76 / 140
第5章 蟻の巣抹消作戦
-76- 蟻の巣抹消作戦Ⅵ〈最奥〉
しおりを挟む
『無理しないでね……ですって!』
アイオロス・ゼログラビティがこのフロアから出た後、蘭はそう言った。
『どう考えても一番大変なのは蒔苗だっつーの!』
葵がスナイパーライフルを棍棒のようにぶん回しながら叫ぶ。
『あなたを1人にしてしまったことをお許しください蒔苗様……! せめてもの償いとして、この場は死守させていただきます! 今のうちにどうかコアを……!』
群がる敵を投げ飛ばし、ショルダーキャノンで焼き払いながら百華が祈る。
蒔苗が思っている以上に状況は切迫していた。
蘭たちが人型昆虫を引き付けているとはいえ、そもそもの虫型モンスターも強い。
ここより上のフロアで戦うDMD部隊たちも苦戦を強いられていた。
そして何より、このダンジョンはモンスターが増えるスピードが早い。
それはモデルが虫だからなのか、他に理由があるのかはわからない。
しかし、DMDを1機作る時間に比べれば、段違いに早く敵の数が増えるのは確かだった。
このままではいずれ戦えるDMDが枯渇し、地上に虫たちがあふれ出てくる……。
地上のマシンベースではそんな悲観的な予想も現実味を帯び始めていた。
だが、蒔苗はそのことを知らない。
たとえ彼女が今の状況を尋ねたとしても、本当のことは教えない。
それは彼女にいらぬ心配をさせぬため。
思うようにDMDを操ってもらうためだ。
このダンジョンの攻略に関わるすべての人の祈りを知らず知らずの内に受け、蒔苗とアイオロス・ゼログラビティは進む。
今、戦いの勝敗は彼女の活躍にゆだねられた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
通路の天井スレスレを飛ぶと、妨害もなく快適に移動できる。
真下にはぞろぞろと歩いているアリ型がたくさん見えるけど、こいつらは飛ぶことが出来ないし、飛び道具も持っていない。
数を増やすことを重視して、最低限の能力しか持たせていないんだ。
私にとっては助かるけど、それだけダンジョンが状況に合わせて柔軟にモンスターを生み出せるという事実には戦慄するしかない。
早くコアを破壊しないと、より戦いに適したモンスターが生まれてしまう。
もはやここまで来たら撤退という選択肢もない。
一度撤退すれば、二度目の出撃までにモンスターたちはさらなる進化を遂げてしまう。
『コアだ……。コアを壊すんだ!』
機体を限界まで加速させる。
でも、周囲の警戒は怠らない。
これだけ私たちの戦い方を学習しているダンジョンだ。
私だけノーマークなんてことはないはず……。
しかし、この予想は意外にも外れた。
私は怖くなるくらいスムーズにダンジョンの奥深くへと入っていく。
そう、まるで導かれるように……。
『ここがレベル45の地点……!』
巣の最奥はそれはそれは広い空間だった。
中央には直径5メートルはありそうな赤く輝く球体。
これがダンジョンコアで間違いない。
そして、それを守るように球体より一回り大きなバリアが張られている。
『……育美さん、ダンジョンコアを発見しました』
「本当!? 破壊は出来そう?」
『バリアが張られているんで一撃で粉砕とはいきませんが……可能だと思います。ただ、問題はコアを守っているモンスターがいるということです』
敵の数は……1体!
大きなコアの前に立っているから小さく見えるけど、おそらく2~3メートルはある!
当然のように機械の体を持った人型昆虫で、装甲の色は漆黒。
形状的にこいつもアリ型……いや、女王アリ型とでも言うべきか?
その体の各部には赤く透き通った宝石のような物がはめ込まれている。
これは……この特徴は……!
濃縮Dエナジーを食った後のヤタガラスと一緒だ!
破壊したDMDのエナジーを配下のモンスターたちに運ばせ、ここで食っていたんだ……!
そうして進化した結果、配下のモンスターたちまで人型になったと考えれば、あの突然の変化にも納得がいく。
何にせよ、あれを排除してコアを破壊すれば私たちの勝ちだ!
『見たところ武器は持っていない。なら、飛び道具で装甲を削ってから接近戦で……!』
その時、女王アリ型がこちらに手のひらを向けた。
手のひらには例の赤い宝石がはめ込まれている。
それはどんどんと強く輝いて……。
『まさか……!』
私は反射的に機体を加速させた。
次の瞬間、女王アリ型の手から赤い光が放たれた。
あれは……Dエナジー兵器!?
それも通常のDエナジーライフルの何倍もの威力がある……!
前言は撤回しないといけないみたいだ。
あいつは全身が武器で、飛び道具も持っている!
どうする……? どう戦う……?
あの全身の赤い宝石から光を放てるなら、死角はほとんどなくなる。
私が得意な接近戦を仕掛けるのも簡単じゃない。
とはいえ、飛び道具の撃ち合いではこちらが不利すぎる。
やはり危険を覚悟の上で接近するしかないようね……!
『スタビライザーソード!』
背中の2本の長剣を手に持ち、正面で交差するように構える。
この剣のソードモードには1つ面白い機能がある。
それはDエナジーで刃の表面を薄く包み、実体+エナジーの刃を作れるということ!
薄く包むだけだから消費エナジーは抑えられるし、斬れ味は通常のDエナジーの刃に劣るどころか勝っているという話もある。
このスタビライザーソードの刃なら、あの巨体の装甲も斬り崩しているはず!
でも、もしこの剣も通用しなかったら……その時はオーラを使う。
もうそろそろ偶然出てきましたでは困る。
意図的に使いこなせなければ、どんな強力な力でも頼りにならないままだ。
あの光は私から生まれたものなんでしょう?
なら、私の心に従わせてみせる!
アイオロス・ゼログラビティがこのフロアから出た後、蘭はそう言った。
『どう考えても一番大変なのは蒔苗だっつーの!』
葵がスナイパーライフルを棍棒のようにぶん回しながら叫ぶ。
『あなたを1人にしてしまったことをお許しください蒔苗様……! せめてもの償いとして、この場は死守させていただきます! 今のうちにどうかコアを……!』
群がる敵を投げ飛ばし、ショルダーキャノンで焼き払いながら百華が祈る。
蒔苗が思っている以上に状況は切迫していた。
蘭たちが人型昆虫を引き付けているとはいえ、そもそもの虫型モンスターも強い。
ここより上のフロアで戦うDMD部隊たちも苦戦を強いられていた。
そして何より、このダンジョンはモンスターが増えるスピードが早い。
それはモデルが虫だからなのか、他に理由があるのかはわからない。
しかし、DMDを1機作る時間に比べれば、段違いに早く敵の数が増えるのは確かだった。
このままではいずれ戦えるDMDが枯渇し、地上に虫たちがあふれ出てくる……。
地上のマシンベースではそんな悲観的な予想も現実味を帯び始めていた。
だが、蒔苗はそのことを知らない。
たとえ彼女が今の状況を尋ねたとしても、本当のことは教えない。
それは彼女にいらぬ心配をさせぬため。
思うようにDMDを操ってもらうためだ。
このダンジョンの攻略に関わるすべての人の祈りを知らず知らずの内に受け、蒔苗とアイオロス・ゼログラビティは進む。
今、戦いの勝敗は彼女の活躍にゆだねられた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
通路の天井スレスレを飛ぶと、妨害もなく快適に移動できる。
真下にはぞろぞろと歩いているアリ型がたくさん見えるけど、こいつらは飛ぶことが出来ないし、飛び道具も持っていない。
数を増やすことを重視して、最低限の能力しか持たせていないんだ。
私にとっては助かるけど、それだけダンジョンが状況に合わせて柔軟にモンスターを生み出せるという事実には戦慄するしかない。
早くコアを破壊しないと、より戦いに適したモンスターが生まれてしまう。
もはやここまで来たら撤退という選択肢もない。
一度撤退すれば、二度目の出撃までにモンスターたちはさらなる進化を遂げてしまう。
『コアだ……。コアを壊すんだ!』
機体を限界まで加速させる。
でも、周囲の警戒は怠らない。
これだけ私たちの戦い方を学習しているダンジョンだ。
私だけノーマークなんてことはないはず……。
しかし、この予想は意外にも外れた。
私は怖くなるくらいスムーズにダンジョンの奥深くへと入っていく。
そう、まるで導かれるように……。
『ここがレベル45の地点……!』
巣の最奥はそれはそれは広い空間だった。
中央には直径5メートルはありそうな赤く輝く球体。
これがダンジョンコアで間違いない。
そして、それを守るように球体より一回り大きなバリアが張られている。
『……育美さん、ダンジョンコアを発見しました』
「本当!? 破壊は出来そう?」
『バリアが張られているんで一撃で粉砕とはいきませんが……可能だと思います。ただ、問題はコアを守っているモンスターがいるということです』
敵の数は……1体!
大きなコアの前に立っているから小さく見えるけど、おそらく2~3メートルはある!
当然のように機械の体を持った人型昆虫で、装甲の色は漆黒。
形状的にこいつもアリ型……いや、女王アリ型とでも言うべきか?
その体の各部には赤く透き通った宝石のような物がはめ込まれている。
これは……この特徴は……!
濃縮Dエナジーを食った後のヤタガラスと一緒だ!
破壊したDMDのエナジーを配下のモンスターたちに運ばせ、ここで食っていたんだ……!
そうして進化した結果、配下のモンスターたちまで人型になったと考えれば、あの突然の変化にも納得がいく。
何にせよ、あれを排除してコアを破壊すれば私たちの勝ちだ!
『見たところ武器は持っていない。なら、飛び道具で装甲を削ってから接近戦で……!』
その時、女王アリ型がこちらに手のひらを向けた。
手のひらには例の赤い宝石がはめ込まれている。
それはどんどんと強く輝いて……。
『まさか……!』
私は反射的に機体を加速させた。
次の瞬間、女王アリ型の手から赤い光が放たれた。
あれは……Dエナジー兵器!?
それも通常のDエナジーライフルの何倍もの威力がある……!
前言は撤回しないといけないみたいだ。
あいつは全身が武器で、飛び道具も持っている!
どうする……? どう戦う……?
あの全身の赤い宝石から光を放てるなら、死角はほとんどなくなる。
私が得意な接近戦を仕掛けるのも簡単じゃない。
とはいえ、飛び道具の撃ち合いではこちらが不利すぎる。
やはり危険を覚悟の上で接近するしかないようね……!
『スタビライザーソード!』
背中の2本の長剣を手に持ち、正面で交差するように構える。
この剣のソードモードには1つ面白い機能がある。
それはDエナジーで刃の表面を薄く包み、実体+エナジーの刃を作れるということ!
薄く包むだけだから消費エナジーは抑えられるし、斬れ味は通常のDエナジーの刃に劣るどころか勝っているという話もある。
このスタビライザーソードの刃なら、あの巨体の装甲も斬り崩しているはず!
でも、もしこの剣も通用しなかったら……その時はオーラを使う。
もうそろそろ偶然出てきましたでは困る。
意図的に使いこなせなければ、どんな強力な力でも頼りにならないままだ。
あの光は私から生まれたものなんでしょう?
なら、私の心に従わせてみせる!
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる