91 / 140
第6章 血に刻まれた因縁の地
-91- 贅沢三昧
しおりを挟む
「なるほどねぇ……。藍花がそんなことを……」
育美さんが指でメモリーをもてあそびながらつぶやく。
ショーの内容の方はやっぱり想定内だったらしく特に驚きはないみたい。
でも、藍花の行動には結構驚いている様子だった。
「あの子、かなり内気だし人見知りだからね。それがこうして一度会っただけの蒔苗ちゃんに大事な話をしに来るということは、よほどショー本番が不安なのか、よほど蒔苗ちゃんを信用してるか、あるいはそのどちらもか……」
「でも、ショーに関する具体的な不安要素はないみたいなんです。そうなると、やっぱり緊張から来る不安なのかもしれません」
「まあ、人前に出るのは絶対苦手だろうからねぇ……。とにかく、彼女が決死の覚悟でもたらしてくれた情報は私が預かるわ。機体のシステムを新型装置に対応させるのと、蒔苗ちゃんのリングに新型カプセルの認証コードを入力する作業は責任を持って明日やるからね」
「ありがとうございます。育美さんに任せておけば私も安心です」
明日やる……か。
育美さんのことだから、今からマシンベースにトンボ帰りして作業に当たるかも……なんて思っていた。
もちろん、早くやれって言ってるわけじゃないからね!
むしろ、今日はちゃんと休んでくれそうで安心してるんだ。
「さぁて、仕事の話はこれくらいにして晩御飯を食べに行きましょう! 私、旅館の中に行きたいお店を見つけたんだよねぇ~」
「じゃあ、そのお店に行きましょう!」
育美さんの案内でたどり着いたのは……ビュッフェ? バイキング?
とにかく食べ放題スタイルのホテルレストランみたいなところだった。
雰囲気もカジュアルな感じで、私でも気後れしないで済みそうだ。
それにお料理の種類がとっても豊富で目移りしちゃう!
今日はたくさん食べちゃおうかなぁ~。
「こういう食べ放題形式のレストランって……いいよね。いくら食べてもお金を気にする必要はないし、たくさん食べててもあんま目立たないし」
「そうですね!」
「まあ、今回はすべての代金をヴァイオレット社が払うからすべてのお店が食べ放題みたいなもんだけど、流石に私も人の心を持ってるからね。そんな残酷なことはしないわ」
育美さんの言葉の意味を私はまだ理解していなかった。
それを理解したのは好きな料理をお皿にとって自分のテーブルに戻ってきた時だった。
その時にはすでにテーブルに何人前だという料理が並び、中央には山盛りのポテト……お上品に言うとフレンチフライが置いてあった。
「他のお客さんの迷惑になっちゃいけないから、ちょっとポテト少な目でごめんね」
これ少ないんだ……!
育美さんと出会って約3か月。
彼女がたくさん食べる人だというのは十分に理解しているつもりだった。
でも、今まではまだ抑えていたんだ!
きっと私にドン引きされないように……!
ここで明らかに驚いている素振りを見せれば育美さんが傷つくかもしれない……。
私は平静を装ってテーブルに座った。
「やっぱりこういうバイキングだとポテトが欲しくなりますよね~」
「だね~」
至って平凡な会話だ。
その量に目をつむれば……。
「このお料理は全部育美さんが……」
「うん、ポテト以外は自分の分のつもりだけど、欲しいものがあったらどんどん食べて! また取ってくるから!」
「りょ、了解です!」
育美さんはたくさん食べることを強要するような人じゃない。
だから、普通に自分の好きなものだけ食べればいい。
そういえば、カレーも置いてあったなぁ~。
家のカレーとは違うお上品なホテルカレーって感じで心惹かれる。
でも、バイキングでカレーって安易に手を出しちゃダメな気がするよね。
すぐにお腹いっぱいになっちゃいそうだもん。
まあ、育美さんは開幕カレーでしかも一食分くらいの量を盛ってるけど……。
カレーをメインにいろんなおかずを食べる様子は見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。
だから、自分の皿に意識を集中させよう!
「いただきま~す。……美味しい!」
「でしょう? 流石は最新のスーパー旅館!」
バスでの移動、紫苑さんとの出会い、藍花のお話、育美さんの食欲……。
いろんなことが起こりすぎて混乱気味だったけど、美味しい料理を一口食べると急にお腹が空いてきた!
うおおっ! 育美さんに負けないくらい食べるぞ!
手を出すぜ……カレーにも!
「おっ! 若いねぇ蒔苗ちゃん!」
「いえいえ、育美さんほどでは!」
私たちは食べたいものを食べたいように食べた!
辛いものも、甘いものも、好きなように!
おかげでお腹はパンパンだけど、嫌な感じはしない。
満腹であると同時に幸福……!
やっぱり食事はこうでなくっちゃね!
「いやぁ、久しぶりに人前で遠慮なく食べた気がするわ。びっくりさせちゃってごめんね」
「いえいえ! これからもたくさん食べる育美さんでいてください」
「ふふっ、ありがとう。でも、食べ放題じゃない限りなかなか本気は出せないわね。いろんな意味ですごいことになるから……」
普通のお店であれだけ食べたらおいくらなんだろう……。
私には想像もつかない。
ただ、それを実行したら育美さんの言う通り『残酷なこと』になるのは間違いない……!
流石にヴァイオレット社の人も怒りそうだ。
「ねえ、蒔苗ちゃん。少し休憩したら一緒に温泉に入らない? それも部屋にある私たちだけの露天風呂にね!」
「いいですね!」
軽い気持ちで返事をした後に気づく。
温泉ってことは……裸じゃん!
こ、心の準備が……!
でも、逆に言えば育美さんも裸ってことよね?
それはちょっと、いやかなり興味がある……。
よし、勇気を出して温泉に入るぞ!
育美さんが指でメモリーをもてあそびながらつぶやく。
ショーの内容の方はやっぱり想定内だったらしく特に驚きはないみたい。
でも、藍花の行動には結構驚いている様子だった。
「あの子、かなり内気だし人見知りだからね。それがこうして一度会っただけの蒔苗ちゃんに大事な話をしに来るということは、よほどショー本番が不安なのか、よほど蒔苗ちゃんを信用してるか、あるいはそのどちらもか……」
「でも、ショーに関する具体的な不安要素はないみたいなんです。そうなると、やっぱり緊張から来る不安なのかもしれません」
「まあ、人前に出るのは絶対苦手だろうからねぇ……。とにかく、彼女が決死の覚悟でもたらしてくれた情報は私が預かるわ。機体のシステムを新型装置に対応させるのと、蒔苗ちゃんのリングに新型カプセルの認証コードを入力する作業は責任を持って明日やるからね」
「ありがとうございます。育美さんに任せておけば私も安心です」
明日やる……か。
育美さんのことだから、今からマシンベースにトンボ帰りして作業に当たるかも……なんて思っていた。
もちろん、早くやれって言ってるわけじゃないからね!
むしろ、今日はちゃんと休んでくれそうで安心してるんだ。
「さぁて、仕事の話はこれくらいにして晩御飯を食べに行きましょう! 私、旅館の中に行きたいお店を見つけたんだよねぇ~」
「じゃあ、そのお店に行きましょう!」
育美さんの案内でたどり着いたのは……ビュッフェ? バイキング?
とにかく食べ放題スタイルのホテルレストランみたいなところだった。
雰囲気もカジュアルな感じで、私でも気後れしないで済みそうだ。
それにお料理の種類がとっても豊富で目移りしちゃう!
今日はたくさん食べちゃおうかなぁ~。
「こういう食べ放題形式のレストランって……いいよね。いくら食べてもお金を気にする必要はないし、たくさん食べててもあんま目立たないし」
「そうですね!」
「まあ、今回はすべての代金をヴァイオレット社が払うからすべてのお店が食べ放題みたいなもんだけど、流石に私も人の心を持ってるからね。そんな残酷なことはしないわ」
育美さんの言葉の意味を私はまだ理解していなかった。
それを理解したのは好きな料理をお皿にとって自分のテーブルに戻ってきた時だった。
その時にはすでにテーブルに何人前だという料理が並び、中央には山盛りのポテト……お上品に言うとフレンチフライが置いてあった。
「他のお客さんの迷惑になっちゃいけないから、ちょっとポテト少な目でごめんね」
これ少ないんだ……!
育美さんと出会って約3か月。
彼女がたくさん食べる人だというのは十分に理解しているつもりだった。
でも、今まではまだ抑えていたんだ!
きっと私にドン引きされないように……!
ここで明らかに驚いている素振りを見せれば育美さんが傷つくかもしれない……。
私は平静を装ってテーブルに座った。
「やっぱりこういうバイキングだとポテトが欲しくなりますよね~」
「だね~」
至って平凡な会話だ。
その量に目をつむれば……。
「このお料理は全部育美さんが……」
「うん、ポテト以外は自分の分のつもりだけど、欲しいものがあったらどんどん食べて! また取ってくるから!」
「りょ、了解です!」
育美さんはたくさん食べることを強要するような人じゃない。
だから、普通に自分の好きなものだけ食べればいい。
そういえば、カレーも置いてあったなぁ~。
家のカレーとは違うお上品なホテルカレーって感じで心惹かれる。
でも、バイキングでカレーって安易に手を出しちゃダメな気がするよね。
すぐにお腹いっぱいになっちゃいそうだもん。
まあ、育美さんは開幕カレーでしかも一食分くらいの量を盛ってるけど……。
カレーをメインにいろんなおかずを食べる様子は見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。
だから、自分の皿に意識を集中させよう!
「いただきま~す。……美味しい!」
「でしょう? 流石は最新のスーパー旅館!」
バスでの移動、紫苑さんとの出会い、藍花のお話、育美さんの食欲……。
いろんなことが起こりすぎて混乱気味だったけど、美味しい料理を一口食べると急にお腹が空いてきた!
うおおっ! 育美さんに負けないくらい食べるぞ!
手を出すぜ……カレーにも!
「おっ! 若いねぇ蒔苗ちゃん!」
「いえいえ、育美さんほどでは!」
私たちは食べたいものを食べたいように食べた!
辛いものも、甘いものも、好きなように!
おかげでお腹はパンパンだけど、嫌な感じはしない。
満腹であると同時に幸福……!
やっぱり食事はこうでなくっちゃね!
「いやぁ、久しぶりに人前で遠慮なく食べた気がするわ。びっくりさせちゃってごめんね」
「いえいえ! これからもたくさん食べる育美さんでいてください」
「ふふっ、ありがとう。でも、食べ放題じゃない限りなかなか本気は出せないわね。いろんな意味ですごいことになるから……」
普通のお店であれだけ食べたらおいくらなんだろう……。
私には想像もつかない。
ただ、それを実行したら育美さんの言う通り『残酷なこと』になるのは間違いない……!
流石にヴァイオレット社の人も怒りそうだ。
「ねえ、蒔苗ちゃん。少し休憩したら一緒に温泉に入らない? それも部屋にある私たちだけの露天風呂にね!」
「いいですね!」
軽い気持ちで返事をした後に気づく。
温泉ってことは……裸じゃん!
こ、心の準備が……!
でも、逆に言えば育美さんも裸ってことよね?
それはちょっと、いやかなり興味がある……。
よし、勇気を出して温泉に入るぞ!
1
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です
途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。
ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。
前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。
ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——
一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——
ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。
色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから!
※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください
※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる