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10話 特訓

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 少年と髭面の男はトイレを抜け出し既にサクラとアリスの元に着いていた。

「この人誰?!」
「誰なのじゃ?」

 2人は勿論この男を知らないわけでそれで少年が突然知らない人を連れてくると無論驚くわけで。つまり正常の反応。

 「紹介が遅れた!この人はエッセルさん!」

 男は紹介されると照れ臭そうに髭を触りながら会釈をし「どーも」と一声上げる。
 突如、焦りを見せる少女。

「不味いのじゃ。足音が沢山聞こえるのでござる」

 少年とアリスは急ぎで身支度を済ませ、脱出路を探し出すが男は以前髭を触りながら窓を眺めるばかり。そんな男を見て少女はため息混じりに声を出す。

「エッセル殿、お主も早く脱出路を探して欲しいのじゃ」

 すると男も窓の外を見ながら一声。

「んー?探してるよぉ~。あ、あったぁ」

 一同は困惑を隠せなかった。探してるといいつつ、外を見ると言う行為。それは矛盾そのものだったからだ。まさか、地上から遠く離れたこのお城から飛び降りるなどという自殺行為をするとは考えない。少年らは問う。

「エッセルさん?何言ってんの?早く!」

 男は、声をかけられると一歩二歩と壁に近づき窓を開ける。そして続け様に言葉を発した。

「俺に早く掴まんなぁ。捕まっちゃうよぉ?」

 男が向く先は外。このまま行けば男はこの窓から外へ飛び降りるだろう。そう思った少年は男に再び問う。

 「ま、まさか飛び降りる気?!」

 男はそう問われるとニッコリと頬を上げ笑った。

「ピンポーン。いいセンスしてるねぇ」

  眉間にしわを寄せ、目を細め、口を大きく開き意味が分からないとでも言いたげな顔をする少年。アリスとサクラは顔を見合わせて冗談でしょと言いたげな表情を浮かばす。
 しかし、兵の足音は時間を追うごとに大きくなってきている。

「早く掴まんなぁ」

 男が早くするよう促したその時だった。
ガシャと言う鈍い音の後に続く数々の足音。兵が部屋に入ってきたのだ。

「M001を発見!後、謎の男1人!」

 少年は頭を強く搔きむしり男の元へ走って行く。アリスとサクラも決心をつけ男の元へ。
 男の袖や背中に思いっきりしがみ付く。

「よしぃ、行こうかぁ!」

 その瞬間、男の足元に赤い靄がかかる。
 続けて男はその場から外に向かい開いた窓から飛ぶ。だがその飛距離は並大抵のものではなかった。落ちるかと思われてた一同は浮遊島南西側のダイブスポット付近にまで飛んでいた。少年らも掴むのに精一杯だった。
 着地は意外にも足で普通に落ちていった。恐らくあの靄が足を護ったのだろう。

 ダイブスポットに着くと少年はすぐに問いただす。

「あれ何なんだよ!何で普通の人間があんなに飛べてあの距離から落ちても怪我一つしないんだ!?」

 男はクスリと、ひと笑いすると左手で髭を触り右手に例の靄をかけ話し出す。

「さっき教えてやったろぉ。《権威》を使ったんだよぉ。権威を纏わせると通常の百倍程の力は出せると言っただろぉ」

 そう言うと男は靄を纏わせた右手で地面を殴る。
 すると地面は何重にもえぐれ、見るも無残な状態と化した。

「こんな感じでなぁ。これをお前らにマスターしてもらうかなぁ」

◇◆◇

 城内、王室会議場。
 背丈より大きな椅子に座る男と膝をつき、頭を下げる男の姿。

 「すいません。M001を取り逃がしてしまいました」

「何だと?このワシの城でじゃと?」

 「はい。誠に申し訳ございません」

「もう良い。M002を使え」

「しかし、あれはまだ…」

「いいから使えと言っとるのだ!」

「はっ!」
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