138 / 140
第8章 第二次琵琶湖決戦
-138- 第二次琵琶湖決戦Ⅷ〈凱旋〉
しおりを挟む
まずはレベル90地点まで戻りヴァイオレット姉妹と合流する!
コアを破壊されたダンジョンのモンスターたちは地上を目指す傾向があるから、一番深いこのあたりにモンスターは少ない。
でも、少し上がった90地点には新たな巨大半魚人なんかがいてもおかしくはない。
あいつは強敵だから見つけ次第オーラで仕留めないとね……!
激戦の後でも周囲への警戒を怠らず、来た道を引き返していく私。
ほどなくしてレベル90地点に留まっていた2機のアンサーと合流した。
『マキナ……! やり遂げましたのね!』
『ええ! 流石に余裕とはいかなかったけどね』
紅花のアンサー・レッドも傷つき、装甲や武装の一部を失っている。
出現するモンスターをここに引き付け、奥へ向かう私を追わせないために戦い続けてくれたんだ。
そして、それは藍花のアンサー・ブルーも一緒だ。
『マキナ、大丈夫? どこも痛くない……?』
『大丈夫だよ! 今は気分も良いからね』
アイオロスと戦っている時に比べればだいぶ精神は落ち着いたけど、平常時と比べるとまだまだハイになっているのは確かだ。
でも、こういう時は気を緩めるた瞬間に睡魔が襲ってくる。
だからこそ、今はまだハイな自分を維持しておかないとね。
『さあ、紅花と藍花も一緒に地上を目指そう! ここまで頑張ってくれた自分のDMDをマシンベースまで導かないと!』
頑張ってくれたと言えば、このレベル90地点にはパージされたタンブルシードが転がっている。
回収して帰りたい気持ちはあるけど、今のアイオロス・マキナは重力制御能力を持つ装甲やフレームの一部を失っていて、機体を戦闘に耐えうるレベルで動かすのがやっとの状況だ。
元々使い捨てを前提にした兵器ではあるけど、ダンジョンの消滅まで猶予があるなら回収する機会もあるだろう。
どちらにせよ、今この場での回収は断念しないとね。
せっかく私を無事に送り届けてくれたのに、無茶なことをしてこれ以上アイオロス・マキナを壊したら申し訳ない。
レベル90地点を後にした私たちは、地上を目指すモンスターを撃破しつつレベル70地点に向かっていく。
一度通った道はちゃんと記録してあるから迷うことはないけど、地上を目指すモンスターの後を追えばそれに頼らなくてもスムーズに進める。
しばらくして、たどり着いたレベル70地点では見慣れた3機のDMDが戦いを続けていた。
『あら蒔苗さん、お早いお帰りですわね。まあ、わたくしほど蒔苗さんを知っている人間になると、この作戦の成功も当然のことに思えて驚きはありませんが!』
『あはは、流石は蘭だね。言う通り当然のことをしてきたまでよ!』
蘭の声はわかりやすく震えていて、泣いているように聞こえたけど、そんなことを指摘するほど私は野暮な女じゃないってね。
『蒔苗はすごいな……。私はコア破壊の報せを受け取ったら気が抜けちゃって今にも眠っちゃいそう……。でも、私を選んでくれた蒔苗のためにも最後まで戦うよ。モンスターの掃討とか後始末もちゃんとしないといけないからな』
『葵さんもすごいです。最後まで責任を果たそうとする立派な人です!』
機体もちょっと猫背気味で本当に眠そうだけど、この状態でDMDを動かせるんだからやっぱり葵さんもすごい人だ。
『蒔苗様……すいません……今は言葉が出てきません……』
『大丈夫ですよ百華さん。後でゆっくり聞かせてくださいね』
彼女の恩人である萌葱大樹郎の敵討ちはなされた。
お爺ちゃんが亡くなってから長い年月が流れたわけではないけど、長い戦いだったという想いを多くの人が抱いていると思う。
それはきっと、お爺ちゃんの人生の締めくくりは前の戦いではなく今この戦いだから。
遺した想いが、力が、今この瞬間実を結んだから。
迷宮王が戦いと共に歩んだ人生の長さと偉大さをみんなも感じているんだ。
再び6人揃ったマキナ隊の前に障害はない。
残存モンスターを蹴散らして深層から離脱。
レベル50地点の先行部隊と合流する。
彼らは私たちよりも長い時間戦っているけど、深層から戻ってきた私たちに労いと感謝の言葉をたくさん送ってくれた。
竜種の撃破とダンジョンコアの破壊により、作戦は次の段階へと移行している。
地上に待機していた部隊が残存モンスターの殲滅と消滅しゆくダンジョンの調査、モンスターが落としたアイテムや破壊されたDMDの回収のために次々と投入されていく。
逆にダンジョン内で戦っていた部隊は順番に撤退していくことになる。
私たちはその順番の一番最初だ。作戦が完了次第帰還することを許されている。
帰還のためにダンジョンを進む中、すれ違うDMDたちがこちらに手を振ってくれる。
まるで英雄の凱旋のようだ。
無傷に近いDMDも、ボロボロのDMDも、みんな称賛の言葉と共に手を振る。
私もそれに返事をすべく、精一杯残った右手を振った。
その後ダンジョンから脱出し、マシンベース上空まで戻って来たマキナ隊を待っていたのは、滋賀第二マシンベースのスタッフさんやメカニックさん、それに機体を失ったなどで先に作戦行動を終了していた操者さんたちだった。
みんな建物の外に出て、空を飛ぶ私たちを見上げながら満面の笑みで手を振っている。
そう、この光景なんだ。
私はこのために力を持って生まれ、このために戦ってきたんだ。
きっと、お爺ちゃんもそうだったんでしょ?
会ったことがない偉大な迷宮王の想いを今、確かに受け継いだ気がした。
コアを破壊されたダンジョンのモンスターたちは地上を目指す傾向があるから、一番深いこのあたりにモンスターは少ない。
でも、少し上がった90地点には新たな巨大半魚人なんかがいてもおかしくはない。
あいつは強敵だから見つけ次第オーラで仕留めないとね……!
激戦の後でも周囲への警戒を怠らず、来た道を引き返していく私。
ほどなくしてレベル90地点に留まっていた2機のアンサーと合流した。
『マキナ……! やり遂げましたのね!』
『ええ! 流石に余裕とはいかなかったけどね』
紅花のアンサー・レッドも傷つき、装甲や武装の一部を失っている。
出現するモンスターをここに引き付け、奥へ向かう私を追わせないために戦い続けてくれたんだ。
そして、それは藍花のアンサー・ブルーも一緒だ。
『マキナ、大丈夫? どこも痛くない……?』
『大丈夫だよ! 今は気分も良いからね』
アイオロスと戦っている時に比べればだいぶ精神は落ち着いたけど、平常時と比べるとまだまだハイになっているのは確かだ。
でも、こういう時は気を緩めるた瞬間に睡魔が襲ってくる。
だからこそ、今はまだハイな自分を維持しておかないとね。
『さあ、紅花と藍花も一緒に地上を目指そう! ここまで頑張ってくれた自分のDMDをマシンベースまで導かないと!』
頑張ってくれたと言えば、このレベル90地点にはパージされたタンブルシードが転がっている。
回収して帰りたい気持ちはあるけど、今のアイオロス・マキナは重力制御能力を持つ装甲やフレームの一部を失っていて、機体を戦闘に耐えうるレベルで動かすのがやっとの状況だ。
元々使い捨てを前提にした兵器ではあるけど、ダンジョンの消滅まで猶予があるなら回収する機会もあるだろう。
どちらにせよ、今この場での回収は断念しないとね。
せっかく私を無事に送り届けてくれたのに、無茶なことをしてこれ以上アイオロス・マキナを壊したら申し訳ない。
レベル90地点を後にした私たちは、地上を目指すモンスターを撃破しつつレベル70地点に向かっていく。
一度通った道はちゃんと記録してあるから迷うことはないけど、地上を目指すモンスターの後を追えばそれに頼らなくてもスムーズに進める。
しばらくして、たどり着いたレベル70地点では見慣れた3機のDMDが戦いを続けていた。
『あら蒔苗さん、お早いお帰りですわね。まあ、わたくしほど蒔苗さんを知っている人間になると、この作戦の成功も当然のことに思えて驚きはありませんが!』
『あはは、流石は蘭だね。言う通り当然のことをしてきたまでよ!』
蘭の声はわかりやすく震えていて、泣いているように聞こえたけど、そんなことを指摘するほど私は野暮な女じゃないってね。
『蒔苗はすごいな……。私はコア破壊の報せを受け取ったら気が抜けちゃって今にも眠っちゃいそう……。でも、私を選んでくれた蒔苗のためにも最後まで戦うよ。モンスターの掃討とか後始末もちゃんとしないといけないからな』
『葵さんもすごいです。最後まで責任を果たそうとする立派な人です!』
機体もちょっと猫背気味で本当に眠そうだけど、この状態でDMDを動かせるんだからやっぱり葵さんもすごい人だ。
『蒔苗様……すいません……今は言葉が出てきません……』
『大丈夫ですよ百華さん。後でゆっくり聞かせてくださいね』
彼女の恩人である萌葱大樹郎の敵討ちはなされた。
お爺ちゃんが亡くなってから長い年月が流れたわけではないけど、長い戦いだったという想いを多くの人が抱いていると思う。
それはきっと、お爺ちゃんの人生の締めくくりは前の戦いではなく今この戦いだから。
遺した想いが、力が、今この瞬間実を結んだから。
迷宮王が戦いと共に歩んだ人生の長さと偉大さをみんなも感じているんだ。
再び6人揃ったマキナ隊の前に障害はない。
残存モンスターを蹴散らして深層から離脱。
レベル50地点の先行部隊と合流する。
彼らは私たちよりも長い時間戦っているけど、深層から戻ってきた私たちに労いと感謝の言葉をたくさん送ってくれた。
竜種の撃破とダンジョンコアの破壊により、作戦は次の段階へと移行している。
地上に待機していた部隊が残存モンスターの殲滅と消滅しゆくダンジョンの調査、モンスターが落としたアイテムや破壊されたDMDの回収のために次々と投入されていく。
逆にダンジョン内で戦っていた部隊は順番に撤退していくことになる。
私たちはその順番の一番最初だ。作戦が完了次第帰還することを許されている。
帰還のためにダンジョンを進む中、すれ違うDMDたちがこちらに手を振ってくれる。
まるで英雄の凱旋のようだ。
無傷に近いDMDも、ボロボロのDMDも、みんな称賛の言葉と共に手を振る。
私もそれに返事をすべく、精一杯残った右手を振った。
その後ダンジョンから脱出し、マシンベース上空まで戻って来たマキナ隊を待っていたのは、滋賀第二マシンベースのスタッフさんやメカニックさん、それに機体を失ったなどで先に作戦行動を終了していた操者さんたちだった。
みんな建物の外に出て、空を飛ぶ私たちを見上げながら満面の笑みで手を振っている。
そう、この光景なんだ。
私はこのために力を持って生まれ、このために戦ってきたんだ。
きっと、お爺ちゃんもそうだったんでしょ?
会ったことがない偉大な迷宮王の想いを今、確かに受け継いだ気がした。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
異世界ロマンはスカイダイビングから!
KeyBow
ファンタジー
21歳大学生の主人が半年前の交通事故で首から下が動かない絶望的な生活が、突然の異世界転位で一変!転位で得た特殊なドールの能力を生かして異世界で生き残り、自らの体を治す道を探りつつ異世界を楽しく生きていこうと努力していく物語。動かない筈の肉体を動かす手段がある事に感動するも性的に不能となっていた。生きる為の生活の糧として選んだ冒険者として一歩を踏み出して行くのである。周りの女性に助けられるも望まぬ形の禁欲生活が始まる。意識を取り戻すと異世界の上空かららっかしていたのであった・・・
ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~
テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。
大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく――
これは、そんな日々を綴った物語。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる