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第12話 七姉妹、牧場に来る!
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「と、いうことでこの子たちは今日からここに住むことになった」
後日、俺は獣人の七姉妹を牧場に連れてきた。
ギルド職員による保護者としての適性を見る審査をなんとか潜り抜けられたのだ。
といっても、ネックになったのは収入のなさくらいだ。
これは牧場にいるメガスタイン牛の牛乳やウェンディの薬をそのうち売り出すと言っておいた。
ギルド側としてもここで審査を落とせば面倒なことになる。
俺自身、ギルドへの在籍期間はそれなりにあって、能力はなくとも素行だけは評価されていた。
これらの点が加味されて、晴れて七姉妹を引き取ることが許可された。
「それでこの子たちの名前のことなんだけど……」
彼女たちに名前はなく、番号で呼ばれていた。
なので俺たちで新しい名前を考えようということになったのだが、これが結構難航した。
七つ子なので単純に七人の名前を考えないといけないし、そうなると番号というか、数字を崩した名前にしたくなる。
男だったらイチロー、ジロウ、サブロウ……みたいな、まさに兄弟といった名前ばかり浮かんでくるのだ。
そこで本人たちにどんな名前が良いか聞いてみた。
すると、彼女たちは番号呼びに慣れているからあんまりそこから変えられても違和感があるとのこと。
さらに番号は生まれた順になっていて、誰が姉で誰が妹かということを判断する唯一の手段だという。
本人たちの了承もあるし、何より覚えやすく親しみやすい。
最終的に名前は数字モチーフで決めた。
一番しっかりしている長女の『イチカ』。
やんちゃなところがある次女の『ニーナ』。
運動が大好きで明るい三女『ミツハ』。
良い意味で平凡な四女『シータ』。
冷静で知的な五女『イツキ』。
無口で大人しい六女『ローザ』。
のんきでよく食べる七女の『ナナミ』。
うむ、それぞれ個性的な名前になっていると思う。
それとなく姉妹の関係がわかるが、露骨じゃない。
みんなで考えた甲斐があったな。
本人たちも喜んでくれた。
次に彼女たちの寝床のことだが、もちろん母屋だ。
大きな建物で掃除と弱っているところの補修も住んでいる。
使える空き部屋がたくさんあるのだ。
彼女たちに使ってもらうのはその中でも大きめの部屋。
中には干し草の超巨大ベッドが置かれていて七人一緒に眠れるようになっている。
もちろん一人一人ベッドを作ろうとは提案したが、こっちの方が良いらしい。
「何から何までありがとうございます。私たちにこんなに良くしてくださって。何をお返しすればよいか……」
しっかり者の長女イチカは申し訳なさそうにしている。
酷い扱いを受けていたというのに、他人への気遣いができるなんて本当に良い子だ。
「そんな気にする必要はないさ。君たちを引き取った以上、俺には君たちを幸せにする義務があるし、それ以上に俺の心が幸せにしたいと思っている。ここが家だと思って自由に過ごしてほしい」
「はい! 本当に感謝しています!」
「とはいえ、ここも人手不足なもんで落ち着いてきたらみんなの仕事を手伝ってくれると嬉しいな。もちろん、強制はしない」
「いえいえ! 明日からでも働かせていただきます! 少しでも恩を返したいです!」
「気持ちは嬉しいけど、無理しなくていいよ。思ってるより疲れってのは溜まってるものだから、明日は一日中ゴロゴロしててもいいぐらいさ」
それでもやるやると言って聞かないイチカに押し切られ、俺はとりあえずお願いすることにした。
まあ、明日の朝は起きれないだろう。
彼女たちもまだ子どもなのだ。
ベッドに入ってすぐに眠ってしまったイチカと並んですやすやと寝ている姉妹たちを見て俺はそう思った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
翌朝、俺は獣人の七姉妹に叩き起こされることになった。
正確には朝早くから次女のニーナと三女のミツハの二人にバシバシと叩かれて起こされた。
「おい、兄ちゃんまだ寝てんのか?」
「寝坊助だなぁ~」
「え、え、今何時?」
「四時だぜ!」
「四時だぞ~」
「そんな時間!? もう起きるの!?」
「レディはみんな起きてるぜ!」
「寝てるのはお兄ちゃんと鶏のクセに泣かないこいつ!」
ネクスがミツハに捕まっている!
流石にネクスの口の悪さも悪ガキには通用しなかったか!
「ミツハ、その鳥さんはまだ体が子どもだから、乱暴にしたらダメだよ」
「わかってるよ~。でも、こいつあったかくて気持ちいい~」
完全に暖を取る道具にされているが、とにかく気に入られてはいるようだ。
結果オーライだな。
さて、二度寝は許してもらえそうもないし俺も起きるか。
ニーナとミツハの言った通り、牧場の女性陣はみんな起きていた。
マリーは朝食の準備をしている。
それに興味を示しているのは食べることが大好きな七女ナナミ。
イチカはすでにマリーの横に立って料理を習っている。
寝坊したのは俺の方だったな。
リビングの机では五女イツキが分厚い本を読んでいる。
これは……ウェンディが持ってきたエルフの医学書か?
俺にはまるで理解できなかった本だが、まだ小さいイツキに理解できるのだろうか?
もしそうなら、ウェンディに助手がつくことになりそうだ。
俺を起こしたニーナとミツハが外に飛び出して行ったので、俺も外に出る。
すると、六女のローザがじーっと金属の柵の向こうのメガスタイン牛を見ていた。
動物が好きなのかな?
でも、あの牛たちは気性の荒いところもある。
柵の中に入らないように注意をしておこう。
「ローザ、牛さんが好きなのかい?」
「普通」
「ふ、普通か……。まあ、いいや。あの牛さんたちは結構怒りっぽいから、勝手に柵を越えて近づいちゃだめだよ」
「うーん……そんなに怒りっぽい子たちには見えない」
「え?」
ローザは黙ってしまった。
不思議な雰囲気がある子だ。
でも、言っていることが嘘とは思えない。
あの牛たちのことがわかるのだろうか?
今は彼女をそっとしておくとして、俺は外に飛び出したニーナとミツハを追う。
二人は予想通りウェンディのところにいた。
ウェンディはいまモンスターたちの状態をチェックしているところだ。
「モンスターたちに乱暴したらダメよ。敬意をもって接するの」
「『けいい』って何?」
「えっと、それは……尊敬する心と言うか、気遣いと言うか、敬う気持ちと言うか……」
「よくわかんないの! あっちの畑に行こうぜミツハ!」
「わかったよニーナ!」
ウェンディも子どもの相手には手を焼くようだ。
彼女にこれ以上心配をかけさせないように、そして畑を荒らされないように俺が二人を止めよう!
「ニーナ、ミツハ! 畑は荒らしちゃだめだよ!」
「わかってるって! ここの葉っぱは薬草なんだな! それもいい匂いがする!」
「こっちのはお野菜だ! 美味しそう~。私たちも一緒に作りたい!」
二人は畑仕事に興味があるようだ。
七者七様、それぞれすでに興味の対象が違っている。
それにみんな好奇心が有り余ってるから、もしかすると牧場にとって欠かせない力になるかもしれないな。
ん? 七者……?
「あれっ、そういえば一人足りてないような……。そうだ! シータがいないよ!?」
「シータは寝てるぜ。いつもより眠たくて起きれない~って言ってた」
「シータちゃん、ここに来る前すっごく緊張してたもんね~」
なるほど、普通の子もいるみたいだな。
何はともあれ、七姉妹が牧場になじむのにそう時間はかからなそうだ。
後日、俺は獣人の七姉妹を牧場に連れてきた。
ギルド職員による保護者としての適性を見る審査をなんとか潜り抜けられたのだ。
といっても、ネックになったのは収入のなさくらいだ。
これは牧場にいるメガスタイン牛の牛乳やウェンディの薬をそのうち売り出すと言っておいた。
ギルド側としてもここで審査を落とせば面倒なことになる。
俺自身、ギルドへの在籍期間はそれなりにあって、能力はなくとも素行だけは評価されていた。
これらの点が加味されて、晴れて七姉妹を引き取ることが許可された。
「それでこの子たちの名前のことなんだけど……」
彼女たちに名前はなく、番号で呼ばれていた。
なので俺たちで新しい名前を考えようということになったのだが、これが結構難航した。
七つ子なので単純に七人の名前を考えないといけないし、そうなると番号というか、数字を崩した名前にしたくなる。
男だったらイチロー、ジロウ、サブロウ……みたいな、まさに兄弟といった名前ばかり浮かんでくるのだ。
そこで本人たちにどんな名前が良いか聞いてみた。
すると、彼女たちは番号呼びに慣れているからあんまりそこから変えられても違和感があるとのこと。
さらに番号は生まれた順になっていて、誰が姉で誰が妹かということを判断する唯一の手段だという。
本人たちの了承もあるし、何より覚えやすく親しみやすい。
最終的に名前は数字モチーフで決めた。
一番しっかりしている長女の『イチカ』。
やんちゃなところがある次女の『ニーナ』。
運動が大好きで明るい三女『ミツハ』。
良い意味で平凡な四女『シータ』。
冷静で知的な五女『イツキ』。
無口で大人しい六女『ローザ』。
のんきでよく食べる七女の『ナナミ』。
うむ、それぞれ個性的な名前になっていると思う。
それとなく姉妹の関係がわかるが、露骨じゃない。
みんなで考えた甲斐があったな。
本人たちも喜んでくれた。
次に彼女たちの寝床のことだが、もちろん母屋だ。
大きな建物で掃除と弱っているところの補修も住んでいる。
使える空き部屋がたくさんあるのだ。
彼女たちに使ってもらうのはその中でも大きめの部屋。
中には干し草の超巨大ベッドが置かれていて七人一緒に眠れるようになっている。
もちろん一人一人ベッドを作ろうとは提案したが、こっちの方が良いらしい。
「何から何までありがとうございます。私たちにこんなに良くしてくださって。何をお返しすればよいか……」
しっかり者の長女イチカは申し訳なさそうにしている。
酷い扱いを受けていたというのに、他人への気遣いができるなんて本当に良い子だ。
「そんな気にする必要はないさ。君たちを引き取った以上、俺には君たちを幸せにする義務があるし、それ以上に俺の心が幸せにしたいと思っている。ここが家だと思って自由に過ごしてほしい」
「はい! 本当に感謝しています!」
「とはいえ、ここも人手不足なもんで落ち着いてきたらみんなの仕事を手伝ってくれると嬉しいな。もちろん、強制はしない」
「いえいえ! 明日からでも働かせていただきます! 少しでも恩を返したいです!」
「気持ちは嬉しいけど、無理しなくていいよ。思ってるより疲れってのは溜まってるものだから、明日は一日中ゴロゴロしててもいいぐらいさ」
それでもやるやると言って聞かないイチカに押し切られ、俺はとりあえずお願いすることにした。
まあ、明日の朝は起きれないだろう。
彼女たちもまだ子どもなのだ。
ベッドに入ってすぐに眠ってしまったイチカと並んですやすやと寝ている姉妹たちを見て俺はそう思った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
翌朝、俺は獣人の七姉妹に叩き起こされることになった。
正確には朝早くから次女のニーナと三女のミツハの二人にバシバシと叩かれて起こされた。
「おい、兄ちゃんまだ寝てんのか?」
「寝坊助だなぁ~」
「え、え、今何時?」
「四時だぜ!」
「四時だぞ~」
「そんな時間!? もう起きるの!?」
「レディはみんな起きてるぜ!」
「寝てるのはお兄ちゃんと鶏のクセに泣かないこいつ!」
ネクスがミツハに捕まっている!
流石にネクスの口の悪さも悪ガキには通用しなかったか!
「ミツハ、その鳥さんはまだ体が子どもだから、乱暴にしたらダメだよ」
「わかってるよ~。でも、こいつあったかくて気持ちいい~」
完全に暖を取る道具にされているが、とにかく気に入られてはいるようだ。
結果オーライだな。
さて、二度寝は許してもらえそうもないし俺も起きるか。
ニーナとミツハの言った通り、牧場の女性陣はみんな起きていた。
マリーは朝食の準備をしている。
それに興味を示しているのは食べることが大好きな七女ナナミ。
イチカはすでにマリーの横に立って料理を習っている。
寝坊したのは俺の方だったな。
リビングの机では五女イツキが分厚い本を読んでいる。
これは……ウェンディが持ってきたエルフの医学書か?
俺にはまるで理解できなかった本だが、まだ小さいイツキに理解できるのだろうか?
もしそうなら、ウェンディに助手がつくことになりそうだ。
俺を起こしたニーナとミツハが外に飛び出して行ったので、俺も外に出る。
すると、六女のローザがじーっと金属の柵の向こうのメガスタイン牛を見ていた。
動物が好きなのかな?
でも、あの牛たちは気性の荒いところもある。
柵の中に入らないように注意をしておこう。
「ローザ、牛さんが好きなのかい?」
「普通」
「ふ、普通か……。まあ、いいや。あの牛さんたちは結構怒りっぽいから、勝手に柵を越えて近づいちゃだめだよ」
「うーん……そんなに怒りっぽい子たちには見えない」
「え?」
ローザは黙ってしまった。
不思議な雰囲気がある子だ。
でも、言っていることが嘘とは思えない。
あの牛たちのことがわかるのだろうか?
今は彼女をそっとしておくとして、俺は外に飛び出したニーナとミツハを追う。
二人は予想通りウェンディのところにいた。
ウェンディはいまモンスターたちの状態をチェックしているところだ。
「モンスターたちに乱暴したらダメよ。敬意をもって接するの」
「『けいい』って何?」
「えっと、それは……尊敬する心と言うか、気遣いと言うか、敬う気持ちと言うか……」
「よくわかんないの! あっちの畑に行こうぜミツハ!」
「わかったよニーナ!」
ウェンディも子どもの相手には手を焼くようだ。
彼女にこれ以上心配をかけさせないように、そして畑を荒らされないように俺が二人を止めよう!
「ニーナ、ミツハ! 畑は荒らしちゃだめだよ!」
「わかってるって! ここの葉っぱは薬草なんだな! それもいい匂いがする!」
「こっちのはお野菜だ! 美味しそう~。私たちも一緒に作りたい!」
二人は畑仕事に興味があるようだ。
七者七様、それぞれすでに興味の対象が違っている。
それにみんな好奇心が有り余ってるから、もしかすると牧場にとって欠かせない力になるかもしれないな。
ん? 七者……?
「あれっ、そういえば一人足りてないような……。そうだ! シータがいないよ!?」
「シータは寝てるぜ。いつもより眠たくて起きれない~って言ってた」
「シータちゃん、ここに来る前すっごく緊張してたもんね~」
なるほど、普通の子もいるみたいだな。
何はともあれ、七姉妹が牧場になじむのにそう時間はかからなそうだ。
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