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第3章 ゴーレム大地を照らす

第46話 ゴーレムと一区切り

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「あ、ボーッとしてる場合じゃない。俺は俺で火の魔宝石の力を引き出しておかないといけないんだ」

 荒野の遥か向こうまで照らす灯火ともしび……。
 それを生み出すのなら、光の加減がわかりやすい夜の方がいいに決まってる。
 あと、壁に囲われた霊園なら激しい発光が出てしまっても迷惑にならないし……。

「さて、まずは……ガイアさん、腕輪の魔宝石と地の魔宝石を接続リンクしてください」

〈了解――――――魔力回路接続サーキットリンク、完了〉

 廃鉱山で地の魔宝石を手に入れた時よりはサクッと繋がった。
 これは魔宝石の大きさの問題なのか、すでに人の手で加工され人の持ち物になっていたからなのか……まあ、そこはいい。

「遠くまで照らせる灯火……灯火……」

 生み出したい物を口に出し、明るく輝く炎を思い浮かべる。

「魔宝石……起動!」

 指にはめた火の魔宝石の腕輪に魔力を流し込む。
 すると、俺の目の前に小さな太陽のような炎の塊が現れた。
 直視しても眩しくはないが、とても暖かくて明るい灯火だ……!

 地の魔宝石と接続リンクしたおかげで、この火の魔宝石を完璧に制御下に置けている感覚がある。
 おそらくはもう命令するだけで……。

彼方かなたを照らす消えない炎よ……輝け!」

 小さな太陽からパァッと光が伸びる。
 それは俺の元いた世界で見たことがある灯台の光。
 ビームのように伸びた光を、くるくると回転させ全方位に届けている。

「これが魔宝石の力……! ここまで繊細に炎の特性を変化させられるとは……」

 正直、光を増幅させるレンズや、そのレンズを回転させる装置なんかも作らないといけないと思っていた。
 だが、魔宝石の力は俺の想像を遥かに超えていた。
 このまま腕輪を灯台のてっぺんに置くだけで、光源として十分役目を果たしてくれるだろう。

「後はおじさんの基礎設計を待つだけだ」

 魔宝石の制御、光源の確保は問題ない。
 俺は引き続き霊園と廃鉱山を往復して、まだ回収出来ていない亡骸の埋葬を続けよう。

 ◇ ◇ ◇

 おじさんに灯台計画を話してから数日後、俺は廃鉱山全体の探索を終えた。
 広いと言っても、俺が手を加えなければこれ以上広がらない場所だ。
 時間をかければ終着点にたどり着く。

 廃鉱山で回収した亡骸の数は、最終的に百五十を超えた。
 それだけ大事故だったということだが、鉱山の規模と比べると少ないと考えることも出来る。
 事故が起こった際、上手く脱出した人もたくさんいたと思いたいものだ。

「街の亡骸も大体回収を終えたと思います。瓦礫の下に埋まっていて、まだ見つかっていない方もいるかも知れませんが……見つけた方に関しては何とか一区切りついたかと」

 メルフィさんがそう報告してくれた。
 廃鉱山に行けないマホロとメルフィさんは、街の亡骸の回収を担当してくれたんだ。

 街の亡骸は雨や風に晒されたり、魔獣に食い荒らされたりで、綺麗な形で残っていることがあまりない。
 なので、棺ではなく最初から骨壺で遺骨を回収してもらった。

 マホロたちに渡した骨壺の素材は、細腕でも持ち運びやすいように廃鉱山で発見した軽い石材『カルスー石』で作ってある。
 カルスー石は軽くてたくさん手に入る代わりに脆くて加工が難しい。

 だが、ガイアさんの究極大地魔法にかかれば、脆い素材も形を整えるのは容易。
 そこへさらに硬質化ハーディングほどこせば、軽い上に頑丈な壺の出来上がりだ。

 瓦礫の街で見つかった亡骸は、今のところ五十以上と言ったところだ。
 廃鉱山の亡骸と合わせて二百以上……。
 街に関してはまだ見つかる可能性もあるため、墓石は多めに設置しておく。

「ガンジョーさん、これで一つやり切りましたね!」

「ああ、今を生きている人間がやるべきことは出来たと思う。後はみんながもっと生きやすいように、街をさらに発展させていくだけさ」

 並んだ墓石を眺めて、マホロと語り合う。
 見つかった亡骸の中には、どうしても名前につながる遺品が見つからなかった方もいた。

 それでも遺された物をかき集めて埋葬した。
 今の俺たちに出来る精一杯だ。

「おじさん……設計図は順調に進んでるでしょうか……」

 マホロがぽつりとつぶやく。
 あれからおじさんの姿を見ていない。
 家にこもってずっと設計図とにらめっこしているのだろうか……。

 いくらでも待つと言った手前、かすようなことは言えない。
 でも、悩んで前に進まないようなら、体を壊す前に声をかけるべきだと思うし……と、マホロと会うたびにこんな話をして一緒に悩んでいる。

「とりあえず、一回おじさんの家を尋ねてみましょう、ガンジョーさん! 設計図のことは口に出さずに、どういう状況なのかをしれっと探るんです!」

「うん、それがいいね。家の中で倒れてるなんてことも、ないわけじゃないし」

 俺とマホロがそう決心し、霊園から街に戻ろうとしたその時、霊園の入口に見覚えのある人影があった。

「よう……待たせたな、嬢ちゃんに旦那……!」

「おじさん……!」
「おじさん……!」

 俺とマホロの声がハモる。
 そこにいたのは、目の下にクマを作った『おじさん』ことクラウス・エーデルシュタインさんだった。

「形にして来たぜ……百メートルを超える灯台の設計図をよ……!」
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