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1st STAGE じゃじゃ馬娘とドラゴンゾンビ

Data.9 ゴブリン襲来と新ダンジョン

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「――Ancientエンシェント Unfairアンフェア Onlineオンラインの世界へおかえりなさい、マココ・ストレンジさん。冒険を再開しますか?」

「はい」

「――了解しました。前回ログアウトした地点『イスエドの村』よりスタートです。良い冒険を……」

 私は再びAUOの世界『フェアルード』に飛び込んだ。



 > > > > > >



 今のイスエドの村は夜が明ける前、空が少し白んできた頃のようだ。
 村の人は朝が早いようで家々から物音が聞こえる。

「考え事しながら近くのモンスターでも狩るか……」

 『死して蠢く者の洞窟アンデッドケイブ』攻略、そしてドラゴンゾンビ討伐。
 この二つを成すために何から始めるべきか。

 掲示板を見た感じ、ドラゴンゾンビの存在に気付いている人は少しいるみたいだけど、まだ討伐しようと考えている人はいなかった。
 倒せる可能性がある上位勢は、危険を冒すだけのうまみがないと動かない。
 戦闘を見られればスキルがばれるかもしれないし、負ければせっかく集めた強い武器防具も傷つく。

 私も焦る必要はない。
 かといってたらたら時間を使うのも性に合わない。

 掲示板のレスによると、イスエドの村出身のNPCたちが村へ戻るためにドラゴンゾンビ討伐を冒険者ギルドに依頼しているらしい。
 だから純粋に早めに解決してあげたいとも思う。

「……とりあえずレベル上げ薬草集めね」

 私は当面の方針を決め、村の門に向けて歩き出した。

「も、モンスターが来たぞぉぉー!! 西の方からだぁ!!」
「な、なんだって!?」
「うそでしょ!?」

 質素な見張り台から誰かが叫び、それを聞いた村人たちの顔は恐怖で引きつっている。
 にしてもモンスターがわざわざ村を攻めて来るとは……。

「あの方角は……大きな町へ通じる唯一の道がある方さ。つまりドラゴンゾンビがいるところ。今来た奴らは元の住処を追われた負け犬どもさ。かわいそうかい? どちらにしろ狩らなきゃこちらの命がないがね……ヒッヒッヒッ……」

「うわっ!」

 昨日、私のブーメランに【腐食耐性】を付与してくれたお婆さんが隣で笑っていた。

「あんたに良い事を教えてやろうと思ったが、まず奴らを片付けてからだねぇ……」

 言うだけ言うと老婆は去っていった。
 うーん、強者感バリバリでカッコいい……。

 言われた通りに狩りに行くとしよう。
 どちらにしろこの村が無くなったら私の活動拠点が無くなってしまう。
 私は門の外へ駆けだした。

 敵は15~20体ぐらいかな。
 どうやらゴブリンの群れのようだ。
 ボロボロの布きれを纏い、木の棒を持った<下っ端ゴブリン:Lv3>。
 どこで拾ったか、金属製の武器を振り回す<ゴブリンソルジャー:Lv5>。
 簡単な作りの木の矢を構える<ゴブリンアーチャー:Lv4>。
 そして、<ゴブリンリーダー:Lv10>。これは一体だけね。

 数は多いけど、攻撃防御共に低そうだ。
 こういうの素早く片付けるのにブーメランはうってつけの武器。

塵旋風ジンセンプウ!」

 私は容赦なくスキルを放った。
 体重の軽いゴブリンの中には吹き飛ばされる奴もいて、効果は抜群のようだ。
 風の中を抜けてくるゴブリンには『木のブーメラン』で対応する。

 この初期装備にもずいぶんお世話になっている。
 でもゾンビを切ったりしてるせいでもうボロボロだ。
 どこかで新たなサブブーメランもゲットしたいわね。
 やりたい事がどんどん増えてくる。

 そんなこんなで最後のゴブリンリーダーを【ブーメ乱舞ランブ】で切り刻み、モンスターの侵攻は食い止められた。

 ――レベルアップ!
 ――スキルレベルアップ!

 いい調子ね。
 強敵の対処に悩んだらとりあえずレベルを上げる。
 昔からゲーム攻略で使われている手法だ。

 ◆ステータス詳細
 ―――基本―――
 ネーム:マココ・ストレンジ
 レベル:14
 レイス:人間
 ジョブ:狩人
 ―――装備―――
 ●武器
 木のブーメラン:☆1
 目覚めのブーメラン:☆15+1
 ●防具
 質素なシャツ:☆1
 質素なズボン:☆1
 白革のグローブ:☆7
 蜘蛛の腕輪:☆8
 質素な靴:☆1
 ―――技能スキル―――
 ●任意
 【塵旋風ジンセンプウ】Lv3
 【ブーメ乱舞ランブ】Lv2
 【回帰する生命ブーメラン・オブ・ライフ】Lv1
 ●常時
 【ブーメラン術】Lv8
 【解体】Lv6
 【回復魔術】Lv1

 私のレベルが1つ。
 スキルは【塵旋風ジンセンプウ】と【ブーメ乱舞ランブ】が上がったわ。

 でもこれ【回帰する生命ブーメラン・オブ・ライフ】と【回復魔術】のレベルを上げるの大変そうだ。
 蘇生オンリーだから死人が出ないと使う機会がない。
 純粋な体力回復スキルも目覚めさせたいところね。
 やる事リストでも作ろうかな。

「モンスターどもよ! 生まれ変わった私が相手だ! ……あれ?」

 門から飛び出てきたアチルが辺りを見回して目を丸くしている。
 昨日一度死んでるけど、顔色は良いし調子は良さそうだ。
 服もボロボロの物から新品へ変わっている。

「あっ、マココさんおはようございます。全部片付けちゃったんですね! 流石です!」

「まあね。雑魚の群れはブーメランのカモよ」

「ヒッヒッヒッ……頼もしい限りだね。だが、強敵は苦手だろ?」

 どこかで戦いが終わるのを見ていたのか、お婆さんがすぐ隣に現れた。
 今度も驚いたけど、なんとか声は出さなかった。

「あいつらはさっきも言ったが、都市へ通じる道『サベント渓谷』に住みついてたゴブリンさ。全体の数はあんなもんじゃない。他の群れはまだ抵抗を続けてるようだねぇ、ドラゴンゾンビに。それもいつまで持つか……」

「つまり、また来るかもしれないって事ですね」

「察しが良いねぇ」

 誰かがこの村を守らねばならない。
 でも戦力は私とアチルのみ。
 あ、まさか……。

「あたしゃ戦えないよ。もう歳なんでねぇ。ボケ防止の趣味のおかげで、少しばかし手先が器用なだけさ……ヒッヒッヒッ」

「そうですか……」

「まあ知恵は貸してあげるさ。アチルはここの防衛だ。昨日持って帰ってきた良い盾を門の前に突き立てて壁にし、モンスターを迎え撃つんだよ」

「えー、私も冒険したーい」

「そして、あんたは新たなダンジョンに向かいな。なぁに『死して蠢く者の洞窟アンデッドケイブ』に比べれば良いところさ。一人でも十分、気楽においき……」

 そう言って私はお婆さんからダンジョンへの地図をもらった。
 森の中で目印になる物が記された簡単なものだ。

「……あのぉ」

「そうだそうだ、蜘蛛系の魔物がいたら狩っておいてもらえるかい? 村の柵を丸太の壁に変えようと思っていてね。糸が引っ付けるためにいるんだ。もちろんお礼はする」

 ――クエスト発現!
 ――『蜘蛛の糸収集』
 ――このクエストを受けますか?

「まあ、それはいいんですけど……」

 ――クエスト受領!

「ヒッヒッヒッ……ダンジョンに行く目的かい? それはあんたの方がよく知ってると思うけどねぇ」

 何らかの強化手段が眠っているダンジョンという訳かな。
 まあ私も当てもないレベル上げよりは新ダンジョン探索の方が楽しい。
 お得意のソロプレイを見せるとしますか。

「アチルは大丈夫ですかね?」

「ゴブリンぐらいなら問題ないよ。あの子にもいい刺激になるさ」

 少し不安だけど信じるとしよう。
 ダンジョンまでは森を通るようだし、薬草集めも並行して進めるかな。

「じゃ、行ってきます」

「はいはい。テキパキこなして、ゆっくり帰っておいで……」

 お婆さんの言葉を背に受けながら、私は新ダンジョンへの道を足取り軽く進んでいった。
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