革命の旅路

おれ様

文字の大きさ
上 下
31 / 35
序章:出逢い

20:炎の矢

しおりを挟む
 詠唱をすると、赤色の魔法陣が腕輪のように出現する。

 魔法陣は一瞬だけ光って、すぐに消える。

「『ショット』!」

 風の共鳴術により、矢は通常以上に速く突き進む。

「グジュァ……!」
『クロル!』

 炎種えんしゅが現れ、ツムグが苦戦し始めた。
 まずは鱗種りんしゅ2体を狩ろう。炎種えんしゅはあんな見た目をしているが、幻影の維持に体力を使い続けているので攻撃力は鱗種よりも低い。

「ツムグ!鱗種2体を先に狩るから、炎種の相手してて!」
『あいよ!』

 彼は鱗種2体と炎種が離れるように上手く立ち回る。

「テイン!フヲィケミ魔除け!」

 白魔術は大抵天紋ヘブン-コードだから、多分伝わっている。簡単な受け答えはできると思うし、矢を2本彼女に手渡す。

「は、はいっ!」

 指を突き立て詠唱を始めると、矢はうっすらと光った。
 一方ツムグは、炎種に対して若干キレている。

『当たり判定が分かんないんだけどコイツ!』

(当たり判定て。射的じゃないんだから。)

 炎種は幻影が揺蕩うため、物理攻撃を当てにくいのだ。
 アタシは詠唱をしながら、再び弓を引く。

「『クリムゾン』――」

 また遠隔系レッドの魔法陣が腕に展開する。今度は二つ重なっている。
 こっちの共鳴術は、アタシが得意な炎だ。風と組み合わせ、一層強い矢を放つ。

「『ショット』!!」

 矢は燃える炎を纏い、疾風の如く速く突き進む。

「フジャッ……!!?」

 鱗種の首根っこに突き刺さった矢は、そのまま鱗種を燃やしていく。ツムグがダメージを与えていた分、かなり弱っていたみたいで、そのまま倒れてしまう。
 もう一度矢を構え

「『クリムゾン・ショット』!」

 魔術と共に放つ。もう1体の鱗種に突き刺さり、どんどん燃やしていく。

「お、終わりました!」

 付与を終わらせたみたいだ。

「うん!」

 ツムグが殴りかかっても炎種は揺らぎ、ビンタを返される。
 今度は一歩下がるが、ずいっと幻影ほのおの腕が伸びて彼の顔を包む。
 彼はそれを払って距離を詰めるが、途中で下から生えた炎種の一部が、彼の足を引っ掻けた。ずてん!と転んでしまうツムグ。

『痛っ……!』
「フシャッシャ!」

 これはもう遊ばれている。
 無理もない。見たところ、彼はこれまで魔獣や魔物と戦ったことがなかったらしい。
 対人戦はそれなりに出来るようだが、炎種のような相手は初めてなのだろう。

「す~……『ショット』!」

 付与が施された矢は、炎種へ目掛け突き進む。
 炎種は幻影を含め本体だ。胴体のような場所を幻影で包んでおり、幻影部分は普通の物理攻撃は通らない。
 テインの付与により、そこに実体のように捉える。

「ジュッ!?~っ!フシュ……!!」

 幻影《ほのお》を増やして身を隠そうとするが、矢は幻影 諸とも切り裂ける。
 しかも、それだけじゃない。

「シャッ!?」
『腕はよく分からねぇけど、地面に立ってられんだから絶対ぜってーあるよな!?』

 その場から離れようとした炎種は、横たわるツムグの脚に自身の片足挟まれていた。
 彼がそのまま体を捻りながら転がると、炎種は姿勢を崩して横に倒れる。

「これが炎だ幻影《パチモン》!」

 弦を思いっきり引き、詠唱とともに放つ。

「『クリムゾン・ショット』!!」

 炎を纏った聖なる矢は、姿勢を崩した怪人ズメウの脳天を貫いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...