48 / 86
第3章 ゴーレム大地を照らす
第48話 ゴーレムと上下移動
しおりを挟む
「お……おおっ!? えっ、完成……違う!? な、なんじゃこりゃあーーーーーーッ!?」
おじさんが腰を抜かして叫ぶ。
仮想造形のこともおじさんに説明してなかったな……。
ただ、これに関しては3Dモデルという概念を知らないおじさんに説明するのが、そもそも難しい話ではある。
「えっと……これは灯台の立体的な完成予想図なんです。おじさんの設計図通りに組み立てれば、こんな形になりますよというイメージの幻というか……」
「はぁ、はぁ……なるほど……! そりゃ便利な魔法なこった! 実際に組み立ててどんな形になるのかを事前に把握出来りゃ、改善や修正もやりやすいってもんよ」
おじさんは思ったよりもすんなり仮想造形を理解してくれた。
いつも謙遜しているけど、やっぱり彼はすごい人なんだ。
「ふむ……ふむふむ……ふーむふむ……」
興味深そうに3Dモデルの周りをぐるぐると回って眺めるおじさん。
この3Dモデルは完成した時の灯台の形状そのものだし、建設する位置も同じにしてある。
霊園の入口から見て奥の方、立ち並ぶ墓石の列を抜けると灯台にたどり着けるようにする。
3Dモデルは灯台の内部まで正確に作ってある。
この灯台は展望台付きにする予定で、内部には展望台に向かうための螺旋階段が造形されている。
「……ああ、ダメだなこりゃ」
おじさんがポツリとつぶやいたのを俺とマホロは聞き逃さなかった。
「こ、この灯台どこかダメなんですか!?」
俺より先に食いついたのはマホロだ。
その鬼気迫る問いかけに、おじさんは慌てて両手を横に振った。
「いやいや、全部がダメってわけなないんだ。むしろ、灯台としてならこれで完璧と言ってもいい」
「じゃあ、どこがダメなんですか……?」
「展望台としてさ。この灯台は百メートルもあるのに、その上部の展望台に登るのに螺旋階段だけってのは……しんど過ぎると思わないか?」
「ハッ……! 確かに!」
マホロはパンッと手を叩いて納得する。
俺も手こそ叩かなかったがかなり納得した。
ゴーレムの体では灯台の中に入れないから、俺は上る時のことを今まで考えなかった。
だが、言われてみれば百メートルを螺旋階段で上って、また下りて来るなんて……想像するだけで足腰に震えが来そうだ……!
人間時代の俺がそんなことをしようものなら、強烈な筋肉痛に襲われて数日は動けなくなるだろう……。
マホロだって体が軽くて若いと言っても、流石に限度ってものがある。
「ただ、上るのがしんどいと言っても、それはここから設計を変えてどうにかなることなんでしょうか? 灯台を低くするのでは本末転倒ですし……」
しょんぼりするマホロ。
遠くまで光を届けるという目的のためにも、灯台を低くするわけにはいかない。
ここはガイアさんの知恵を借りるべきか……。
「安心しな、マホロの嬢ちゃん。もう対応策は考えてある」
おじさんがドンと胸を張ってそう言った。
その表情から嘘や偽りは感じられない。
「本当ですか……!? そんな方法があるんですか!?」
「ある! こんなところでちんけなプライドを守る嘘はつかねぇさ。その方法ってのは……エレベーターだ!」
エレベーター……俺には聞き慣れた言葉だが、この世界にもエレベーターが存在したのか!
「エレベーター、エレベーター……聞いたことがあります。魔力によって上下に移動する足場で、高いところにも素早く楽に上れる画期的な発明だと」
「おおっ、嬢ちゃんも知っていたか! 流石はロックハートの……あ、いや、都会で暮らしていた期間がそれなりにあると耳に入るもんだな……!」
マホロも知っているということは、この世界におけるエレベーターの知名度はそこそこあるんだな。
そして、ロックハート家の知名度もなかなか高そうだ……。
「ガンジョーさんはエレベーターを知っていますか?」
「ああ、知ってるよ。元の世界では広く普及していたからね」
マホロの質問に隠すことなく答える。
ただ、俺の知ってるエレベーターとこの世界のエレベーターは少し違っていそうだ。
「俺の世界のエレベーターは人が乗り込む箱を頑丈なワイヤーで吊るして、そのワイヤーを巻き上げることで上下に移動をしていたんだ。でも、その巻き上げ機構を入れるスペースが、今の灯台にはないような……」
この灯台は巨大建造物だが、なんちゃらツリーやタワーのような観光スポットほどではない。
大掛かりな設備を設置する余裕はないように思える。
「なるほど、旦那の世界では巻き上げ式だったか。だが、安心してくれ。こっちの世界には魔力を動力とした省スペースのエレベーターがいくつか存在する」
おじさんは灯台の3Dモデルを指さす。
「旦那、この灯台の外壁だけを一旦取り払うってことは可能か?」
「いけると思います。ガイアさん、灯台の外壁を一旦非表示にしてください」
〈了解しました〉
灯台の3Dモデルから外壁が消え、内部で渦を巻いている螺旋階段が露出する。
おじさんはその螺旋階段の中心、渦の真ん中の床に立ち真上を見上げる。
「うーむ、百メートルってのは中から見ても高いなぁ。だが、螺旋階段の真ん中にこれだけのスペースがあれば……アレを設置出来る!」
今度は灯台の床を指さすおじさん。
確かに螺旋階段の真ん中は吹き抜け、天井から床まで空間があいている。
「旦那、この床から天井まで一本の鋼鉄の棒を通すことは出来るか?」
「出来ますよ。太さはどれくらいにしましょう?」
「うーむ……素材の強度にもよるが直径六十センチもあれば十分だろう」
俺はモデリングをいじって、螺旋階段の真ん中に一本の棒を通す。
これで一体どんなエレベーターが出来上がるんだろうか?
「ありがとうよ、旦那! この鋼鉄の棒を軸に電磁魔動式エレベーターを設置する!」
「で、電磁魔動式エレベーター……!?」
想像していたよりすごい単語が出て来た……!
おじさんが腰を抜かして叫ぶ。
仮想造形のこともおじさんに説明してなかったな……。
ただ、これに関しては3Dモデルという概念を知らないおじさんに説明するのが、そもそも難しい話ではある。
「えっと……これは灯台の立体的な完成予想図なんです。おじさんの設計図通りに組み立てれば、こんな形になりますよというイメージの幻というか……」
「はぁ、はぁ……なるほど……! そりゃ便利な魔法なこった! 実際に組み立ててどんな形になるのかを事前に把握出来りゃ、改善や修正もやりやすいってもんよ」
おじさんは思ったよりもすんなり仮想造形を理解してくれた。
いつも謙遜しているけど、やっぱり彼はすごい人なんだ。
「ふむ……ふむふむ……ふーむふむ……」
興味深そうに3Dモデルの周りをぐるぐると回って眺めるおじさん。
この3Dモデルは完成した時の灯台の形状そのものだし、建設する位置も同じにしてある。
霊園の入口から見て奥の方、立ち並ぶ墓石の列を抜けると灯台にたどり着けるようにする。
3Dモデルは灯台の内部まで正確に作ってある。
この灯台は展望台付きにする予定で、内部には展望台に向かうための螺旋階段が造形されている。
「……ああ、ダメだなこりゃ」
おじさんがポツリとつぶやいたのを俺とマホロは聞き逃さなかった。
「こ、この灯台どこかダメなんですか!?」
俺より先に食いついたのはマホロだ。
その鬼気迫る問いかけに、おじさんは慌てて両手を横に振った。
「いやいや、全部がダメってわけなないんだ。むしろ、灯台としてならこれで完璧と言ってもいい」
「じゃあ、どこがダメなんですか……?」
「展望台としてさ。この灯台は百メートルもあるのに、その上部の展望台に登るのに螺旋階段だけってのは……しんど過ぎると思わないか?」
「ハッ……! 確かに!」
マホロはパンッと手を叩いて納得する。
俺も手こそ叩かなかったがかなり納得した。
ゴーレムの体では灯台の中に入れないから、俺は上る時のことを今まで考えなかった。
だが、言われてみれば百メートルを螺旋階段で上って、また下りて来るなんて……想像するだけで足腰に震えが来そうだ……!
人間時代の俺がそんなことをしようものなら、強烈な筋肉痛に襲われて数日は動けなくなるだろう……。
マホロだって体が軽くて若いと言っても、流石に限度ってものがある。
「ただ、上るのがしんどいと言っても、それはここから設計を変えてどうにかなることなんでしょうか? 灯台を低くするのでは本末転倒ですし……」
しょんぼりするマホロ。
遠くまで光を届けるという目的のためにも、灯台を低くするわけにはいかない。
ここはガイアさんの知恵を借りるべきか……。
「安心しな、マホロの嬢ちゃん。もう対応策は考えてある」
おじさんがドンと胸を張ってそう言った。
その表情から嘘や偽りは感じられない。
「本当ですか……!? そんな方法があるんですか!?」
「ある! こんなところでちんけなプライドを守る嘘はつかねぇさ。その方法ってのは……エレベーターだ!」
エレベーター……俺には聞き慣れた言葉だが、この世界にもエレベーターが存在したのか!
「エレベーター、エレベーター……聞いたことがあります。魔力によって上下に移動する足場で、高いところにも素早く楽に上れる画期的な発明だと」
「おおっ、嬢ちゃんも知っていたか! 流石はロックハートの……あ、いや、都会で暮らしていた期間がそれなりにあると耳に入るもんだな……!」
マホロも知っているということは、この世界におけるエレベーターの知名度はそこそこあるんだな。
そして、ロックハート家の知名度もなかなか高そうだ……。
「ガンジョーさんはエレベーターを知っていますか?」
「ああ、知ってるよ。元の世界では広く普及していたからね」
マホロの質問に隠すことなく答える。
ただ、俺の知ってるエレベーターとこの世界のエレベーターは少し違っていそうだ。
「俺の世界のエレベーターは人が乗り込む箱を頑丈なワイヤーで吊るして、そのワイヤーを巻き上げることで上下に移動をしていたんだ。でも、その巻き上げ機構を入れるスペースが、今の灯台にはないような……」
この灯台は巨大建造物だが、なんちゃらツリーやタワーのような観光スポットほどではない。
大掛かりな設備を設置する余裕はないように思える。
「なるほど、旦那の世界では巻き上げ式だったか。だが、安心してくれ。こっちの世界には魔力を動力とした省スペースのエレベーターがいくつか存在する」
おじさんは灯台の3Dモデルを指さす。
「旦那、この灯台の外壁だけを一旦取り払うってことは可能か?」
「いけると思います。ガイアさん、灯台の外壁を一旦非表示にしてください」
〈了解しました〉
灯台の3Dモデルから外壁が消え、内部で渦を巻いている螺旋階段が露出する。
おじさんはその螺旋階段の中心、渦の真ん中の床に立ち真上を見上げる。
「うーむ、百メートルってのは中から見ても高いなぁ。だが、螺旋階段の真ん中にこれだけのスペースがあれば……アレを設置出来る!」
今度は灯台の床を指さすおじさん。
確かに螺旋階段の真ん中は吹き抜け、天井から床まで空間があいている。
「旦那、この床から天井まで一本の鋼鉄の棒を通すことは出来るか?」
「出来ますよ。太さはどれくらいにしましょう?」
「うーむ……素材の強度にもよるが直径六十センチもあれば十分だろう」
俺はモデリングをいじって、螺旋階段の真ん中に一本の棒を通す。
これで一体どんなエレベーターが出来上がるんだろうか?
「ありがとうよ、旦那! この鋼鉄の棒を軸に電磁魔動式エレベーターを設置する!」
「で、電磁魔動式エレベーター……!?」
想像していたよりすごい単語が出て来た……!
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる