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第1章 ゴーレム大地に立つ
第8話 ゴーレムと従者
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「では、改めて見張り台に登ります!」
マホロがハシゴに手をかけ、見張り台へ登っていく。
特に崩れたり傾いたりすることはないようだ。
「うわぁ……高いです! 結構遠くまで見渡せますよ!」
「そりゃ良かった。とりあえず、手すりを持って落ちないよう気をつけて」
マホロは結構はしゃいでいるので、うっかり落っこちたら大変だ。
手すりも頑丈になれと想いを込めて作ってあるから、大丈夫だとは思うけど……。
「あっ……!」
「ど、どうした!?」
「さっきお話したメルフィーナが帰って来ました! おーい、メルフィ~!」
俺からは防壁の向こうが見えないが、おそらく彼女の視線の先には従者であるメルフィーナさんがいるんだろう。
危険なジャングルに行っていると聞いてたけど、無事に帰って来たか……!
「マホロ様~!」
防壁の向こうからメルフィーナさんの声が聞こえてくる。
少し低めで大人っぽい女性の声だ。
「これは一体どういうことですかっ!?」
声に明らかな困惑の色が混じっている。
まあ……そりゃそうだよな。
街を離れている間にこんな巨大な防壁が建てられていたら誰だって驚く。
しかも、それは一日も経たないうちの出来事だ。
「この防壁はガンジョーさんが作ってくれたんです!」
「それは一体誰なんですかっ!?」
「ガンジョーさんは私が創り出したゴーレムです!」
「ゴーレム……!? まさか、私が留守の間に……! ですが、ゴーレムにだってこんなことは不可能なはずです!」
「それが出来るんですよ! ガンジョーさんなら!」
マホロが自信満々にこっちを見る。
ただ、この説明だとメルフィーナさんの困惑は増すばかりだな……。
「まあ、とにかく防壁の中に入ってもらおう」
門のかんぬきを抜き、開け放つ。
そこに立っていたのは、20代前半くらいに見える栗毛色の髪の女性だった。
長い髪をポニーテールにし、前髪やもみあげはパツンと切り揃えられていることから、どこか几帳面な印象を受ける。
ボロ布のマントをまとい、マントの隙間からはシックなデザインのメイド服がのぞいている。
「あ、あの……初めまして」
まずは挨拶だ。俺はぺこりと頭を下げる。
それに対してメルフィーナさんは……腰を抜かしたようにへたりこんでしまった。
「ご、ゴーレムがしゃべってる……!? いや、そんな、いやああああああ……っ!」
思った以上の驚かれたし、恐れられた!
やはり、この世界でゴーレムがしゃべることは相当おかしいらしい。
でも、流石にちょっと怖がり過ぎな気も……。
「メルフィはちょっと怖がりなんです。でも、私のために頑張ってくれる心の優しい人なんです!」
マホロがフォローを入れ、メルフィーナさんを立ち上がらせようと肩を貸す。
しかし、背が高くて肉付きもいい彼女を小柄なマホロが助けるのは難しい。
「俺が彼女を教会まで運ぼうか?」
「では、お願いします! 私はカゴの方を持ちます」
メルフィーナさんが背負っていた果物やら野菜やらがどっさり入ったカゴをマホロが背負う。
こんなに重そうなカゴを背負って、メルフィーナさんは何時間も走って来たのか……。
「カゴも俺が持とうか? かなり重そうだし……」
「いえ、私もこれくらいは出来ます! 任せてください!」
マホロにとって決して楽な仕事ではないと思うが、食料を取って来てくれたメルフィーナさんのために何かしたいという気持ちは尊重しないといけないな。
カゴはマホロに任せて、俺はメルフィーナさんを運ぼう。
「では、失礼して……」
「あ、ああ……マホロ様……!」
主に助けを求めるメルフィーナさん。
しかし、マホロは「大丈夫、大丈夫。ガンジョーさんですから」としか言わない。
マホロの強引な一面を垣間見た気がした。
とにかく、落として怪我でもさせないように優しく両手でメルフィーナさんを抱え、お姫様を扱うように丁寧に教会まで運んだ。
「ふぅ……到着! ガンジョーさん、メルフィはソファーに寝かせてあげてください」
「ああ、わかったよ」
教会が修復されていることにも驚いているメルフィーナさんをソファーに寝かせる。
一日で存在しなかった防壁を作り、ボロボロだった教会を直すなんて、きっと魔法があるこちらの世界でも簡単なことじゃないんだろう。
それもこれもガイアさんが持つ究極大地魔法のおかげだ。
「うわぁ! リンゴだ! 食べてもいいですか!?」
マホロがカゴの中から小ぶりな実を取り出す。
俺が元いた世界のリンゴと形状はかなり似ているが、サイズは小さめで皮の赤色も薄めだ。
これは野生のリンゴだからなのか、それとも本来リンゴと呼ばれていない木の実を、俺がリンゴという言葉で認識しているからなのか……。
ゴーレムとして誕生した瞬間からこの世界の言葉を理解しているからこそ、その違いがわからなかったりする。
まあ、もしかしたらこの世界でもリンゴはリンゴなのかもしれないけど。
「その前に……全部説明してくださいマホロ様っ!」
落ち着きを取り戻したメルフィーナさんが、ソファーから飛び上がってマホロに詰め寄る。
「あ、あはは……ごめんなさい。ちゃんと説明します……!」
ちょっと申し訳なさそうに笑うマホロ。
説明が終わるまで、リンゴはお預けになった。
マホロがハシゴに手をかけ、見張り台へ登っていく。
特に崩れたり傾いたりすることはないようだ。
「うわぁ……高いです! 結構遠くまで見渡せますよ!」
「そりゃ良かった。とりあえず、手すりを持って落ちないよう気をつけて」
マホロは結構はしゃいでいるので、うっかり落っこちたら大変だ。
手すりも頑丈になれと想いを込めて作ってあるから、大丈夫だとは思うけど……。
「あっ……!」
「ど、どうした!?」
「さっきお話したメルフィーナが帰って来ました! おーい、メルフィ~!」
俺からは防壁の向こうが見えないが、おそらく彼女の視線の先には従者であるメルフィーナさんがいるんだろう。
危険なジャングルに行っていると聞いてたけど、無事に帰って来たか……!
「マホロ様~!」
防壁の向こうからメルフィーナさんの声が聞こえてくる。
少し低めで大人っぽい女性の声だ。
「これは一体どういうことですかっ!?」
声に明らかな困惑の色が混じっている。
まあ……そりゃそうだよな。
街を離れている間にこんな巨大な防壁が建てられていたら誰だって驚く。
しかも、それは一日も経たないうちの出来事だ。
「この防壁はガンジョーさんが作ってくれたんです!」
「それは一体誰なんですかっ!?」
「ガンジョーさんは私が創り出したゴーレムです!」
「ゴーレム……!? まさか、私が留守の間に……! ですが、ゴーレムにだってこんなことは不可能なはずです!」
「それが出来るんですよ! ガンジョーさんなら!」
マホロが自信満々にこっちを見る。
ただ、この説明だとメルフィーナさんの困惑は増すばかりだな……。
「まあ、とにかく防壁の中に入ってもらおう」
門のかんぬきを抜き、開け放つ。
そこに立っていたのは、20代前半くらいに見える栗毛色の髪の女性だった。
長い髪をポニーテールにし、前髪やもみあげはパツンと切り揃えられていることから、どこか几帳面な印象を受ける。
ボロ布のマントをまとい、マントの隙間からはシックなデザインのメイド服がのぞいている。
「あ、あの……初めまして」
まずは挨拶だ。俺はぺこりと頭を下げる。
それに対してメルフィーナさんは……腰を抜かしたようにへたりこんでしまった。
「ご、ゴーレムがしゃべってる……!? いや、そんな、いやああああああ……っ!」
思った以上の驚かれたし、恐れられた!
やはり、この世界でゴーレムがしゃべることは相当おかしいらしい。
でも、流石にちょっと怖がり過ぎな気も……。
「メルフィはちょっと怖がりなんです。でも、私のために頑張ってくれる心の優しい人なんです!」
マホロがフォローを入れ、メルフィーナさんを立ち上がらせようと肩を貸す。
しかし、背が高くて肉付きもいい彼女を小柄なマホロが助けるのは難しい。
「俺が彼女を教会まで運ぼうか?」
「では、お願いします! 私はカゴの方を持ちます」
メルフィーナさんが背負っていた果物やら野菜やらがどっさり入ったカゴをマホロが背負う。
こんなに重そうなカゴを背負って、メルフィーナさんは何時間も走って来たのか……。
「カゴも俺が持とうか? かなり重そうだし……」
「いえ、私もこれくらいは出来ます! 任せてください!」
マホロにとって決して楽な仕事ではないと思うが、食料を取って来てくれたメルフィーナさんのために何かしたいという気持ちは尊重しないといけないな。
カゴはマホロに任せて、俺はメルフィーナさんを運ぼう。
「では、失礼して……」
「あ、ああ……マホロ様……!」
主に助けを求めるメルフィーナさん。
しかし、マホロは「大丈夫、大丈夫。ガンジョーさんですから」としか言わない。
マホロの強引な一面を垣間見た気がした。
とにかく、落として怪我でもさせないように優しく両手でメルフィーナさんを抱え、お姫様を扱うように丁寧に教会まで運んだ。
「ふぅ……到着! ガンジョーさん、メルフィはソファーに寝かせてあげてください」
「ああ、わかったよ」
教会が修復されていることにも驚いているメルフィーナさんをソファーに寝かせる。
一日で存在しなかった防壁を作り、ボロボロだった教会を直すなんて、きっと魔法があるこちらの世界でも簡単なことじゃないんだろう。
それもこれもガイアさんが持つ究極大地魔法のおかげだ。
「うわぁ! リンゴだ! 食べてもいいですか!?」
マホロがカゴの中から小ぶりな実を取り出す。
俺が元いた世界のリンゴと形状はかなり似ているが、サイズは小さめで皮の赤色も薄めだ。
これは野生のリンゴだからなのか、それとも本来リンゴと呼ばれていない木の実を、俺がリンゴという言葉で認識しているからなのか……。
ゴーレムとして誕生した瞬間からこの世界の言葉を理解しているからこそ、その違いがわからなかったりする。
まあ、もしかしたらこの世界でもリンゴはリンゴなのかもしれないけど。
「その前に……全部説明してくださいマホロ様っ!」
落ち着きを取り戻したメルフィーナさんが、ソファーから飛び上がってマホロに詰め寄る。
「あ、あはは……ごめんなさい。ちゃんと説明します……!」
ちょっと申し訳なさそうに笑うマホロ。
説明が終わるまで、リンゴはお預けになった。
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