3 / 11
一年目の春(3)
しおりを挟む
それからオスカーは毎日エルピスの所へと足を運んでは外の話についての話をしてくれた。エルピスはオスカーの話を聞いては、見たことのない外の世界について想像を膨らませていく。そんな日々が過ぎ去り、季節は夏に変わっていった。
「エルピス。今日は祭りがあるそうだ。あんさんに感謝を伝える祭りだとよ」
「ほう、そうなのか」
「変な話だけどな。主役であるあんさんが出れないってのは」
「仕方があるまい。。我が地へと降り立てばたちまち騒ぎになる」
「ふーん……」
エルピスは慣れているのか祭りに出られないことに不満を抱いてはいないようだが、オスカーは納得をしていないようで何かを考えていた。
「そうだ! 祭りの最後には花火が打ちあがるってきたぜ。神殿の外に出れば見れるんじゃね?」
「ふむ? 花火とはなんだ」
「花火っていうのは何て言えばいいんだ? 空に咲く花だな花。一瞬しか咲かないが綺麗だぜ」
「神殿の外か。もう何百年と出ていないな」
「おいおい、引きこもりか? せっかくだし今夜の花火見ようぜ。主役なんだし出ても怒られないだろう。バレなきゃセーフ」
「ふむ、そうするか」
何百年と外に出ていないと聞くとオスカーは信じられないという顔でエルピスを見た。もしかしたら王族の誰かに出るなと言われているのかもしれないが、自分なら見張りもないなら、外に顔を覗かせるぐらいしてしまう。真面目というかある種の怠け者というべきか、王族の誰か自分みたいに誘えば良かったのになんて思ってしまう。最もいないとオスカーは友達になれなかっただろうなと思い、ある意味で王族に感謝をした。
夜になるまでお話をしたりしていたが、オスカーは気付いたことがある。
「エルピスはご飯食べないのか?」
「あぁ、別に食べなくとも魔素でエネルギーに変えている」
「へー、初めて聞いた。でも、食べれない訳じゃないんだろ?王族の奴らエルピスのお陰で儲けてるのに、貢物もしないのな。ケチくさ」
不貞腐れるように唇を尖らせるオスカーに、エルピスは分からないというように首をかしげる。その様子を見てまたオスカーは王族に対する不満を募らせるのであった。
「時々報告みたいなのは聞くがな。我の胃を満たす肉となると国規模になるからではないか?」
「だとしても祭りの時ぐらいは食い物寄こせってんだ。エルピスはもっと我儘いうべきだな」
「ふむぅ、我儘か。我はオスカーと花火とやらが見えるだけで満足だがな」
「おいおい、そんなこと言われたら照れちまうだろう。しっかたないなぁ! そろそろ花火の時間だし、外に出るか!」
純粋で混じりっけのない言葉にフツフツとこみ上げてくる感情がオスカーの顔を赤くしていく。エルピスに見られないように深くカーボーイハットを被れば、早口で外に行こうと促した。エルピスはというと、オスカーが照れたことに気付いていないのか、重たい身体を持ち上げて小さなオスカーを踏みつぶさないようにのっそりのっそりと歩き出した。オスカーも踏まれないように進んでいくと打ち上げられる音が聞こえてくる。
「やべ、もう始まってやがるぞ」
ゆっくりしすぎたと反省しつつ入り口から眺めるとちょうど大きな花火が打ちあがっていた。赤色、黄色、緑に、青色と様々な色が夜空に彩られていく。初めて見る花火にエルピスは心を奪われていた。昔は空の星や月を眺めていたが、神殿を作られて以降外すら出なかったのだ。外の世界はここまで発展していただなんて、かつての友は頑張ったのだろうと感心をしていた。
「な? 綺麗だろ」
空に魅了されているエルピスに嬉しそうに笑う今の友であるオスカーの声に、反応するようにエルピスは頷く。
「あぁ、綺麗だ。花火とやらは美しい。ここから見えるが近くで見たらもっと綺麗なのだろうな」
「じゃあ、来年は町に降りれるように考えようぜ」
エルピスの体格では町に降り立てば家などを壊してしまうだろう。何かいい方法があればいいにだが、竜に魔法が効くのか聞いたことがない。亜人の研究は進んでいるが、竜は数も少ないということもあり研究が遅れていると聞いたことがある。オスカーは次の旅の目標ができたなと思っていた。その様子に気付かずにエルピスは、終わるまで花火を見続けた。
「エルピス。今日は祭りがあるそうだ。あんさんに感謝を伝える祭りだとよ」
「ほう、そうなのか」
「変な話だけどな。主役であるあんさんが出れないってのは」
「仕方があるまい。。我が地へと降り立てばたちまち騒ぎになる」
「ふーん……」
エルピスは慣れているのか祭りに出られないことに不満を抱いてはいないようだが、オスカーは納得をしていないようで何かを考えていた。
