3 / 24
本編【22時投稿】
lll 『決断の時』
しおりを挟む
「私の…私の母が死んでしまう」
王子の涙からなるその震えた声が部屋中に響き渡る。
瞬間、今まで薄汚れたゴミを見る様な目をしていたアイクも、子供を遇らう様に接していたソルトも、リューの事しか頭になかったシャルやシズクも、もちろんリューも。皆が心に変動を起こす。
「訳をお聞かせて下さい」
今まで冷たく鋭く感じたその声は穏やかで優しく、何処か暖かく感じた。
それは、ソルトの心の変化が態度に出た瞬間だった。
「私の…母は魔王なんです」
一瞬、躊躇いを見せる。
恐らく、母が魔族というのは今までずっと王族内いや、家族だけの秘密だったのだろう。
が、泣いたせいで精神状況が不安定という事も有り何故か、王子の中でのレジェンド達に寄せる信頼度は著しく高くなっていた。
5人も思いもしなかった事を今、告げられ戸惑いを隠しきれない様子。
それもそうだろう、人族と魔族は古代より、戦争をしている。
その頭。つまりは1番上の命令する者同士が恋愛し、子供を作ったという事。もし、この情報が、どちらかの国にでも、流れでもしたら計り知れない影響を及ぼす事になる。最悪の場合、逆上した兵士達が国家転覆を企て、内乱を起こす可能性すらあり得る。
「なるほど…だとしたら戦争がこの20年間なかった事も頷ける」
この20年間戦争はピタリと治っていた。
理由は『お互い、物資供給の為』というもの。
しかし、それは表向き。真の理由は国王と魔王が愛し合っていた。と言うのが理由だったのだ。
「そしたら、尚更だ!おめぇはなんで自分の母さんの故郷を占拠しろと命令した!!」
部屋中に怒鳴り声が鳴り響く。
その声の主はアイク。感情移入しやすいだけに『自分だったら』『俺だったら』と考えてしまう。その結果自分の母の故郷を占拠するという答えにはたどり着かなかった為にアイクは今、怒っている。
リューが必死に止めに入るが今の彼では怒りが募っているアイクを止めることは不可能。
故に、無駄だった。
「それは…いかにあなた達に気づかれることなく魔界に行けるかと考えた結果でした。本当に申し訳ない。」
「俺らを信用しろよ?レジェンドだぜ?これでも」
王子は申し訳なさそうに5秒ほど俯く。その間はただひたすらに沈黙だった。
ーー少し経つと王子が重々しい口を開く。
同時、先程まで怒っていたアイクが王子の真横に立ち肩を組む。
そして、目の前に立つ4人のレジェンド達を指差し微笑んだ。
顔を上げると目の前には逞しくも賢く、自由気ままな4人の姿を目視できた。
それを見た王子は、口を噛み締め、今度は俯くのではなく上を向きただただ泣くことしかできなかった。
ーーー泣く事によって今まで1人で溜め込んでいた"もの"を吐き出した王子は泣き止む事を待たず、レジェンド達に向かい叫ぶ。
「母を…!母を助けて下さい…!!!」
「「おう!!」」
【レンドネス王国・とある場所】
暗闇の中、不気味な微笑みを浮かべせ葉巻を吸う男がいた。
「いいのですか?エターナルの王子を放っておいて。先に魔界を取られるかもしれませんよ」
「そんな事、あのバカ王子に限ってできるはずがなかろう」
付き人らしいき人の心配を裏腹に、高笑いをし、葉巻を吸う。その口から出た煙は空へと立ち上る。
「そうですか…ならいんですが…。」
王子の涙からなるその震えた声が部屋中に響き渡る。
瞬間、今まで薄汚れたゴミを見る様な目をしていたアイクも、子供を遇らう様に接していたソルトも、リューの事しか頭になかったシャルやシズクも、もちろんリューも。皆が心に変動を起こす。
「訳をお聞かせて下さい」
今まで冷たく鋭く感じたその声は穏やかで優しく、何処か暖かく感じた。
それは、ソルトの心の変化が態度に出た瞬間だった。
「私の…母は魔王なんです」
一瞬、躊躇いを見せる。
恐らく、母が魔族というのは今までずっと王族内いや、家族だけの秘密だったのだろう。
が、泣いたせいで精神状況が不安定という事も有り何故か、王子の中でのレジェンド達に寄せる信頼度は著しく高くなっていた。
5人も思いもしなかった事を今、告げられ戸惑いを隠しきれない様子。
それもそうだろう、人族と魔族は古代より、戦争をしている。
その頭。つまりは1番上の命令する者同士が恋愛し、子供を作ったという事。もし、この情報が、どちらかの国にでも、流れでもしたら計り知れない影響を及ぼす事になる。最悪の場合、逆上した兵士達が国家転覆を企て、内乱を起こす可能性すらあり得る。
「なるほど…だとしたら戦争がこの20年間なかった事も頷ける」
この20年間戦争はピタリと治っていた。
理由は『お互い、物資供給の為』というもの。
しかし、それは表向き。真の理由は国王と魔王が愛し合っていた。と言うのが理由だったのだ。
「そしたら、尚更だ!おめぇはなんで自分の母さんの故郷を占拠しろと命令した!!」
部屋中に怒鳴り声が鳴り響く。
その声の主はアイク。感情移入しやすいだけに『自分だったら』『俺だったら』と考えてしまう。その結果自分の母の故郷を占拠するという答えにはたどり着かなかった為にアイクは今、怒っている。
リューが必死に止めに入るが今の彼では怒りが募っているアイクを止めることは不可能。
故に、無駄だった。
「それは…いかにあなた達に気づかれることなく魔界に行けるかと考えた結果でした。本当に申し訳ない。」
「俺らを信用しろよ?レジェンドだぜ?これでも」
王子は申し訳なさそうに5秒ほど俯く。その間はただひたすらに沈黙だった。
ーー少し経つと王子が重々しい口を開く。
同時、先程まで怒っていたアイクが王子の真横に立ち肩を組む。
そして、目の前に立つ4人のレジェンド達を指差し微笑んだ。
顔を上げると目の前には逞しくも賢く、自由気ままな4人の姿を目視できた。
それを見た王子は、口を噛み締め、今度は俯くのではなく上を向きただただ泣くことしかできなかった。
ーーー泣く事によって今まで1人で溜め込んでいた"もの"を吐き出した王子は泣き止む事を待たず、レジェンド達に向かい叫ぶ。
「母を…!母を助けて下さい…!!!」
「「おう!!」」
【レンドネス王国・とある場所】
暗闇の中、不気味な微笑みを浮かべせ葉巻を吸う男がいた。
「いいのですか?エターナルの王子を放っておいて。先に魔界を取られるかもしれませんよ」
「そんな事、あのバカ王子に限ってできるはずがなかろう」
付き人らしいき人の心配を裏腹に、高笑いをし、葉巻を吸う。その口から出た煙は空へと立ち上る。
「そうですか…ならいんですが…。」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
雨の世界の終わりまで
七つ目の子
ファンタジー
第一部
魔王が滅びて約100年。人々は魔王の残した呪いに悩まされていた。
不死の呪いにして必死の呪い。そんな呪いに罹った青年レインは残された最後の5年間旅をする。
魔物溢れる悪意に満ちた世界。
そんな世界で出会ったサニィという少女と共に何かを残す為、鬼と呼ばれた村の青年は進む。
《Heartful/Hurtful》
世界を巡る青年と少女のハートフル冒険譚。
――――――――――――――――――――――――
第二部
二人の英雄が世界を救って4年。
魔物の脅威は未だなくならず、凶暴化している。その日も、とある村が魔物の襲撃に晒され、戦士達は死を覚悟していた。
そこに現れたのは、一人の武器にまみれた少女だった。
鬼の二人の弟子、心を読む少女と無双の王女の英雄譚。
第二部完結!
第三部ほぼ毎日不定時更新中!
小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる