離れるだろう。
俺はそう甘く考えてしまったのだ……
山口・陽平視点終了
☆☆☆☆
俺達は学校の近くのファミレスで入り、それぞれ注文する。
俺は何となく豚カツ定食。この状況に打ち勝てれば良いなと思って。
二人のせいで何か腹が痛くなるかなと思う状況になるのかなと思っていたけど、幼馴染みがニコニコと話を色々振っているので、想像と違ってほのぼのとした雰囲気である。
エミリアは料理が来ても食べながら話をふってくれていた。
「武田さん、どこ中学出身?」
金髪の幼馴染みがサンドイッチを飲み込んだ後、ニコニコ笑みを浮かべて尋ねている。
相変わらず、フレンドリーだね。俺も見習いたいぐらいだ。
そして女子って何で軽食なんだろう?……お腹すかないのかな?……まあ、口には出さないけど。
武田さんがサラダを食べ終わった後に答える。
「東京の桜里学園です」
うん、桜里学園って確か……
「うわー。有名女子学園じゃん。エスカレーターで高校に上がろうと思わなかったの?偏差値あそこ高かったよね」
金髪の幼馴染みが驚いたように言っているが、もう少し遠慮と言う物も覚えようよ。俺も驚きだ。
まあ、俺も疑問に思うけど知り合ったばかりの人にそんな深い事情がありそうな事を聞くか、普通。
「色々事情がありまして……」
武田さんがコーヒーを飲みながら答えにくそうに答えている。
「あ、ごめんね。答えにくい事だったかな。」
両手を合わせてごめんと軽く幼馴染みが謝り、話題を変える。
「でも、県外から来たのならこの近辺の事解らないよね?今度この街の紹介も兼ねて一緒に回ろうよ?」
少し間をおいて武田さんが微笑んで答えた。
「是非お願いします。」
その後も穏やかに話が進み、一時間ぐらい喋ってお開きとなった。
俺は自宅に帰ると、ゲームのフレンドである空のしゃもじさんにラインを送る。
「久しぶりにBF(FPS)しませんか?」
☆☆☆☆
エミリア視点
あたしは自分の部屋に戻り、ベットに座り込んだ。
「あたしの名前を知っていながら初めましてと言った所から恐らく誠の周りを調べているね。」
さて、どうした物か?
武田財閥のご令嬢となれば物理的に排除するのは無理に近い。虐めを誘導すると言う手もありもするが、下手打ったら自分や家族は破滅である以上それは現実的ではない。
「一時様子見するしかないか……な。残念だけど」
まあ、外堀はほぼ埋めている以上余裕がある。リスクが大きい手を取る状況ではない。
彼の自宅に積極的に通い誠やおば様にどんどんアピールしていこう。後は相手の出方を見て柔軟に対応していくしかない……
☆☆☆☆
武田・薫視点
寝室に入ると、私は机の上に置いてある木箱を開ける。
そこに入っている壊れたガラケーを見つめる。
「やっとここまで来たわ。でも……」
彼と出会った時の物を見ながら私はさらに呟く。
「調査報告が上がってきた時から思っていたけど、あの幼馴染が厄介ね。」
あの女一見フレンドリーだが、実質自分と身近の人間以外はどうでも良いと言うタイプだ。後は利用価値のあるなしでランク付けしている。しかし、それを上手く隠し皆と仲良くと言う姿勢だから一部の女子から嫌われていても、基本的に人気者である。
しかし、あれはよほど人を見る目がないと気づけない。
どうしたものかと考えていると、私が普段使っているスマホではない方のスマホからラインが入る。
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