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第4章 ゴーレム大地を駆ける
第69話 ゴーレムとビッグボディ
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「そ、それ、本当ですかっ!?」
マホロが食い気味に叫ぶ。
「ああ、間違いない……。この足音の主が気まぐれに方向転換してくれない限り、シルフィアの住むツリーハウスとぶつかる……」
ただ、足音の主はシルフィアを狙っているわけではないと思う。
何か他の理由でここらへんを歩いていて、偶然ツリーハウスの方に来てしまったのだろう。
それでも魔獣という生物は凶暴で、偶然見つけただけの相手を攻撃する可能性は大だ。
このままではシルフィアが危ない……!
「俺がこの足音の主を追い払う。みんなは危険だから、先にリニアトレインに向かってくれ」
「私もシルフィアさんのところに行きます! いざという時に自分だけ安全なところに逃げておいて、私のことを信用しろと言うのは不誠実だと思いますから!」
「マホロ様が行くのならば私も当然お供します」
「ニャア!」
マホロ、メルフィさん、ノルンもついてくる気満々のようだ。
「えっ……!? ということはアタシ一人……? じゃ、じゃあ、アタシもついてくっ!」
ヘルガさんも手を上げ、同行をアピールする。
まあ、こうなることは想定内だ。
何が出来るか、出来ないかじゃなくて、この危機にシルフィアを置いて自分だけ逃げるという選択をマホロがするとは思っていなかった。
「わかった。マホロたちはシルフィアを連れて出来るだけ足音の主から離れてくれ。その間に俺が足音の主の相手をして、最終的にジャングルの奥地にお帰りいただく!」
「お願いします、ガンジョーさん!」
「時間の余裕はあまりない……急ごう!」
俺たちはシルフィアのツリーハウスに向けて走り出す。
その間にも足音は響き続け、メリメリと木々がなぎ倒され、踏み潰される音も聞こえる。
シルフィアの存在に気づくまでもなく、ツリーハウスごと踏み潰されてしまうかもしれない……。
とにかく足音の主の興味を俺の方に引きつけなければ!
「ガンジョーさん、きっとあれが足音の主です!」
「デッ……カッ!!」
俺は無意志に叫ぶ。
マホロが指差す足音の主は、巨大なゴリラのような魔獣だった!
その大きさは十メートルじゃ済まないように見える……!
まるで子どもの時に見た特撮ヒーロー番組に出て来る怪獣だ!
「ガンジョーさん……あんなのどうすればいいんでしょうか!? 今のガンジョーさんどころか、前のガンジョーさんの何倍も何倍もおっきいですよ!」
「……ならば、こちらも大きくなるまでさ!」
こちらとて無策で敵に挑むわけではない。
ジャングルにだって土がある……。ガイアゴーレムの得意とするフィールドだ。
「ここで二手に分かれよう。俺はあの巨大ゴリラの背後から攻撃を仕掛けて注意を引く。マホロたちは真っすぐシルフィアの方に急いでくれ」
「わかりました!」
マホロたちと別れ、俺は全力ダッシュで巨大ゴリラの背後に回り込む。
特に暴れ回っている様子はないが、歩みを止める気配もない。
それしても、こんなでっかい魔獣がジャングルに棲息しているとはな。
いくら奥地にしか棲んでいないと言っても、こんだけ大きければ目立ちそうな気もするが……。
いや、余計なことは考えまい。
今はとにかくこの巨大ゴリラを巣に追い帰すことだけに集中する。
「ガイアさん、前にみんなの見てないところで試した『アレ』……いきますよ!」
〈了解しました。周囲の地面から地属性物質を取り込みます〉
それは体内収納の応用――
地属性物質を取り込めば取り込むほど、その分だけ俺の体は大きくなる。
その原理を使って、ひたすらに物を体に取り込み……巨大化する!
〈十二、十三、十四――全長十五メートル――巨大化停止〉
俺の体はジャングルの地面を吸収し、巨大ゴリラと並ぶほどに巨大化した。
これぞガイアゴーレム・ビッグボディ!
気分は巨大ヒーロー……というよりは、俺も怪獣側の見た目だな。
だが、人を守る正義の心は持ち合わせているつもりだ。
さあ、巨大ゴリラよ……かかって来い!
「あれ……? あっちはまだ俺の存在に気づいてない……?」
ゴリラは背後で巨大化した俺に気づかず、ずんずんと歩き続けている。
嘘だろ……。土を取り込む時、結構大きな音してたぞ……?
これでは本当に背後からの奇襲になってしまう。
戦法としては卑劣極まりないが……仕方ない!
「うおりゃ!」
俺は背後から巨大ゴリラを羽交い絞めにした。
体の重さでは俺の方が勝っている。これでこいつも動けまい。
《ウボオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!!》
ゴリラは筋骨隆々の両腕で、俺の腕を殴りつけて来る。
そう、まるでドラミングのように……!
体の大部分が土で構成されているビッグボディは、ガイアやメタルの時と比べて体の強度が極端に低い。
絶え間なく腕を殴られ続けると、体が崩壊する……!
「ここは一度離す!」
腕をほどき、巨大ゴリラから少し距離を取る。
これで問題はない。巨大ゴリラはまだシルフィアの存在に気づいていないし、いきなり背後から襲い掛かって来た俺のことしか考えていない。
「こいこい! 俺の方に向かってこい、デカゴリラ!」
《ウボオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!!》
怒りのままに突進を仕掛けて来る巨大ゴリラ。
一歩ごとにドスンドスンと大地が揺れ、地面がめくれ上がる。
そんな破壊力抜群の突進を、俺は正面から受け止める。
ズサァァァ……と体が後ろに下がり、地面に一直線の深い跡が残る。
その後、ゴリラは体勢を変えて大きく腕を振り上げる。
パンチ――その動作を読み切っていた俺は、振り下ろされた拳を手のひらで受け止める。
間髪入れずにもう片方の腕からパンチが飛んで来るが……それも受け止める!
こうして両手を掴んでの取っ組み合いになったわけだが、これこそが俺の作戦だ!
「大地の守護神ガイアゴーレムは、ジャングルの地形だって操れる」
力と力の押し合いの中、俺は踏ん張るゴリラの足元の地面をボコッとへこませた!
当然ゴリラはバランスを崩し、俺に押し切られる形で仰向けに倒れる。
そこですかさず俺はゴリラの両足をホールド。
立ち上がれなくすると同時に……これはフィニッシュ・ホールドの布石でもある。
「ふんふんふんふんふんふん……………………ッ!!」
自分の体を中心軸とし、ゴーレムのパワーに物を言わせてゴリラを振り回す。
ぐるんぐるんぐるんとハンマー投げのようにゴリラに遠心力を伝え、それがピークに達した時……パッと両手を離した。
《ウボオオオ~~~~~~……………………!》
ゴリラは叫び声を上げながら勢いよく空を飛ぶ!
そして、ジャングルを流れる大河の中へドボンッと落ちた。
巨大な巨大な水柱が、天に向かって立つ!
「勝手で悪いが、もう二度とこっちに来るんじゃないぞ!」
下手に奥地から出てくれば、恐るべき岩石の怪物に襲われる――
そうゴリラ仲間にも伝えてくれるとありがたいんだがな。
「さて、体と戦闘で荒れた地面を元に戻して、シルフィアのところへ急ごう」
マホロが食い気味に叫ぶ。
「ああ、間違いない……。この足音の主が気まぐれに方向転換してくれない限り、シルフィアの住むツリーハウスとぶつかる……」
ただ、足音の主はシルフィアを狙っているわけではないと思う。
何か他の理由でここらへんを歩いていて、偶然ツリーハウスの方に来てしまったのだろう。
それでも魔獣という生物は凶暴で、偶然見つけただけの相手を攻撃する可能性は大だ。
このままではシルフィアが危ない……!
「俺がこの足音の主を追い払う。みんなは危険だから、先にリニアトレインに向かってくれ」
「私もシルフィアさんのところに行きます! いざという時に自分だけ安全なところに逃げておいて、私のことを信用しろと言うのは不誠実だと思いますから!」
「マホロ様が行くのならば私も当然お供します」
「ニャア!」
マホロ、メルフィさん、ノルンもついてくる気満々のようだ。
「えっ……!? ということはアタシ一人……? じゃ、じゃあ、アタシもついてくっ!」
ヘルガさんも手を上げ、同行をアピールする。
まあ、こうなることは想定内だ。
何が出来るか、出来ないかじゃなくて、この危機にシルフィアを置いて自分だけ逃げるという選択をマホロがするとは思っていなかった。
「わかった。マホロたちはシルフィアを連れて出来るだけ足音の主から離れてくれ。その間に俺が足音の主の相手をして、最終的にジャングルの奥地にお帰りいただく!」
「お願いします、ガンジョーさん!」
「時間の余裕はあまりない……急ごう!」
俺たちはシルフィアのツリーハウスに向けて走り出す。
その間にも足音は響き続け、メリメリと木々がなぎ倒され、踏み潰される音も聞こえる。
シルフィアの存在に気づくまでもなく、ツリーハウスごと踏み潰されてしまうかもしれない……。
とにかく足音の主の興味を俺の方に引きつけなければ!
「ガンジョーさん、きっとあれが足音の主です!」
「デッ……カッ!!」
俺は無意志に叫ぶ。
マホロが指差す足音の主は、巨大なゴリラのような魔獣だった!
その大きさは十メートルじゃ済まないように見える……!
まるで子どもの時に見た特撮ヒーロー番組に出て来る怪獣だ!
「ガンジョーさん……あんなのどうすればいいんでしょうか!? 今のガンジョーさんどころか、前のガンジョーさんの何倍も何倍もおっきいですよ!」
「……ならば、こちらも大きくなるまでさ!」
こちらとて無策で敵に挑むわけではない。
ジャングルにだって土がある……。ガイアゴーレムの得意とするフィールドだ。
「ここで二手に分かれよう。俺はあの巨大ゴリラの背後から攻撃を仕掛けて注意を引く。マホロたちは真っすぐシルフィアの方に急いでくれ」
「わかりました!」
マホロたちと別れ、俺は全力ダッシュで巨大ゴリラの背後に回り込む。
特に暴れ回っている様子はないが、歩みを止める気配もない。
それしても、こんなでっかい魔獣がジャングルに棲息しているとはな。
いくら奥地にしか棲んでいないと言っても、こんだけ大きければ目立ちそうな気もするが……。
いや、余計なことは考えまい。
今はとにかくこの巨大ゴリラを巣に追い帰すことだけに集中する。
「ガイアさん、前にみんなの見てないところで試した『アレ』……いきますよ!」
〈了解しました。周囲の地面から地属性物質を取り込みます〉
それは体内収納の応用――
地属性物質を取り込めば取り込むほど、その分だけ俺の体は大きくなる。
その原理を使って、ひたすらに物を体に取り込み……巨大化する!
〈十二、十三、十四――全長十五メートル――巨大化停止〉
俺の体はジャングルの地面を吸収し、巨大ゴリラと並ぶほどに巨大化した。
これぞガイアゴーレム・ビッグボディ!
気分は巨大ヒーロー……というよりは、俺も怪獣側の見た目だな。
だが、人を守る正義の心は持ち合わせているつもりだ。
さあ、巨大ゴリラよ……かかって来い!
「あれ……? あっちはまだ俺の存在に気づいてない……?」
ゴリラは背後で巨大化した俺に気づかず、ずんずんと歩き続けている。
嘘だろ……。土を取り込む時、結構大きな音してたぞ……?
これでは本当に背後からの奇襲になってしまう。
戦法としては卑劣極まりないが……仕方ない!
「うおりゃ!」
俺は背後から巨大ゴリラを羽交い絞めにした。
体の重さでは俺の方が勝っている。これでこいつも動けまい。
《ウボオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!!》
ゴリラは筋骨隆々の両腕で、俺の腕を殴りつけて来る。
そう、まるでドラミングのように……!
体の大部分が土で構成されているビッグボディは、ガイアやメタルの時と比べて体の強度が極端に低い。
絶え間なく腕を殴られ続けると、体が崩壊する……!
「ここは一度離す!」
腕をほどき、巨大ゴリラから少し距離を取る。
これで問題はない。巨大ゴリラはまだシルフィアの存在に気づいていないし、いきなり背後から襲い掛かって来た俺のことしか考えていない。
「こいこい! 俺の方に向かってこい、デカゴリラ!」
《ウボオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!!》
怒りのままに突進を仕掛けて来る巨大ゴリラ。
一歩ごとにドスンドスンと大地が揺れ、地面がめくれ上がる。
そんな破壊力抜群の突進を、俺は正面から受け止める。
ズサァァァ……と体が後ろに下がり、地面に一直線の深い跡が残る。
その後、ゴリラは体勢を変えて大きく腕を振り上げる。
パンチ――その動作を読み切っていた俺は、振り下ろされた拳を手のひらで受け止める。
間髪入れずにもう片方の腕からパンチが飛んで来るが……それも受け止める!
こうして両手を掴んでの取っ組み合いになったわけだが、これこそが俺の作戦だ!
「大地の守護神ガイアゴーレムは、ジャングルの地形だって操れる」
力と力の押し合いの中、俺は踏ん張るゴリラの足元の地面をボコッとへこませた!
当然ゴリラはバランスを崩し、俺に押し切られる形で仰向けに倒れる。
そこですかさず俺はゴリラの両足をホールド。
立ち上がれなくすると同時に……これはフィニッシュ・ホールドの布石でもある。
「ふんふんふんふんふんふん……………………ッ!!」
自分の体を中心軸とし、ゴーレムのパワーに物を言わせてゴリラを振り回す。
ぐるんぐるんぐるんとハンマー投げのようにゴリラに遠心力を伝え、それがピークに達した時……パッと両手を離した。
《ウボオオオ~~~~~~……………………!》
ゴリラは叫び声を上げながら勢いよく空を飛ぶ!
そして、ジャングルを流れる大河の中へドボンッと落ちた。
巨大な巨大な水柱が、天に向かって立つ!
「勝手で悪いが、もう二度とこっちに来るんじゃないぞ!」
下手に奥地から出てくれば、恐るべき岩石の怪物に襲われる――
そうゴリラ仲間にも伝えてくれるとありがたいんだがな。
「さて、体と戦闘で荒れた地面を元に戻して、シルフィアのところへ急ごう」
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