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第4章 ゴーレム大地を駆ける
第75話 ゴーレムとエルフの隣人
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「ああ、任せてくれ!」
お隣さんにしてくれ――シルフィアの願いを叶えるべく、すぐに行動を開始する。
まずは十分に景色を楽しみ、シルフィアの両親の話も聞くことが出来た灯台から降りる。
そして、リニアトレインに積まれたままの木のところまで戻って来た。
「マホロは防壁の中に戻って、街の人たちにしばらく家の中に入ってるように伝えてくれ。木を運んでいる最中に踏んでしまうなんてことがないようにね」
「わかりました!」
「メルフィさんにも事情を話して協力してもらうんだよ」
しばらくマホロが戻ってくるのを待つ。
住人の数はそう多くない。メルフィさんと一緒に動けばすぐに全体に伝わるはずだ。
「ただいま戻りました!」
俺の予想通り、マホロは十分もしないうちに防壁の外へ出て来た。
「よし! それじゃあ気合を入れて運ぼうか! マホロとシルフィアも俺がまた小さくなるまでは離れてるんだぞ」
「了解です!」
「よろしく頼む、ガンジョー」
まずはレール敷設のために廃鉱山から取って来た鉄鉱石の残りを体に取り込む。
土をたくさん取り込んだ巨大化は強度が足りなかったが、取り込む素材が金属になれば大きくなっても硬さは維持される。
それと今回の巨大化は木を運べるギリギリの大きさに抑え、大きく伸ばすのは脚だけにする。
脚長メタルゴーレムとなって防壁をまたぎ、建物にぶつからないよう教会の隣の土地を目指す。
「スリムでスマートな脚にチェンジだ」
約三メートルの防壁を超えるために足の長さは四メートル以上に。
それでいて太さは普段とあまり変えない。
太くなればそれだけ何かにぶつかる確率が上がるからな。
「おおーっ! ガンジョーさん誰もが羨む美脚です!」
離れたところからマホロのお褒めの言葉が届く。
「う、うむ……! 私も美しいと……思う……?」
マホロに釣られてシルフィアも俺を褒めようとするが、おそらく本心では美しいと思っていないのがわかる。
それもそのはず、俺だって今の脚長ゴーレムはバランスが悪いと思ってるからな!
普段のメタルゴーレムの体型が一番バランスがいい。
脚が四メートル近くに伸びている今の状態を見て、すぐさま褒める言葉が思いつくのはマホロくらいだろう。
ボディビル大会の掛け声を任せれば、会場を盛り上げてくれること間違いなしだな。
「これから運搬を開始する! マホロたちも動かないように!」
両手で木をガッチリとホールドし、頭の中で足を置く場所を考えて動く。
建物と建物の間、道を歩いて教会へと向かう。
ここは元いた世界のような住宅密集地ではない。
想像していたよりも運搬は窮屈ではなかった。
「後はここに木を降ろして……!」
倒れないようにしっかりと根っこを土に埋める。
あっという間に木はラブルピアに根差した。
どっしりと揺らぐことがなさそうなその姿は、まるでずっと昔からこの街を見守って来たかのような風格がある。
「手で押してみても、まったくグラグラしない。これならツリーハウスに人を入れても倒れるなんてことはないだろう」
シルフィアのお引越しはこれで完了だ。
自分の体を元のサイズに戻し、マホロたちや街の人々に作業完了を知らせる。
「なんだか、街の中にあるとより一層木が立派に見えますね!」
そう言ったのはマホロだ。
同じような木が何本も生えているジャングルや、比較対象がなかった荒野では感じなかったけど、木よりも低い建物がある防壁の中では木の大きさをより実感出来る。
「それにこの木は緑が少ない街に爽やかさをもたらしてくれると思う」
そう付け加えたのは俺だ。
まだ成長途中の植物ばかりの街にとって、立派に緑の葉が生い茂るこの木は目を惹く。
そして、きっと街の人々の心に爽やかな風を届けてくれるはずさ。
「か、かなり目立つな、私の家……。いや、それでも今はこの防壁の中に木を植えて良かったと思っている。上手く言葉に出来ないんだが、この木がここにあることが誰かの救いになるような……。そんな気がしているんだ」
目を細めてシルフィアは木を見つめる。
その後、くるりと俺の方に向き直り、深々と頭を下げた。
「改めてありがとう、ガンジョー、マホロ。お隣さんとしてこれからよろしく頼む。世間知らずの半端者だが、この街のために出来ることをするつもりだ」
そう言ってシルフィアは右手を差し出す。
「こちらこそよろしく頼む、シルフィア。完璧な人なんていない……みんな半端者だからこそ、助け合って暮らしていこうじゃないか」
差し出された右手を金属の手で優しく握り返す。
俺のひんやりとした手に、シルフィアの手のぬくもりが伝わる。
「シルフィアさん! 私も握手です!」
俺の次に握手を求めるマホロ。
シルフィアとマホロの手が固く握られる。
「困ったことがあったら、遠慮せずに相談してくださいね。一人で我慢するより、みんなで解決を目指すのがこの街の理念です!」
「ああ、承知した。心配せずとも、私はマホロに隠し事が出来ないようなのでな。これからはずけずけと言いたいことを言わせてもらうつもりだ」
「望むところです! ただし、『親しき仲にも礼儀あり』ですよ、シルフィアさん!」
「そ、そんなことわかっている! 世間知らずとは言ったが、そういう最低限のことはだな……! いや、確かにそのぉ……多くの人と暮らした経験はないのだが……。問題はない……はず!」
またまたシルフィアはマホロにたじたじの様子。
こうして人を振り回すというか、巻き込んでいくのがマホロの魅力であり才能だろう。
おかげでこれからも街が賑やかになりそうだ。
お隣さんにしてくれ――シルフィアの願いを叶えるべく、すぐに行動を開始する。
まずは十分に景色を楽しみ、シルフィアの両親の話も聞くことが出来た灯台から降りる。
そして、リニアトレインに積まれたままの木のところまで戻って来た。
「マホロは防壁の中に戻って、街の人たちにしばらく家の中に入ってるように伝えてくれ。木を運んでいる最中に踏んでしまうなんてことがないようにね」
「わかりました!」
「メルフィさんにも事情を話して協力してもらうんだよ」
しばらくマホロが戻ってくるのを待つ。
住人の数はそう多くない。メルフィさんと一緒に動けばすぐに全体に伝わるはずだ。
「ただいま戻りました!」
俺の予想通り、マホロは十分もしないうちに防壁の外へ出て来た。
「よし! それじゃあ気合を入れて運ぼうか! マホロとシルフィアも俺がまた小さくなるまでは離れてるんだぞ」
「了解です!」
「よろしく頼む、ガンジョー」
まずはレール敷設のために廃鉱山から取って来た鉄鉱石の残りを体に取り込む。
土をたくさん取り込んだ巨大化は強度が足りなかったが、取り込む素材が金属になれば大きくなっても硬さは維持される。
それと今回の巨大化は木を運べるギリギリの大きさに抑え、大きく伸ばすのは脚だけにする。
脚長メタルゴーレムとなって防壁をまたぎ、建物にぶつからないよう教会の隣の土地を目指す。
「スリムでスマートな脚にチェンジだ」
約三メートルの防壁を超えるために足の長さは四メートル以上に。
それでいて太さは普段とあまり変えない。
太くなればそれだけ何かにぶつかる確率が上がるからな。
「おおーっ! ガンジョーさん誰もが羨む美脚です!」
離れたところからマホロのお褒めの言葉が届く。
「う、うむ……! 私も美しいと……思う……?」
マホロに釣られてシルフィアも俺を褒めようとするが、おそらく本心では美しいと思っていないのがわかる。
それもそのはず、俺だって今の脚長ゴーレムはバランスが悪いと思ってるからな!
普段のメタルゴーレムの体型が一番バランスがいい。
脚が四メートル近くに伸びている今の状態を見て、すぐさま褒める言葉が思いつくのはマホロくらいだろう。
ボディビル大会の掛け声を任せれば、会場を盛り上げてくれること間違いなしだな。
「これから運搬を開始する! マホロたちも動かないように!」
両手で木をガッチリとホールドし、頭の中で足を置く場所を考えて動く。
建物と建物の間、道を歩いて教会へと向かう。
ここは元いた世界のような住宅密集地ではない。
想像していたよりも運搬は窮屈ではなかった。
「後はここに木を降ろして……!」
倒れないようにしっかりと根っこを土に埋める。
あっという間に木はラブルピアに根差した。
どっしりと揺らぐことがなさそうなその姿は、まるでずっと昔からこの街を見守って来たかのような風格がある。
「手で押してみても、まったくグラグラしない。これならツリーハウスに人を入れても倒れるなんてことはないだろう」
シルフィアのお引越しはこれで完了だ。
自分の体を元のサイズに戻し、マホロたちや街の人々に作業完了を知らせる。
「なんだか、街の中にあるとより一層木が立派に見えますね!」
そう言ったのはマホロだ。
同じような木が何本も生えているジャングルや、比較対象がなかった荒野では感じなかったけど、木よりも低い建物がある防壁の中では木の大きさをより実感出来る。
「それにこの木は緑が少ない街に爽やかさをもたらしてくれると思う」
そう付け加えたのは俺だ。
まだ成長途中の植物ばかりの街にとって、立派に緑の葉が生い茂るこの木は目を惹く。
そして、きっと街の人々の心に爽やかな風を届けてくれるはずさ。
「か、かなり目立つな、私の家……。いや、それでも今はこの防壁の中に木を植えて良かったと思っている。上手く言葉に出来ないんだが、この木がここにあることが誰かの救いになるような……。そんな気がしているんだ」
目を細めてシルフィアは木を見つめる。
その後、くるりと俺の方に向き直り、深々と頭を下げた。
「改めてありがとう、ガンジョー、マホロ。お隣さんとしてこれからよろしく頼む。世間知らずの半端者だが、この街のために出来ることをするつもりだ」
そう言ってシルフィアは右手を差し出す。
「こちらこそよろしく頼む、シルフィア。完璧な人なんていない……みんな半端者だからこそ、助け合って暮らしていこうじゃないか」
差し出された右手を金属の手で優しく握り返す。
俺のひんやりとした手に、シルフィアの手のぬくもりが伝わる。
「シルフィアさん! 私も握手です!」
俺の次に握手を求めるマホロ。
シルフィアとマホロの手が固く握られる。
「困ったことがあったら、遠慮せずに相談してくださいね。一人で我慢するより、みんなで解決を目指すのがこの街の理念です!」
「ああ、承知した。心配せずとも、私はマホロに隠し事が出来ないようなのでな。これからはずけずけと言いたいことを言わせてもらうつもりだ」
「望むところです! ただし、『親しき仲にも礼儀あり』ですよ、シルフィアさん!」
「そ、そんなことわかっている! 世間知らずとは言ったが、そういう最低限のことはだな……! いや、確かにそのぉ……多くの人と暮らした経験はないのだが……。問題はない……はず!」
またまたシルフィアはマホロにたじたじの様子。
こうして人を振り回すというか、巻き込んでいくのがマホロの魅力であり才能だろう。
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