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第3章 ゴーレム大地を照らす

第31話 ゴーレムと住居復興

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 瓦礫の街に流れる水は、人々に強い活力かつりょくを生み出した。
 ただただ日々を生きるだけだった人々に、新しいことを始める余裕を作った。

「こんな感じでどうでしょうか? 家具がないのは申し訳ないですけど」

 水路を作ってからの俺は、街の人々が住む住居を再建しまくっていた。
 今にも崩れそうな廃屋で雑魚寝というのでは、なかなか体も休まらない。
 本当の意味でリラックスするには、外としっかり区切られたプライベートな空間が必要だと思った。

「いやいや! 雨風をしのげる壁と屋根があるだけで十分ですよ! ありがとうございます、ガンジョー様!」

 この家の住人がペコペコと頭を下げる。

「これくらいお安い御用です! あの……別に『様』はつけなくてもいいですよ?」

「だって、あなたは街の守護神なのでしょう? 神様には様をつけないと落ち着きませんって!」

「そ、そういうものですか?」

 本人がそれでいいなら構わないんだけど、あんまりおそれ多い存在だとは思われたくないな。
 もちろん街の守護神ではあるんだけど、もっと身近な『ゆるキャラ』くらいの気持ちで接してほしい。

 まあ、その『ゆるキャラ』という概念を説明するのがなかなか難しいのだが……。

「ガンジョーさん、お疲れ様です! だいぶまともな建物が増えて来ましたね!」

 ショベルを持ったマホロが俺をねぎらってくれる。

「ああ、街らしさが戻って来た感じがするよ。マホロも道に転がった瓦礫の除去を頑張ってくれてるからね」

「ふふっ、これくらいお安い御用ですっ!」

 ある程度原型が残っている建物は魔法で修復し、元が何だったかわからない瓦礫の山は新しい建造物の材料にする。
 そうして足の踏み場もなかった街の中心部から瓦礫を減らし、歩きやすいように道を作る。
 地道な作業ではあるが、これで生活レベルがグッと上がる。

「さて、外の畑の様子でも見に行こうかな」

 瓦礫の街の中心部――防壁の中はずいぶんと様変わりした。
 次に変えていくのは、防壁の外の土地だ。

 現在、防壁の外の一画に畑を作り、野菜を栽培する計画が進行中だ。
 瓦礫をどけて土に魔力を注入するまでは俺がやって、その後は志願してくれた街の人々の手によって畑がたがやされている。

 あ、植える種や苗の調達も俺がやっているな。
 水は豊富に手に入っても、まだまだ食べ物は足りていない。
 定期的にジャングルに行って、調達してくるのが日常になっている。

「お疲れ様です。畑の方はどうですか?」

 クワを置いて休憩している住人に声をかける。

「おかげさまでずいぶん土が柔らかくなりましたよ。そろそろ用意してもらった種や苗を植える予定です」

「それは良かった。魔獣がうろついてるってことはありませんか?」

「今のところは見かけませんねぇ~。あいつら、野菜も食うんですかい?」

「うーん、ジャングルのサルはバナナが好きみたいでしたけど、他はどうなのかなぁ」

 荒野の魔獣が畑を狙って来る可能性はゼロではない。
 襲撃から畑を守るため、さらに大きく街を囲う第二防壁を作る計画もあるっちゃある。

 ただ、小規模の襲撃なら返り討ちにした方が、食料が増えるというジレンマもある。
 第二防壁に関しては……ちょっと保留ほりゅうかな。

「作業中は見張りも立ててありますんでご心配なく! 魔獣が襲ってきたら一目散に逃げ出してガンジョー様を呼びますよ!」

「ええ、ぜひともそうしてください」

 畑は大丈夫そうだから、また防壁の中の作業に戻ろうかな。

「あ! ガンジョー様、ちょいとお待ちを!」

 その人は地面に転がしてあったいくつかの石ころを拾い上げ、俺に渡した。

「相当に純度の低い魔鉱石ですが、何かに使えるかもしれません。お渡ししておきます」

「ありがとうございます!」

 礼を言って防壁の中に戻ると、ガイアさんの声が聞こえて来た。

〈水魔鉱石【等級:E未満】――魔礫石まれきせきに分類されます〉

「魔礫石?」

「ガンジョーさん、ガイアさんと話してるんですか?」

 マホロが俺の変化を敏感に察知する。

「ああ、そうなんだ。この貰った石が等級E未満の魔礫石なんだって。でも、そもそも魔礫石自体俺が知らないから、今からそれを聞こうと……」

「では、私が説明します!」

 マホロはドンと胸を張る。
 彼女がそう言うなら、聞かせていただこう。

「魔鉱石は魔力を込めることで何かを生み出しますが、等級の低い魔鉱石……つまり、魔礫石は魔力を込めても、すでに存在する物にちょっとした影響を与えるのが限界なんです」

「すでにある物に影響を与える……か」

「実例をお見せしますよ!」

 マホロは俺から魔礫石をいくつか取り、それを握りしめる。

「今も魔力を込めていますが、石が光を帯びるなどの反応すらありません。でも、これを水につけると……」

 マホロは魔礫石を握りしめた手を水路につける。
 そして、その手を引き上げると……水が粘液のように手に張り付いていた!

「すでに存在する水に影響を与え、私の手の周りに留まらせているんです。水の魔礫石は水の流れに干渉出来るので、結構使い道があるんですよ」

「確かにこれは何かに使えそうだ。今すぐには思いつかないけど……」

「まあ、魔力を込めるのをやめてしまうと、効果がなくなるのがネックですね」

 マホロの手に張り付いていた水がバシャと地面に落ちる。
 魔力を込めなくても長時間維持出来るなら、いろいろ使えそうな気はするんだけどなぁ。

「せっかくの貰い物だから、使い道が思いつくまで大切に保管しておこう」

「そうですね!」

 魔礫石を体内収納ストレージにしまい、一度教会に帰ろうとした時……マホロの体がビクンッと震えた。

「そうだ……っ! ガンジョーさん、いい使い道を思いついちゃいましたよっ!」

「本当かい?」

 流石はマホロだなと思いつつ、彼女の浮かべる笑顔がどこかイタズラを思いついた子どもみたいなのが気になる……。
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