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第2話 目覚めた能力は……
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不死鳥……。
フェニックスとも呼ばれるその鳥は、その名の通り不死だ。
寿命を迎えると灰になり、灰の中から記憶を引き継いだ新たな不死鳥が生まれる。
厳密にはこの転生過程が死なのかもしれないが、とにかくそこらへんの生き物とは違う生命サイクルをしているのは確かだ。
不死鳥は希少だ。
見れなくて当然、会えなくて当然。
生きてる間に遠くの空を飛んでいる姿を見られたのならば幸運。幸せ者とされる。
ゆえにその羽根や灰、血や肉に至るまでとんでもない価値がある。
食べれば不老不死になれるなんてウワサが広まっているのも価値を上げている原因だろう。
本物を一羽捕まえて売れば五代は遊んで暮らせるんじゃないか?
いや、相場はわからないけど。
とにかくこいつをどうするか……。
本物ならばえらいことだ!
「ああ、そうだぜ。俺は不死鳥だ」
「しゃ、喋った!?」
驚いてバタンと尻餅をついてしまった……。
「何驚いてんだよ。お前が不死鳥かと聞いてきたから親切に答えてやったのにさ」
「いや、でも不死鳥が喋るという知識がなくてね……。いままで会ったことないし」
「ほーん、そうか。まあ、お前のことはどうでもいいや。それよりジジイは……」
その時、バンとこの部屋の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは無論あの男二人組。
俺の尻餅の音を聞きつけてきたようだ。
悲しいことに転んだことを心配している様子ではない。
「なんか見つけたかオラァ!」
「おっ!? そいつは間違いねぇ! 不死鳥の雛だ! ウワサは本当だったか……」
「わざわざ来た甲斐があるぜ!」
男たちは目の色を変える。
どうやら最初からこの不死鳥が目的だったらしい。
「おい! そいつをよこせ! そしたらこのボロっちい牧場なんてくれてやらぁ!!」
「借金もチャラにしてやるよ!」
よく言うよ。
この調子なら初めから借金だって嘘だろうに。
こんなやつらに蘇ったばかりの不死鳥を渡したら何をされるかわかったもんじゃない!
ならば、どうするか……。
逃げ道は塞がれているし、戦って勝ち目はない。
いや、一つだけ逃げ道がある!
俺は窓をぶち破って外へと飛び出した。
「あっ、ここ三階だったあああああ!!!」
俺のいた書斎は三階にあったんだった!
探し物に熱中しすぎて忘れていた!
とっさに受け身も取れずに地面に落下し、脚がボキッと悲鳴を上げる。
だが、不死鳥の雛は無事だ。
「ぐっ……!! 大丈夫だった……?」
「バカかよ! 人の心配してる場合か!? おめぇの背中に羽なんて生えてないぜ!」
「知ってるよ……。でも、君をあいつらに渡す方がなんか後味悪いだろ……? さあ、村まで逃げれば腕っぷしの強い人たちがたくさんいるし、なんとかなるさ……。足の速さには自信があるんだ……」
「その自慢の脚は折れちまってるけどな! 立とうとするな! ちょっと待ってろ!」
不死鳥の雛はテクテクと倒れている俺の脚のところまで歩いて行く。
そして、そのまだ飛べない小さな翼から鮮やかな虹色の炎を放ち、俺の脚に当て始めた。
「熱っ……くない?」
「残念ながら攻撃には使えない炎なんでな。しかも、復活したばっかだから治りがおせぇ……。だが、骨折くらいならなんとかなる!」
不死鳥の言う通り脚の痛みがどんどん引いていく。
これが不死鳥が持つ癒しの能力なのか。
「さあ! これで走るくらいはできる! さっさと俺を安全なところまで運べ! 悪党の資金源になるなんて御免だぜ!」
「わかった!」
グッと脚に力を込めて立ち上がる。
うん、問題はない!
テイマーとしての才能はゼロだが、逃げ足は速いんだぞ!
「そうはさせんぞ小僧……」
目の前に立ちはだかる黒いローブの男。
二人組の男の仲間だろう。
関係ないね。今は無視して逃げる!
「逃がさん! 我が命令に応え、ここに姿を現せ……トロール!!」
男の正面に魔法陣が展開され、そこから棍棒を持った巨大な人型モンスターが現れた。
「しょ、召喚魔法!?」
テイマーの中でもそこそこ優秀な者じゃないと使えない魔法だ。
自分の術をかけて従わせているモンスターを別の場所から転移させることができる。
大型モンスターをずっと連れ歩くのはいろいろ問題があるので、大型モンスターを従わせたい者には必須だ。
もちろん俺には使えない……。
「おー、ただの賊ってわけでもなさそうだな。厄介な奴に目をつけられちまったぜ。人気者は辛いな」
「言ってる場合じゃないよ!」
トロールに気を取られているうちに建物の中にいた二人組も合流し、敵は三人になってしまった。
「やれ! トロール!」
トロールが俺たちに突進してくる。
だが、トロールはノロい。
十分逃げられるモンスターのはずなのだが、召喚されたこいつはやけに動きが早かった。
棍棒が体スレスレに振り下ろされ、衝撃で体が吹っ飛ぶ。
「強化魔法までかけられているのか……」
モンスターの能力を強化する魔法。
でも、これはモンスターに大きな負担がかかる。
俺は使えないので関係なかったが、学校でも緊急時以外の使用はよしとされていなかった。
それをあのテイマーは平然と……。
しかも、トロールはよく見るとボロボロだ。
転移魔法と強化魔法でむやみやたらと戦わされているのは想像がつく。
体を無理やり動かされていても表情でわかる。
トロールは悲しんでいる。
だが、テイマーの命令は絶対だ。
今この瞬間も棍棒が俺に向けて振り下ろされている。
「やめろ! トロール! そいつに従うことはない!」
願望が混じった命乞いだった。
だが驚くことにトロールはその言葉を聞いて動きを止めた。
「なにっ!? なぜ命令通りに動かない!?」
余裕の表情だったテイマーの男が焦りだす。
当然だ。モンスターがテイマーの命令に逆らうなんてあるはずなのだから。
トロールはゆっくりとテイマーと男二人組の方に向き直る。
そして、棍棒をフルスイングして彼らをまとめて空の彼方まで吹っ飛ばした。
「ぐああああああああああああーーーーーー!!!」
その悲鳴を聞いて、やっと俺は我に返った。
いったい何が起こったのだろう?
「お前、面白い力持ってんな。名前はなんていうんだ?」
「え? ルイだけど……」
「俺の名前はネクスだ。不死鳥のネクス。特別に呼び捨てにすることを許してやるよ。助けてもらったしな」
「よろしくねネクス。それで力ってなんだい?」
「わからずにやってたのか!? お前はテイム魔法を打ち消すことができるんだぜ!?」
「ええっ!? 本当!?」
「本当も何も今やっただろうが! なんの理由もなしにモンスターがテイマーに逆らうことはない!」
「そうか……俺にそんな力があったのか。通りでモンスターをテイムできないわけだ!」
学校はほとんど無駄な三年間だったということだ。
でも、この力を恨む気にはならない。
術が解けたトロールは嬉しそうな顔をしてペコペコと頭を下げている。
あの男たちに不当な扱いを受けている間に、何かあったら頭をとりあえず下げることを覚えてしまったのだろう。
彼を解放してあげられてよかったと思う。
それにこの力はきっと誰かの役に立つ。
どう役立てるかは……これから考えるとしよう!
フェニックスとも呼ばれるその鳥は、その名の通り不死だ。
寿命を迎えると灰になり、灰の中から記憶を引き継いだ新たな不死鳥が生まれる。
厳密にはこの転生過程が死なのかもしれないが、とにかくそこらへんの生き物とは違う生命サイクルをしているのは確かだ。
不死鳥は希少だ。
見れなくて当然、会えなくて当然。
生きてる間に遠くの空を飛んでいる姿を見られたのならば幸運。幸せ者とされる。
ゆえにその羽根や灰、血や肉に至るまでとんでもない価値がある。
食べれば不老不死になれるなんてウワサが広まっているのも価値を上げている原因だろう。
本物を一羽捕まえて売れば五代は遊んで暮らせるんじゃないか?
いや、相場はわからないけど。
とにかくこいつをどうするか……。
本物ならばえらいことだ!
「ああ、そうだぜ。俺は不死鳥だ」
「しゃ、喋った!?」
驚いてバタンと尻餅をついてしまった……。
「何驚いてんだよ。お前が不死鳥かと聞いてきたから親切に答えてやったのにさ」
「いや、でも不死鳥が喋るという知識がなくてね……。いままで会ったことないし」
「ほーん、そうか。まあ、お前のことはどうでもいいや。それよりジジイは……」
その時、バンとこの部屋の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは無論あの男二人組。
俺の尻餅の音を聞きつけてきたようだ。
悲しいことに転んだことを心配している様子ではない。
「なんか見つけたかオラァ!」
「おっ!? そいつは間違いねぇ! 不死鳥の雛だ! ウワサは本当だったか……」
「わざわざ来た甲斐があるぜ!」
男たちは目の色を変える。
どうやら最初からこの不死鳥が目的だったらしい。
「おい! そいつをよこせ! そしたらこのボロっちい牧場なんてくれてやらぁ!!」
「借金もチャラにしてやるよ!」
よく言うよ。
この調子なら初めから借金だって嘘だろうに。
こんなやつらに蘇ったばかりの不死鳥を渡したら何をされるかわかったもんじゃない!
ならば、どうするか……。
逃げ道は塞がれているし、戦って勝ち目はない。
いや、一つだけ逃げ道がある!
俺は窓をぶち破って外へと飛び出した。
「あっ、ここ三階だったあああああ!!!」
俺のいた書斎は三階にあったんだった!
探し物に熱中しすぎて忘れていた!
とっさに受け身も取れずに地面に落下し、脚がボキッと悲鳴を上げる。
だが、不死鳥の雛は無事だ。
「ぐっ……!! 大丈夫だった……?」
「バカかよ! 人の心配してる場合か!? おめぇの背中に羽なんて生えてないぜ!」
「知ってるよ……。でも、君をあいつらに渡す方がなんか後味悪いだろ……? さあ、村まで逃げれば腕っぷしの強い人たちがたくさんいるし、なんとかなるさ……。足の速さには自信があるんだ……」
「その自慢の脚は折れちまってるけどな! 立とうとするな! ちょっと待ってろ!」
不死鳥の雛はテクテクと倒れている俺の脚のところまで歩いて行く。
そして、そのまだ飛べない小さな翼から鮮やかな虹色の炎を放ち、俺の脚に当て始めた。
「熱っ……くない?」
「残念ながら攻撃には使えない炎なんでな。しかも、復活したばっかだから治りがおせぇ……。だが、骨折くらいならなんとかなる!」
不死鳥の言う通り脚の痛みがどんどん引いていく。
これが不死鳥が持つ癒しの能力なのか。
「さあ! これで走るくらいはできる! さっさと俺を安全なところまで運べ! 悪党の資金源になるなんて御免だぜ!」
「わかった!」
グッと脚に力を込めて立ち上がる。
うん、問題はない!
テイマーとしての才能はゼロだが、逃げ足は速いんだぞ!
「そうはさせんぞ小僧……」
目の前に立ちはだかる黒いローブの男。
二人組の男の仲間だろう。
関係ないね。今は無視して逃げる!
「逃がさん! 我が命令に応え、ここに姿を現せ……トロール!!」
男の正面に魔法陣が展開され、そこから棍棒を持った巨大な人型モンスターが現れた。
「しょ、召喚魔法!?」
テイマーの中でもそこそこ優秀な者じゃないと使えない魔法だ。
自分の術をかけて従わせているモンスターを別の場所から転移させることができる。
大型モンスターをずっと連れ歩くのはいろいろ問題があるので、大型モンスターを従わせたい者には必須だ。
もちろん俺には使えない……。
「おー、ただの賊ってわけでもなさそうだな。厄介な奴に目をつけられちまったぜ。人気者は辛いな」
「言ってる場合じゃないよ!」
トロールに気を取られているうちに建物の中にいた二人組も合流し、敵は三人になってしまった。
「やれ! トロール!」
トロールが俺たちに突進してくる。
だが、トロールはノロい。
十分逃げられるモンスターのはずなのだが、召喚されたこいつはやけに動きが早かった。
棍棒が体スレスレに振り下ろされ、衝撃で体が吹っ飛ぶ。
「強化魔法までかけられているのか……」
モンスターの能力を強化する魔法。
でも、これはモンスターに大きな負担がかかる。
俺は使えないので関係なかったが、学校でも緊急時以外の使用はよしとされていなかった。
それをあのテイマーは平然と……。
しかも、トロールはよく見るとボロボロだ。
転移魔法と強化魔法でむやみやたらと戦わされているのは想像がつく。
体を無理やり動かされていても表情でわかる。
トロールは悲しんでいる。
だが、テイマーの命令は絶対だ。
今この瞬間も棍棒が俺に向けて振り下ろされている。
「やめろ! トロール! そいつに従うことはない!」
願望が混じった命乞いだった。
だが驚くことにトロールはその言葉を聞いて動きを止めた。
「なにっ!? なぜ命令通りに動かない!?」
余裕の表情だったテイマーの男が焦りだす。
当然だ。モンスターがテイマーの命令に逆らうなんてあるはずなのだから。
トロールはゆっくりとテイマーと男二人組の方に向き直る。
そして、棍棒をフルスイングして彼らをまとめて空の彼方まで吹っ飛ばした。
「ぐああああああああああああーーーーーー!!!」
その悲鳴を聞いて、やっと俺は我に返った。
いったい何が起こったのだろう?
「お前、面白い力持ってんな。名前はなんていうんだ?」
「え? ルイだけど……」
「俺の名前はネクスだ。不死鳥のネクス。特別に呼び捨てにすることを許してやるよ。助けてもらったしな」
「よろしくねネクス。それで力ってなんだい?」
「わからずにやってたのか!? お前はテイム魔法を打ち消すことができるんだぜ!?」
「ええっ!? 本当!?」
「本当も何も今やっただろうが! なんの理由もなしにモンスターがテイマーに逆らうことはない!」
「そうか……俺にそんな力があったのか。通りでモンスターをテイムできないわけだ!」
学校はほとんど無駄な三年間だったということだ。
でも、この力を恨む気にはならない。
術が解けたトロールは嬉しそうな顔をしてペコペコと頭を下げている。
あの男たちに不当な扱いを受けている間に、何かあったら頭をとりあえず下げることを覚えてしまったのだろう。
彼を解放してあげられてよかったと思う。
それにこの力はきっと誰かの役に立つ。
どう役立てるかは……これから考えるとしよう!
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