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第1章 ゴーレム大地に立つ
第12話 ゴーレムと最初の夜
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「こっちは確か南門の方か……」
マホロに貰った光魔鉱石を自分のおでこにくっ付け、電灯付きヘルメットみたいな感じで足元を照らしながら先を急ぐ。
光の強弱はかなりコツを掴んだので、しっかり目の前だけを照らせる。
カン、カン、カン、カン――!
「今、開けます!」
かんぬきを外して防壁の門を開く。
門の向こうにいたのは、教会の前にいたおじさんだった。
「どうもすまんね。いやぁ、帰って来たらこんな立派な防壁が出来てるもんだから驚いちまったよ!」
「こちらこそ、いきなりすいません。皆さんを魔獣の脅威から守れればと思い作ってみましたが、突然過ぎましたね」
「いやいや、明日は満月の夜だろ? 防壁があるおかげで、明日を生き抜ける奴が両手でも数えきれないくらい増えると思うぞ。自分の仕事を誇った方がいい」
「そう言ってもらえると、ありがたいです」
やっぱりこのおじさんは他の住人とは違う雰囲気がある。
致し方ない事情があってこの街に流れ着いたというより、この街にいたいからいる。
そんな感じがしたり、しなかったり……。
「こんな時間まで外をほっつき歩いてた俺のために、わざわざ門を開けてくれてありがとよ。また世話になるかもしれないが……そん時も頼んだぜ!」
おじさんはすっかり暗くなった瓦礫の街の中を慣れた足取りで進み、どこかへと消えた。
結局、街から出てどこに行ってたのかは聞けなかったな。
方角的にジャングルでも、オアシスでもなさそうだけど……。
まあ、あまり他人が踏み込むべきではないのかもしれない。
とりあえず、やるべきことはやったので教会に戻ろう。
「ただいま。門の外にいたのは教会の前にいるおじさんだったよ」
教会に帰ってくるとマホロとメルフィさんが夕食に手をつけずに待っていた。
俺はゴーレムだから食べられないのに、わざわざ待っていてくれたのか……!
「2人ともありがとう……! どうぞ食べて食べて!」
「はい! いただきます!」
マホロが蒸かした芋にかじりつく。
蒸かしたり焼いたりした野菜、数切れの干し肉、わずかな果物しかないが、何だかすごく温かい気持ちになる食卓だ。
「ガンジョー様、先ほど門の外にいたのは教会の前のおじ様と言っていましたね」
食事の途中、メルフィさんがそう尋ねて来た。
俺は「ええ、そうです」と答える。
「あの方は定期的に街を離れているようなんです。どこに行っているのかは私も知りませんが、特に何かを持って行く様子も、持ち帰った様子もないので、ジャングルやオアシスに行っているわけではなさそうなんですよね」
行き先不明のおじさんか……。
でも、彼が南の方から帰って来たという情報は掴んでいる。
この機会にジャングルとオアシス以外、この街の周りに何があるのかをメルフィさんに尋ねてみた。
「北には瓦礫の街から一番近い街があります。ただし、1日ではたどり着けないほど遠いです。人は大体この方角から流れてきますが、数日かけて移動してくる感じです」
方角的にも距離的にも、おじさんが北の街に行ってる可能性はないな。
やはり、行き先は南にある何か……。
「南にはかつてこの街の繁栄を支えていた鉱山があります。もっとも、今となっては廃鉱山と呼ぶのが正しい状態になっていますが……」
「それはつまり、この街は鉱山の廃止と共に廃れたということですか?」
「はい。鉱山のそこかしこから有毒なガスが漏れ出したため、やむを得ず廃鉱にしたと聞いています。すべての鉱石を堀つくした上での廃鉱ではないため、まだ内部に鉱石は残っていると思われますが……それを生身の人間に掘り出すことは出来ません」
俺がいた世界でも鉱山と共に繁栄し、鉱山と共に廃れた集落があった。
この瓦礫の街も同じような理由で、こんな状態になってしまったというわけか。
でも、立ち入ることすら危険な廃鉱山におじさんが行く理由があるとは思えない。
無茶して鉱石を掘り出したところで、この街じゃ売ってお金にすることも出来ないからな。
結局おじさんがどこに行っていたのか……答えは出ない。
いつか仲良くなったら、教えてくれることもあるだろうか。
それはそれとして、まだ鉱石が残る廃鉱山というのは、ゴーレムにとって魅力的な響きだ。
噴き出す毒ガスも呼吸を必要としないゴーレムには問題にならないし、ぜひとも一度訪れてみたい……が、今はマホロたちが生きるために必要なことが優先だ。
オアシスの水、ジャングルの野菜、そして魔力注入による土壌の再生――
それに明日の満月の夜は魔獣とも戦わないといけない。
おじさんのことも気になるけど、今は目の前のことを一つずつこなしていこう。
マホロに貰った光魔鉱石を自分のおでこにくっ付け、電灯付きヘルメットみたいな感じで足元を照らしながら先を急ぐ。
光の強弱はかなりコツを掴んだので、しっかり目の前だけを照らせる。
カン、カン、カン、カン――!
「今、開けます!」
かんぬきを外して防壁の門を開く。
門の向こうにいたのは、教会の前にいたおじさんだった。
「どうもすまんね。いやぁ、帰って来たらこんな立派な防壁が出来てるもんだから驚いちまったよ!」
「こちらこそ、いきなりすいません。皆さんを魔獣の脅威から守れればと思い作ってみましたが、突然過ぎましたね」
「いやいや、明日は満月の夜だろ? 防壁があるおかげで、明日を生き抜ける奴が両手でも数えきれないくらい増えると思うぞ。自分の仕事を誇った方がいい」
「そう言ってもらえると、ありがたいです」
やっぱりこのおじさんは他の住人とは違う雰囲気がある。
致し方ない事情があってこの街に流れ着いたというより、この街にいたいからいる。
そんな感じがしたり、しなかったり……。
「こんな時間まで外をほっつき歩いてた俺のために、わざわざ門を開けてくれてありがとよ。また世話になるかもしれないが……そん時も頼んだぜ!」
おじさんはすっかり暗くなった瓦礫の街の中を慣れた足取りで進み、どこかへと消えた。
結局、街から出てどこに行ってたのかは聞けなかったな。
方角的にジャングルでも、オアシスでもなさそうだけど……。
まあ、あまり他人が踏み込むべきではないのかもしれない。
とりあえず、やるべきことはやったので教会に戻ろう。
「ただいま。門の外にいたのは教会の前にいるおじさんだったよ」
教会に帰ってくるとマホロとメルフィさんが夕食に手をつけずに待っていた。
俺はゴーレムだから食べられないのに、わざわざ待っていてくれたのか……!
「2人ともありがとう……! どうぞ食べて食べて!」
「はい! いただきます!」
マホロが蒸かした芋にかじりつく。
蒸かしたり焼いたりした野菜、数切れの干し肉、わずかな果物しかないが、何だかすごく温かい気持ちになる食卓だ。
「ガンジョー様、先ほど門の外にいたのは教会の前のおじ様と言っていましたね」
食事の途中、メルフィさんがそう尋ねて来た。
俺は「ええ、そうです」と答える。
「あの方は定期的に街を離れているようなんです。どこに行っているのかは私も知りませんが、特に何かを持って行く様子も、持ち帰った様子もないので、ジャングルやオアシスに行っているわけではなさそうなんですよね」
行き先不明のおじさんか……。
でも、彼が南の方から帰って来たという情報は掴んでいる。
この機会にジャングルとオアシス以外、この街の周りに何があるのかをメルフィさんに尋ねてみた。
「北には瓦礫の街から一番近い街があります。ただし、1日ではたどり着けないほど遠いです。人は大体この方角から流れてきますが、数日かけて移動してくる感じです」
方角的にも距離的にも、おじさんが北の街に行ってる可能性はないな。
やはり、行き先は南にある何か……。
「南にはかつてこの街の繁栄を支えていた鉱山があります。もっとも、今となっては廃鉱山と呼ぶのが正しい状態になっていますが……」
「それはつまり、この街は鉱山の廃止と共に廃れたということですか?」
「はい。鉱山のそこかしこから有毒なガスが漏れ出したため、やむを得ず廃鉱にしたと聞いています。すべての鉱石を堀つくした上での廃鉱ではないため、まだ内部に鉱石は残っていると思われますが……それを生身の人間に掘り出すことは出来ません」
俺がいた世界でも鉱山と共に繁栄し、鉱山と共に廃れた集落があった。
この瓦礫の街も同じような理由で、こんな状態になってしまったというわけか。
でも、立ち入ることすら危険な廃鉱山におじさんが行く理由があるとは思えない。
無茶して鉱石を掘り出したところで、この街じゃ売ってお金にすることも出来ないからな。
結局おじさんがどこに行っていたのか……答えは出ない。
いつか仲良くなったら、教えてくれることもあるだろうか。
それはそれとして、まだ鉱石が残る廃鉱山というのは、ゴーレムにとって魅力的な響きだ。
噴き出す毒ガスも呼吸を必要としないゴーレムには問題にならないし、ぜひとも一度訪れてみたい……が、今はマホロたちが生きるために必要なことが優先だ。
オアシスの水、ジャングルの野菜、そして魔力注入による土壌の再生――
それに明日の満月の夜は魔獣とも戦わないといけない。
おじさんのことも気になるけど、今は目の前のことを一つずつこなしていこう。
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