35 / 35
序章:出逢い
24:退却
しおりを挟む
「テイン!クロルを守ってくれ!」
「は、はい!」
「はぁ……はぁっ……ぁ……はぁ……」
戸惑う私に対して、彼は怪我を負っているにも関わらず指示を出す。
「フシィァ……!」
「グルルァ……」
「グルルッ!」
「3体相手か……。まだ付与は消えてない。」
(精神系統の御呪はまだ覚えていませんし、神経系に御呪をしようにもそんな知識もない……!)
彼女に見せてしまうことになりますが、今はこれしかありません!
バサッ――――――!!
「っ!」
白く輝く、〝天使の翼〟!
「はぁっ、はぁ……!はぁっ……ぁ……はぁ……はぁ……」
「クロル、大丈夫ですか?」
天使の纏う光は、意図することなく人々を照らし、優しく暖める。(自分で言うのもあれですが)
彼女の動悸を少しでも和らげることが出来れば……
「はぁ……はっ……ごめっ……はぁ……はぁ……ごめ、ごめんな、さい……はぁ……」
「だ、大丈夫です!まずはしっかり呼吸をして、落ち着きましょう。」
こういう時、何をすれば良いのでしょう。ただ宥めるだけでいいのでしょうか。
私が人だったときの、遠い記憶……そんなものを思い返す時間はない。
彼は今、手負いのまま3体の怪人達を相手にしている。
「グルルルァッ!!」
「でぇぇぇいやぁっ!!」
「グルッ……」
「キィエエエエェァアアッ!!!」
「フシュッ……!」
彼は怪我を負い攻撃が出来ず、発狂し威嚇をし距離を取っている。付与術がそろそろ切れてしまう……
ここに来て2日目。天界に籠って永らく……実戦経験が無さすぎる。
とはいえ、今の彼は誰が見ても危機的状況にある。
(ここはいくべきでしょう。きっと、うん。多分!!)
まだ呼吸が少し乱れているクロルを、後ろから抱きしめる。
「あっ……はぁっ、はぁ……」
彼女も咄嗟に腕をギュッと掴む。
体格差がかなりあるので、ツムグを抱えた時よりも厳しいですけど。
「飛びますよ!しっかり捕まって!」
翼を大きく羽ばたかせ、グンと飛び立つ。
(まだ慣れてないんですよこの姿……)
クロルを抱えたまま、彼の元まで飛んでいく。
「すみませんツムグ!」
「いや、大丈夫だ。むしろ助かりまくってる。」
「クロルのこと任せていいですか?」
「あぁ。」
抱えていたクロルのことを、彼にそっと添えるように任せる。
「ツム、ツムグ……肩、ご、ごめんっ……アタシ、あのっ……はっ、はぁっ……」
「あぁ、大丈夫、大丈夫……っ!なぁ、これ借りていいか?」
「えっ……あっ、うん……いいよっ……うんっ……!」
矢が刺さっていない方の腕で、彼女を自身へ抱き寄せる。
私は地面を踏み締めながら翼を大きく広げ、前へ叩きつけるようにはためかせる。
ヒュゥッッ…!!!
「フシッ……」
突風が起き、炎種の殻が揺らぐ。攻撃にはならないが、目眩ましや牽制くらいにはなる。
その隙に、彼は3体に向かい走っていく。
「はぁっ!!」
「グルァッ!?」
「グァッ!?」
鱗種達の首に向かって攻撃すると、勢いよく血が流れる。これは切り傷だ。
(ナイフ!クロルが持ってたやつですか!!)
おそらく、地面に座り込むクロルから借りたものでしょう。
彼は続けて、首を切られて悶える鱗種一体を掴み、炎種にぶつける。見えている範囲全体に物を当てれば、幻影による回避も出来ない。
「フシュゥ……!」
「テイン!クロルを担いでくれ!退却ゥ!」
「わかりました!!」
私は先程同様、クロルを抱き抱えて飛び立つ。
手負いの彼は走ってこの場から離れていく。
「は、はい!」
「はぁ……はぁっ……ぁ……はぁ……」
戸惑う私に対して、彼は怪我を負っているにも関わらず指示を出す。
「フシィァ……!」
「グルルァ……」
「グルルッ!」
「3体相手か……。まだ付与は消えてない。」
(精神系統の御呪はまだ覚えていませんし、神経系に御呪をしようにもそんな知識もない……!)
彼女に見せてしまうことになりますが、今はこれしかありません!
バサッ――――――!!
「っ!」
白く輝く、〝天使の翼〟!
「はぁっ、はぁ……!はぁっ……ぁ……はぁ……はぁ……」
「クロル、大丈夫ですか?」
天使の纏う光は、意図することなく人々を照らし、優しく暖める。(自分で言うのもあれですが)
彼女の動悸を少しでも和らげることが出来れば……
「はぁ……はっ……ごめっ……はぁ……はぁ……ごめ、ごめんな、さい……はぁ……」
「だ、大丈夫です!まずはしっかり呼吸をして、落ち着きましょう。」
こういう時、何をすれば良いのでしょう。ただ宥めるだけでいいのでしょうか。
私が人だったときの、遠い記憶……そんなものを思い返す時間はない。
彼は今、手負いのまま3体の怪人達を相手にしている。
「グルルルァッ!!」
「でぇぇぇいやぁっ!!」
「グルッ……」
「キィエエエエェァアアッ!!!」
「フシュッ……!」
彼は怪我を負い攻撃が出来ず、発狂し威嚇をし距離を取っている。付与術がそろそろ切れてしまう……
ここに来て2日目。天界に籠って永らく……実戦経験が無さすぎる。
とはいえ、今の彼は誰が見ても危機的状況にある。
(ここはいくべきでしょう。きっと、うん。多分!!)
まだ呼吸が少し乱れているクロルを、後ろから抱きしめる。
「あっ……はぁっ、はぁ……」
彼女も咄嗟に腕をギュッと掴む。
体格差がかなりあるので、ツムグを抱えた時よりも厳しいですけど。
「飛びますよ!しっかり捕まって!」
翼を大きく羽ばたかせ、グンと飛び立つ。
(まだ慣れてないんですよこの姿……)
クロルを抱えたまま、彼の元まで飛んでいく。
「すみませんツムグ!」
「いや、大丈夫だ。むしろ助かりまくってる。」
「クロルのこと任せていいですか?」
「あぁ。」
抱えていたクロルのことを、彼にそっと添えるように任せる。
「ツム、ツムグ……肩、ご、ごめんっ……アタシ、あのっ……はっ、はぁっ……」
「あぁ、大丈夫、大丈夫……っ!なぁ、これ借りていいか?」
「えっ……あっ、うん……いいよっ……うんっ……!」
矢が刺さっていない方の腕で、彼女を自身へ抱き寄せる。
私は地面を踏み締めながら翼を大きく広げ、前へ叩きつけるようにはためかせる。
ヒュゥッッ…!!!
「フシッ……」
突風が起き、炎種の殻が揺らぐ。攻撃にはならないが、目眩ましや牽制くらいにはなる。
その隙に、彼は3体に向かい走っていく。
「はぁっ!!」
「グルァッ!?」
「グァッ!?」
鱗種達の首に向かって攻撃すると、勢いよく血が流れる。これは切り傷だ。
(ナイフ!クロルが持ってたやつですか!!)
おそらく、地面に座り込むクロルから借りたものでしょう。
彼は続けて、首を切られて悶える鱗種一体を掴み、炎種にぶつける。見えている範囲全体に物を当てれば、幻影による回避も出来ない。
「フシュゥ……!」
「テイン!クロルを担いでくれ!退却ゥ!」
「わかりました!!」
私は先程同様、クロルを抱き抱えて飛び立つ。
手負いの彼は走ってこの場から離れていく。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

運命の剣
カブトム誌
ファンタジー
剣と魔法の世界で、名門家の若き剣士アリオスは、家族の期待と名声に押し潰されそうになりながらも、真の力を求めて孤独な戦いに挑む。しかし、心の中にある「一人で全てを背負う」という思い込みが彼を試練に追い込む。自分の弱さを克服するため、アリオスは命がけの冒険に出るが、そこで出会った仲間たちとの絆が彼の人生を大きく変える。
過去の恐れを乗り越え、仲間と共に闇の力に立ち向かうアリオスの成長の物語。挫折と成長、そして仲間との絆が織りなす感動的なファンタジー。最後に待ち受けるのは、真の強さとは何かを知ったアリオスが切り開く新たな未来だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる