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第1章 ゴーレム大地に立つ

第16話 ゴーレムと抜群の組み合わせ

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 大雑把な作業しか出来なさそうなゴーレムが、刃物を直すと言い出したんだ。
 当然、住人たちは困惑の表情を浮かべる。
 そこへ助け舟を出してくれたのはマホロだった。

「ガンジョーさんはパワーだけじゃなくて、テクニックもすごいんですよ! ほら、見てくださいよこのショベル! 錆び錆びだった物をガンジョーさんが直してくれたんです!」

 そう言って俺が直したショベル……あっ、マホロ曰く『ガンジョーショベル』だったっけ?
 それを朝焼けの空に高々と掲げた。

 街の住人たちはお互いに目を見合わせて半信半疑だったが、意を決した最初の1人が俺に錆び錆びの包丁を差し出して来た。

「ありがとうございます。責任を持って直しますよ」

 その言葉を言い終わらないうちに、ガイアさんの早業で包丁は新品同然の姿に変わっていた。
 表面の錆を落として形を整えるくらいの魔法なら、結構慣れて来たかもしれない。

「あ、ありがとうございます……!」

 包丁の持ち主は感謝というより、驚愕に近い表情で俺に礼を言ってくれた。
 少しでも俺を信用出来る奴だと思ってくれたなら、それで十分なんだ。

 刃物を直す力を持ったゴーレムだと証明された後は、住人たちが俺のもとに殺到して来た。
 徹夜の戦闘の後なので精神的な疲労感は多少あったけど、やはりちょっとした物の修繕しゅうぜんには慣れて来ているようで、魔力の消費による倦怠けんたい感はあまり感じなかった。

「ガンジョーさん、戦いの後でもみんなのことを考えられるなんてすごいです!」

 マホロからのお褒めの言葉も、俺の頑張る気力になっている。

「お疲れ様です、ガンジョー様」

「あ、メルフィさ……ん?」

 いつも通りシックなメイド服を着ているメルフィさんだが、俺の目を惹く物が1つあった。
 それは腰から下げられている日本刀のようなものだ……!
 鞘に収められている状態だが、あの形と雰囲気は間違いない!

 もちろん、この世界に日本はないから名称は違うと思われる。
 ただ、見た目は本当にそれっぽいんだ。

 メイド服に日本刀なんてコテコテの属性を持った女性が、たとえ異世界とはいえ実際に存在しうるものなのか……!?

「その腰から下げたものは……」

 俺は恐れる必要もないのに、恐る恐るメルフィさんに尋ねる。

「これはカタナです。異国から伝来して来た珍しい形状の剣で、片刃かつ反りの入った刃が特徴的なんです。非常によく斬れる反面、使い方を間違えると折れたり、刃こぼれを起こしやすかったりします。あと、見た目より重いので移動速度が大切なジャングルに行く時は留守番です」

「メルフィは昔からカタナを愛用してますよね。普通の剣よりも使いにくそうに見えますけど」

「まあ、すべては慣れです。それに私の戦いの師とも呼べる人の影響もありますので、これが手に馴染むんですよね」

 メルフィさんが鞘からカタナ抜き放つ。
 その白銀に輝く、波打つような刃文はもんの入った刃は……やはり日本刀!
 これでこの世界にはほぼそのままの日本刀が存在するし、日本刀を扱うメイドさんも実在するということがわかった。

 これは大きな発見……なのか?

「さて、このカタナでトロールを解体しましょう」

「久しぶりにメルフィの刀さばきが見れますね!」

 メルフィさんはカタナでズバズバとトロールの肉を斬り裂いていく……!
 本当によく斬れるし、その刀捌きは非常にさまになっている。
 メイド服と日本刀の組み合わせもやはり抜群だ。

 ただ……トロールも食べるつもりなんだな。
 獣やら鳥やらに似た魔獣なら食べ物として見ることが出来るんだが、巨大とはいえ人型に近いトロールを食べ物にするのは少々抵抗がある。

 まあ、ゴーレムである俺は食べないのだが、ここらへんは文化の違いを感じるな。

「トロールの肉は脂身が多い代わりに、他の魔獣の肉とは一線を画すほど栄養が豊富だと言われています。骨を煮て抽出したエキスはさらに栄養豊富で、万病に聞くと言われるほどです」

 メルフィさんが解体を進めながら、トロールについて解説してくれる。

 なるほど、これは栄養が足りていないこの街の人々に絶対必要な食材だな。
 その巨体ゆえにとれる肉と骨の量は多いし、街の住人全員に行き届かせることも出来そうだ。

「ふぅ……こんなものでしょう」

 トロールの解体を終えたメルフィさんがひたいの汗をぬぐう。
 どういう剣術を使ったのかわからないが、そのメイド服には返り血一つ付いていない

「トロールの内臓は飢えた魔獣でも食べないほど臭みが強いので、他の方が解体している魔獣の捨てる部分と一緒に燃やします。内臓も脂自体は豊富ですから、よく燃えるんですよ」

「じゃあ、俺が内臓を一か所に集めておきますね」

 巨大なトロールから出た内臓もまた巨大だ。
 当然かなりグロテスクでもあるので、これを女性に運ばせるわけにはいかない。

 ……とカッコをつけてみたものの、内臓のぬるっとした感触に腰が引けてしまう。
 それでも頑張って運び続けていると、案外すぐにその見た目にも感触にも慣れてしまった。
 これも俺が人間ではなく、ゴーレムだから……なんだろうか?

「トロールの内臓は運び終えましたし、他の方も魔獣の捨てる部分を同じ場所に集めてくれてます。残った食べるための肉と骨はどうしますか?」

「とりあえず、肉はすべて焼きます。今日中に」

「了解で……えっ! 今日中に全部ですか!?」

 これだけの量の肉を全部焼くということは、今日中に全部食べるということ。
 メルフィさんの意外過ぎる言葉に、もう存在しない俺の胃がもたれるのを感じた……!
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