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第3章 ゴーレム大地を照らす
第53話 ゴーレムと瓦礫の楽園
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「ラブルピア……素敵な名前だ! 何だか愛にあふれていそうな響きもある。そこに込められた意味もちゃんとあって、流石はマホロだなぁ」
俺はマホロのネーミングセンスを称賛する。
由来がシンプルでありながら、個性的で独特な雰囲気を感じる。
この街にこれ以上ふさわしい名前はないと思えるほどに……!
「えへへ……っ! そんなに褒められると照れちゃいます! 一生懸命考えた甲斐がありました! ガンジョーさんがいつも私に『褒められると頑張る力が湧いて来る』って言いますけど、それはこういう気持ちなんですね!」
マホロが体をくねらせながら言う。
ここまで喜んでくれると、こっちまで嬉しくなってくるな。
「では、今から瓦礫の街の名前はラブルピアに決定です! これはファーゼス領の領主代行マホロ・ロックハートとしての決定になります!」
マホロが右腕を突き上げ、天を指さす。
その判断に異論を唱える人はこの場にいなかった。
というか、俺とマホロ以外は異論を唱える余裕がなさそうだ……。
「灯台の完成を見届け、展望台からの景色も楽しめました! 地上に下りましょう!」
「……いや、最後に大事な仕事が残ってる」
俺は展望台のさらに上を見上げる。
灯台として一番大事な光源の点火をまだ行っていないんだ。
それゆえに、まだ灯台はすっかり暗くなった荒野に光を届けられていない……。
これを点火せずに地上に下りてしまうのは、まさに『画竜点睛を欠く』というものだろう。
「おじさん、光源となる炎の魔宝石の点火を……」
俺がそうお願いしようとすると、おじさんは手のひらをこちらに向けて言った。
「いや、その役目は旦那がやるべきだ……! 今の俺に余裕がないってのもあるが……そもそも腕輪はすでに旦那に託した物だ。その力を発揮するなら、ガンジョーの旦那の手でやってほしい!」
「……わかりました」
おじさんがそう言うなら、拒否する理由は俺にない。
「灯台に炎を灯します!」
難しいことは何もない。
レンズの中にある炎の魔宝石と俺は接続している。
「点火!」
その一言で灯台に炎が灯った。
俺が霊園で試した時のような小さな太陽がレンズ内に出現し、その温かな光がレンズで増幅され四方へと放たれる。
暗い夜空を貫くまばゆい光は、俺たちの目でもハッキリと見ることが出来るほどだ。
その光がレンズの下に設置された仕掛けによってゆっくりと回転する。
ちょうど一分間で一周するペースだ。
「この光で救われる人が一人でもいれば……そう願うばかりです」
マホロが胸の前で指を組んで祈りを捧げる。
彼女の願いが届くように、俺も同じような姿勢で祈った。
まあ、俺は大地の守護神なわけだから、神様に祈るわけにもいかないわけだが……。
それでも何かに祈りたくなる時というのは誰しもあるものだ。
「これからはこの街を見守ってくれるんだな……ヘンリック」
おじさんはついに震えることなく立ち上がった。
そして、地平線まで伸びる光の行く先を見据えていた。
「ガンジョーの旦那、マホロの嬢ちゃん、改めてありがとう。生まれ変わる街のシンボルとなる建物に関われたことを光栄に思う。ということで……そろそろ下りようじゃないか! カッコつけてはみたものの、やっぱりまだまだ高いところは怖えぇ……!」
おじさんの脚が再び震え始め、メルフィさんはどうにもダメそうだったので、俺たちは全員に再び円盤に乗り込み地上へと帰還した。
「ふあぁ……! 大地に……土に……安心しますっ!」
メルフィさんは地上に戻ってからもしばらく四足歩行だった。
そうして、大地の感触とありがたさを再確認していた。
「ふぅ……。それでガンジョーの旦那は今夜も霊園に残るのかい?」
地上に下りて一安心のおじさんが訪ねて来る。
「はい。今日廃鉱山から運んで来た亡骸がありますから、今まで通り清めた後は一晩骨壺のフタを閉めずに地上に安置して、一緒に朝を迎えます」
「旦那の心意気には、きっとみんな感謝していると思う。その魂はきっと天へと導かれるさ……」
おじさんと一緒に地上から見上げる灯台は、それはそれは高くそびえ立っていた。
さっきまであのてっぺんにいたという実感を忘れてしまいそうなほどに。
「じゃあ、また明日な! ガンジョーの旦那!」
「ええ、おやすみなさい」
おじさんは息子ヘンリックさんの墓の前で手を合わせた後、霊園から去った。
「私たちも教会に帰ります。メルフィがちょっと心配なので……」
「ああ、ゆっくり休ませてあげてほしい……」
マホロはメルフィさんの体を支え、地上に戻ってからはケロッとしているノルンと一緒に防壁の中に帰っていった。
これで霊園には俺だけが残っている。
最近はずっとこの形で過ごしていたな。
でも、廃鉱山の亡骸をすべて運び終え、鎮魂の灯台を建てた今……この霊園はもうほとんど完成している。
ということは、明日からまた新たな挑戦が始まるということだ。
亡くなった方のために働いた後は、今を生きている人のために働かなければならない。
生きるために必要なのは……食べ物だ。
「畑の作物がまだまだ育ち切らない以上、やはり食料を安定して確保出来るジャングルへのアクセス方法を改善するのが得策かな」
独り言を言いながら、これからのプランを組み立てる。
瓦礫の街からレールを敷いて……おっと、ラブルピアからレールを敷いてジャングルへとつなげる。
そして、何台ものトロッコを走らせて、どっさりとジャングルの恵みを持ち帰る。
「他にもやるべきことが見つかるかもしれないけど、当面の目標はこれでいこう」
消えない炎が灯った灯台を見上げながら、明るい未来を思い描く俺だった。
俺はマホロのネーミングセンスを称賛する。
由来がシンプルでありながら、個性的で独特な雰囲気を感じる。
この街にこれ以上ふさわしい名前はないと思えるほどに……!
「えへへ……っ! そんなに褒められると照れちゃいます! 一生懸命考えた甲斐がありました! ガンジョーさんがいつも私に『褒められると頑張る力が湧いて来る』って言いますけど、それはこういう気持ちなんですね!」
マホロが体をくねらせながら言う。
ここまで喜んでくれると、こっちまで嬉しくなってくるな。
「では、今から瓦礫の街の名前はラブルピアに決定です! これはファーゼス領の領主代行マホロ・ロックハートとしての決定になります!」
マホロが右腕を突き上げ、天を指さす。
その判断に異論を唱える人はこの場にいなかった。
というか、俺とマホロ以外は異論を唱える余裕がなさそうだ……。
「灯台の完成を見届け、展望台からの景色も楽しめました! 地上に下りましょう!」
「……いや、最後に大事な仕事が残ってる」
俺は展望台のさらに上を見上げる。
灯台として一番大事な光源の点火をまだ行っていないんだ。
それゆえに、まだ灯台はすっかり暗くなった荒野に光を届けられていない……。
これを点火せずに地上に下りてしまうのは、まさに『画竜点睛を欠く』というものだろう。
「おじさん、光源となる炎の魔宝石の点火を……」
俺がそうお願いしようとすると、おじさんは手のひらをこちらに向けて言った。
「いや、その役目は旦那がやるべきだ……! 今の俺に余裕がないってのもあるが……そもそも腕輪はすでに旦那に託した物だ。その力を発揮するなら、ガンジョーの旦那の手でやってほしい!」
「……わかりました」
おじさんがそう言うなら、拒否する理由は俺にない。
「灯台に炎を灯します!」
難しいことは何もない。
レンズの中にある炎の魔宝石と俺は接続している。
「点火!」
その一言で灯台に炎が灯った。
俺が霊園で試した時のような小さな太陽がレンズ内に出現し、その温かな光がレンズで増幅され四方へと放たれる。
暗い夜空を貫くまばゆい光は、俺たちの目でもハッキリと見ることが出来るほどだ。
その光がレンズの下に設置された仕掛けによってゆっくりと回転する。
ちょうど一分間で一周するペースだ。
「この光で救われる人が一人でもいれば……そう願うばかりです」
マホロが胸の前で指を組んで祈りを捧げる。
彼女の願いが届くように、俺も同じような姿勢で祈った。
まあ、俺は大地の守護神なわけだから、神様に祈るわけにもいかないわけだが……。
それでも何かに祈りたくなる時というのは誰しもあるものだ。
「これからはこの街を見守ってくれるんだな……ヘンリック」
おじさんはついに震えることなく立ち上がった。
そして、地平線まで伸びる光の行く先を見据えていた。
「ガンジョーの旦那、マホロの嬢ちゃん、改めてありがとう。生まれ変わる街のシンボルとなる建物に関われたことを光栄に思う。ということで……そろそろ下りようじゃないか! カッコつけてはみたものの、やっぱりまだまだ高いところは怖えぇ……!」
おじさんの脚が再び震え始め、メルフィさんはどうにもダメそうだったので、俺たちは全員に再び円盤に乗り込み地上へと帰還した。
「ふあぁ……! 大地に……土に……安心しますっ!」
メルフィさんは地上に戻ってからもしばらく四足歩行だった。
そうして、大地の感触とありがたさを再確認していた。
「ふぅ……。それでガンジョーの旦那は今夜も霊園に残るのかい?」
地上に下りて一安心のおじさんが訪ねて来る。
「はい。今日廃鉱山から運んで来た亡骸がありますから、今まで通り清めた後は一晩骨壺のフタを閉めずに地上に安置して、一緒に朝を迎えます」
「旦那の心意気には、きっとみんな感謝していると思う。その魂はきっと天へと導かれるさ……」
おじさんと一緒に地上から見上げる灯台は、それはそれは高くそびえ立っていた。
さっきまであのてっぺんにいたという実感を忘れてしまいそうなほどに。
「じゃあ、また明日な! ガンジョーの旦那!」
「ええ、おやすみなさい」
おじさんは息子ヘンリックさんの墓の前で手を合わせた後、霊園から去った。
「私たちも教会に帰ります。メルフィがちょっと心配なので……」
「ああ、ゆっくり休ませてあげてほしい……」
マホロはメルフィさんの体を支え、地上に戻ってからはケロッとしているノルンと一緒に防壁の中に帰っていった。
これで霊園には俺だけが残っている。
最近はずっとこの形で過ごしていたな。
でも、廃鉱山の亡骸をすべて運び終え、鎮魂の灯台を建てた今……この霊園はもうほとんど完成している。
ということは、明日からまた新たな挑戦が始まるということだ。
亡くなった方のために働いた後は、今を生きている人のために働かなければならない。
生きるために必要なのは……食べ物だ。
「畑の作物がまだまだ育ち切らない以上、やはり食料を安定して確保出来るジャングルへのアクセス方法を改善するのが得策かな」
独り言を言いながら、これからのプランを組み立てる。
瓦礫の街からレールを敷いて……おっと、ラブルピアからレールを敷いてジャングルへとつなげる。
そして、何台ものトロッコを走らせて、どっさりとジャングルの恵みを持ち帰る。
「他にもやるべきことが見つかるかもしれないけど、当面の目標はこれでいこう」
消えない炎が灯った灯台を見上げながら、明るい未来を思い描く俺だった。
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