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第15話 アダムとアリス

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 神々しくまた禍々しい様なそれは矛盾を思わせる。それはもはやアリスとは別の何かだった。

「どーなってんだ!大丈夫か?」

 慌てふためく少年はすぐさまアリスの近くに駆け寄る。
 二、三度問いかけても応答が無い。ならば触るしか無い。少年がアリスに触れようとした瞬間だった。
 手に熱湯をかけられた様な痛む熱さの感覚を覚えた。それはアリスの周りを覆う白い靄が原因だった。

 「何だあれ…」

 それに何処か見覚えがある様な無いような。そんな感覚を少年は知る。しかしそれは、明らかに見た事があるものだった。それに気づいたのは髭面の男。
 
「おいぃ。これこの前、アリスが俺たちを守ったやつじゃ…」

 それを知った時、彼らの前に希望と絶望が同時に現れた。
 彼女がいわゆる何かに飲み込まれた状況ならば彼女を呼び起せば治るかもしれないという希望。
 権威を纏わせた状態で触ってもあの白い靄に溶かされてしまって彼女を呼び起せないのでは無いかという絶望。
 勿論、彼らは前者を望むが運命がどちらを選ぶかなんて知る由もない。

「このまま飲み込まれるとやばいねぇ」

 焦りを見せ始めたその時だった。
 アリスを飲み込む何かが口を開く。

「ワレハ、アダム。キサマラヲ。ケス」

 アダムと名乗るそれは少年達になんらかの攻撃を仕掛ける意思を伝えた。
 次第に自身の身も危うくなる状況下に捉えられる。
 その時男は少年に一つの案を提案する。

「俺が彼女を気絶させるからぁ、君はアレの気を引いてくれぇ」

 少年は軽く頷く。それと同時、エッセルはその場から姿を消した。
 少年はアダムの意思を自身に向けさせる為あらゆる行動をとる。
 踊ってみたり、歌ってみたり、ポーズを決めてみたり、しかしどれも決定打に欠けた。
 そこで少年はアダムに足元に転がっていた石を投げる事に。
 大きく振りかぶり投げたその石はアリスめがけて真っ直ぐに飛んでいく。だが案の定石は靄で消えていった。
 しかし、アダムはその行為を良く思わなかったのか、少年に視点を合わせた。

「キサマ。ナニシテル。コロス。イマスグ」

 そういうとアリスの体が宙に浮かび、口を大きく開け始めた。初めは何をしてるのか分からなかったが時期に正体が判明した。それは口にあの白い靄を貯めて放出すると言うものだった。
 しかし、わかった時にはもう遅い。少年めがけて白い靄が飛んでいく、それはもはや避ける事はできなく受ける事しか出来ない。

ーー死んだ。
その場にいたならば誰しもが思う事。
しかし、数秒たっても少年は息をして地に足をつけている。つまりは死んでいなかった。何故かというのはすぐに分かった。

「危ないねぇ」

 男がアダムの首元に大きな一撃を与え、アリスごと気絶させたからだった。
 気絶したアリスが地に叩きつけられる前に男は下に降りアリスを綺麗に抱きかかえると、そのまま男はサクラが眠る横に寝かせた。
 男はそれをみて一声。

「なんかぁ、俺変な趣味持ってるみたいぃ」

◆◇◆

 場所を同じく浮遊島ダイブスポット。木の陰からこちらの様子を伺う姿。

「おい。何だよアダムって。父上はそんなこと言っていなかった。まぁいい。今は気絶してんだ。逆に使ってやろうじゃねぇか」

 
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