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第1章 ゴーレム大地に立つ

第11話 ゴーレムと欲しかった情報

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「瓦礫の街の周辺には荒野が広がり何もないように思えますが、実際その先にはいくつかの特殊な地形があるのです。それが東のジャングルであり、西のオアシスでもあります」

 いくつかの……ということは、その2つ以外にも特殊な地形があるのか?
 まあ、ここは最重要のオアシスの話を先に聞こう。

「オアシスまでの距離は大体ジャングルと同じです。特殊な訓練を受けている私で行きに半日、帰りに半日かかりますので、一般の方が生活に必要な水を確保する場所として利用するのは少々難しいかと」

「オアシスの近くに住むのは……まあ、無理なんでしょうね」

「はい……。荒野に棲む魔獣も水がなければ生きていけません。ゆえにオアシスは魔獣たちが頻繁ひんぱんに訪れる場所になっているんです。今の住人たちを率いて移り住むのは不可能だと思います」

 ジャングルの近くに住めないのと同じ理由だな。
 俺1人ならオアシスに突撃して魔獣を倒し、防壁を築くことが出来るかも知れない。
 ただ、その後もずっと人々を魔獣から守ることが出来るのかは別の話だ。

 そもそも、まだ魔獣を見たことも戦ったこともないからな。
 空を飛ぶ魔獣もいるって話だし、やはり別の場所に移り住むよりも、瓦礫の街を住みやすい場所に変えていくのが一番だと思う。

 その場合、最も必要になる物は水だ。
 水の入手を降ることを祈るしかない雨に頼っていては、住みやすい街とは言えない。

 ガイアさんの究極大地魔法でオアシスから水を引っ張る水路を作れれば、この瓦礫の街も一気に息を吹き返すはず……!

「あの、今度オアシスに行く時は俺も連れて行ってくれませんか? ぜひ、実物をこの目で見てみたいので」

「ええ、構いませんよ」

 メルフィさんはにこやかに答えた。
 しかし、意外にもマホロが異を唱える。

「いえ、メルフィはジャングルから帰って来たばかりなんですから休んでいてください。オアシスには私とガンジョーさんで行きます」

 マホロの提案にメルフィさんは目を丸くする。

「い、いけません! 日中だろうと夜中だろうと、オアシスには魔獣がいる可能性が高いんですから! 私もついて行きます!」

 まあ、俺と出会ったばかりのメルフィさんからすれば、自分抜きでマホロが危険な場所に行くのを嫌がるのもわかるというか……それが当然だろう。

「大丈夫です、ガンジョーさんはすごいんですから! 魔獣だって簡単にやっつけてくれます! 何よりメルフィにはこれ以上無茶をしてほしくないんです。今までずっと一人で私を守ってくれた、大切な人だから……これからはガンジョーさんと一緒に私も頑張るんです!」

「ま、マホロ様……」

 メルフィさんは感激して言葉に詰まり、目をうるませる。
 マホロがここまで言い切ったら、それを止めるすべはない。

「……わかりました。オアシスにはマホロ様とガンジョー様で行ってください。ただし、出発は満月の夜が明けた後です。移動の遅れで夜までに帰れず、満月を街の外で迎えることだけは絶対に回避しなければなりませんので」

「わかりました。出発は明後日の朝にします。ガンジョーさんもそれでいいですか?」

「ああ、問題ないさ」

 満月の夜にやって来る魔獣と戦ってみれば、俺にどれくらいの力があるかわかるだろう。
 そこで得た経験をもとに、よりプランを練っていけばいい。

「やったぁ! これで久しぶりに全身に水を浴びられますっ! 体を拭くだけじゃどうしても爽快感がないですからね~!」

 なるほど、マホロがオアシスに行きたいのはそういう理由もあるのか。
 これはちょっと女の子に対する理解が甘かったな。

「……あっ! もうお湯が沸騰してましたね」

 料理に戻ったメルフィさんは鍋の火を一旦消し、蒸す野菜の皮を剥いていく。
 俺が直した包丁の切れ味は上々のようだ。

「その野菜、美味しそうですね。野生に生えている物なのに栄養も豊富そうです」

「東のジャングルは特別なんですよ。どういうわけか周囲の大地から魔力を吸い取って、代わりに自分たちの大地を魔力でうるおしているんです。おかげで瓦礫の街の土はカラカラですが、ジャングルの土壌は栄養豊富なんです」

 なんと、瓦礫の街の土がやせているのにはそんな理由が……!
 街の土はこんなにカラカラなのに、街からおそらく数十キロ圏内にジャングルがあるのは不自然だと思っていたけど、その原因もまたジャングルにあるということか……。

 これはますますジャングルに行ってみないといけないな。
 魔獣と戦ったり、オアシスに行ったり、すでにやらないといけないことはたくさんあるけど、やることがないよりはずっといい。

 あと、魔力を吸い取られると土が枯れるってことは、魔力を注ぎ込めば土に栄養を与えられるってことの証明でもある。
 ガイアさんと究極大地魔法の力があれば、土に魔力を注ぎ込むことも出来るんじゃないか……?

〈はい。可能です〉

 よし、可能だった。
 明日は満月が空に昇るまで、教会の裏庭の土をいじってみよう。

 カン、カン、カン、カン――!

「あ、この音は……防壁の門の外に取り付けておいた、呼び鈴代わりの金属板を叩く音だ」

 防壁の四方にある門はかんぬきをかけて施錠してある。
 でも、この街には新しく流れ着いて来る人もいるから、そういった人たちが門を開けてほしい時、意思表示出来るものが必要だと思った。

 そのために吊るしておいたのが金属板とトンカチだ。
 カンカン叩いて音を出せば、昼でも夜でも俺の耳に届く。

「ちょっと門の様子を見てきます。マホロとメルフィさんはこのままご飯の準備をしててください」

 俺は教会から出て、暗くなり始めた瓦礫の街を音のする方へと歩いて行った。
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