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2nd STAGE アイテムBOX争奪トライダンジョン

Data.67 ベラVS.アワモリ

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 ◇side:ベラ・ベルベット

 ま、回る回る目が回るぅ~……。
 何分ぐらいまわっとったんやろ……。
 てか、そもそもなんでマンネンが急に回りだしたんや!
 思い出してみるかぁ……。

 確か戦士団の奴らが追いかけてきて、誰かが攻撃をしてきて……そやそや、アイリィが『対ショック用意よーい』とか言っとったな。
 ……あれ!? 誰もおらんやん!
 みんなあのタイミングでマンネンから降りて戦い始めたんか?
 なら、あたしもはよ戻って助太刀せんとな!

 とはいえ、マンネンはボロボロや……。
 何とか手持ちのポーションで体力の回復、魔石で装甲の自動回復を促進してやらんとアカン。それでも完全回復には結構な時間がかかるで……。
 あたし一人でも戻る決断をせなアカンかもなぁ……
 今アイリィたちは三対二で戦っとるはずやから。

 とりあえずハッチから出て、マンネンの口にポーションを……。

「よっこらせっ……と」

 どうやら通路の突き当りの壁にぶち当たって止まったようやな。
 よくあたしにダメージがなかったもんやでホンマ。
 にしてもどんだけ長い通路……。

「わああああああああああああーーーーーーっっ!!!」

 誰かこっちに来る!
 それもさっきのあたしたちと同じように滑ってくる!
 おっ、おっ、よく見ると戦士団のオッサンやん!
 そうとわかればあえて無視! このまま壁に激突してもらうで!

「わああああああ……っとぉ! バウンドシャボン!」

 なんや! 男の体が一瞬でシャボン玉に包まれたで!

 ぽよんっ

 げ、激突の衝撃を全部あのシャボン玉が吸収してもうた!
 マンネンすら意識を失うレベルやったのに!

「あぁ、危なかった……。まったく、ドロシーちゃんも大人しい顔して結構カゲキなんだから困るぜ……」

 パンッとシャボン玉を割り、中のオッサンが立ち上がる。
 それと同時にあたしは攻撃を仕掛けた!

「ストレイトウィップ!」

 あっ、奇襲やのに叫んでもうた!
 まぁええか! アイツがマンネンを滑らせた本人なら私がここにいることはとっくにわかってるはずや!

「わっ! ビックリした! あっ、そっか! あっしが滑らしたんだった!」

 忘れとったんかい!

 ビシィッッ!!

「あ痛ァッ!!」

 しかも普通に当たっとるし!
 ストレイトウィップの直撃を受けてオッサンは数メートル吹っ飛ぶ。
 多少レベルが上がってきたとはいえ、あたしのムチのスキルたちに大した威力はない。
 あくまでテイマーのサブウェポンやからな。

 でもオッサンは盛大にふっとんどる!
 おそらくオッサンも戦闘に関してはそこまででもないんやろな。
 ならあたしが倒してまお!
 最近あたし自身が戦闘で役に立った記憶がないからなぁ……。ここでビシッと決めたいわ。

「悪く思わんといてやオッサン! タイガーウィップ!」

 虎を纏ったムチの一撃がいまだに地面に転がっとるオッサンに食ってかかる。

「そんなオッサンオッサン言わんで欲しいわ! へこむなぁ……」

「攻撃されといてつっこむとこそこかい! てか、自分で決めた見た目やろ!」

「あっ、そうだった。いや、そんな事どうでもいいか! 出てこいシャボン!」

 さっきみたいにシャボンで衝撃を吸収するつもりやな!
 攻撃力は大したことないけど、防御・妨害に関してはあなどれん男や。
 しかぁし! しょせんはシャボン!
 このタイガーウィップの虎は飾りやない。ムチの打撃に虎のキバの鋭さが加わっとる!
 つまり、シャボン玉ごとき一撃でパンッや!

「もろたで! オッサン!」

 虎がシャボンに触れ、パンッと割れる。
 思った通り一撃や!

「へへっ、それは甘いってもんですぜお嬢ちゃん!」

「なんやて! ああっ!」

 なんかネバネバした液体でムチを地面に貼り付けにされてもうた!

「そいつぁスティッキーシャボン! ネバネバで衝撃を減衰し、張り付けちまうんだぜ……」

「くっそ、変態な技やなぁ!」

「そ、それは本当にへこむわぁ……」

 そのままへこんどいてや!
 今のうちに何とかムチを……。

「おっと、そうはいかん! あっしのスキルじゃどれも嬢ちゃんを殺すには至らんけど、素手で死ぬまで殴るってのは絵的にも俺的にもマズイ! とりあえずスティッキーシャボンで拘束させてもらう!」

 オッサンの指先からいくつものシャボンが発射された。
 さっきのネバネバした奴やろうな。
 これはこのままでは防げん!

 ……まあ、このオッサンの強さも認めたろう。
 お披露目の相手としてはちぃーっと地味やけど、しゃーないか。

 ジュゥゥゥゥゥゥ……

「な、なんだそれは!?」

「ムチやで。おニュウのな」

 あたし自身は他のみんなみたいに独自の戦闘スタイルというのを確立してへん。
 基本的なレベル上げは合間を見てやっとるけど、劇的……いや多少なりグンと強さをアップするには『新装備の購入』が近道やった。

火炎かえん魔鞭まむち……。結構高かったんやで。特注やし」

 この世界フェアルードにはもちろん武器屋がある。この宮殿に来る前も立ち寄ったしな。
 そして、一部の店舗では素材やお金であるUOユーオを支払うことで武器を作ってもらえるんや。
 レシピはあるけど素材が貴重で店になかなか並べられへんような奴をな。

 今回の『火炎の魔鞭』は『ヴォルヴォル大火山洞窟』のザコ敵から入手したいくつかの素材を使って作ってもらったモンや。
 イメージはズバリあのボスの大蛇『フルフレイムサーペント』。
 ヘビとムチって似とるし、アイツと戦っててこんな『燃えるムチ』があったらな強そうやなと思ってな。
 おんなじこと考えるやつはいるモンで、武器屋にもレシピがちょうどあった。

「へっ、燃えるムチか……。確かにスティッキーシャボンのネバネバ成分は炎で焼いて水分を飛ばせば固まり、粘着力は低下する。しかし! 残った純粋な成分の効果は残り、武器の威力は低下し続けるって寸法よ! そのお高いおニュウのムチもこれで終わりだ!」

「それはどやろか!」

 『火炎の魔鞭』のレアリティは☆30。
 今まで使ってた『黒金虎のテールウィップ』は☆35。
 決して飛び抜けて強力な新武器やないけど、こいつには取り柄がいくつもある!
 まず一つ!

「消えろ! 炎のムチよ!」

 その瞬間炎が消え、こびり付いていたネバネバ成分も地面に落ちた。
 これが『火炎の魔鞭』の大きな特徴!
 魔力で出来たムチは持ち主の命令で出たり消えたりするんや!
 持ち手の部分は残るけどな。

「これでネバネバは効かんで! んで、炎のムチによるタイガーウィップを喰らえ!」

 『火炎の魔鞭』から放たれたタイガーウィップは炎を纏う!
 牙でシャボンを割り、炎で粘液の能力を低下させる。完璧な合わせ技や!

「くっ! 確かにシャボン一つ二つじゃどうにもならんかな! だがなお嬢ちゃん! お遊びでシャボン玉を飛ばす時も、十個や百個ぐらい飛ばすのが普通だよな?」

 オッサンは両腕で頭上に大きな丸を作り、そこへ粘液の膜を張った。

「そ、それは!」

「その通り!」

 今度は風が吹き出した!
 あの腕で作ったのはシャボン玉を生み出す大きい口なんや!
 強くなる風がオッサンの腕の丸の中を通り、次々にシャボン玉を生み出す。

「いろんな種類のシャボン、泡を混ぜ込んだ必殺技……その名も暴風泡バブルストーム!」

 オッサンが渦巻く大量のシャボン玉に包まれ見えんくなった。
 虎は果敢に泡の嵐に突撃したんやけど、やっぱり何個かシャボンを割ってしまいやった。
 こんな奥の手があったんかいな!
 くっそ~、今回は一人で倒せるかもと思ったんやけどなぁ……。



 > > > > > >



 ◇side:アワモリ

 へへっ! 上手くいった!
 俺の最終兵器は何とか通用してよかったぜ!
 いやぁ、割と強力と仲間からも評判良かった【粘々の泡々スティッキーシャボン】が無効化された時はもうダメかとおもいやしたぜ……。

 しかし、この【暴風泡バブルストーム】の密度には手も足もでんかったようで。
 ちーっとばかし魔力を使い過ぎやすが、このままシャボンの範囲を広げていけばいずれシャボンに当たりお嬢ちゃんは動けなくなる。
 それからこのスキルを解除すればいい。

 にしても、あっしにしてはやはり強力なスキル!
 団長には効かないし、キョウカちゃんとドロシーちゃんにも効かないから過小評価し過ぎてたのかもしれんなぁ。
 このスキルの弱点と言えば、半透明なシャボンをいく層にも重ねすぎるせいで外の景色が見えんことぐ……ぐぉぉぉぉーーーーっっ!!

 突然の衝撃!
 い、意識が遠のく……。
 いったい誰が……。お嬢ちゃんにこんな強力なスキルが……?
 なら初めから使っているはず……。

「わけわからん……って顔やな」

 お嬢ちゃんの声が響く。

「くっ……どうして……」

「見ればわかると思うで」

 見れば……だと?
 何とか目を開き、お嬢ちゃんの方を見てみる。

「……っ? ネバネバをつけた黒い方のムチが元に戻っている……」

「そこかいな! まっ、それもあんたにトドメをさした原因の一つやけどな」

 ほ、他に何か……。
 あっ!?

「カメや! 結局カメかいな!」

 無力化したと思っていたカメがこっちにその大砲を向けている!

「おっ、まだ大きい声でるやんか。そや、さっきの一撃はマンネンや! だって、あたしは『突撃テイマ―』! いざという時、相棒パートナーに頼って何が悪いねん! むしろ、とーぜんやないか!」

「くっ……それはそうと、黒いムチが元に戻ったのと何の関係が……」

「このネバネバ成分のおかげでマンネンのキャタピラのツルツル成分を中和できたんや。そうやないと、滑って主砲を打つのは危険やからな」

 そ、そうか。
 初めにカメ戦車相手に【高速連続泡々バブルガトリング】で打ち出した【滑々の泡々スリッピーシャボン】をネバネバの中和剤として使ったんか……。

「それにしてもオッサン強いなぁ。これで仲間の尻に敷かれとるんやから、グローリア戦士団の層の厚さは計り知れんわ」

「へへっ……そうだろ? あっしなんか本当は下っ端さ」

「やろ? やから、はよあたしの仲間も助けに行かんとな! すまんけどホンマのトドメや! ストレイトウィップ!」

「えっ、せめて名前ぐらい名乗らせ……ギャ!」

 か、かわいくねー嬢ちゃんだったぜ!
 がくっ……。



 > > > > > >



 ◇side:ベラ・ベルベット

「はぁはぁ……勝った……」

 不安やった……。
 マココさんに出会うまでは恐れ知らずのソロプレイヤー『突撃テイマ―』やったのに、最近はあの人の後ろについていくことが楽しくて、一人が怖くなってもうてた。

「またまたありがとうな、マンネン」

 今回の戦いで少し自分の目指すべき強さを再確認できたかな。
 私自身が強くなるのはええことやけど、あくまであたしはテイマーや。
 相棒パートナーとのコンビネーションバトルにこそ真の強さがある。

 火山ではマンネンと一緒に冒険できんくて、あんま活躍できんかったから他の仲間の強さに憧れてもみた。
 やけど、結局は自分なりのスタイルが一番!
 苦手もあるけど、きっと得意もある。
 自分の信じたモノをとことん追求するのが、私の憧れた人のやり方やった。

「……そういえば、マココはんも宮殿に辿り着いてるかもしれん。はよ残りの戦士団を倒して探索せな! マンネン! 少し回復と休憩した後に動くで!」

 ユーリとアイリィは大丈夫やろか。
 特に水色の髪の女はオッサンより強そうな相手やったけど……。
 あっ、オッサンの名前ぐらい聞いたれば良かったなぁ。
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