45 / 139
第1部 最終章
オレオ会戦勃発
しおりを挟む
12月17日にリューベック主力軍はオレオ平原に布陣した。
オレオ平原は東側に低い丘陵がり、後は歩兵が難なく渡れる程度の小川が流れている程度の広大な平原であり、大軍が激突しやすい場所であった。そしてリューベック軍は丘陵に本営を置いており、東進してくるフリーランス王国軍にかなり有利な状況で戦える状況を作り出している。
高い所に本営をおければ状況把握という点で優位に立てるからだ。そして、オレオ平原はリューベック軍が本営を置いている所以外、戦場を見渡せる高いところはない。
そんな中、フリーランス王国軍が、19日17時にリューベック軍が展開している場所から西8キロの地点に布陣し、野営の態勢を取る。
そして、翌日20日8時にフリーランス王国軍は前進を開始し、リューベック軍から1キロと言う地点まで軍を進め、決戦は目前と迫っていた。
リューベック王国軍は丘陵に本営を置き、そこにオレンボー辺境伯軍と千名の軍を総予備として配置し、その2キロ前方にレッフラー将軍指揮下の中央軍3千が布陣。
その3キロ程南に下った所にチェルハを指揮官とする2千の黒狼隊が左翼として布陣した。
中央軍より北に3キロ上がった場所にチンコダ将軍指揮下の2千の軍が右翼として布陣し、決戦に備える。
フリーランス王国軍もそれに合わせ、中央軍として3千の軍がメイツ侯を大将としてリューベック中央軍の前方に布陣。
リューベック軍右翼の抑えとしてベール伯指揮下の軍2千がリューベック軍右翼前方に展開。
リューベック軍左翼にはマース子爵指揮下の軍2千が当たる。
そして、フリーランスの中央軍後方700メートルに本営が置かれ、ラーム将軍率いる2200の軍が総予備として控えた。
「どうやらフリーランス軍は中央突破を考えているようだな」
本営からフリーランス軍の布陣を確認したアルベルトが呟き、隣に立つロブェネル将軍が頷く。
「こちらも中央を厚くしておりますからな。向こうも合わせて中央を厚くしたのでしょうが……」
「我が軍の本命は左翼だからな」
ロブェネル将軍の言葉をアルベルトは途中で遮る。
そう、リューベック軍左翼に精鋭たる黒狼隊を配置し左翼を大幅に強化している。
左翼を大幅に強化し、左翼の局所的優位を得て敵右翼を撃破した後、左翼が敵の中央を側面から圧迫し、敵の中央を崩し勝利を目指す戦術をリューベック王国軍は採用している。
リューベック軍の左翼とフリーランス軍の右翼の兵力は互角である。しかし、黒狼隊はあの黒旗軍と同じく徹底的に訓練された常備軍。同数の兵力であれば、敵を圧倒してくれる事は目に見えている。
「全軍の指揮はロブェネル将軍に委ねる。もっとも将軍を総大将にしたかったのだが……」
アルベルトの言葉に老将は苦笑を浮かべる。
「私は一部の将校から嫌われていますからね。致し方ないでしょう」
ロブェネル将軍は一部の将校から嫌われており、さらに軍議でますます陸軍主流派から反感を買ってしまい、彼を総大将にすれば軍に不和が広がりそれが敗因となる可能性がある以上、アルベルトが総大将を務め、実際はロブェネル将軍が指揮を執るとせざるを得なかったのである。
リューベック軍左翼。
黒い甲冑を着た将兵が展開している中、その前衛に動きがあった。
その前衛を務めている大隊長であるラトムが声を張り上げる。
「皆、良く聞け!この戦で我々の出世の道が開かれるか、スラムのごろつきで終わるかが決まる。」
ラトムを含め黒狼隊の将兵の大半は王都リュベルとその近郊のスラム出身である。
出世したいなら武勲を上げるしかないし、ほとんどの将兵は失うものは自分の命しかなかった。である以上、ある程度高い士気を誇っているのだ。
ラトムの剣を抜き、上にかかげる。
「だから励め。自らの手で我々の栄華を勝ち取るのだ。」
黒狼隊将兵は歓声を上げる。
「権益に胡坐をかく貴族様達に俺達の力を見せてやれ」
ラトムが剣を振り下ろし、ラッパの音がなり響くと前衛を務めるラトム大隊の将兵は攻撃前進を開始する。
リューベック王国軍と対陣するフリーランス軍でも動きがあった。
「進め。この戦に勝ちリュベルを落とせば略奪は思いのままぞ。」
「リュベルを落とせば数年は遊んで暮らせる富が手に入るぞ!」
中隊長や小隊長に欲を刺激されたフリーランス軍の将兵も前進を開始。
こうして、オレオ会戦は開始されたのである。
リューベック軍左翼を務める黒狼隊とフリーランス軍右翼は弓兵の打ち合いが交わされた後、黒狼隊の前衛部隊であるラトム大隊はフリーランス軍前衛に突撃を開始した。
当初は互角と思いきや、ラトム大隊は猛攻を加えフリーランス軍右翼前衛を崩し、敵中央部を圧迫している。
それを見たバルトルト・チェルハは予備を投入し、攻勢をさらに強めるとともに、副官に指示を出す。
「ミート大隊の騎兵の半数をフリーランス軍の東側に展開させ、敵連絡線を圧迫せよ」
「宜しいのですか?予備の機動戦力をほぼ使い果たす事になりますが……」
副官の心配にバルトルトは苦笑を浮かべる。
「心配ない。連絡線を脅かせるとなれば敵もそれなりに騎兵を出してくるはずだからな。それに敵右翼がくずれつつある事は出来る限り敵本営に伝わるのを遅らせた方がリューベック軍に有利となるだろう」
左翼が敵右翼を撃破してフリーランス軍中央軍の側面をつくのが、リューベックの作戦である以上、フリーランス軍本営が右翼が圧倒されている事を知るのは遅ければ遅い方が良いのは当たり前の話だった。知るのが遅れれば遅れる程それはフリーランス軍の対応が遅くなると言う事なのだから……
「承知しました」
副官は頷き、伝令を呼ぶため自分の側を離れたのを確認したバルトルトは誰にも聞こえないぐらいの小さな声でつぶやく。
「本日は栄えある殿下のご初陣。臣下として完璧な勝利を殿下に捧げなければならぬ」
オレオ平原は東側に低い丘陵がり、後は歩兵が難なく渡れる程度の小川が流れている程度の広大な平原であり、大軍が激突しやすい場所であった。そしてリューベック軍は丘陵に本営を置いており、東進してくるフリーランス王国軍にかなり有利な状況で戦える状況を作り出している。
高い所に本営をおければ状況把握という点で優位に立てるからだ。そして、オレオ平原はリューベック軍が本営を置いている所以外、戦場を見渡せる高いところはない。
そんな中、フリーランス王国軍が、19日17時にリューベック軍が展開している場所から西8キロの地点に布陣し、野営の態勢を取る。
そして、翌日20日8時にフリーランス王国軍は前進を開始し、リューベック軍から1キロと言う地点まで軍を進め、決戦は目前と迫っていた。
リューベック王国軍は丘陵に本営を置き、そこにオレンボー辺境伯軍と千名の軍を総予備として配置し、その2キロ前方にレッフラー将軍指揮下の中央軍3千が布陣。
その3キロ程南に下った所にチェルハを指揮官とする2千の黒狼隊が左翼として布陣した。
中央軍より北に3キロ上がった場所にチンコダ将軍指揮下の2千の軍が右翼として布陣し、決戦に備える。
フリーランス王国軍もそれに合わせ、中央軍として3千の軍がメイツ侯を大将としてリューベック中央軍の前方に布陣。
リューベック軍右翼の抑えとしてベール伯指揮下の軍2千がリューベック軍右翼前方に展開。
リューベック軍左翼にはマース子爵指揮下の軍2千が当たる。
そして、フリーランスの中央軍後方700メートルに本営が置かれ、ラーム将軍率いる2200の軍が総予備として控えた。
「どうやらフリーランス軍は中央突破を考えているようだな」
本営からフリーランス軍の布陣を確認したアルベルトが呟き、隣に立つロブェネル将軍が頷く。
「こちらも中央を厚くしておりますからな。向こうも合わせて中央を厚くしたのでしょうが……」
「我が軍の本命は左翼だからな」
ロブェネル将軍の言葉をアルベルトは途中で遮る。
そう、リューベック軍左翼に精鋭たる黒狼隊を配置し左翼を大幅に強化している。
左翼を大幅に強化し、左翼の局所的優位を得て敵右翼を撃破した後、左翼が敵の中央を側面から圧迫し、敵の中央を崩し勝利を目指す戦術をリューベック王国軍は採用している。
リューベック軍の左翼とフリーランス軍の右翼の兵力は互角である。しかし、黒狼隊はあの黒旗軍と同じく徹底的に訓練された常備軍。同数の兵力であれば、敵を圧倒してくれる事は目に見えている。
「全軍の指揮はロブェネル将軍に委ねる。もっとも将軍を総大将にしたかったのだが……」
アルベルトの言葉に老将は苦笑を浮かべる。
「私は一部の将校から嫌われていますからね。致し方ないでしょう」
ロブェネル将軍は一部の将校から嫌われており、さらに軍議でますます陸軍主流派から反感を買ってしまい、彼を総大将にすれば軍に不和が広がりそれが敗因となる可能性がある以上、アルベルトが総大将を務め、実際はロブェネル将軍が指揮を執るとせざるを得なかったのである。
リューベック軍左翼。
黒い甲冑を着た将兵が展開している中、その前衛に動きがあった。
その前衛を務めている大隊長であるラトムが声を張り上げる。
「皆、良く聞け!この戦で我々の出世の道が開かれるか、スラムのごろつきで終わるかが決まる。」
ラトムを含め黒狼隊の将兵の大半は王都リュベルとその近郊のスラム出身である。
出世したいなら武勲を上げるしかないし、ほとんどの将兵は失うものは自分の命しかなかった。である以上、ある程度高い士気を誇っているのだ。
ラトムの剣を抜き、上にかかげる。
「だから励め。自らの手で我々の栄華を勝ち取るのだ。」
黒狼隊将兵は歓声を上げる。
「権益に胡坐をかく貴族様達に俺達の力を見せてやれ」
ラトムが剣を振り下ろし、ラッパの音がなり響くと前衛を務めるラトム大隊の将兵は攻撃前進を開始する。
リューベック王国軍と対陣するフリーランス軍でも動きがあった。
「進め。この戦に勝ちリュベルを落とせば略奪は思いのままぞ。」
「リュベルを落とせば数年は遊んで暮らせる富が手に入るぞ!」
中隊長や小隊長に欲を刺激されたフリーランス軍の将兵も前進を開始。
こうして、オレオ会戦は開始されたのである。
リューベック軍左翼を務める黒狼隊とフリーランス軍右翼は弓兵の打ち合いが交わされた後、黒狼隊の前衛部隊であるラトム大隊はフリーランス軍前衛に突撃を開始した。
当初は互角と思いきや、ラトム大隊は猛攻を加えフリーランス軍右翼前衛を崩し、敵中央部を圧迫している。
それを見たバルトルト・チェルハは予備を投入し、攻勢をさらに強めるとともに、副官に指示を出す。
「ミート大隊の騎兵の半数をフリーランス軍の東側に展開させ、敵連絡線を圧迫せよ」
「宜しいのですか?予備の機動戦力をほぼ使い果たす事になりますが……」
副官の心配にバルトルトは苦笑を浮かべる。
「心配ない。連絡線を脅かせるとなれば敵もそれなりに騎兵を出してくるはずだからな。それに敵右翼がくずれつつある事は出来る限り敵本営に伝わるのを遅らせた方がリューベック軍に有利となるだろう」
左翼が敵右翼を撃破してフリーランス軍中央軍の側面をつくのが、リューベックの作戦である以上、フリーランス軍本営が右翼が圧倒されている事を知るのは遅ければ遅い方が良いのは当たり前の話だった。知るのが遅れれば遅れる程それはフリーランス軍の対応が遅くなると言う事なのだから……
「承知しました」
副官は頷き、伝令を呼ぶため自分の側を離れたのを確認したバルトルトは誰にも聞こえないぐらいの小さな声でつぶやく。
「本日は栄えある殿下のご初陣。臣下として完璧な勝利を殿下に捧げなければならぬ」
94
お気に入りに追加
1,393
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる