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第8章 第二次琵琶湖決戦
-125- 目覚める決戦兵器
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お母さんのお見舞いに行ってから3日後、私は滋賀第二マシンベースに来ていた。
アイオロス・マキナの輸送も完了し、後は他の準備が整うのを待つのみ……。
そう思っていた私の元に育美さんからの連絡が届いた。
内容は例の試作決戦兵器が完成したというもの……。
未だその詳細を知らされていない私はドキドキしながらドックへ向かった。
「デ、デカい……っ!」
整備ドックの一画を占領する巨大な兵器……!
ラグビーボールのような紡錘形で、表面には対Dエナジーコーティングを施されたことによる独特な光沢がある。。
さらに機体各部には大きなダイヤモンドのような宝石も散りばめられている。
「育美さん、これは何ですか!?」
「名前はタンブルシード。荒野を転がるタンブルウィードって草と種を意味するシードを組み合わせた『転がる種』の異名を持つモエギの試作決戦兵器よ」
「転がる種タンブルシード……! また不思議な名前ですね」
「まあ、名前だけ聞くとそう思うかもしれないけど、機体のコンセプトからすればド直球にもほどがあるネーミングなのよねぇ~。まず、この兵器は単体で運用するものじゃなくて、内部にDMDを搭載して使う支援メカなの」
「中にDMDを入れるんですか! あ、でもそれなら確かにアイオロス・マキナを安全にダンジョンの奥まで届けられそうですね!」
「その通りよ。対Dエナジーコーティングが施された巨大で分厚い装甲は物理攻撃もエナジー攻撃も簡単には通さない。さらに表面に散りばめられた宝石のようなパーツはアイオロス・マキナの胸のエメラルドと似たようなもので、Dエナジーを広範囲に拡散して撃ち出す『プリズムブラスター』の発射口になっているわ。これによってモンスターの攻撃を防ぎつつ、撃破も狙えるようになっているの」
機体を守らないといけないなら頑丈な入れ物に入れてしまえばいい!
すごく単純だけど効果的な発明だ!
でも、育美さんの話だとこのタンブルシードは倉庫に眠っていたみたいだけど、どうして正式採用されなかったんだろう?
通常のダンジョン攻略にも役立ちそうな気がするけど……。
「ふふっ、こんなすごいメカがどうして今まで使われなかったのかって顔してるわね? 答えは簡単! こんな大きな物体を動かすことが出来なかったからよ! ブースターをつければさらに大型化するし、入り組んでいたり狭かったりするダンジョン内部では小回りが利かない。大きいから狙われやすいのに攻撃も回避出来ない。いくら頑丈でも攻撃を受け続けたら壊れるし、基本的に無傷ではいられない。1回の運用で使い捨てることを前提にしてるから予算の方も馬鹿にならない……とまあ、強いっちゃ強いんだけど欠点も多いのよね」
「な、なるほど……。確かにこんな大きい機体を使い捨てにするくらいなら、その予算で複数のDMDを揃えた方が良い気がしますね……。DMDは場合によっては長く使えますし……」
「そうなのよねぇ~。しかも今回この機体に使われているコーティングや宝石といった技術は最近確立されたばかりだから、元のタンブルシードはもっと性能が低かったのよね。とてもじゃないけど正式に採用は出来ないということで試作機がずっと倉庫に眠っていたみたい。でも、開発チームは最後まで食らいついていたらしくて、開発末期なんかは機体の質量を生かしてダンジョン内を転がり、その勢いでモンスターを倒すなんて計画もあったとかなんとか……」
「ま、まさか転がる種の由来ってそこからですか……?」
「どうもそうみたいよ」
「モエギって楽しそうな会社ですね……」
「特に開発部は天才的な奇人変人の集まりだからねぇ~。でも、一応転がすっていうのはブースターをつけて飛ばすよりは現実的な作戦ではあったのよ。まっ、今回のダンブルシードは飛ばすでも転がすでもなく浮かすんだけどね!」
「アイオロス・マキナの重力制御能力を使うんですね」
「そう! あの機体には自分の重量だけじゃなく、こんな巨大な物体の重量も帳消しに出来るだけの力がある。タンブルシードは重力制御によって浮遊し、敵の攻撃を受け止めながらアイオロス・マキナを最低でもレベル90付近まで届けるのが役目よ」
「レベル100のうち90までということは、かなり長い付き合いになりそうですね」
「それは間違いないわね。でも80までは最低でも紅花と藍花の支援が受けられるはずだから、そんな集中的にボコボコにされることはないと思うわ。でも、80以降はタンブルシードのみでダンジョン内を進むことになるから、そこでどれだけ耐えられるかでしょうね……。場合によっては早めにパージしてアイオロス・マキナの力に頼ることになるかもしれないし、運が良ければ100まで耐えてくれるかもしれない。こればっかりは『琵琶湖大迷宮』の深層部の情報が少なすぎてなんとも言えないわ」
分厚い装甲やコーティングで防御力を上げ、反撃する武装も最低限装備されていると言っても、相手は深層のモンスターたちだ。
無傷で突破なんてことは……まあ絶対にあり得ないでしょうね。
「捨てることが前提の兵器というのは何だか寂しいですね……」
「気持ちはわかるわ。でも、このタンブルシードは使い道もなく倉庫でずっと眠ってたものだからね。これを『琵琶湖大迷宮』の攻略に投入するって元開発チームの人に話したら、それはそれは喜んでいたわ。『花開くことが叶わなかった種にも存在する意味はあった』って。それにこの機体はダンジョンと戦うために生まれてきたんだから、この大一番に使われて本望なんじゃないかな。少なくとも失敗扱いでずっと放置されているよりは……ね。きっと蒔苗ちゃんのアイオロス・マキナを守るために頑張ってくれるよ」
「そう……ですね! ちょっとタンブルシードに触ってみてもいいですか?」
「ええ、構わないわ」
黒くて硬くて冷たい装甲に触れると、人間の力ではとても破壊出来ない存在だと実感出来る。
でも、モンスターたちはこんな装甲も傷つけることが出来る……。
そんな危険な存在と戦う力、私たちを守るための力。
目の前にあるのはそんな力が形を成したものなんだ。
「一緒に頑張ろうね……!」
タンブルシードから離れ、育美さんの隣に戻る。
私が扱う機体のチェックは万全だけど、私と一緒に戦ってくれる機体はまだある。
このドックに運び込まれているマキナ隊のDMDたちが……!
「蟻の巣の時のように蒔苗ちゃんと一緒に戦う仲間たちのDMDもチェックしておきましょうか!」
「はい!」
私を含めて6人の操者と6機のDMDで構成されたマキナ隊。
その役割は私の一番近くで戦い、アイオロス・マキナを深層へ送り届けること!
そしてメンバーは私がよく知る人たちで構成されている!
アイオロス・マキナの輸送も完了し、後は他の準備が整うのを待つのみ……。
そう思っていた私の元に育美さんからの連絡が届いた。
内容は例の試作決戦兵器が完成したというもの……。
未だその詳細を知らされていない私はドキドキしながらドックへ向かった。
「デ、デカい……っ!」
整備ドックの一画を占領する巨大な兵器……!
ラグビーボールのような紡錘形で、表面には対Dエナジーコーティングを施されたことによる独特な光沢がある。。
さらに機体各部には大きなダイヤモンドのような宝石も散りばめられている。
「育美さん、これは何ですか!?」
「名前はタンブルシード。荒野を転がるタンブルウィードって草と種を意味するシードを組み合わせた『転がる種』の異名を持つモエギの試作決戦兵器よ」
「転がる種タンブルシード……! また不思議な名前ですね」
「まあ、名前だけ聞くとそう思うかもしれないけど、機体のコンセプトからすればド直球にもほどがあるネーミングなのよねぇ~。まず、この兵器は単体で運用するものじゃなくて、内部にDMDを搭載して使う支援メカなの」
「中にDMDを入れるんですか! あ、でもそれなら確かにアイオロス・マキナを安全にダンジョンの奥まで届けられそうですね!」
「その通りよ。対Dエナジーコーティングが施された巨大で分厚い装甲は物理攻撃もエナジー攻撃も簡単には通さない。さらに表面に散りばめられた宝石のようなパーツはアイオロス・マキナの胸のエメラルドと似たようなもので、Dエナジーを広範囲に拡散して撃ち出す『プリズムブラスター』の発射口になっているわ。これによってモンスターの攻撃を防ぎつつ、撃破も狙えるようになっているの」
機体を守らないといけないなら頑丈な入れ物に入れてしまえばいい!
すごく単純だけど効果的な発明だ!
でも、育美さんの話だとこのタンブルシードは倉庫に眠っていたみたいだけど、どうして正式採用されなかったんだろう?
通常のダンジョン攻略にも役立ちそうな気がするけど……。
「ふふっ、こんなすごいメカがどうして今まで使われなかったのかって顔してるわね? 答えは簡単! こんな大きな物体を動かすことが出来なかったからよ! ブースターをつければさらに大型化するし、入り組んでいたり狭かったりするダンジョン内部では小回りが利かない。大きいから狙われやすいのに攻撃も回避出来ない。いくら頑丈でも攻撃を受け続けたら壊れるし、基本的に無傷ではいられない。1回の運用で使い捨てることを前提にしてるから予算の方も馬鹿にならない……とまあ、強いっちゃ強いんだけど欠点も多いのよね」
「な、なるほど……。確かにこんな大きい機体を使い捨てにするくらいなら、その予算で複数のDMDを揃えた方が良い気がしますね……。DMDは場合によっては長く使えますし……」
「そうなのよねぇ~。しかも今回この機体に使われているコーティングや宝石といった技術は最近確立されたばかりだから、元のタンブルシードはもっと性能が低かったのよね。とてもじゃないけど正式に採用は出来ないということで試作機がずっと倉庫に眠っていたみたい。でも、開発チームは最後まで食らいついていたらしくて、開発末期なんかは機体の質量を生かしてダンジョン内を転がり、その勢いでモンスターを倒すなんて計画もあったとかなんとか……」
「ま、まさか転がる種の由来ってそこからですか……?」
「どうもそうみたいよ」
「モエギって楽しそうな会社ですね……」
「特に開発部は天才的な奇人変人の集まりだからねぇ~。でも、一応転がすっていうのはブースターをつけて飛ばすよりは現実的な作戦ではあったのよ。まっ、今回のダンブルシードは飛ばすでも転がすでもなく浮かすんだけどね!」
「アイオロス・マキナの重力制御能力を使うんですね」
「そう! あの機体には自分の重量だけじゃなく、こんな巨大な物体の重量も帳消しに出来るだけの力がある。タンブルシードは重力制御によって浮遊し、敵の攻撃を受け止めながらアイオロス・マキナを最低でもレベル90付近まで届けるのが役目よ」
「レベル100のうち90までということは、かなり長い付き合いになりそうですね」
「それは間違いないわね。でも80までは最低でも紅花と藍花の支援が受けられるはずだから、そんな集中的にボコボコにされることはないと思うわ。でも、80以降はタンブルシードのみでダンジョン内を進むことになるから、そこでどれだけ耐えられるかでしょうね……。場合によっては早めにパージしてアイオロス・マキナの力に頼ることになるかもしれないし、運が良ければ100まで耐えてくれるかもしれない。こればっかりは『琵琶湖大迷宮』の深層部の情報が少なすぎてなんとも言えないわ」
分厚い装甲やコーティングで防御力を上げ、反撃する武装も最低限装備されていると言っても、相手は深層のモンスターたちだ。
無傷で突破なんてことは……まあ絶対にあり得ないでしょうね。
「捨てることが前提の兵器というのは何だか寂しいですね……」
「気持ちはわかるわ。でも、このタンブルシードは使い道もなく倉庫でずっと眠ってたものだからね。これを『琵琶湖大迷宮』の攻略に投入するって元開発チームの人に話したら、それはそれは喜んでいたわ。『花開くことが叶わなかった種にも存在する意味はあった』って。それにこの機体はダンジョンと戦うために生まれてきたんだから、この大一番に使われて本望なんじゃないかな。少なくとも失敗扱いでずっと放置されているよりは……ね。きっと蒔苗ちゃんのアイオロス・マキナを守るために頑張ってくれるよ」
「そう……ですね! ちょっとタンブルシードに触ってみてもいいですか?」
「ええ、構わないわ」
黒くて硬くて冷たい装甲に触れると、人間の力ではとても破壊出来ない存在だと実感出来る。
でも、モンスターたちはこんな装甲も傷つけることが出来る……。
そんな危険な存在と戦う力、私たちを守るための力。
目の前にあるのはそんな力が形を成したものなんだ。
「一緒に頑張ろうね……!」
タンブルシードから離れ、育美さんの隣に戻る。
私が扱う機体のチェックは万全だけど、私と一緒に戦ってくれる機体はまだある。
このドックに運び込まれているマキナ隊のDMDたちが……!
「蟻の巣の時のように蒔苗ちゃんと一緒に戦う仲間たちのDMDもチェックしておきましょうか!」
「はい!」
私を含めて6人の操者と6機のDMDで構成されたマキナ隊。
その役割は私の一番近くで戦い、アイオロス・マキナを深層へ送り届けること!
そしてメンバーは私がよく知る人たちで構成されている!
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