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第1部

エミリア

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 エミリア視点

 陽平とマ○クを訪れていた。
 あたしの前に座る陽平はビックバーガーを口に入れながら呟く。
「確認しなくて良いのかい?」

「まあ、相手は解ってるから。」
 予想が外れていたら嬉しいが、九十九%予測は当たっているだろう。
 もし、予想通りなら下手に手出し出来ない。他人を誘導してやるにしても、そいつが口を割ればあたしも家族も破滅だから。

 ほんとに腹立つ。今更なんなのよ、あの泥棒猫。
「意外とイタズラだったりしそうだけど」
 陽平がポテトを口に入れながら、冗談のように言うがそれなら本気で報復する。本気の告白でも例の女以外なら潰す。
 誠を傷つける者は誰であろうが許さないし、あたし以外の女が彼の隣に立つのも許さない。
「とにかく、こんな事やらかした奴はいずれ潰さないとね。」

「ほんと怖……穏便に済ますと言う気はないわけ?」
 穏便?誠に関する事であたしは手を緩めるつもりはない。

「明日、一応誠に誰が手を出したかを確認しておいて。あたしの想像と違う可能性もあるし」

「聞いちゃいねぇ……と言うか自分で確認すれば良いじゃん。」
「それは嫌。誠に気にしてると思われるかも知れないじゃない」

「何であれしてもらった方が良いと思うけど……幼馴染みとしか見られてない訳だし」
 苦笑しながら陽平が言ってくるが、『今』幼馴染みとしか見られていないのは十分わかっている。
 しかし、幼馴染み以上を求めて誠との関係が壊れてしまったらと考えると中々怖くて前に踏み出せない。外堀を埋めて誠から告らせたいと言うのは彼を失うのが怖いからに過ぎない。
 そして、良い雰囲気になってあたしが踏み出そうとすると何故か邪魔が入る。
 まるで神様が許さないと言う風に。
 こうして、あたしと誠の関係は仲の良い幼馴染の域にとどまっている。関係を次のステップに進めたいとあたしは思っているのに……

「あたしは臆病なの。だからついつい慎重になるのよ」
 と返すと
「お前が臆病ならほとんどの人は臆病だぜ。臆病の意味わかって言ってる?」
 と陽平が笑いながら言ってくるので足を思いっきり蹴ってやった。


☆☆☆☆


 エミリア視点
 翌日
 
 あたしは朝五時に目が覚めた。

 ベッドから体を起こし、机の方に目を向ける。
 そこには誠と一緒に写った写真が飾られている。

 確か、小学四年生の夏休みに一緒にとった奴だ。
 誠と知り合った幼稚園の頃、みんなと容姿が違うと言う事で虐められていた。金髪や青い瞳をからかわれてお母さんに何故あたしは周りの人と違うのと言って困らせた事もあった。

 そんな中、誠と幼稚園で出会った。
 彼だけがあたしと遊んでくれたのだ。
 周りから彼も虐められる事になるかも知れないのをお構い無しに……
 ほんとに嬉しかった。

 しかし、小学校に入るとさらに虐めも酷くなり、小学校三年の時に事件が起きた。
 あたしの教科書を破っていたクラスメートを誠が見つけて殴り掛かったのだ。
 結局両方とも停学となったのだが、虐めのターゲットは完全に誠に変わってしまった。

 しかし、誠は恨み事を一度も言う事なくむしろ、あたしが虐められなくて良かったねと笑いながら言ってくれた。
 そして、誠は学校では距離をとった。あたしがまだ虐められないように……

 あの時、自分が何も誠にしてあげられなかった事はあたしにとって人生最大の汚点である。あの時の自分を本気で殴りたい衝動に駆られるぐらいには。
 未だ街で誠を虐めていた屑どもを誠が見かけると、手が震えていたりする。それを見る度にあたしはその衝動が強くなる。

 虐められなくなると、人を観察し、人に取り入る事、利用する事を学び、それらを実践して二年ぐらいたつと学年の中心の一人になった。
 友達や取り巻きも増えたが、実際の所誠と親友である有坂・香以外はどうでも良い。

 陽平も誠が許したからこそ友人程度の付き合いは許しているが、小学校の時誠を虐めていた事を許すつもりはない。
 大事なのは家族と彼、次に彼の家族と親友であって……まあ八神一家はいずれ家族になるのだから、あたしにとって大切なのは家族と親友の香だけだ。
 だからこそ、誠に手を出そうとする人間は誰であれ、許さない。
 あたしは立ち上がり、パジャマから制服に着替え始める。


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