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第5章 ゴーレム大地を育む
第82話 ゴーレムとおもてなし
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「マホロたちの住む教会か……。教会に住んでいるということは、マホロは何らかの聖職者なのか?」
「いえ、特にそういうことではありません。この街に来た時、あの教会が比較的状態の良い建物だったので、勝手に住み着いているだけです! お祈りに使いそうな道具も大体持ち出された後だったので、今となっては何を信仰してのかも……あ、おじさんに聞けばわかると思います!」
「いや、一応聞いてみただけだ。そこまでしなくてもいい。私も特に何を信仰しているわけでもないからな」
教会の元の持ち主……か。
そういえば、あんまり考えたことなかったな。
まあ、一部の家具以外の物をしっかり持ち出しているのだから、きっとどこか他の地域に移り住んでいるんだろう……なんてことを考えながら、教会への道を歩く。
「おっ! アンタらやっと見つけたぞ!」
両手を振りながらこちらに近づいて来た赤髪の女性――ヘルガさんだ。
「ヘルガさん! 何かご用ですか?」
「何かじゃないよ、マホロ~! もしかして、アタシとの約束忘れてないかい?」
「ジャングルでなめし剤の材料を集める代わりに、私に革ジャンを作ってくださるという約束のことですよね」
マホロの返答を聞いて、しょぼくれた顔をしてたヘルガさんの顔がパァッと明るくなる。
「おっおっ! 覚えていてくれたんだね! いやぁ、ジャングル探検も途中から私の用事がおまけになっちゃってたからさ! すっかり革ジャンのことも忘れられてるんじゃないかって心配だったんだよ!」
「そんな! ヘルガさんとの約束を忘れるわけないじゃないですか! その革ジャンって服をとても楽しみにしてます!」
「そうかい、そうかい! もうなめし剤の調合は開始してるんだ! 今日明日で完成ってわけにはいかないが、ちゃんと作ってるからアタシのこと忘れないでくれよな!」
「はい! よろしくお願いしますね!」
マホロの反応に満足したヘルガさんは「じゃあなっ!」と言って帰っていった。
皮をなめして革を作る作業には職人の業が必要だ。
俺たちがおいそれと手伝うわけにはいかないし、マホロと同じく楽しみに待っていよう。
それにしても、マホロのヘルガさんへの返答は百点の出来栄えだな。
本当に革ジャンのことを覚えていたんだろうけど、俺だったらちょっとしどろもどろになりそうだ。
「革ジャンか……。聞き慣れない言葉だな」
シルフィアが興味を示す。
ここは俺が説明するとしよう。
「そのまんま革のジャンパーの略だよ。風を通しにくいから寒い季節に上から羽織るものとして重宝するし、質の良いものは長持ちして使い込むほど革に深みが増すんだ」
「なるほど、それなら理解出来る言葉だ。今はまだ温かい季節だが、この街もそのうち寒くなるのだろうか? ジャングルはずっと温かかったがな」
「あー……それは俺にもわからないなぁ。こっちの世界に来てからそんなに時間が経ってないから。マホロは知ってるかい?」
「私は冬の終わり……雪解けの季節に住んでいたお屋敷を抜け出してメルフィと共にここへ逃げて来ました。たどり着いた時はまだ本格的に春が来る前で肌寒かったですし、今は時が流れて温かくなって来た気がします。なので、季節のよる気温の変化はあるかと」
「ふむ……。やはり、確実なのはずっとこの街に住んでいるおじさんに聞くことか」
とはいえ、あまり着る物も持っていなさそうな人々が越せる程度の冬であることはわかる。
近くにジャングルのような温暖な場所があるのだから、このラブルピアもそれなりに温暖な方だと考えるのが妥当かな。
それでも肌寒さを感じるのならば、その肌を守る服があった方がいいに決まってる。
ヘルガさんの職人魂に期待だな。
「さあ、教会に着きましたよ!」
教会の前まで戻って来た俺たち。
そして、教会の前のおじさんは……家の中に気配がないな。
日没前に霊園に行ってお墓参りか、普通に他の住人の家にお邪魔しているのか。
まあ、話すのは明日以降でも全然問題はない。
「扉をオープン! ささっ、シルフィアさんどうぞ!」
防壁の門を電磁魔動式にしたタイミングで教会の扉も同じ形式に変えておいた。
これで両手に荷物を持っていても楽に開けることが出来る。
「おかえりなさいませ、マホロ様、ガンジョー様、ノルン、そして……シルフィア様」
入ってすぐのところでメルフィさんが出迎えてくれた。
俺たちが帰って来るタイミングを何となく察していたんだろう。
流石はプロのメイドさんだ。
「あっ、えっと……こんにちは、メルフィ……さん……」
「どうぞメルフィとお呼びください、シルフィア様。もうじきお夕食が出来ますので、それまでごゆくりおくつろぎください」
「は、はい……!」
ピシッと背筋を伸ばすシルフィア。
マホロと俺、ノルンに対しては柔らかな態度を取れるようになったシルフィアだけど、他の人に対してはまだまだ固いところがある。
ゆっくり時間をかけて徐々に慣れていけばいいんだ。
「い、いいのだろうか? 私も一緒に晩御飯を食べて……」
「いいんです! 今日はご馳走を作ってくれているはずです! それより晩御飯までに名所巡りを続けましょう! 場所は教会の裏庭、自慢の家庭菜園……予定地です!」
うむ、流石のマホロもまだあそこを家庭菜園とは言い切れなかったな。
種が芽吹いて葉が出始めても、まだ実がなっている植物はない。
自慢の裏庭になるのは、まだまだこれから……俺たちは裏庭に出る直前までそう思っていた。
「いえ、特にそういうことではありません。この街に来た時、あの教会が比較的状態の良い建物だったので、勝手に住み着いているだけです! お祈りに使いそうな道具も大体持ち出された後だったので、今となっては何を信仰してのかも……あ、おじさんに聞けばわかると思います!」
「いや、一応聞いてみただけだ。そこまでしなくてもいい。私も特に何を信仰しているわけでもないからな」
教会の元の持ち主……か。
そういえば、あんまり考えたことなかったな。
まあ、一部の家具以外の物をしっかり持ち出しているのだから、きっとどこか他の地域に移り住んでいるんだろう……なんてことを考えながら、教会への道を歩く。
「おっ! アンタらやっと見つけたぞ!」
両手を振りながらこちらに近づいて来た赤髪の女性――ヘルガさんだ。
「ヘルガさん! 何かご用ですか?」
「何かじゃないよ、マホロ~! もしかして、アタシとの約束忘れてないかい?」
「ジャングルでなめし剤の材料を集める代わりに、私に革ジャンを作ってくださるという約束のことですよね」
マホロの返答を聞いて、しょぼくれた顔をしてたヘルガさんの顔がパァッと明るくなる。
「おっおっ! 覚えていてくれたんだね! いやぁ、ジャングル探検も途中から私の用事がおまけになっちゃってたからさ! すっかり革ジャンのことも忘れられてるんじゃないかって心配だったんだよ!」
「そんな! ヘルガさんとの約束を忘れるわけないじゃないですか! その革ジャンって服をとても楽しみにしてます!」
「そうかい、そうかい! もうなめし剤の調合は開始してるんだ! 今日明日で完成ってわけにはいかないが、ちゃんと作ってるからアタシのこと忘れないでくれよな!」
「はい! よろしくお願いしますね!」
マホロの反応に満足したヘルガさんは「じゃあなっ!」と言って帰っていった。
皮をなめして革を作る作業には職人の業が必要だ。
俺たちがおいそれと手伝うわけにはいかないし、マホロと同じく楽しみに待っていよう。
それにしても、マホロのヘルガさんへの返答は百点の出来栄えだな。
本当に革ジャンのことを覚えていたんだろうけど、俺だったらちょっとしどろもどろになりそうだ。
「革ジャンか……。聞き慣れない言葉だな」
シルフィアが興味を示す。
ここは俺が説明するとしよう。
「そのまんま革のジャンパーの略だよ。風を通しにくいから寒い季節に上から羽織るものとして重宝するし、質の良いものは長持ちして使い込むほど革に深みが増すんだ」
「なるほど、それなら理解出来る言葉だ。今はまだ温かい季節だが、この街もそのうち寒くなるのだろうか? ジャングルはずっと温かかったがな」
「あー……それは俺にもわからないなぁ。こっちの世界に来てからそんなに時間が経ってないから。マホロは知ってるかい?」
「私は冬の終わり……雪解けの季節に住んでいたお屋敷を抜け出してメルフィと共にここへ逃げて来ました。たどり着いた時はまだ本格的に春が来る前で肌寒かったですし、今は時が流れて温かくなって来た気がします。なので、季節のよる気温の変化はあるかと」
「ふむ……。やはり、確実なのはずっとこの街に住んでいるおじさんに聞くことか」
とはいえ、あまり着る物も持っていなさそうな人々が越せる程度の冬であることはわかる。
近くにジャングルのような温暖な場所があるのだから、このラブルピアもそれなりに温暖な方だと考えるのが妥当かな。
それでも肌寒さを感じるのならば、その肌を守る服があった方がいいに決まってる。
ヘルガさんの職人魂に期待だな。
「さあ、教会に着きましたよ!」
教会の前まで戻って来た俺たち。
そして、教会の前のおじさんは……家の中に気配がないな。
日没前に霊園に行ってお墓参りか、普通に他の住人の家にお邪魔しているのか。
まあ、話すのは明日以降でも全然問題はない。
「扉をオープン! ささっ、シルフィアさんどうぞ!」
防壁の門を電磁魔動式にしたタイミングで教会の扉も同じ形式に変えておいた。
これで両手に荷物を持っていても楽に開けることが出来る。
「おかえりなさいませ、マホロ様、ガンジョー様、ノルン、そして……シルフィア様」
入ってすぐのところでメルフィさんが出迎えてくれた。
俺たちが帰って来るタイミングを何となく察していたんだろう。
流石はプロのメイドさんだ。
「あっ、えっと……こんにちは、メルフィ……さん……」
「どうぞメルフィとお呼びください、シルフィア様。もうじきお夕食が出来ますので、それまでごゆくりおくつろぎください」
「は、はい……!」
ピシッと背筋を伸ばすシルフィア。
マホロと俺、ノルンに対しては柔らかな態度を取れるようになったシルフィアだけど、他の人に対してはまだまだ固いところがある。
ゆっくり時間をかけて徐々に慣れていけばいいんだ。
「い、いいのだろうか? 私も一緒に晩御飯を食べて……」
「いいんです! 今日はご馳走を作ってくれているはずです! それより晩御飯までに名所巡りを続けましょう! 場所は教会の裏庭、自慢の家庭菜園……予定地です!」
うむ、流石のマホロもまだあそこを家庭菜園とは言い切れなかったな。
種が芽吹いて葉が出始めても、まだ実がなっている植物はない。
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