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第2章 ゴーレム大地を潤す
第22話 ゴーレムと魔業石
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それから数十分後――
「洗濯物はすっかり乾きましたね!」
美しく生まれ変わった洗濯物をマホロと一緒に取り込み、瓦礫の街へ帰還する準備に入る。
裸だったマホロもここでついに服を着こんだ。
「よし、忘れ物はないな」
オアシスの美しい景色は少々名残惜しいが、またすぐに来ることになるかもしれない。
今はとにかくマホロを無事に街まで連れて帰ることに集中しよう。
楽しい遠足を楽しいままで終わらせるためにも!
「あの、ガンジョーさん……帰りは最初から甘えてもいいですか……?」
「ああ、もちろんさ!」
遠出をして疲れたマホロを俺の肩に乗せて、来た時よりも少しスピードを落として走る。
勢いでマホロを振り落としてもマズいし、俺自身来た時より重くなっている。
速度と安定を両立した走りを意識し、荒野を進むこと数時間。
俺たちは日が落ちる前に余裕を持って、瓦礫の街まで帰ってくることが出来た。
カンカンと門の近くに吊るしてある金属板を叩くと、すぐにメルフィさんが門を開けてくれた。
「おかえりなさいませ、ガンジョー様、マホロ様」
メルフィさんはうやうやしく頭を下げた。
本物のメイドさんのお出迎えって、こんな感じなんだなぁ~と感心していると、肩に乗っているマホロがやけに静かなことに気づいた。
「もしかして……マホロ、寝てますか?」
「はい、スヤスヤとお眠りになっています」
俺はゆっくりと腰を落とし、メルフィさんが肩の上のマホロを抱きかかえる。
さっきの金属板を叩く音でも起きないくらい、マホロはぐっすりと眠っていた。
体も動かしたし、街の外ということで緊張もあっただろう。
その疲れが移動中にドッと押し寄せて来たんだ。
「ガンジョー様、ありがとうございます。マホロ様を守っていただいて」
「いえいえ、今回は魔獣にも出くわしませんでしたから、安全そのものでしたよ」
メルフィさんとオアシスの話をしつつ、教会まで移動する。
そして、マホロをいつものソファーに寝かせる。
「ふぅ……。これで俺も一安心です」
「お疲れ様でした、ガンジョー様」
さて、背負っている水と体に蓄えている砂を裏庭の池に……。
いや、その前にメルフィさんに聞きたいことがあったんだ。
その疑問はオアシスの帰りにふと浮かんで来て、俺の頭から離れなくなった。
「メルフィさん、1つ質問いいですか?」
「はい、私に答えられることでしたら何でも」
「この瓦礫の街が栄えていた頃……どうやって水を確保していたんですか?」
シンプルかつ純粋な疑問――
かつてのこの街に多くの人間が住んでいたというのなら、その生活には大量の水が必要だ。
しかし、オアシスから水を引いていたような形跡はなかった。
地面の亀裂はあくまでも地面が乾いて出来た自然の産物だ。
それに毎日誰かがオアシスと街を往復して水を運んでいたとも思えない。
「街の中には水路のような溝があちこちに残ってますから、水を利用せずに生活していたわけではない……とすると、やはり水の出所が気になるんです」
俺は今、オアシスと瓦礫の街をつなぐ水路を作ろうと思っている。
魔法を使うにしても手間のかかる工事になるだろう。
もし、それ以外に水を手に入れられる方法があるとしたら、ぜひ知っておきたいんだ。
「……私たちはこの街が瓦礫まみれになってから流れて来た住人ですので、今から話すのはとある人から聞いた話になります」
メルフィさんはマホロの寝顔を見つめながら語り始めた。
「結論から言えば、この街に水をもたらしていたのは魔業石です」
「魔業石……ですか」
「多種多様な魔鉱石を洗練された技術によって組み合わせて作られた究極の魔鉱石加工品です。最大の特徴はこの世界に満ちる『自然魔力』によって稼働すること。それはつまり、人の手を借りず半永久的に動き続けるということです」
「つまり、永遠に水を生み出し続ける魔業石が、この街にあったと……」
「はい。それが街の中央の噴水に設置されていたようです。しかし、そんな奇跡の石が廃れゆく街で放置されているわけがありません。有毒ガスによって鉱山が閉鎖されると同時に、何者かによって持ち出されてしまった……」
鉱山で栄えた街の鉱山が閉鎖された……。
街の終わりを察した誰かが、この街で一番価値がある物を持って逃げた……か。
「水源を失って人間が生きられるはずもなく、さらに土もどんどんとやせて植物すら生きられなくなり、すべてを失った街はすべてを失った人間が流れ着くだけの廃墟となった……とのことです」
魔業石の喪失と同時に土がやせる……。
つまり、魔業石は街の周囲に魔力が流れ出すのを防ぐ力もあったんだ。
まさに偉業と呼ぶべき発明品……!
魔業石を作ることが出来れば水源を確保出来るし、大地の魔力を維持することも出来る!
ただし、一番の問題はおそらく……。
「ガイアさん、俺たちに魔業石を作ることは出来るかな?」
〈不可能です〉
でしょうね……。
やはり、水に関してはオアシスと街を水路でつなぐしかない。
土から魔力の流出を防ぐ方法は、また別のやり方を探さなければ。
「お話を聞かせてくれてありがとうございます、メルフィさん。おかげで次にやるべきことが見えて来ました」
「いえいえ、これくらいお安い御用です。ガンジョー様もどうか無理をなさらず、時にはゆっくり休んでくださいね」
「はい! とりあえず、運んできた水を下ろしてから休もうと思います」
大量の水と砂を抱えたままでは休めない。
裏庭の池にこのまま直行だ。
「洗濯物はすっかり乾きましたね!」
美しく生まれ変わった洗濯物をマホロと一緒に取り込み、瓦礫の街へ帰還する準備に入る。
裸だったマホロもここでついに服を着こんだ。
「よし、忘れ物はないな」
オアシスの美しい景色は少々名残惜しいが、またすぐに来ることになるかもしれない。
今はとにかくマホロを無事に街まで連れて帰ることに集中しよう。
楽しい遠足を楽しいままで終わらせるためにも!
「あの、ガンジョーさん……帰りは最初から甘えてもいいですか……?」
「ああ、もちろんさ!」
遠出をして疲れたマホロを俺の肩に乗せて、来た時よりも少しスピードを落として走る。
勢いでマホロを振り落としてもマズいし、俺自身来た時より重くなっている。
速度と安定を両立した走りを意識し、荒野を進むこと数時間。
俺たちは日が落ちる前に余裕を持って、瓦礫の街まで帰ってくることが出来た。
カンカンと門の近くに吊るしてある金属板を叩くと、すぐにメルフィさんが門を開けてくれた。
「おかえりなさいませ、ガンジョー様、マホロ様」
メルフィさんはうやうやしく頭を下げた。
本物のメイドさんのお出迎えって、こんな感じなんだなぁ~と感心していると、肩に乗っているマホロがやけに静かなことに気づいた。
「もしかして……マホロ、寝てますか?」
「はい、スヤスヤとお眠りになっています」
俺はゆっくりと腰を落とし、メルフィさんが肩の上のマホロを抱きかかえる。
さっきの金属板を叩く音でも起きないくらい、マホロはぐっすりと眠っていた。
体も動かしたし、街の外ということで緊張もあっただろう。
その疲れが移動中にドッと押し寄せて来たんだ。
「ガンジョー様、ありがとうございます。マホロ様を守っていただいて」
「いえいえ、今回は魔獣にも出くわしませんでしたから、安全そのものでしたよ」
メルフィさんとオアシスの話をしつつ、教会まで移動する。
そして、マホロをいつものソファーに寝かせる。
「ふぅ……。これで俺も一安心です」
「お疲れ様でした、ガンジョー様」
さて、背負っている水と体に蓄えている砂を裏庭の池に……。
いや、その前にメルフィさんに聞きたいことがあったんだ。
その疑問はオアシスの帰りにふと浮かんで来て、俺の頭から離れなくなった。
「メルフィさん、1つ質問いいですか?」
「はい、私に答えられることでしたら何でも」
「この瓦礫の街が栄えていた頃……どうやって水を確保していたんですか?」
シンプルかつ純粋な疑問――
かつてのこの街に多くの人間が住んでいたというのなら、その生活には大量の水が必要だ。
しかし、オアシスから水を引いていたような形跡はなかった。
地面の亀裂はあくまでも地面が乾いて出来た自然の産物だ。
それに毎日誰かがオアシスと街を往復して水を運んでいたとも思えない。
「街の中には水路のような溝があちこちに残ってますから、水を利用せずに生活していたわけではない……とすると、やはり水の出所が気になるんです」
俺は今、オアシスと瓦礫の街をつなぐ水路を作ろうと思っている。
魔法を使うにしても手間のかかる工事になるだろう。
もし、それ以外に水を手に入れられる方法があるとしたら、ぜひ知っておきたいんだ。
「……私たちはこの街が瓦礫まみれになってから流れて来た住人ですので、今から話すのはとある人から聞いた話になります」
メルフィさんはマホロの寝顔を見つめながら語り始めた。
「結論から言えば、この街に水をもたらしていたのは魔業石です」
「魔業石……ですか」
「多種多様な魔鉱石を洗練された技術によって組み合わせて作られた究極の魔鉱石加工品です。最大の特徴はこの世界に満ちる『自然魔力』によって稼働すること。それはつまり、人の手を借りず半永久的に動き続けるということです」
「つまり、永遠に水を生み出し続ける魔業石が、この街にあったと……」
「はい。それが街の中央の噴水に設置されていたようです。しかし、そんな奇跡の石が廃れゆく街で放置されているわけがありません。有毒ガスによって鉱山が閉鎖されると同時に、何者かによって持ち出されてしまった……」
鉱山で栄えた街の鉱山が閉鎖された……。
街の終わりを察した誰かが、この街で一番価値がある物を持って逃げた……か。
「水源を失って人間が生きられるはずもなく、さらに土もどんどんとやせて植物すら生きられなくなり、すべてを失った街はすべてを失った人間が流れ着くだけの廃墟となった……とのことです」
魔業石の喪失と同時に土がやせる……。
つまり、魔業石は街の周囲に魔力が流れ出すのを防ぐ力もあったんだ。
まさに偉業と呼ぶべき発明品……!
魔業石を作ることが出来れば水源を確保出来るし、大地の魔力を維持することも出来る!
ただし、一番の問題はおそらく……。
「ガイアさん、俺たちに魔業石を作ることは出来るかな?」
〈不可能です〉
でしょうね……。
やはり、水に関してはオアシスと街を水路でつなぐしかない。
土から魔力の流出を防ぐ方法は、また別のやり方を探さなければ。
「お話を聞かせてくれてありがとうございます、メルフィさん。おかげで次にやるべきことが見えて来ました」
「いえいえ、これくらいお安い御用です。ガンジョー様もどうか無理をなさらず、時にはゆっくり休んでくださいね」
「はい! とりあえず、運んできた水を下ろしてから休もうと思います」
大量の水と砂を抱えたままでは休めない。
裏庭の池にこのまま直行だ。
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