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第1章 ゴーレム大地に立つ
第3話 ゴーレムと究極の魔法
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崩れずに残っていた箇所と直された箇所……。
その違いを見分けることが不可能なくらい、自然な形に仕上がっている。
歪んでいたり、建物としておかしい箇所も見当たらない。
教会の元の姿を知らない俺だが、これは本来の姿に修復されたと見て間違いないだろう。
〈実行終了:約90%の状態で教会を修復しました〉
「ありがとう。これは魔法みたいなものなのかな?」
〈はい。正確には究極大地魔法による修復の実行です〉
「きゅ、究極……? 大地魔法?」
〈砂、石、岩、金属のような地属性の物質を魔力によって自在に操る秘術です〉
ゴーレムの時点で薄々察してはいたが、この世界には魔法が存在するみたいだな。
そして、俺はすでに究極の魔法を覚えている……!
「ということは、もっとすごい建物を造ったりも……」
〈現在は魔法能力の一部に制限がかかっています。原因は不明ですが、可能性としては異世界の魂と融合したことによる変化が挙げられるかと〉
「そう……ですか」
やっぱり最初から何もかも上手くはいかないな。
でも、あんなにボロボロだった教会を綺麗に直せただけでもすごいことだ。
床に転がっていた玄関の扉も元の位置に戻り、全体を覆っていた錆もなくなっている。
窓もひしゃげた窓枠が正しい形に戻り、砕け散っていたガラスが傷一つない状態で窓枠にはめ込まれている。
しかし、直っていない箇所もあった。
それは部屋や通路を仕切る木製の扉だ。
金属製だった玄関の扉と違い、これは朽ちたまま床に転がっていた。
俺はガイアさんの言葉を思い出す。
究極大地魔法は砂、石、岩、金属のような地属性の物質を魔力によって自在に操る――
つまり、明らかに地属性っぽくない、言うなれば植物属性の木で作られた物は直せないんだ。
だからこそ、90%の状態で修復……か。
当然、扉以外にも木製の家具などはボロボロのままだ。
でもまあ、これで俺が教会の中を歩いても崩壊する心配はなくなった。
マホロも綺麗になった教会を見て喜んでくれるだろう。
「ううん……あっ、ゴーレムさん……」
ウワサをすればなんとやら。
マホロが目覚め、ソファーからむくりと起き上がった。
顔色は悪くないし、とりあえずは心配なさそうだ。
「ゴーレムさんをほったらかしたまま寝ちゃってごめんなさい! 私にはゴーレムさんにいろいろお話しないといけないことが……って、あれ!? 壁とか床とか窓とか……教会が直ってます!?」
「ああ、そうなんだ。俺の中にいるガイアさ……ガイアゴーレムの力のおかげで直すことが出来たんだ。あっ、その力っていうのは究極大地魔法で……」
「ガイアゴーレム!? 究極大地魔法!?」
マホロはそう叫んだ後、口を開けたままフリーズした。
口が閉じられたのは数秒経ってからで、その後は腕を組んで考え事を始めた。
「もしかして……何かマズい存在だった? ガイアゴーレムと究極大地魔法って……」
「いえ、むしろその逆ですご過ぎるんです。ガイアゴーレムも究極大地魔法も、伝説上の存在とされていますから……!」
マホロは目を見開き、心底驚いた顔をしている。
しかし、そのガイアゴーレムを創成したのは他でもない彼女なわけで、まるでまったく予想外のことが起こったみたいな反応なのは一体なぜか……。
「まさか一族の中でも落ちこぼれの私が伝説の守護神を……! でも、本当にそんなことあり得るのかな……? ああっ、自分で自分を信じられません!」
「お、落ち着いて……。その反応を見るに、マホロはガイアゴーレムを作ろうとして作ったわけじゃないんだね?」
「もちろんです! ガイアゴーレムを作ろうと思って作れる魔法使いなんてこの世にいません! でも、そうするとなぜ私は創成に成功したんでしょう……? 使った素材が良かったから? 魔法陣が綺麗に描けていたから? いや、詠唱の滑舌がハキハキしてたからかも……!」
とりあえず、ガイアゴーレムのことは置いておこう……。
それを創り上げたマホロ自身がこの状態では、答えなんて見つからない。
他に気になっていることを聞いてみよう。
「一族の中でも落ちこぼれって言ってたけど、マホロの家族はみんなゴーレムを作れるのかい?」
「はい。全員私よりは地属性魔法の扱いが上手いです、それもかなり……。私の家名である『ロックハート』は、魔法使いの中では知らない者がいないくらい名門の一族です。まあ、貴族として地方領主をやっているというのも、名前が売れている理由の1つですね」
「地属性魔法のエリート、貴族、地方領主……ん? ということはマホロも貴族ってこと?」
「まあ、伯爵家のご令嬢……と言えないこともないですね。私は末っ子で今のところ爵位は持っていませんし、与えられているのはロックハート家が持つ領地の中で最も利用価値がなく、最も辺境にあるファーゼス領……つまり、この荒れ果てた大地だけなんです」
地方領主の娘で、親から領地の管理を任されている……と言えば聞こえはいいが、これは何というか、押し付けられたという状況じゃないか?
「他の兄弟はお父様の近くで領地経営をサポートしたり、もっと豊かで利用価値のある領地を自分の裁量で運営することを許されています。その中で最も優れた力をお父様に示した者が、ロックハート家の次期当主となり、そのまま次期領主、次期伯爵にもなります」
「兄弟の中で権力争いみたいなことが起こりそうだ……」
俺の言葉を聞いて、マホロは何とも言えない苦い表情を浮かべる。
「実際に争いは起こり、私は他の兄弟の手が届かない……いや、手を伸ばそうとも思わない辺境の地へ逃れてきたんです。おかげでボロボロの教会に住み着くことになりましたが、あの頃に比べたら今の方がずっと平穏な暮らしが出来ます」
年齢で言えば10歳前後に見えるマホロだが、その人生は苦難の連続だったんだろう……。
彼女の身の上を知り、そのやせ細った体を見てしまったら……放っておくわけにはいかない。
俺は大地に平和と豊穣をもたらす守護神ガイアゴーレムの一部になったのだから。
その違いを見分けることが不可能なくらい、自然な形に仕上がっている。
歪んでいたり、建物としておかしい箇所も見当たらない。
教会の元の姿を知らない俺だが、これは本来の姿に修復されたと見て間違いないだろう。
〈実行終了:約90%の状態で教会を修復しました〉
「ありがとう。これは魔法みたいなものなのかな?」
〈はい。正確には究極大地魔法による修復の実行です〉
「きゅ、究極……? 大地魔法?」
〈砂、石、岩、金属のような地属性の物質を魔力によって自在に操る秘術です〉
ゴーレムの時点で薄々察してはいたが、この世界には魔法が存在するみたいだな。
そして、俺はすでに究極の魔法を覚えている……!
「ということは、もっとすごい建物を造ったりも……」
〈現在は魔法能力の一部に制限がかかっています。原因は不明ですが、可能性としては異世界の魂と融合したことによる変化が挙げられるかと〉
「そう……ですか」
やっぱり最初から何もかも上手くはいかないな。
でも、あんなにボロボロだった教会を綺麗に直せただけでもすごいことだ。
床に転がっていた玄関の扉も元の位置に戻り、全体を覆っていた錆もなくなっている。
窓もひしゃげた窓枠が正しい形に戻り、砕け散っていたガラスが傷一つない状態で窓枠にはめ込まれている。
しかし、直っていない箇所もあった。
それは部屋や通路を仕切る木製の扉だ。
金属製だった玄関の扉と違い、これは朽ちたまま床に転がっていた。
俺はガイアさんの言葉を思い出す。
究極大地魔法は砂、石、岩、金属のような地属性の物質を魔力によって自在に操る――
つまり、明らかに地属性っぽくない、言うなれば植物属性の木で作られた物は直せないんだ。
だからこそ、90%の状態で修復……か。
当然、扉以外にも木製の家具などはボロボロのままだ。
でもまあ、これで俺が教会の中を歩いても崩壊する心配はなくなった。
マホロも綺麗になった教会を見て喜んでくれるだろう。
「ううん……あっ、ゴーレムさん……」
ウワサをすればなんとやら。
マホロが目覚め、ソファーからむくりと起き上がった。
顔色は悪くないし、とりあえずは心配なさそうだ。
「ゴーレムさんをほったらかしたまま寝ちゃってごめんなさい! 私にはゴーレムさんにいろいろお話しないといけないことが……って、あれ!? 壁とか床とか窓とか……教会が直ってます!?」
「ああ、そうなんだ。俺の中にいるガイアさ……ガイアゴーレムの力のおかげで直すことが出来たんだ。あっ、その力っていうのは究極大地魔法で……」
「ガイアゴーレム!? 究極大地魔法!?」
マホロはそう叫んだ後、口を開けたままフリーズした。
口が閉じられたのは数秒経ってからで、その後は腕を組んで考え事を始めた。
「もしかして……何かマズい存在だった? ガイアゴーレムと究極大地魔法って……」
「いえ、むしろその逆ですご過ぎるんです。ガイアゴーレムも究極大地魔法も、伝説上の存在とされていますから……!」
マホロは目を見開き、心底驚いた顔をしている。
しかし、そのガイアゴーレムを創成したのは他でもない彼女なわけで、まるでまったく予想外のことが起こったみたいな反応なのは一体なぜか……。
「まさか一族の中でも落ちこぼれの私が伝説の守護神を……! でも、本当にそんなことあり得るのかな……? ああっ、自分で自分を信じられません!」
「お、落ち着いて……。その反応を見るに、マホロはガイアゴーレムを作ろうとして作ったわけじゃないんだね?」
「もちろんです! ガイアゴーレムを作ろうと思って作れる魔法使いなんてこの世にいません! でも、そうするとなぜ私は創成に成功したんでしょう……? 使った素材が良かったから? 魔法陣が綺麗に描けていたから? いや、詠唱の滑舌がハキハキしてたからかも……!」
とりあえず、ガイアゴーレムのことは置いておこう……。
それを創り上げたマホロ自身がこの状態では、答えなんて見つからない。
他に気になっていることを聞いてみよう。
「一族の中でも落ちこぼれって言ってたけど、マホロの家族はみんなゴーレムを作れるのかい?」
「はい。全員私よりは地属性魔法の扱いが上手いです、それもかなり……。私の家名である『ロックハート』は、魔法使いの中では知らない者がいないくらい名門の一族です。まあ、貴族として地方領主をやっているというのも、名前が売れている理由の1つですね」
「地属性魔法のエリート、貴族、地方領主……ん? ということはマホロも貴族ってこと?」
「まあ、伯爵家のご令嬢……と言えないこともないですね。私は末っ子で今のところ爵位は持っていませんし、与えられているのはロックハート家が持つ領地の中で最も利用価値がなく、最も辺境にあるファーゼス領……つまり、この荒れ果てた大地だけなんです」
地方領主の娘で、親から領地の管理を任されている……と言えば聞こえはいいが、これは何というか、押し付けられたという状況じゃないか?
「他の兄弟はお父様の近くで領地経営をサポートしたり、もっと豊かで利用価値のある領地を自分の裁量で運営することを許されています。その中で最も優れた力をお父様に示した者が、ロックハート家の次期当主となり、そのまま次期領主、次期伯爵にもなります」
「兄弟の中で権力争いみたいなことが起こりそうだ……」
俺の言葉を聞いて、マホロは何とも言えない苦い表情を浮かべる。
「実際に争いは起こり、私は他の兄弟の手が届かない……いや、手を伸ばそうとも思わない辺境の地へ逃れてきたんです。おかげでボロボロの教会に住み着くことになりましたが、あの頃に比べたら今の方がずっと平穏な暮らしが出来ます」
年齢で言えば10歳前後に見えるマホロだが、その人生は苦難の連続だったんだろう……。
彼女の身の上を知り、そのやせ細った体を見てしまったら……放っておくわけにはいかない。
俺は大地に平和と豊穣をもたらす守護神ガイアゴーレムの一部になったのだから。
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