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第4章 ブラッドプラント防衛作戦
-47- ブラッドプラント防衛作戦Ⅲ〈飛来〉
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『さあ、もっとこっちに来なさい!』
モンスターはたくさんいるけど、やっぱりこいつらには協調性がない。
全員で一斉にアイオロス・ゼロという小さい的を攻撃しようとするから、お互いが邪魔になって仕方ないようだ。
流石にそれが原因で同士討ちまではしてくれないけど、私が攻撃するだけの隙はいくらでもある!
『はっ! ほっ! どりゃ!』
より大きな隙を晒したモンスターから順番に倒していく。
中には遠巻きにこちらを眺めて様子をうかがっているモンスターもいる。
そういう奴には隙を見せないように立ち回らなければならない。
でも、時間が経てば……!
『蒔苗さ~ん! わたくしたちも無事出られましたわよ!』
頼れる仲間が背中を守ってくれる!
『蘭! 遠くの敵は任せたわ!』
『了解ですわ! ストーク・キャノンはバカみたいな高火力だけが取り柄ではないということを見せつけて差し上げます! くらいなさって……貫通力を高めた圧縮Dエナジー弾!』
ストーク・キャノンから放たれたのは、先ほどの太い光の柱とは真逆のDエナジー!
まるで槍のように細い金色の光線だ!
弾速はかなり速い……!
優雅に空を飛び回って様子をうかがっていたモンスターは、突如飛来した光の槍に体を貫かれ消滅した!
『あ、当たった! あんな細い弾が当たりましたわ! 練習では1発も当たらなかったのに!』
『すごいね蘭! どんどんDMDの操縦が上手くなってる!』
友達にこんなこと言うのは本当に失礼なんだけど、実際のところ蘭がここまでグラドランナを使いこなし、頼れる戦力になっているとは思わなかった。
私たちは先週の日曜日に出会ったけど、その時は連絡先の交換すらしていなくて、彼女の動向は今日再会するまでまったくわかっていなかった。
それが短期間でこれほどに強くなっているなんて……。
私も負けてられないな!
『育美さん、無事全機再出撃しました。こちらには6機のDMDがいますし、もしもの時は他の場所に振り分けてくださいね』
「わかったわ蒔苗ちゃん。増援部隊が到着したらある程度自由に動いてよくなると思うから、それまで工場の防衛を頑張って!」
『はい、わかりました!』
「……………………え? それ確かな情報?」
会話が終了したと思ったら、育美さんの小さな声がまだ聞こえている。
でも、この感じ……私と話しているわけじゃない。
地上にいる誰かと会話をしている。
そして、その育美さんの声はかなり低い。
育美さんの声が低い時は決まって想定外の事態が起こっている……。
「蒔苗ちゃん、落ち着いて聞いてね。今、対迷宮部隊が全滅したという情報が入ってきたわ」
『……! 新種でも出ましたか?』
「それが……わからないの。本当に一瞬のうちにDMDが破壊されたみたいで、データベースがモンスターの照合を行う時間すらなかったみたい。でも、おそらく蒔苗ちゃんが考えている通り……」
『新種ですよね……なんとなく』
もはやこういう状況に慣れている自分がいる。
今までのすべての出撃で新種と出くわしてるからなぁ……。
ただ、今回は今までと少し状況が違うから、また別の緊張感はある。
ダンジョンまで一緒の輸送ドローンに乗ってきたあの優しい隊長さんも、負けん気が強い葵さんも負けているという事実。
そして、周りに仲間がいるという状況……。
これまでの1人の戦いと違って、どうしても考えることが多くなる。
『蒔苗さん……』
『うん、わかってるよ蘭』
さっきまでの元気は消え、蘭の声は震えている。
彼女の方にも情報が入ってきたらしい。
防衛部隊の人たちも明らかに動揺している。
対迷宮部隊が一瞬で全滅するような敵がダンジョンの中にいる……。
自分たちはそれに挑まなければならない。
特に防衛部隊の人たちは完全ではない状態のDMDで……だ。
大人だろうと、仕事だろうと、こんなの動揺して当然……。
だから、彼らの不安もアイオロス・ゼロという機体を与えられた私がなんとかしないと……。
『……ん? 夕陽に黒い点が……』
赤々と輝く夕陽のようなコア……その中に小さな黒い点が見えた。
それはみるみるうちに大きくなっていく。
こちらに接近しているからだ……!
『コアの方から何かくる……!』
言葉を発した数秒後、そいつは工場のバリアに衝突した!
轟音と共に発生する衝撃波で機体が倒れそうになるところをなんとか耐え、バリアの状態を確認する。
バリアは大きく歪み、衝突した部分にはヒビも入っているものの、まだ割れてはない……!
しかし、連続で同じ攻撃を食らえば割れる!
それは誰の目から見ても明らかだった。
こいつを自由にさせてはいけない……!
全身漆黒で全身機械、脚が3本存在するカラス型モンスター。
それはまるで神話に登場するヤタガラスのようだ。
太陽みたいなコアからやってきたというのもそれっぽい……!
『……完全体だぁ』
もはや負けを認めて、緊張の糸が切れてしまったような声で誰かが言った。
機体のデータベースはこのモンスターの情報を与えてはくれない。
新種であることは確かだけど、それ以上のことはわからない。
でも、その全身が機械化された姿を見れば……嫌でも理解出来てしまう。
こいつが混成機械体よりも上位のモンスターだということが……。
ヤタガラスは一度様子を見るように工場から距離を取る。
私たちに気づいているのか、そうでないのか……。
あるいは気にするまでもないと思われているのか。
ただ、本当に得体のしれない不気味な威圧感を持つモンスターだ。
滞空している時もこいつは羽ばたかない。
ただ大きな翼を広げて空中に静止している……!
戦う前からわかる……。
こいつは今までの新種とは比べ物にならないほど強い!
しかし、だからといって逃げることはしない。
私たちを無視してくれるなら大変結構。
その隙に翼の1枚でもいただければ……。
《……………………カァ》
小さく鳴いたヤタガラスがこちらを見た。
それだけでも足がすくむような恐怖……!
でも、動かないとダメだ!
『散って! みんな!』
私の言葉とヤタガラスの初動はほぼ同時だった。
羽ばたくことなく体勢だけを変え、滑るような急加速で突進してきた!
速い……! けど、動き自体はシンプルな直進!
ここまで戦ってきた私たちなら避けられない攻撃ではない……!
なのに、回避行動をとったのは私だけだった。
しかも防衛部隊の3機のDMDはバラバラ散るどころか、逆に1箇所に固まっていた。
でも、これはきっと判断ミスでも操縦ミスでもない。
ただ本能的な恐怖や不安に耐えきれず、無意識のうちに身を寄せ合ってしまったんだ……!
怯える3機のDMDはヤタガラスの3つの足の爪に捕まり、粉々に砕かれてしまった。
そこでやっとグラドランナが動き出し、残り1機となってしまった防衛部隊……松浦さんも機体を動かし始めた。
みんな完全に気圧されている……。
私だって怖くないと言えばウソになるし、体が震えているような気がする。
ヤタガラスは地上に降り立ち、羽をたたんでこちらを観察している。
特に私の方をよく見ている気がする。
さっきの突進に唯一反応したから、警戒されているんだろうか?
だとすれば、こいつは知能も高い。
なんだか考えが見透かされているような気分になってくる。
考え過ぎて頭が熱い……。汗が流れる……。
こんな奴に勝てるの……?
有効な攻撃手段が思い浮かばない……!
「蒔苗ちゃん、状況を報告して」
『……っ! はい!』
育美さんの声……さっきまでよりも近くに感じる。
いや、育美さん自身が私のそばにいるような感覚がある。
どうしてかはわからないけど、今はとにかく報告だ。
『案の定……新種です。全身が機械化されたカラスで脚が3本あります。足の掴む力はすごくって、3機のDMDが簡単に砕かれてしまいました。残っている戦力はアイオロス・ゼロとグラドランナ、防衛部隊のDMDの3機だけです』
「報告ありがとう。まず……敵は完全機械体の可能性が高いわ。体のごく一部だけ機械化している局部機械体、体の半分ほどが機械化している混成機械体、そして体のすべてが機械化している機械完全体。当然、完全体がもっとも珍しく強い種になるわ。レベル50を超える深層ダンジョンでも遭遇するのはまれなくらいよ」
『それはまた……運が良いですね私』
「そうね……。きっと、そういう星の下に生まれたんだと思う。ハッキリ言うわ蒔苗ちゃん。今の戦力では完全体を倒すことは出来ない。アイオロス・ゼロを含めてもたった3機ではどうしようもないわ」
『それはひしひしと伝わってきます。でも、足止めはしないと工場を破壊されると思います。だから、増援部隊が来るまでなんとか耐えてみます』
「ごめんね……。いつも無理させて」
『謝らないでください。無理するの好きですから』
オーガランスを構える。
それを見たヤタガラスは羽を広げ、すぐに動ける体勢をつくる。
ただ突進を繰り返すだけのモンスターなら楽勝なものを……。
しっかりこちらの動きを観察してくるから手に負えない。
でも、いくら観察したって増援が来ることまではわからない。
この状態が続けば、いくらでも時間が稼げる……!
しかし、現実はそう甘くなかった。
ヤタガラスが次なる攻撃手段で私たちを試し始めたからだ。
《カァァァァァァァァァーーーーーーッ!!》
漆黒の翼を羽ばたかかせ、暴風を起こす。
それだけならば耐えられたんだけど、問題はその風の中に黒い刃のようなものが混じっていることだ!
『うぅ……!』
刃の1つを回避しきれず、シールドで受け止める!
よく見ると刃は淡く発光していて、固形ではなく微妙に揺らいで見えた。
これは……Dエナジーの刃!
しかも、威力が今までのモンスターと段違い……!
ビームドードーのビームなんかでは表面がほんの少し溶ける程度だったネオアイアン・エッジシールドが……切断されていく!
完全に切られる寸前でシールドを捨て、ヤタガラスから少し距離を取る。
グラドランナはDエナジーのシールドを持っているからいいとして、問題は松浦さんのDMD!
あの機体は隊長さんたちが乗っていたディオスより少し旧式の機体に見えたから……。
『ああ……』
松浦さんのDMDはもうすでにバラバラに切り刻まれていた。
これで残った戦力は私と蘭だけ……。
ダミーコアの破壊に向かった有志部隊も苦戦しているという話だし、援護は期待できない。
2人で時間を稼ぐしかないんだ……!
モンスターはたくさんいるけど、やっぱりこいつらには協調性がない。
全員で一斉にアイオロス・ゼロという小さい的を攻撃しようとするから、お互いが邪魔になって仕方ないようだ。
流石にそれが原因で同士討ちまではしてくれないけど、私が攻撃するだけの隙はいくらでもある!
『はっ! ほっ! どりゃ!』
より大きな隙を晒したモンスターから順番に倒していく。
中には遠巻きにこちらを眺めて様子をうかがっているモンスターもいる。
そういう奴には隙を見せないように立ち回らなければならない。
でも、時間が経てば……!
『蒔苗さ~ん! わたくしたちも無事出られましたわよ!』
頼れる仲間が背中を守ってくれる!
『蘭! 遠くの敵は任せたわ!』
『了解ですわ! ストーク・キャノンはバカみたいな高火力だけが取り柄ではないということを見せつけて差し上げます! くらいなさって……貫通力を高めた圧縮Dエナジー弾!』
ストーク・キャノンから放たれたのは、先ほどの太い光の柱とは真逆のDエナジー!
まるで槍のように細い金色の光線だ!
弾速はかなり速い……!
優雅に空を飛び回って様子をうかがっていたモンスターは、突如飛来した光の槍に体を貫かれ消滅した!
『あ、当たった! あんな細い弾が当たりましたわ! 練習では1発も当たらなかったのに!』
『すごいね蘭! どんどんDMDの操縦が上手くなってる!』
友達にこんなこと言うのは本当に失礼なんだけど、実際のところ蘭がここまでグラドランナを使いこなし、頼れる戦力になっているとは思わなかった。
私たちは先週の日曜日に出会ったけど、その時は連絡先の交換すらしていなくて、彼女の動向は今日再会するまでまったくわかっていなかった。
それが短期間でこれほどに強くなっているなんて……。
私も負けてられないな!
『育美さん、無事全機再出撃しました。こちらには6機のDMDがいますし、もしもの時は他の場所に振り分けてくださいね』
「わかったわ蒔苗ちゃん。増援部隊が到着したらある程度自由に動いてよくなると思うから、それまで工場の防衛を頑張って!」
『はい、わかりました!』
「……………………え? それ確かな情報?」
会話が終了したと思ったら、育美さんの小さな声がまだ聞こえている。
でも、この感じ……私と話しているわけじゃない。
地上にいる誰かと会話をしている。
そして、その育美さんの声はかなり低い。
育美さんの声が低い時は決まって想定外の事態が起こっている……。
「蒔苗ちゃん、落ち着いて聞いてね。今、対迷宮部隊が全滅したという情報が入ってきたわ」
『……! 新種でも出ましたか?』
「それが……わからないの。本当に一瞬のうちにDMDが破壊されたみたいで、データベースがモンスターの照合を行う時間すらなかったみたい。でも、おそらく蒔苗ちゃんが考えている通り……」
『新種ですよね……なんとなく』
もはやこういう状況に慣れている自分がいる。
今までのすべての出撃で新種と出くわしてるからなぁ……。
ただ、今回は今までと少し状況が違うから、また別の緊張感はある。
ダンジョンまで一緒の輸送ドローンに乗ってきたあの優しい隊長さんも、負けん気が強い葵さんも負けているという事実。
そして、周りに仲間がいるという状況……。
これまでの1人の戦いと違って、どうしても考えることが多くなる。
『蒔苗さん……』
『うん、わかってるよ蘭』
さっきまでの元気は消え、蘭の声は震えている。
彼女の方にも情報が入ってきたらしい。
防衛部隊の人たちも明らかに動揺している。
対迷宮部隊が一瞬で全滅するような敵がダンジョンの中にいる……。
自分たちはそれに挑まなければならない。
特に防衛部隊の人たちは完全ではない状態のDMDで……だ。
大人だろうと、仕事だろうと、こんなの動揺して当然……。
だから、彼らの不安もアイオロス・ゼロという機体を与えられた私がなんとかしないと……。
『……ん? 夕陽に黒い点が……』
赤々と輝く夕陽のようなコア……その中に小さな黒い点が見えた。
それはみるみるうちに大きくなっていく。
こちらに接近しているからだ……!
『コアの方から何かくる……!』
言葉を発した数秒後、そいつは工場のバリアに衝突した!
轟音と共に発生する衝撃波で機体が倒れそうになるところをなんとか耐え、バリアの状態を確認する。
バリアは大きく歪み、衝突した部分にはヒビも入っているものの、まだ割れてはない……!
しかし、連続で同じ攻撃を食らえば割れる!
それは誰の目から見ても明らかだった。
こいつを自由にさせてはいけない……!
全身漆黒で全身機械、脚が3本存在するカラス型モンスター。
それはまるで神話に登場するヤタガラスのようだ。
太陽みたいなコアからやってきたというのもそれっぽい……!
『……完全体だぁ』
もはや負けを認めて、緊張の糸が切れてしまったような声で誰かが言った。
機体のデータベースはこのモンスターの情報を与えてはくれない。
新種であることは確かだけど、それ以上のことはわからない。
でも、その全身が機械化された姿を見れば……嫌でも理解出来てしまう。
こいつが混成機械体よりも上位のモンスターだということが……。
ヤタガラスは一度様子を見るように工場から距離を取る。
私たちに気づいているのか、そうでないのか……。
あるいは気にするまでもないと思われているのか。
ただ、本当に得体のしれない不気味な威圧感を持つモンスターだ。
滞空している時もこいつは羽ばたかない。
ただ大きな翼を広げて空中に静止している……!
戦う前からわかる……。
こいつは今までの新種とは比べ物にならないほど強い!
しかし、だからといって逃げることはしない。
私たちを無視してくれるなら大変結構。
その隙に翼の1枚でもいただければ……。
《……………………カァ》
小さく鳴いたヤタガラスがこちらを見た。
それだけでも足がすくむような恐怖……!
でも、動かないとダメだ!
『散って! みんな!』
私の言葉とヤタガラスの初動はほぼ同時だった。
羽ばたくことなく体勢だけを変え、滑るような急加速で突進してきた!
速い……! けど、動き自体はシンプルな直進!
ここまで戦ってきた私たちなら避けられない攻撃ではない……!
なのに、回避行動をとったのは私だけだった。
しかも防衛部隊の3機のDMDはバラバラ散るどころか、逆に1箇所に固まっていた。
でも、これはきっと判断ミスでも操縦ミスでもない。
ただ本能的な恐怖や不安に耐えきれず、無意識のうちに身を寄せ合ってしまったんだ……!
怯える3機のDMDはヤタガラスの3つの足の爪に捕まり、粉々に砕かれてしまった。
そこでやっとグラドランナが動き出し、残り1機となってしまった防衛部隊……松浦さんも機体を動かし始めた。
みんな完全に気圧されている……。
私だって怖くないと言えばウソになるし、体が震えているような気がする。
ヤタガラスは地上に降り立ち、羽をたたんでこちらを観察している。
特に私の方をよく見ている気がする。
さっきの突進に唯一反応したから、警戒されているんだろうか?
だとすれば、こいつは知能も高い。
なんだか考えが見透かされているような気分になってくる。
考え過ぎて頭が熱い……。汗が流れる……。
こんな奴に勝てるの……?
有効な攻撃手段が思い浮かばない……!
「蒔苗ちゃん、状況を報告して」
『……っ! はい!』
育美さんの声……さっきまでよりも近くに感じる。
いや、育美さん自身が私のそばにいるような感覚がある。
どうしてかはわからないけど、今はとにかく報告だ。
『案の定……新種です。全身が機械化されたカラスで脚が3本あります。足の掴む力はすごくって、3機のDMDが簡単に砕かれてしまいました。残っている戦力はアイオロス・ゼロとグラドランナ、防衛部隊のDMDの3機だけです』
「報告ありがとう。まず……敵は完全機械体の可能性が高いわ。体のごく一部だけ機械化している局部機械体、体の半分ほどが機械化している混成機械体、そして体のすべてが機械化している機械完全体。当然、完全体がもっとも珍しく強い種になるわ。レベル50を超える深層ダンジョンでも遭遇するのはまれなくらいよ」
『それはまた……運が良いですね私』
「そうね……。きっと、そういう星の下に生まれたんだと思う。ハッキリ言うわ蒔苗ちゃん。今の戦力では完全体を倒すことは出来ない。アイオロス・ゼロを含めてもたった3機ではどうしようもないわ」
『それはひしひしと伝わってきます。でも、足止めはしないと工場を破壊されると思います。だから、増援部隊が来るまでなんとか耐えてみます』
「ごめんね……。いつも無理させて」
『謝らないでください。無理するの好きですから』
オーガランスを構える。
それを見たヤタガラスは羽を広げ、すぐに動ける体勢をつくる。
ただ突進を繰り返すだけのモンスターなら楽勝なものを……。
しっかりこちらの動きを観察してくるから手に負えない。
でも、いくら観察したって増援が来ることまではわからない。
この状態が続けば、いくらでも時間が稼げる……!
しかし、現実はそう甘くなかった。
ヤタガラスが次なる攻撃手段で私たちを試し始めたからだ。
《カァァァァァァァァァーーーーーーッ!!》
漆黒の翼を羽ばたかかせ、暴風を起こす。
それだけならば耐えられたんだけど、問題はその風の中に黒い刃のようなものが混じっていることだ!
『うぅ……!』
刃の1つを回避しきれず、シールドで受け止める!
よく見ると刃は淡く発光していて、固形ではなく微妙に揺らいで見えた。
これは……Dエナジーの刃!
しかも、威力が今までのモンスターと段違い……!
ビームドードーのビームなんかでは表面がほんの少し溶ける程度だったネオアイアン・エッジシールドが……切断されていく!
完全に切られる寸前でシールドを捨て、ヤタガラスから少し距離を取る。
グラドランナはDエナジーのシールドを持っているからいいとして、問題は松浦さんのDMD!
あの機体は隊長さんたちが乗っていたディオスより少し旧式の機体に見えたから……。
『ああ……』
松浦さんのDMDはもうすでにバラバラに切り刻まれていた。
これで残った戦力は私と蘭だけ……。
ダミーコアの破壊に向かった有志部隊も苦戦しているという話だし、援護は期待できない。
2人で時間を稼ぐしかないんだ……!
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