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第4章 ブラッドプラント防衛作戦
-43- 首都第七対迷宮部隊
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「あー、あー、失礼。今回の作戦でリーダーを務める英栄一だ。よろしく」
突然、男の人の声が聞こえてきた。
全体へ呼びかけるようなその声は、機体側からではなくマシンベース内の通信網を使って届けられている。
「ダンジョンまでは数分といったところだが、まあリラックスしてくれ。作戦内容の再確認は現地に着いてから確認する。なぁに、工場までの道のりにはバリアが張ってある。いきなり襲われるなんてことはないはずさ。落ち着いてやれば大丈夫。みんなの武運を祈る」
落ち着いた声だ。
こういう状況への慣れを感じる。
なんてったって、対迷宮部隊の総隊長だもんなぁ~。
『さて、挨拶が終わったところで……初めましてルーキーたち。体の調子は大丈夫かい?』
『えっ!?』
さっきと同じ声が今度は機体側から聞こえてきた!
あたりを見渡すと、こちらの方を見て手を伸ばしているDMDがいた。
迷彩柄の装甲と足に装着されたローラーが特徴的な機体だけど、どことなくアイオロス・ゼロに似た雰囲気もあるような……。
『あはは、びっくりさせちゃったかな? そうそう、今君が見てる迷彩柄のDMDが私。リーダーを務める英栄一だ。ぜひ握手を……って機体が固定されてるから出来ないな! はははっ!』
『あはは……。えっと、こんにちは隊長さん』
『うん、こんにちは。萌葱蒔苗くん。そして黄堂蘭くん』
『ごきげんよう隊長様。何度かマシンベース内でお会いしたことはありますけど、こうしてDMDを並べて作戦に挑むのは初めてでございますわね』
『そうだな。まさか蘭くんが参加してくれるとは思わなかったよ。君はここ数日で急激に腕を上げているね。なにか良いことでもあったのかな?』
『ええ、そうでございますわよ。わたくしは蒔苗さんと出会って変わったのですわ! 目指すべき正しいお嬢様の姿が今はハッキリ見える!』
『それは素晴らしい! 変わった蘭くんも素晴らしいが、影響を与えた蒔苗くんも素晴らしい! 流石はゼロの継承者……という言葉は君にとってあまり褒め言葉にはならないかな?』
『いえ、そんなことはないです! ただ、私としては少し重い肩書だなぁ~って思うんです。私がなぜゼロを受け継いだのかもわかりませんし、その期待に応えられているのかもまだわかりませんから』
『……ふむ、蒔苗くんは思った以上に謙虚で慎ましい人のようだ。DMDが手に渡った経緯が経緯なだけにもっと破天荒な人物だと思っていたよ』
『すいません、普通の人で……』
『いや、それでいいんだ。君はいきなり与えられたにもかかわらずゼロを使いこなし、その機体の重みや戦う意味を理解していると聞いている。こちらこそすまない。探るようなことを言ってしまった。これは言い訳になってしまうが、私たちの界隈で萌葱大樹郎さんの存在と言うのは……やはり大きい。彼の死にみな涙したし、誰もがその遺志を受け継ごうと思った。そんな中、彼の愛機に兄弟機が存在し、それがこれまで表舞台に現れなかった孫に受け継がれたと聞けば、どうしても気になってしまうんだ』
『私もわかってるつもりです。逆の立場なら私も同じことをしたと思います』
『そう言ってくれるとありがたい。君と話していると大樹郎さんがゼロを君に預けた理由がわかるような……わからないような……。あはは、私は凡人なもんだから一度会話をしただけでその人のすべてを見抜けるような才能はないのさ。ただ、作戦前でも落ち着いている蒔苗くんはDMD操者の適性が間違いなく高いとだけは言っておこう。とはいえ、経験はまだまだ少ないだろうし、作戦行動中に困ったことがあったら遠慮せずになんでも私に聞いてくれ。危なくなったら工場のバリア内に一時撤退してもいい。とにかく今回は先輩たちの戦いをよく見て……』
『隊長、そんなに気を使う必要ありませんよ。彼女たちの機体は私たちのよりずっと高性能なんですから』
会話に入って来たのは甘くかわいい声の女性の声だ。
ただ、その言葉にはトゲがあり、甘さもかわいさも感じない。
『葵……確かに私たちが使っているディオスシリーズはアイオロスシリーズの量産型だ。スペックは確かに劣っているだろう。しかし、戦闘のすべてがDMDのスペックで決まるわけではない。人が機械を動かしている以上、機械の働きは動かす人によって決まる! いくら高性能なDMDを使っていようと彼女たちはまだまだ経験が浅い。それを導くのも我々の仕事だ』
葵と呼ばれた人が動かしているであろうDMDはふてくされたように首をかしげた。
これが『ディオス』……アイオロスシリーズの量産型……。
無駄のないスリムなフォルムは確かにアイオロスの面影を感じる。
でも、細かいところはアイオロスよりデザインがシンプルで、いろいろ簡略化されていることがうかがえる。
葵さんの機体は隊長さんのと違って装甲が白と青で、足にローラーもついていない。
おそらく隊長さんの迷彩柄がカスタム機で、葵さんのがより基本に近いディオスなんだ。
『でも、そこの蒔苗ちゃんはすごく強いって聞きましたよ。前線に放り出せとは言いませんが、そんな過保護になることもなんいじゃないですかね? きっと自力で生き残れますよ』
『私も彼女の活躍は耳にしている。実際に戦闘の映像を見たわけではないがな。しかし、有望なルーキーが難しい仕事で急に崩れるというのもよくある話だ。今回の救援部隊を預かるリーダーとして、そして若い芽の成長を祈る者としては放ってはおけない。葵も自分だけでなく誰かの面倒を見れるようになってこそ一人前だと思って、彼女たちを助けてあげてほしい』
『まあ、隊長命令には逆らいませんよ。なにかあったら私を頼りなさい。ひよこちゃんたち』
葵さんのディオスはひらひらと手を振った後、そっぽを向いてしまった。
明らかに歓迎されていないのが伝わってくる。
DMDってここまで人の感情を表現できるもんなんだなぁ……って、そんなこと考えてる場合じゃない!
これって結構露骨にケンカ売られてない!?
『うちの葵がすまないね……。あ、今は葵には聞こえないように私たちだけの個別回線で通信しているよ』
『私、なにか気に障るようなこと言ってしまいましたか……?』
『いや、そんなことはないさ。ただ、葵は最近やっと研修期間を終えて子どもの頃からの夢だった自分のDMDを持てるようになったばかりでね。君たちみたいな若くしてDMDを所有している人を見ると、ついつい突っかかってしまうんだ』
本来、DMDはとっても高価なもの……。
よほど裕福な家の子でもない限り、若くして自分専用のDMDを持てることはない。
そう考えると私は恵まれている。
それも萌葱の人間ともなれば、そういう目で見られても仕方ないところはある。
『あまり個人情報をペラペラと話すものではないと思うのだが……葵をフォローするために少し話そう。彼女は決して裕福な家の生まれではなかった。だが、幼い頃からDMD操者を志し、マシンベースが定期的に開催しているDMD無料体験会には毎回来ていた。その後マシンベースに就職し、練習機による2年の研修期間を経て20歳で自分の機体を得た。普通の人間がDMDを手に入れる歳として20歳は十分早い。葵は優秀なDMD操者だ。しかし、普通でない者たちは労することなく、もっと早く機体を手に入れている……。それが癇に障るんだろうね』
『その気持ちは私にもわかります。少し前までは普通に暮らしていましたから。特別な人をうらやましいと思ったり、妬ましいと思うのは普通のことだと思います』
『ああ、それはその通りだ。ただ、葵の場合はそこに仕事のストレスも上乗せされているんだ』
『仕事のストレスが?』
『ああ……。言い方は悪くなるが、若くしてDMDを与えられた大企業のご子息やご令嬢というのは少々操者としての質が低くてね。それもただ単に操縦が上手くないだけならこんな言い方はしないんだが、探査中に他のパーティーとトラブルを起こしたり、マシンベースでメカニックや職員に横柄な態度をとったり、ダンジョン内で破壊されたDMDを対迷宮部隊に回収しろと言ったりしてくる。破壊されたDMDの回収は緊急時でもない限り自己責任。自分で回収の手配をしなければならない。マシンベース所属の我々が手を出すことはないんだ』
『耳の痛い話ですわね』
蘭がぼそっとつぶやく。
そういえば蘭もかつては今述べられたような行動の数々をしていたな……。
隊長さんがそれを知っているのかはわからないけど話は続く。
『でも、酷い場合だとご子息やご令嬢の親御さんの方から圧力をかけて、我々を意のままに動かそうとしてくることもある。ダンジョンやDMDに関わる業界では、正直国よりも企業の力の方が大きい。マシンベースとしてもむげには扱えない。致し方なくなんらかの理由をつけて彼らに従うこともある。そのたびに葵は不満を募らせ、彼らを憎むようになっていった』
『そう……なんですね。そんなことがあったなら、私たちに当たりが強いのも仕方ないと思います。私は気にしてませんし、ケンカとかしませんから安心してください! 蘭も大丈夫だよね?』
『ふふふっ……昔のわたくしなら頭に血がのぼって顔を真っ赤にしていたことでしょう。でも、もうそんなわたくしは存在しませんわ。恵まれた立場にいる以上、そういう目で見られるのは致し方ないこと。わかり合うにはその立場にいることに納得してもらえるような結果が必要! だから、わたくしのようなお嬢様は誰よりも率先して戦わねばならない! そう、それこそがノブレス・オブリージュ! 最近覚えた言葉ですわ!』
『葵さんの言う通り、私たちの機体は優れています。だから、それに見合うような結果を出せるよう私も頑張るつもりです』
隊長は少しの間無言だった。
あっけにとられているような雰囲気がDMDから感じ取れる。
『……驚いた。君たちは思った以上にDMD操者として成熟しているんだね。いやぁ、うちに欲しいなぁ! どうだい? 首都第七対迷宮部隊に入らないかい?』
『わたくしには黄堂重工のDMD運用部を導くという目標がありますので、申し訳ないですがお断りさせていただきますわ』
『私は……どうするんだろう』
急に浮かび上がる疑問。
私はこのままフリーのDMD操者を仕事にするのか、それとも時期が来ればモエギ・コンツェルンに所属するのか、はたまたDMDは趣味にして他の仕事に就くのか……。
高校1年生の私の進路はまったくハッキリしていない。
『あはは、冗談さ。本気にしてくれたならもちろん熱烈に歓迎するけど、今は目の前のことを1つ1つこなしていくだけでいい。いずれたどり着くべき場所にたどり着くさ。このドローンみたいに』
微かにドローンが揺れ、プロペラが回転する音が聞こえなくなった。
そして、ドローンの後部ハッチが開き、光が差し込む……!
『作戦開始! 速やかにダンジョンに突入せよ!』
『……了解!』
突然、男の人の声が聞こえてきた。
全体へ呼びかけるようなその声は、機体側からではなくマシンベース内の通信網を使って届けられている。
「ダンジョンまでは数分といったところだが、まあリラックスしてくれ。作戦内容の再確認は現地に着いてから確認する。なぁに、工場までの道のりにはバリアが張ってある。いきなり襲われるなんてことはないはずさ。落ち着いてやれば大丈夫。みんなの武運を祈る」
落ち着いた声だ。
こういう状況への慣れを感じる。
なんてったって、対迷宮部隊の総隊長だもんなぁ~。
『さて、挨拶が終わったところで……初めましてルーキーたち。体の調子は大丈夫かい?』
『えっ!?』
さっきと同じ声が今度は機体側から聞こえてきた!
あたりを見渡すと、こちらの方を見て手を伸ばしているDMDがいた。
迷彩柄の装甲と足に装着されたローラーが特徴的な機体だけど、どことなくアイオロス・ゼロに似た雰囲気もあるような……。
『あはは、びっくりさせちゃったかな? そうそう、今君が見てる迷彩柄のDMDが私。リーダーを務める英栄一だ。ぜひ握手を……って機体が固定されてるから出来ないな! はははっ!』
『あはは……。えっと、こんにちは隊長さん』
『うん、こんにちは。萌葱蒔苗くん。そして黄堂蘭くん』
『ごきげんよう隊長様。何度かマシンベース内でお会いしたことはありますけど、こうしてDMDを並べて作戦に挑むのは初めてでございますわね』
『そうだな。まさか蘭くんが参加してくれるとは思わなかったよ。君はここ数日で急激に腕を上げているね。なにか良いことでもあったのかな?』
『ええ、そうでございますわよ。わたくしは蒔苗さんと出会って変わったのですわ! 目指すべき正しいお嬢様の姿が今はハッキリ見える!』
『それは素晴らしい! 変わった蘭くんも素晴らしいが、影響を与えた蒔苗くんも素晴らしい! 流石はゼロの継承者……という言葉は君にとってあまり褒め言葉にはならないかな?』
『いえ、そんなことはないです! ただ、私としては少し重い肩書だなぁ~って思うんです。私がなぜゼロを受け継いだのかもわかりませんし、その期待に応えられているのかもまだわかりませんから』
『……ふむ、蒔苗くんは思った以上に謙虚で慎ましい人のようだ。DMDが手に渡った経緯が経緯なだけにもっと破天荒な人物だと思っていたよ』
『すいません、普通の人で……』
『いや、それでいいんだ。君はいきなり与えられたにもかかわらずゼロを使いこなし、その機体の重みや戦う意味を理解していると聞いている。こちらこそすまない。探るようなことを言ってしまった。これは言い訳になってしまうが、私たちの界隈で萌葱大樹郎さんの存在と言うのは……やはり大きい。彼の死にみな涙したし、誰もがその遺志を受け継ごうと思った。そんな中、彼の愛機に兄弟機が存在し、それがこれまで表舞台に現れなかった孫に受け継がれたと聞けば、どうしても気になってしまうんだ』
『私もわかってるつもりです。逆の立場なら私も同じことをしたと思います』
『そう言ってくれるとありがたい。君と話していると大樹郎さんがゼロを君に預けた理由がわかるような……わからないような……。あはは、私は凡人なもんだから一度会話をしただけでその人のすべてを見抜けるような才能はないのさ。ただ、作戦前でも落ち着いている蒔苗くんはDMD操者の適性が間違いなく高いとだけは言っておこう。とはいえ、経験はまだまだ少ないだろうし、作戦行動中に困ったことがあったら遠慮せずになんでも私に聞いてくれ。危なくなったら工場のバリア内に一時撤退してもいい。とにかく今回は先輩たちの戦いをよく見て……』
『隊長、そんなに気を使う必要ありませんよ。彼女たちの機体は私たちのよりずっと高性能なんですから』
会話に入って来たのは甘くかわいい声の女性の声だ。
ただ、その言葉にはトゲがあり、甘さもかわいさも感じない。
『葵……確かに私たちが使っているディオスシリーズはアイオロスシリーズの量産型だ。スペックは確かに劣っているだろう。しかし、戦闘のすべてがDMDのスペックで決まるわけではない。人が機械を動かしている以上、機械の働きは動かす人によって決まる! いくら高性能なDMDを使っていようと彼女たちはまだまだ経験が浅い。それを導くのも我々の仕事だ』
葵と呼ばれた人が動かしているであろうDMDはふてくされたように首をかしげた。
これが『ディオス』……アイオロスシリーズの量産型……。
無駄のないスリムなフォルムは確かにアイオロスの面影を感じる。
でも、細かいところはアイオロスよりデザインがシンプルで、いろいろ簡略化されていることがうかがえる。
葵さんの機体は隊長さんのと違って装甲が白と青で、足にローラーもついていない。
おそらく隊長さんの迷彩柄がカスタム機で、葵さんのがより基本に近いディオスなんだ。
『でも、そこの蒔苗ちゃんはすごく強いって聞きましたよ。前線に放り出せとは言いませんが、そんな過保護になることもなんいじゃないですかね? きっと自力で生き残れますよ』
『私も彼女の活躍は耳にしている。実際に戦闘の映像を見たわけではないがな。しかし、有望なルーキーが難しい仕事で急に崩れるというのもよくある話だ。今回の救援部隊を預かるリーダーとして、そして若い芽の成長を祈る者としては放ってはおけない。葵も自分だけでなく誰かの面倒を見れるようになってこそ一人前だと思って、彼女たちを助けてあげてほしい』
『まあ、隊長命令には逆らいませんよ。なにかあったら私を頼りなさい。ひよこちゃんたち』
葵さんのディオスはひらひらと手を振った後、そっぽを向いてしまった。
明らかに歓迎されていないのが伝わってくる。
DMDってここまで人の感情を表現できるもんなんだなぁ……って、そんなこと考えてる場合じゃない!
これって結構露骨にケンカ売られてない!?
『うちの葵がすまないね……。あ、今は葵には聞こえないように私たちだけの個別回線で通信しているよ』
『私、なにか気に障るようなこと言ってしまいましたか……?』
『いや、そんなことはないさ。ただ、葵は最近やっと研修期間を終えて子どもの頃からの夢だった自分のDMDを持てるようになったばかりでね。君たちみたいな若くしてDMDを所有している人を見ると、ついつい突っかかってしまうんだ』
本来、DMDはとっても高価なもの……。
よほど裕福な家の子でもない限り、若くして自分専用のDMDを持てることはない。
そう考えると私は恵まれている。
それも萌葱の人間ともなれば、そういう目で見られても仕方ないところはある。
『あまり個人情報をペラペラと話すものではないと思うのだが……葵をフォローするために少し話そう。彼女は決して裕福な家の生まれではなかった。だが、幼い頃からDMD操者を志し、マシンベースが定期的に開催しているDMD無料体験会には毎回来ていた。その後マシンベースに就職し、練習機による2年の研修期間を経て20歳で自分の機体を得た。普通の人間がDMDを手に入れる歳として20歳は十分早い。葵は優秀なDMD操者だ。しかし、普通でない者たちは労することなく、もっと早く機体を手に入れている……。それが癇に障るんだろうね』
『その気持ちは私にもわかります。少し前までは普通に暮らしていましたから。特別な人をうらやましいと思ったり、妬ましいと思うのは普通のことだと思います』
『ああ、それはその通りだ。ただ、葵の場合はそこに仕事のストレスも上乗せされているんだ』
『仕事のストレスが?』
『ああ……。言い方は悪くなるが、若くしてDMDを与えられた大企業のご子息やご令嬢というのは少々操者としての質が低くてね。それもただ単に操縦が上手くないだけならこんな言い方はしないんだが、探査中に他のパーティーとトラブルを起こしたり、マシンベースでメカニックや職員に横柄な態度をとったり、ダンジョン内で破壊されたDMDを対迷宮部隊に回収しろと言ったりしてくる。破壊されたDMDの回収は緊急時でもない限り自己責任。自分で回収の手配をしなければならない。マシンベース所属の我々が手を出すことはないんだ』
『耳の痛い話ですわね』
蘭がぼそっとつぶやく。
そういえば蘭もかつては今述べられたような行動の数々をしていたな……。
隊長さんがそれを知っているのかはわからないけど話は続く。
『でも、酷い場合だとご子息やご令嬢の親御さんの方から圧力をかけて、我々を意のままに動かそうとしてくることもある。ダンジョンやDMDに関わる業界では、正直国よりも企業の力の方が大きい。マシンベースとしてもむげには扱えない。致し方なくなんらかの理由をつけて彼らに従うこともある。そのたびに葵は不満を募らせ、彼らを憎むようになっていった』
『そう……なんですね。そんなことがあったなら、私たちに当たりが強いのも仕方ないと思います。私は気にしてませんし、ケンカとかしませんから安心してください! 蘭も大丈夫だよね?』
『ふふふっ……昔のわたくしなら頭に血がのぼって顔を真っ赤にしていたことでしょう。でも、もうそんなわたくしは存在しませんわ。恵まれた立場にいる以上、そういう目で見られるのは致し方ないこと。わかり合うにはその立場にいることに納得してもらえるような結果が必要! だから、わたくしのようなお嬢様は誰よりも率先して戦わねばならない! そう、それこそがノブレス・オブリージュ! 最近覚えた言葉ですわ!』
『葵さんの言う通り、私たちの機体は優れています。だから、それに見合うような結果を出せるよう私も頑張るつもりです』
隊長は少しの間無言だった。
あっけにとられているような雰囲気がDMDから感じ取れる。
『……驚いた。君たちは思った以上にDMD操者として成熟しているんだね。いやぁ、うちに欲しいなぁ! どうだい? 首都第七対迷宮部隊に入らないかい?』
『わたくしには黄堂重工のDMD運用部を導くという目標がありますので、申し訳ないですがお断りさせていただきますわ』
『私は……どうするんだろう』
急に浮かび上がる疑問。
私はこのままフリーのDMD操者を仕事にするのか、それとも時期が来ればモエギ・コンツェルンに所属するのか、はたまたDMDは趣味にして他の仕事に就くのか……。
高校1年生の私の進路はまったくハッキリしていない。
『あはは、冗談さ。本気にしてくれたならもちろん熱烈に歓迎するけど、今は目の前のことを1つ1つこなしていくだけでいい。いずれたどり着くべき場所にたどり着くさ。このドローンみたいに』
微かにドローンが揺れ、プロペラが回転する音が聞こえなくなった。
そして、ドローンの後部ハッチが開き、光が差し込む……!
『作戦開始! 速やかにダンジョンに突入せよ!』
『……了解!』
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