革命の旅路

おれ様

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序章:出逢い

24:退却

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「テイン!クロルを守ってくれ!」
「は、はい!」
「はぁ……はぁっ……ぁ……はぁ……」

 戸惑う私に対して、彼は怪我を負っているにも関わらず指示を出す。

「フシィァ……!」
「グルルァ……」
「グルルッ!」
「3体相手か……。まだ付与は消えてない。」

(精神系統の御呪バフはまだ覚えていませんし、神経系に御呪バフをしようにもそんな知識もない……!)

 彼女に見せてしまうことになりますが、今はこれしかありません!

バサッ――――――!!

「っ!」

 白く輝く、〝天使の翼〟!

「はぁっ、はぁ……!はぁっ……ぁ……はぁ……はぁ……」
「クロル、大丈夫ですか?」

 天使の纏う光は、意図することなく人々を照らし、優しく暖める。(自分で言うのもあれですが)
 彼女の動悸を少しでも和らげることが出来れば……

「はぁ……はっ……ごめっ……はぁ……はぁ……ごめ、ごめんな、さい……はぁ……」
「だ、大丈夫です!まずはしっかり呼吸をして、落ち着きましょう。」

 こういう時、何をすれば良いのでしょう。ただ宥めるだけでいいのでしょうか。
 私が人だったときの、遠い記憶……そんなものを思い返す時間はない。
 彼は今、手負いのまま3体の怪人ズメウ達を相手にしている。

「グルルルァッ!!」
「でぇぇぇいやぁっ!!」
「グルッ……」
「キィエエエエェァアアッ!!!」
「フシュッ……!」

 彼は怪我を負い攻撃が出来ず、発狂し威嚇をし距離を取っている。付与術がそろそろ切れてしまう……
 ここに来て2日目。天界に籠って永らく……実戦経験が無さすぎる。
 とはいえ、今の彼は誰が見ても危機的状況にある。

(ここはいくべきでしょう。きっと、うん。多分!!)

 まだ呼吸が少し乱れているクロルを、後ろから抱きしめる。

「あっ……はぁっ、はぁ……」

 彼女も咄嗟に腕をギュッと掴む。
 体格差がかなりあるので、ツムグを抱えた時よりも厳しいですけど。

「飛びますよ!しっかり捕まって!」

 翼を大きく羽ばたかせ、グンと飛び立つ。

(まだ慣れてないんですよこの姿……)

 クロルを抱えたまま、彼の元まで飛んでいく。

「すみませんツムグ!」
「いや、大丈夫だ。むしろ助かりまくってる。」
「クロルのこと任せていいですか?」
「あぁ。」

 抱えていたクロルのことを、彼にそっと添えるように任せる。

「ツム、ツムグ……肩、ご、ごめんっ……アタシ、あのっ……はっ、はぁっ……」
「あぁ、大丈夫、大丈夫……っ!なぁ、これ借りていいか?」
「えっ……あっ、うん……いいよっ……うんっ……!」

 矢が刺さっていない方の腕で、彼女を自身へ抱き寄せる。
 私は地面を踏み締めながら翼を大きく広げ、前へ叩きつけるようにはためかせる。

ヒュゥッッ…!!!

「フシッ……」

 突風が起き、炎種の殻が揺らぐ。攻撃にはならないが、目眩ましや牽制くらいにはなる。
 その隙に、彼は3体に向かい走っていく。

「はぁっ!!」
「グルァッ!?」
「グァッ!?」

 鱗種達の首に向かって攻撃すると、勢いよく血が流れる。これは切り傷だ。

(ナイフ!クロルが持ってたやつですか!!)

 おそらく、地面に座り込むクロルから借りたものでしょう。
 彼は続けて、首を切られて悶える鱗種一体を掴み、炎種にぶつける。見えている範囲全体に物を当てれば、幻影による回避も出来ない。

「フシュゥ……!」
「テイン!クロルを担いでくれ!退却ゥ!」
「わかりました!!」

 私は先程同様、クロルを抱き抱えて飛び立つ。
 手負いの彼は走ってこの場から離れていく。
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