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第4章 ゴーレム大地を駆ける
第70話 ゴーレムとエルフの決断
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体に取り込んだ土を大地に還し、メタルゴーレムのサイズまで体を縮める。
「ふぅ……。やっぱりこれくらいのサイズが一番落ち着くな」
巨大化はそれだけ動きも大雑把になる。
周囲への被害も気になるし、あまり使いたくはない奥の手だ。
「まずはツリーハウスに行ってみるか」
方位磁石を頼りに急いでツリーハウスに向かう。
マホロたちが上手くシルフィアを連れ出していれば、そこには誰もいないはずだが……。
「マホロ! シルフィア! ……いなさそうだな」
ツリーハウスに被害はなく、そのままの状態で残っていた。
万が一にも戦闘の余波がここにも及んでいたら……と思っていたが、無事で良かった!
「ここにいないなら、上手くリニアトレインまで移動出来たんだな」
ツリーハウスを後にし、リニアトレインに急ぐ。
リニアトレインの動力は俺だから、いざという時も俺がいなければリニアトレインは機能しない。
これは改善の余地アリだな……。
リニアトレイン自体に動力を持たせるか、動かすキーとなる魔法道具を誰かに持たせるか、検討しなければならない。
ただ、どちらにせよリニアトレインを加速させるには莫大な魔力を必要とする。
マホロやメルフィさんでは少々荷が重いのは確かなんだ。
どこかに地属性か雷属性の魔宝石が転がっていれば、喜んでリニアトレインに積み込むのだが……。
「……あっ、いた! おーい、マホロ! みんな!」
プラットホームにはマホロたちの姿があった。
もちろん、シルフィアも一緒だ。
「無事で良かった! あの巨大ゴリラは追い払っておいたよ」
「あ、ありがとう……」
シルフィアはピンク色のブーメランをギュッと握りしめながらそう言った。
その仕草からは大きな不安が読み取れる。
いきなりあんな巨大魔獣がやって来たんだ。怯えるのも無理はない。
「もうここらへんに来る気がなくなるような追い払い方をしておいたから、ゴリラに関しては心配しなくていいんじゃないかな? まあ、絶対とは言い切れないけど……」
「それが当然だ。そもそもこのジャングルはあいつらの領域……。ここも私がいるべき場所ではないんだ。私の居場所はどこにも……」
「なら、私たちの街に来てください! ラブルピアこそがシルフィアさんの居場所です!」
マホロがシルフィアの胸に飛び込み、その体を強く抱きしめる。
突然のことで困惑するシルフィア。マホロの体に触れるか触れまいかを迷う両手が空を掴む。
「……その方が良いのだろうな。今まで運が良かっただけで、またいつあのような怪物がやって来るとも限らない」
シルフィアはそっとマホロの体を抱く。
何ともぎこちない手つきだが、それは優しさの裏返しだと思う。
「それに……こんなに自分のことを必要としてくれる者の手を払いのけているようでは、私は一生孤独のままだ。両親に捨てられ、人もエルフも信用出来ないとずっと思っていたが……マホロのことは信じてみようと思う」
自分に体を預けるシルフィアを、マホロはより一層強く抱きしめる。
体はマホロの方が小柄だが、その包容力は大人顔負けのものがある。
「私も幼い頃に母を亡くし、父は私に無関心でした。兄弟には存在を疎まれ、命を狙われることもありました。それでも、私を信じて共に生きてくれる人がいました。だから、私はすべての人を……この世界を恨まずに済んだんです」
「信じて……共に生きてくれる人……」
「シルフィアさんにとって私がその人になります。私はシルフィアさんに幸せに生きてほしいんです」
「…………ッ!」
本来なら今日出会ったばかりの相手に対して言う言葉ではないだろう。
何か良からぬことを考え、騙すために言っていると受け取られるのが普通だ。
だが、マホロはそんな常識を軽々と超えていく。
心を持ったゴーレム、異世界から流れ着いた魂、得体の知れぬ魔法の数々……それを知ってもマホロはただ信じ、存在を肯定してくれた。
俺がこの世界で生きていくことを受け入れ、みんなの幸せのために働く決意を固められたのも、マホロの言葉のおかげだ。
もちろん、マホロだって誰でも彼でも信じているわけではない。
ただシルフィアは信じるに足る正しき人物だった……ということだ。
「ふ……ふふっ……! 赤の他人に対して、いきなりとんでもないことを言うではないか……!」
シルフィアは頬を赤らめ、目を潤ませる。
「そんな言葉、信じられない……。普通は信じない……。だが、マホロの言葉は信じよう……!」
「はい! 信じてください! 絶対に後悔させません!」
理屈も根拠もない、勢いだけの真っすぐな言葉……。
時にはそういうものが必要なこともある。
「私はお前たちの街、ラブルピアに移住する」
「やったー! 歓迎します、シルフィアさん!」
これにて一件落着!
ラブルピアがさらに賑やかになるな。
「さあ、引っ越す準備をしなくては……。もう一度私の家まで来てくれないか?」
「もちろんです! 私も引っ越しのお手伝いをします!」
マホロはシルフィアと手をつないで歩く。
その姿は仲睦まじい姉妹のようだ。
「あの木の上の家は、私が一人が建てた物なんだ。最初は家とも呼べないくらい歪な出来栄えだったが、少しずつ建て直してやっと今の姿になった。とても思い入れのある場所で、正直この家をここに置いていくのは惜しい……。だが、決めたことだからな」
ツリーハウスに向かう道中、シルフィアはあの家の思い出を語ってくれた。
それを聞いていたからだろう。マホロはツリーハウスに着いた瞬間、驚くべき提案をした。
「それなら、この木ごとラブルピアに持って行きましょう!」
「……えっ!?」
シルフィアはあんぐりを口を開け、驚きを隠せない様子。
だが、マホロがそう言い出したらそうなんだ。
「お願いします、ガンジョーさん!」
「わかった。この木を引っこ抜いて、ラブルピアに植えよう!」
大地の力で思い出の家ごとお引越しだ!
「ふぅ……。やっぱりこれくらいのサイズが一番落ち着くな」
巨大化はそれだけ動きも大雑把になる。
周囲への被害も気になるし、あまり使いたくはない奥の手だ。
「まずはツリーハウスに行ってみるか」
方位磁石を頼りに急いでツリーハウスに向かう。
マホロたちが上手くシルフィアを連れ出していれば、そこには誰もいないはずだが……。
「マホロ! シルフィア! ……いなさそうだな」
ツリーハウスに被害はなく、そのままの状態で残っていた。
万が一にも戦闘の余波がここにも及んでいたら……と思っていたが、無事で良かった!
「ここにいないなら、上手くリニアトレインまで移動出来たんだな」
ツリーハウスを後にし、リニアトレインに急ぐ。
リニアトレインの動力は俺だから、いざという時も俺がいなければリニアトレインは機能しない。
これは改善の余地アリだな……。
リニアトレイン自体に動力を持たせるか、動かすキーとなる魔法道具を誰かに持たせるか、検討しなければならない。
ただ、どちらにせよリニアトレインを加速させるには莫大な魔力を必要とする。
マホロやメルフィさんでは少々荷が重いのは確かなんだ。
どこかに地属性か雷属性の魔宝石が転がっていれば、喜んでリニアトレインに積み込むのだが……。
「……あっ、いた! おーい、マホロ! みんな!」
プラットホームにはマホロたちの姿があった。
もちろん、シルフィアも一緒だ。
「無事で良かった! あの巨大ゴリラは追い払っておいたよ」
「あ、ありがとう……」
シルフィアはピンク色のブーメランをギュッと握りしめながらそう言った。
その仕草からは大きな不安が読み取れる。
いきなりあんな巨大魔獣がやって来たんだ。怯えるのも無理はない。
「もうここらへんに来る気がなくなるような追い払い方をしておいたから、ゴリラに関しては心配しなくていいんじゃないかな? まあ、絶対とは言い切れないけど……」
「それが当然だ。そもそもこのジャングルはあいつらの領域……。ここも私がいるべき場所ではないんだ。私の居場所はどこにも……」
「なら、私たちの街に来てください! ラブルピアこそがシルフィアさんの居場所です!」
マホロがシルフィアの胸に飛び込み、その体を強く抱きしめる。
突然のことで困惑するシルフィア。マホロの体に触れるか触れまいかを迷う両手が空を掴む。
「……その方が良いのだろうな。今まで運が良かっただけで、またいつあのような怪物がやって来るとも限らない」
シルフィアはそっとマホロの体を抱く。
何ともぎこちない手つきだが、それは優しさの裏返しだと思う。
「それに……こんなに自分のことを必要としてくれる者の手を払いのけているようでは、私は一生孤独のままだ。両親に捨てられ、人もエルフも信用出来ないとずっと思っていたが……マホロのことは信じてみようと思う」
自分に体を預けるシルフィアを、マホロはより一層強く抱きしめる。
体はマホロの方が小柄だが、その包容力は大人顔負けのものがある。
「私も幼い頃に母を亡くし、父は私に無関心でした。兄弟には存在を疎まれ、命を狙われることもありました。それでも、私を信じて共に生きてくれる人がいました。だから、私はすべての人を……この世界を恨まずに済んだんです」
「信じて……共に生きてくれる人……」
「シルフィアさんにとって私がその人になります。私はシルフィアさんに幸せに生きてほしいんです」
「…………ッ!」
本来なら今日出会ったばかりの相手に対して言う言葉ではないだろう。
何か良からぬことを考え、騙すために言っていると受け取られるのが普通だ。
だが、マホロはそんな常識を軽々と超えていく。
心を持ったゴーレム、異世界から流れ着いた魂、得体の知れぬ魔法の数々……それを知ってもマホロはただ信じ、存在を肯定してくれた。
俺がこの世界で生きていくことを受け入れ、みんなの幸せのために働く決意を固められたのも、マホロの言葉のおかげだ。
もちろん、マホロだって誰でも彼でも信じているわけではない。
ただシルフィアは信じるに足る正しき人物だった……ということだ。
「ふ……ふふっ……! 赤の他人に対して、いきなりとんでもないことを言うではないか……!」
シルフィアは頬を赤らめ、目を潤ませる。
「そんな言葉、信じられない……。普通は信じない……。だが、マホロの言葉は信じよう……!」
「はい! 信じてください! 絶対に後悔させません!」
理屈も根拠もない、勢いだけの真っすぐな言葉……。
時にはそういうものが必要なこともある。
「私はお前たちの街、ラブルピアに移住する」
「やったー! 歓迎します、シルフィアさん!」
これにて一件落着!
ラブルピアがさらに賑やかになるな。
「さあ、引っ越す準備をしなくては……。もう一度私の家まで来てくれないか?」
「もちろんです! 私も引っ越しのお手伝いをします!」
マホロはシルフィアと手をつないで歩く。
その姿は仲睦まじい姉妹のようだ。
「あの木の上の家は、私が一人が建てた物なんだ。最初は家とも呼べないくらい歪な出来栄えだったが、少しずつ建て直してやっと今の姿になった。とても思い入れのある場所で、正直この家をここに置いていくのは惜しい……。だが、決めたことだからな」
ツリーハウスに向かう道中、シルフィアはあの家の思い出を語ってくれた。
それを聞いていたからだろう。マホロはツリーハウスに着いた瞬間、驚くべき提案をした。
「それなら、この木ごとラブルピアに持って行きましょう!」
「……えっ!?」
シルフィアはあんぐりを口を開け、驚きを隠せない様子。
だが、マホロがそう言い出したらそうなんだ。
「お願いします、ガンジョーさん!」
「わかった。この木を引っこ抜いて、ラブルピアに植えよう!」
大地の力で思い出の家ごとお引越しだ!
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