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第8章 第二次琵琶湖決戦

-138- 第二次琵琶湖決戦Ⅷ〈凱旋〉

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 まずはレベル90地点まで戻りヴァイオレット姉妹と合流する!
 コアを破壊されたダンジョンのモンスターたちは地上を目指す傾向があるから、一番深いこのあたりにモンスターは少ない。
 でも、少し上がった90地点には新たな巨大半魚人なんかがいてもおかしくはない。
 あいつは強敵だから見つけ次第オーラで仕留めないとね……!

 激戦の後でも周囲への警戒を怠らず、来た道を引き返していく私。
 ほどなくしてレベル90地点に留まっていた2機のアンサーと合流した。

『マキナ……! やり遂げましたのね!』

『ええ! 流石に余裕とはいかなかったけどね』

 紅花のアンサー・レッドも傷つき、装甲や武装の一部を失っている。
 出現するモンスターをここに引き付け、奥へ向かう私を追わせないために戦い続けてくれたんだ。
 そして、それは藍花のアンサー・ブルーも一緒だ。

『マキナ、大丈夫? どこも痛くない……?』

『大丈夫だよ! 今は気分も良いからね』

 アイオロスと戦っている時に比べればだいぶ精神は落ち着いたけど、平常時と比べるとまだまだハイになっているのは確かだ。
 でも、こういう時は気を緩めるた瞬間に睡魔が襲ってくる。
 だからこそ、今はまだハイな自分を維持しておかないとね。

『さあ、紅花と藍花も一緒に地上を目指そう! ここまで頑張ってくれた自分のDMDをマシンベースまで導かないと!』

 頑張ってくれたと言えば、このレベル90地点にはパージされたタンブルシードが転がっている。
 回収して帰りたい気持ちはあるけど、今のアイオロス・マキナは重力制御能力を持つ装甲やフレームの一部を失っていて、機体を戦闘に耐えうるレベルで動かすのがやっとの状況だ。
 元々使い捨てを前提にした兵器ではあるけど、ダンジョンの消滅まで猶予があるなら回収する機会もあるだろう。

 どちらにせよ、今この場での回収は断念しないとね。
 せっかく私を無事に送り届けてくれたのに、無茶なことをしてこれ以上アイオロス・マキナを壊したら申し訳ない。

 レベル90地点を後にした私たちは、地上を目指すモンスターを撃破しつつレベル70地点に向かっていく。
 一度通った道はちゃんと記録してあるから迷うことはないけど、地上を目指すモンスターの後を追えばそれに頼らなくてもスムーズに進める。
 しばらくして、たどり着いたレベル70地点では見慣れた3機のDMDが戦いを続けていた。

『あら蒔苗さん、お早いお帰りですわね。まあ、わたくしほど蒔苗さんを知っている人間になると、この作戦の成功も当然のことに思えて驚きはありませんが!』

『あはは、流石は蘭だね。言う通り当然のことをしてきたまでよ!』

 蘭の声はわかりやすく震えていて、泣いているように聞こえたけど、そんなことを指摘するほど私は野暮な女じゃないってね。

『蒔苗はすごいな……。私はコア破壊のしらせを受け取ったら気が抜けちゃって今にも眠っちゃいそう……。でも、私を選んでくれた蒔苗のためにも最後まで戦うよ。モンスターの掃討とか後始末もちゃんとしないといけないからな』

『葵さんもすごいです。最後まで責任を果たそうとする立派な人です!』

 機体もちょっと猫背気味で本当に眠そうだけど、この状態でDMDを動かせるんだからやっぱり葵さんもすごい人だ。

『蒔苗様……すいません……今は言葉が出てきません……』

『大丈夫ですよ百華さん。後でゆっくり聞かせてくださいね』

 彼女の恩人である萌葱大樹郎のかたき討ちはなされた。
 お爺ちゃんが亡くなってから長い年月が流れたわけではないけど、長い戦いだったという想いを多くの人が抱いていると思う。
 それはきっと、お爺ちゃんの人生の締めくくりは前の戦いではなく今この戦いだから。
 遺した想いが、力が、今この瞬間実を結んだから。
 迷宮王が戦いと共に歩んだ人生の長さと偉大さをみんなも感じているんだ。

 再び6人揃ったマキナ隊の前に障害はない。
 残存モンスターを蹴散らして深層から離脱。
 レベル50地点の先行部隊と合流する。
 彼らは私たちよりも長い時間戦っているけど、深層から戻ってきた私たちにねぎらいと感謝の言葉をたくさん送ってくれた。

 竜種の撃破とダンジョンコアの破壊により、作戦は次の段階へと移行している。
 地上に待機していた部隊が残存モンスターの殲滅と消滅しゆくダンジョンの調査、モンスターが落としたアイテムや破壊されたDMDの回収のために次々と投入されていく。
 逆にダンジョン内で戦っていた部隊は順番に撤退していくことになる。
 私たちはその順番の一番最初だ。作戦が完了次第帰還することを許されている。

 帰還のためにダンジョンを進む中、すれ違うDMDたちがこちらに手を振ってくれる。
 まるで英雄の凱旋がいせんのようだ。
 無傷に近いDMDも、ボロボロのDMDも、みんな称賛の言葉と共に手を振る。
 私もそれに返事をすべく、精一杯残った右手を振った。

 その後ダンジョンから脱出し、マシンベース上空まで戻って来たマキナ隊を待っていたのは、滋賀第二マシンベースのスタッフさんやメカニックさん、それに機体を失ったなどで先に作戦行動を終了していた操者さんたちだった。
 みんな建物の外に出て、空を飛ぶ私たちを見上げながら満面の笑みで手を振っている。

 そう、この光景なんだ。
 私はこのために力を持って生まれ、このために戦ってきたんだ。
 きっと、お爺ちゃんもそうだったんでしょ?
 会ったことがない偉大な迷宮王の想いを今、確かに受け継いだ気がした。
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