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第5章
第176話 打ち上げパーティー
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「え~、では! ガンバーラボの研究発表大成功&ユートさんとロック様でフロア大熱狂を祝して~!」
「「「「「かんぱ~い!!」」」」」
シンポジウム初日終了後――俺とロックはガンバーラボの面々の打ち上げに参加していた。
人気の大衆酒場で大きなテーブルを囲み、みんな好きな酒をがぶがぶ飲んでいる。
ここ最近は連日連夜発表の準備で、酒を飲んでいる場合ではなかったみたいだからな。
我慢の後の飲酒はさぞかし美味しいのだろう。
「クゥクゥクゥ……ッ!」
ロックは酒を飲まずに運ばれてくる料理をひたすら食べている。
ここは肉や野菜を串に刺して焼いたものが人気みたいで、ロックは前脚で器用に串を引っこ抜きながらタレのかかった肉を食べている。
おかげでテーブルにはどんどん串だけが残っていく……。
「さあさあ、みんなもっと食べて飲んでくださ~い! これだけ研究発表が上手くいったんですから、打ち上げの代金くらい大学が出してくれるはずです!」
柑橘系の果実酒をまるでジュースのような感覚で飲んでいるポーラさんはすでに出来上がっている。
赤くなった頬に緩んだ口元は、不安やプレッシャーから解放された証だ。
普段からとても温和な人で、本番直前でも弱気なことは言わなかったけど、ガンバーラボの所長として緊張していなかったわけがないものな。
「ユートくんも飲んでる~? 遠慮せずに支払いのことはお姉さん……の大学に任せなさ~い!」
「ありがとうございます。バチバチのスパークリングジュースをいただいてます」
お酒は飲まないが、ここには変わったジュースもたくさんある。
攻撃されてるのかってくらい強い炭酸ジュースの刺激が癖になって来たところだ。
「あとロックもここの料理が口に合うみたいで、たくさん食べてますね」
「クゥ~!」
「うんうん! それは良かった~! 私もそろそろアルコールは控えてソフトドリンクに切り替えようかな~? お腹ちゃぷちゃぷになって宿舎で漏らしたら、ベータポリスを出禁になっちゃうかもしれないし~」
「あ、あはは……」
アルコールでもソフトドリンクでも水分に変わりないから、トイレには行きたくなるだろう……という冷静なツッコミはぐでんぐでんに酔っている人に言っても意味はない。
まあ、ここまでみんなが酔うのにはちゃんとした理由がある。
素面のままでいると反省会が始まってしまうからだ。
研究発表は大成功だったけど、もっとこうすれば良かったかも、ああしていれば100点が120点になっていたかもという向上心は尽きない。
冷静なままでは真面目な話し合いが始まってしまうんだ。
だから、今日この時……一番嬉しい時くらいは研究を忘れて楽しむ。
そのための酒というわけだな。
酒を飲んでいないのは俺とロック、それとバニラくらいだ。
マギアバイクを飲酒後に運転することはジューネ族のルールで禁じられているらしく、日常的にマギアバイクを乗り回しているバニラは自然と酒を飲まなくなったらしい。
「とても頑丈ですごいスピードが出るマギアバイクは、巨大な砲弾みたいなもの……。酔って冷静な判断と感覚を失っている時に運転することは、大事故につながりまする。それは当然ジューネ族の評判を下げることになるゆえ、固く禁じられておるのですぞ」
納得のルールだと言わざるを得ないな。
酔って馬を乗り回した結果、人をはねたなんて事件は多い。
馬よりも重く速いマギアバイクなら、なおさら大惨事になってしまう。
「おぉぉぉ……! 肉の間に焼いたネギが入っているだけなのに、どうしてこうも美味しさが倍増するのでしょうか! 原理不明ですぞ……!」
酒は飲んでいないが、それはそれとして打ち上げを楽しんでいるバニラ。
さっきは強炭酸のジュースを飲んで、刺激のあまり噴き出していた。
「ククク……! まさか、この僕に隠された別の人格……いや、闇の人格があったとは……。よもや、最も奇怪で謎に包まれた生物は僕なのでは……!?」
研究発表時の記憶がないジェナスさんは、いつもと違う自分が出ていたことを他のメンバーに聞かされ、それを変な方向に解釈してしまっている。
まあ、これもアルコールのせいだろう。
酔いが醒めたらまたいつものジェナスさんに戻ってくれる……よね?
「えへ、えへへ~。いやぁ、私って幸せだぁ~。店員さ~ん、同じのもう1杯~!」
そして、この中で一番酔っぱらっているのは……シウルさんだ。
いつもはかなり酒に強いシウルさんだが、今日ばかりは幸せな酔いに身を任せている。
まるで幼い子どものような表情と言動で、幼い子どもが絶対に飲んではいけないような酒を飲んでいる。
「あっれ~? 店員さんが近くにいないぞ~? それに店が混んで来て、声が届いてないのかも~」
シウルさんは隣に座っている俺の方をポンポンと叩いた。
「ねぇ、パパ~! お酒貰って来て~!」
「はい……パパ?」
シウルさんの発言は他のメンバーにも聞こえていた。
みんなが「ん?」と思ってシウルさんの方を見る。
「そうだよ、パパ~……あ」
ニコニコだったシウルさんの顔が引きつり、すでに赤かった顔がさらに赤みを増す。
これ……油断して不意に誰かをパパとかママとか言っちゃう奴だ……!
みんなの前でやると一番恥ずかしいアレだ……!
「あば、あばばばばっ! 違うのっ、言い間違えただけっ! 酔ってたからっ!」
シウルさんは両手をぶんぶん振って発言を否定する。
酔っていたせいなんて理由はわかっているが、それを承知でポーラさんがいじり倒す。
「いいじゃないですか~、年下のパパがいたって~!」
「も~! そういう意味じゃないんだから~!」
笑いに包まれるガンバーラボのメンバーたち。
俺も笑ったし、そのうちシウルさんも笑い出した。
ロックは意味がわかっていなさそうだったが、みんなの笑顔を見てニコニコしていた。
やがて大半が酔い潰れ、打ち上げパーティーはお開きになった。
まだ正気を保っている人がぐでんぐでんになった人に肩を貸し、男女それぞれの宿舎へと帰っていく。
「ふ~、充実した1日だったな」
「クー!」
自室に戻り、ベッドに体を投げ出す。
明日からは他の人の発表を見るだけでいい。最高に気楽だ。
そうして6日後のシンポジウム全工程終了までベータポリスに残り、その後は王都に帰って冒険者の仕事を再開する。
俺は魔獣学者じゃないけど魔獣の知識が役に立つ仕事をしているし、シンポジウムの期間はいい息抜きにもなる。
全力で楽しませてもらうさ――ただ、今日はもう眠たいので寝る!
◇ ◇ ◇
『憲兵団ベータポリス支部長の手記』
魔獣学会のシンポジウムが行われたベータポリス。
学会としての規模が大きいため、街に流入してくる人間の数も多い。
人間の増加はトラブルの増加につながる。
学者は裕福で金を持っているというイメージから窃盗犯も街に流れ込み、盗難騒ぎが各所で起こった。
考えの違いから議論が白熱し、暴力事件を起こす学者はもはや名物。
シンポジウム初日が終わった夜には、発表が上手くいったチームが暴れたり、逆に上手くいかなかったから暴れたりと……乱痴気騒ぎもよく起こる。
そんな中、学者の失踪事件が発生した。
失踪したのはくしくもシンポジウム初日に高評価を得たガンバーラボのメンバー、所長ポーラ・マルグリットおよび客員研究員シウル・トゥルーデルである。
可能な限りの人員でベータポリス全体を捜索するも、失踪者およびその痕跡を発見することは叶わず。
事件性、緊急性が高い事件と断定し、憲兵団本部に捜査協力の要請を行った。
また、事件の初動捜査にはC級冒険者ユート・ドライグと従魔ロックの協力を扇ぎ、彼らには独自の路線で捜査を行うことを許可した。
この事件は数年前に発生した学者失踪の未解決事件と似たものを感じている。
今一度当時の捜査資料を洗い出し、今度こそは解決に導かねばならない。
そのためには人智を超えた力も必要になるだろう。
ユート氏とロック氏へを捜査に参加させたことは正しい判断だと私は信じている――
「「「「「かんぱ~い!!」」」」」
シンポジウム初日終了後――俺とロックはガンバーラボの面々の打ち上げに参加していた。
人気の大衆酒場で大きなテーブルを囲み、みんな好きな酒をがぶがぶ飲んでいる。
ここ最近は連日連夜発表の準備で、酒を飲んでいる場合ではなかったみたいだからな。
我慢の後の飲酒はさぞかし美味しいのだろう。
「クゥクゥクゥ……ッ!」
ロックは酒を飲まずに運ばれてくる料理をひたすら食べている。
ここは肉や野菜を串に刺して焼いたものが人気みたいで、ロックは前脚で器用に串を引っこ抜きながらタレのかかった肉を食べている。
おかげでテーブルにはどんどん串だけが残っていく……。
「さあさあ、みんなもっと食べて飲んでくださ~い! これだけ研究発表が上手くいったんですから、打ち上げの代金くらい大学が出してくれるはずです!」
柑橘系の果実酒をまるでジュースのような感覚で飲んでいるポーラさんはすでに出来上がっている。
赤くなった頬に緩んだ口元は、不安やプレッシャーから解放された証だ。
普段からとても温和な人で、本番直前でも弱気なことは言わなかったけど、ガンバーラボの所長として緊張していなかったわけがないものな。
「ユートくんも飲んでる~? 遠慮せずに支払いのことはお姉さん……の大学に任せなさ~い!」
「ありがとうございます。バチバチのスパークリングジュースをいただいてます」
お酒は飲まないが、ここには変わったジュースもたくさんある。
攻撃されてるのかってくらい強い炭酸ジュースの刺激が癖になって来たところだ。
「あとロックもここの料理が口に合うみたいで、たくさん食べてますね」
「クゥ~!」
「うんうん! それは良かった~! 私もそろそろアルコールは控えてソフトドリンクに切り替えようかな~? お腹ちゃぷちゃぷになって宿舎で漏らしたら、ベータポリスを出禁になっちゃうかもしれないし~」
「あ、あはは……」
アルコールでもソフトドリンクでも水分に変わりないから、トイレには行きたくなるだろう……という冷静なツッコミはぐでんぐでんに酔っている人に言っても意味はない。
まあ、ここまでみんなが酔うのにはちゃんとした理由がある。
素面のままでいると反省会が始まってしまうからだ。
研究発表は大成功だったけど、もっとこうすれば良かったかも、ああしていれば100点が120点になっていたかもという向上心は尽きない。
冷静なままでは真面目な話し合いが始まってしまうんだ。
だから、今日この時……一番嬉しい時くらいは研究を忘れて楽しむ。
そのための酒というわけだな。
酒を飲んでいないのは俺とロック、それとバニラくらいだ。
マギアバイクを飲酒後に運転することはジューネ族のルールで禁じられているらしく、日常的にマギアバイクを乗り回しているバニラは自然と酒を飲まなくなったらしい。
「とても頑丈ですごいスピードが出るマギアバイクは、巨大な砲弾みたいなもの……。酔って冷静な判断と感覚を失っている時に運転することは、大事故につながりまする。それは当然ジューネ族の評判を下げることになるゆえ、固く禁じられておるのですぞ」
納得のルールだと言わざるを得ないな。
酔って馬を乗り回した結果、人をはねたなんて事件は多い。
馬よりも重く速いマギアバイクなら、なおさら大惨事になってしまう。
「おぉぉぉ……! 肉の間に焼いたネギが入っているだけなのに、どうしてこうも美味しさが倍増するのでしょうか! 原理不明ですぞ……!」
酒は飲んでいないが、それはそれとして打ち上げを楽しんでいるバニラ。
さっきは強炭酸のジュースを飲んで、刺激のあまり噴き出していた。
「ククク……! まさか、この僕に隠された別の人格……いや、闇の人格があったとは……。よもや、最も奇怪で謎に包まれた生物は僕なのでは……!?」
研究発表時の記憶がないジェナスさんは、いつもと違う自分が出ていたことを他のメンバーに聞かされ、それを変な方向に解釈してしまっている。
まあ、これもアルコールのせいだろう。
酔いが醒めたらまたいつものジェナスさんに戻ってくれる……よね?
「えへ、えへへ~。いやぁ、私って幸せだぁ~。店員さ~ん、同じのもう1杯~!」
そして、この中で一番酔っぱらっているのは……シウルさんだ。
いつもはかなり酒に強いシウルさんだが、今日ばかりは幸せな酔いに身を任せている。
まるで幼い子どものような表情と言動で、幼い子どもが絶対に飲んではいけないような酒を飲んでいる。
「あっれ~? 店員さんが近くにいないぞ~? それに店が混んで来て、声が届いてないのかも~」
シウルさんは隣に座っている俺の方をポンポンと叩いた。
「ねぇ、パパ~! お酒貰って来て~!」
「はい……パパ?」
シウルさんの発言は他のメンバーにも聞こえていた。
みんなが「ん?」と思ってシウルさんの方を見る。
「そうだよ、パパ~……あ」
ニコニコだったシウルさんの顔が引きつり、すでに赤かった顔がさらに赤みを増す。
これ……油断して不意に誰かをパパとかママとか言っちゃう奴だ……!
みんなの前でやると一番恥ずかしいアレだ……!
「あば、あばばばばっ! 違うのっ、言い間違えただけっ! 酔ってたからっ!」
シウルさんは両手をぶんぶん振って発言を否定する。
酔っていたせいなんて理由はわかっているが、それを承知でポーラさんがいじり倒す。
「いいじゃないですか~、年下のパパがいたって~!」
「も~! そういう意味じゃないんだから~!」
笑いに包まれるガンバーラボのメンバーたち。
俺も笑ったし、そのうちシウルさんも笑い出した。
ロックは意味がわかっていなさそうだったが、みんなの笑顔を見てニコニコしていた。
やがて大半が酔い潰れ、打ち上げパーティーはお開きになった。
まだ正気を保っている人がぐでんぐでんになった人に肩を貸し、男女それぞれの宿舎へと帰っていく。
「ふ~、充実した1日だったな」
「クー!」
自室に戻り、ベッドに体を投げ出す。
明日からは他の人の発表を見るだけでいい。最高に気楽だ。
そうして6日後のシンポジウム全工程終了までベータポリスに残り、その後は王都に帰って冒険者の仕事を再開する。
俺は魔獣学者じゃないけど魔獣の知識が役に立つ仕事をしているし、シンポジウムの期間はいい息抜きにもなる。
全力で楽しませてもらうさ――ただ、今日はもう眠たいので寝る!
◇ ◇ ◇
『憲兵団ベータポリス支部長の手記』
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学会としての規模が大きいため、街に流入してくる人間の数も多い。
人間の増加はトラブルの増加につながる。
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考えの違いから議論が白熱し、暴力事件を起こす学者はもはや名物。
シンポジウム初日が終わった夜には、発表が上手くいったチームが暴れたり、逆に上手くいかなかったから暴れたりと……乱痴気騒ぎもよく起こる。
そんな中、学者の失踪事件が発生した。
失踪したのはくしくもシンポジウム初日に高評価を得たガンバーラボのメンバー、所長ポーラ・マルグリットおよび客員研究員シウル・トゥルーデルである。
可能な限りの人員でベータポリス全体を捜索するも、失踪者およびその痕跡を発見することは叶わず。
事件性、緊急性が高い事件と断定し、憲兵団本部に捜査協力の要請を行った。
また、事件の初動捜査にはC級冒険者ユート・ドライグと従魔ロックの協力を扇ぎ、彼らには独自の路線で捜査を行うことを許可した。
この事件は数年前に発生した学者失踪の未解決事件と似たものを感じている。
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