「そうだ! 祭りの最後には花火が打ちあがるってきたぜ。神殿の外に出れば見れるんじゃね?」
「ふむ? 花火とはなんだ」
「花火っていうのは何て言えばいいんだ? 空に咲く花だな花。一瞬しか咲かないが綺麗だぜ」
「神殿の外か。もう何百年と出ていないな」
「おいおい、引きこもりか? せっかくだし今夜の花火見ようぜ。主役なんだし出ても怒られないだろう。バレなきゃセーフ」
「ふむ、そうするか」
何百年と外に出ていないと聞くとオスカーは信じられないという顔でエルピスを見た。もしかしたら王族の誰かに出るなと言われているのかもしれないが、自分なら見張りもないなら、外に顔を覗かせるぐらいしてしまう。真面目というかある種の怠け者というべきか、王族の誰か自分みたいに誘えば良かったのになんて思ってしまう。最もいないとオスカーは友達になれなかっただろうなと思い、ある意味で王族に感謝をした。
夜になるまでお話をしたりしていたが、オスカーは気付いたことがある。
「エルピスはご飯食べないのか?」
「あぁ、別に食べなくとも魔素でエネルギーに変えている」
「へー、初めて聞いた。でも、食べれない訳じゃないんだろ?王族の奴らエルピスのお陰で儲けてるのに、貢物もしないのな。ケチくさ」
不貞腐れるように唇を尖らせるオスカーに、エルピスは分からないというように首をかしげる。その様子を見てまたオスカーは王族に対する不満を募らせるのであった。
「時々報告みたいなのは聞くがな。我の胃を満たす肉となると国規模になるからではないか?」
「だとしても祭りの時ぐらいは食い物寄こせってんだ。エルピスはもっと我儘いうべきだな」
「ふむぅ、我儘か。我はオスカーと花火とやらが見えるだけで満足だがな」
「おいおい、そんなこと言われたら照れちまうだろう。しっかたないなぁ! そろそろ花火の時間だし、外に出るか!」
純粋で混じりっけのない言葉にフツフツとこみ上げてくる感情がオスカーの顔を赤くしていく。エルピスに見られないように深くカーボーイハットを被れば、早口で外に行こうと促した。エルピスはというと、オスカーが照れたことに気付いていないのか、重たい身体を持ち上げて小さなオスカーを踏みつぶさないようにのっそりのっそりと歩き出した。オスカーも踏まれないように進んでいくと打ち上げられる音が聞こえてくる。
「やべ、もう始まってやがるぞ」
ゆっくりしすぎたと反省しつつ入り口から眺めるとちょうど大きな花火が打ちあがっていた。赤色、黄色、緑に、青色と様々な色が夜空に彩られていく。初めて見る花火にエルピスは心を奪われていた。昔は空の星や月を眺めていたが、神殿を作られて以降外すら出なかったのだ。外の世界はここまで発展していただなんて、かつての友は頑張ったのだろうと感心をしていた。
「な? 綺麗だろ」
空に魅了されているエルピスに嬉しそうに笑う今の友であるオスカーの声に、反応するようにエルピスは頷く。
「あぁ、綺麗だ。花火とやらは美しい。ここから見えるが近くで見たらもっと綺麗なのだろうな」
「じゃあ、来年は町に降りれるように考えようぜ」
エルピスの体格では町に降り立てば家などを壊してしまうだろう。何かいい方法があればいいにだが、竜に魔法が効くのか聞いたことがない。亜人の研究は進んでいるが、竜は数も少ないということもあり研究が遅れていると聞いたことがある。オスカーは次の旅の目標ができたなと思っていた。その様子に気付かずにエルピスは、終わるまで花火を見続けた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。

あの日の記憶の隅で、君は笑う。
15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。
その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。
唐突に始まります。
身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません!
幸せになってくれな!

みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています

超美形の彼氏が出来ました。〜本編〜
あぎ
BL
主人公はいじめられていた。
いつも殴られ蹴られの毎日。
死のうとすら考え、屋上に行くと、そこには。
双子と弟に愛を教わる主人公の話、、かな。よろしくお願いいたします
番外は別で描きます
追記2023 12/19
詳しくは〜番外〜から。
※まだ出せてません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる