上 下
29 / 124
一章:22時10分更新

第16話:あの時。

しおりを挟む
「ハハハハハ♪」

甲高い声が鳴り響く。

その声は、俺の心に響いたんだ。
俺がいなければ、俺がいなければエッセルさんはこんな目には合わなかった。そうして自分を憎んだ。
だけど、あの人は

「少年、自分を責めるな。男が一度見せたを無駄にする様な事はしてはいけない。」

そう言ったんだ。
正直、あの人の器のデカさにはビックリさせられたが、何よりあの人は

優しいんだ。

俺を、俺を苦しめまいと、、、自分の腕が無くなってるっていうのに、俺を心配してくれたんだ、、、。

俺は泣きすぎてなんて返事をしたかは覚えて無いが

とても嬉しかった。

って事だけは覚えてるよ。

そこからは早かった。

「なぁーにペチャクチャ喋ってるのぉ♪」

「なんでも無い。」

「お前ぇ、自分のぉ腕無くなってることにぃ気づいてるぅ♪」

「当たり前だ。腕一本でお前を、葬れると思うと、安いもんだ。」

「へぇ~♪どうやって倒すのぉ♪」

「今にわかるさ」

「ヴラフォス。」

「、、、」

「なんだぁ♪何も起こらないじゃん♪」

「上見てみろよ」

「い、岩!?ど、どこから!?ハハ、、、、俺の負けじゃねぇかよ♪」

「あぁ。お前の負けや。」

それからの事は今でも鮮明に覚えてる。

「ドン」と言う鈍い音と共に、男の叫び声が聞こえてきた。
そして数秒後に男の叫び声は止み、悪夢が終わったと初めて実感させられた。
クエストをクリアもしてないのに、俺が戦いに貢献したわけでもないのに、母さんの罪も晴らしてあげられてないのに、達成に溺れた。

「巻き込んじゃって悪かったな!これで君も安心してクエストを出来るな!」

「でも、、、う、腕が、、、な、なんで自分の事より人のとこを心配できるんだよ!」

「人、1人の命と腕だったらどっちの方が価値があると思う?」

「命、、、」

「そういう事だ」

「で、でも、、、」

「腕なら生えるさ!ティシア。ほら?ね?」

「う、うん!生えるなら良かった!!」

「じゃ、逞しく生きろよ!」

あの時の俺は気づいていなかったが、
腕を治すには多大な魔力マジックパワーを要する。
しかも
失われた腕となると何らかのが必要なんだ。
エッセルさんは自分の魔力マジックパワーの大半を、犠牲に、腕を再生させたんだ。

この間、エッセルさんと会って俺は確信した。
今のエッセルさんは6年前のエッセルの7分の1ほどの力しか出せないんだ。
俺はその事を知って、自分へのが収まらなかった。

何で、気づいて止めなかったのか。
何で、俺は喜んでいたのか。
何で、謝れなかったのか、、、

そんな悔しさ・未熟さ。で、が収まらなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そうして俺は恐らく自分に対するを抱えてしまった。
だから陽向の魔法マジックが効いたんだと思う。」

「なるほどな、、、そんな辛い過去があったとはな。ごめんなお前を疑ったりして」

「いや。俺もその魔法マジックが効いていたら疑っていたさ。」

「け、けいた!?ひ、1人で全て抱えようとしないで!?わ、私たちがいるからね?!」

「そーだぞ、エッセルさんなら、俺のミスだ。お前のせいじゃない。って言うぞ?」

「あぁ。ありがとう、、、頼りにしてる。」

敬太の目には似合わない、涙が浮かぶ。
それは嬉し涙。
仲間がいる大切さに気づいただった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

処理中です...