23 / 35
序章:出逢い
13:魂札《ライセンス》
しおりを挟む
さて、私達は仮ですがここの戸籍を獲得しました。ここで暮らすために、仕事を探しています。
(一般的な職業には就けないので、冒険職になりますけど。)
現在、ツムグと手を繋ぎながら、魔術適検の査を受けに来ました。(というより、受け終わりました)
検査方法は簡単で、血液検査と魔術による診断です。
「注射の後って腕ジンジンするよな。」
「そうですか?」
「え、しない?てか、天使って注射したことあんの?」
「わからないですね。巫女《せいぜん》の時の記憶はないですし……」
人間だった頃の私ってどんなだったんでしょうか。
さっき注射したところを見ながら、ふとそう思った。
「あと、先程注射したとこは治ってますし。」
「……え、何それどういうこと?」
先程注射を打ったところは、もう塞がって、血が滲んですらいない。
「天使パワーです。」
「天使パワーか。」
少しそんな話をしていたら、ちょうど担当者が来た。
『お待たせ致しました、適性の結果が出ました。』
「はい。」
ツムグと手を繋いでいるので、こちらの言葉を理解できる。
私の意思を伝えるには、天界でも使った『天使の言葉』を活かせばいい。ツムグと感覚共有をしながらであれば、こちらでも上手く使えるはずだ。
『登録申請の前に、簡単に説明を行います。』
「はい。」
『今からお渡しするのは、〝魂札《ライセンス》〟という魔道具です。こちらを用いることで、魔術を簡易的に扱えます。』
役員さんは、手の平くらいの小さな手帳のような物を見せる。
一方彼はコクりと頷き、話を続けてもらう。
『扱いにはご注意ください。登録する系統により、扱える魔術も制限されますが、系統は概ね5つに分類されます。』
☆☆
遠隔系《レッド》
弓使いなどの役職
主に炎文明や風文明の魔術を扱える
近接系《ブルー》
剣士などの役職
主に水文明や音文明の魔術を扱える
魔法系《グリーン》
魔法使いなどの役職
あらゆる文明の魔法術を扱える
支援系《イエロー》
御呪《バフ》や呪詛《デバフ》を行う役職
主に光文明や影文明の魔術を扱える
智慧系《パープル》
鍵師などの役職
主に闇文明から派生した文明の魔術を扱える
☆☆
書類は読めないので、申し訳ないですが音読してもらっている。
『フォーロ様は支援系《イエロー》ですね。次にワガミ様の判定結果は、〝無色《カラーレス》〟でした。』
「カラーレス?」
『はい。』
そりゃそうですよね。
彼は天照様《かみ》の祝福を受けずに来た。というか、転生する際にあらゆる過程をすっ飛ばしてしまった。
肉体に魔力を蓄えることができない。だから、肉体に宿る魔力から検査する今回の適性検査では、そもそも適性を計れないのだ。
役員さんはさらに続けて説明する。
☆☆
無色《カラーレス》
特定の適性がない方。
あらゆる魔術を扱えるが、その性能は本職の性能の半分程度となる。
主な職業は、冒険者、旅人、雑用、奴隷がある。
公共系《ピクセル》
適性はあるが、冒険職ではない方々
私生活に必要な魔術を扱える。
簡単な治療の呪術、意志疎通の魔術など。
☆☆
『意志疎通の魔術が扱えているようですので、公共系《ピクセル》でも活躍できると思いますが……』
ほぼ無制限に言語を理解できる彼なら、たしかにそうだと思う。
『冒険職を希望とのことでしたので、無色《カラーレス》で宜しかったですか?』
「はい。お願い致します。」
『かしこまりました。少々お待ちください。』
役員さんは、手元にある魔道具《たんまつ》と私達の〝魂札《ライセンス》〟を接続する。
いくつか文字を打ち込んだり、指紋をとったり、署名を行ったり……
『以上で手続きは終わりです。』
「はい。」
数十分ほど手続きを進め、ついに魂札《ライセンス》を受けとることができた。
『こちら魔術を無償配布している場所の地図です。よろしければご参考に。』
「はい、ありがとうございます。」
『では、御武運を。』
「お世話様です。」
彼はそう言いながらお辞儀をして、私も同じく頭を下げた。
そして、去り際に「あ、良ければ今度お食事でも。」と冗談交じりに言った。
『職が安定なさったらお誘いください。次にお待ちの270番様~』
フラれたようだ。
「あの、あまりこういうことは言いたくないんですけど……」
「うん?」
「貴方刺されて死にましたよね?」
「あぁ。けど直ぐには拭えねェんだ。」
「そうですか……」
また刺されそうですねこの人。
(一般的な職業には就けないので、冒険職になりますけど。)
現在、ツムグと手を繋ぎながら、魔術適検の査を受けに来ました。(というより、受け終わりました)
検査方法は簡単で、血液検査と魔術による診断です。
「注射の後って腕ジンジンするよな。」
「そうですか?」
「え、しない?てか、天使って注射したことあんの?」
「わからないですね。巫女《せいぜん》の時の記憶はないですし……」
人間だった頃の私ってどんなだったんでしょうか。
さっき注射したところを見ながら、ふとそう思った。
「あと、先程注射したとこは治ってますし。」
「……え、何それどういうこと?」
先程注射を打ったところは、もう塞がって、血が滲んですらいない。
「天使パワーです。」
「天使パワーか。」
少しそんな話をしていたら、ちょうど担当者が来た。
『お待たせ致しました、適性の結果が出ました。』
「はい。」
ツムグと手を繋いでいるので、こちらの言葉を理解できる。
私の意思を伝えるには、天界でも使った『天使の言葉』を活かせばいい。ツムグと感覚共有をしながらであれば、こちらでも上手く使えるはずだ。
『登録申請の前に、簡単に説明を行います。』
「はい。」
『今からお渡しするのは、〝魂札《ライセンス》〟という魔道具です。こちらを用いることで、魔術を簡易的に扱えます。』
役員さんは、手の平くらいの小さな手帳のような物を見せる。
一方彼はコクりと頷き、話を続けてもらう。
『扱いにはご注意ください。登録する系統により、扱える魔術も制限されますが、系統は概ね5つに分類されます。』
☆☆
遠隔系《レッド》
弓使いなどの役職
主に炎文明や風文明の魔術を扱える
近接系《ブルー》
剣士などの役職
主に水文明や音文明の魔術を扱える
魔法系《グリーン》
魔法使いなどの役職
あらゆる文明の魔法術を扱える
支援系《イエロー》
御呪《バフ》や呪詛《デバフ》を行う役職
主に光文明や影文明の魔術を扱える
智慧系《パープル》
鍵師などの役職
主に闇文明から派生した文明の魔術を扱える
☆☆
書類は読めないので、申し訳ないですが音読してもらっている。
『フォーロ様は支援系《イエロー》ですね。次にワガミ様の判定結果は、〝無色《カラーレス》〟でした。』
「カラーレス?」
『はい。』
そりゃそうですよね。
彼は天照様《かみ》の祝福を受けずに来た。というか、転生する際にあらゆる過程をすっ飛ばしてしまった。
肉体に魔力を蓄えることができない。だから、肉体に宿る魔力から検査する今回の適性検査では、そもそも適性を計れないのだ。
役員さんはさらに続けて説明する。
☆☆
無色《カラーレス》
特定の適性がない方。
あらゆる魔術を扱えるが、その性能は本職の性能の半分程度となる。
主な職業は、冒険者、旅人、雑用、奴隷がある。
公共系《ピクセル》
適性はあるが、冒険職ではない方々
私生活に必要な魔術を扱える。
簡単な治療の呪術、意志疎通の魔術など。
☆☆
『意志疎通の魔術が扱えているようですので、公共系《ピクセル》でも活躍できると思いますが……』
ほぼ無制限に言語を理解できる彼なら、たしかにそうだと思う。
『冒険職を希望とのことでしたので、無色《カラーレス》で宜しかったですか?』
「はい。お願い致します。」
『かしこまりました。少々お待ちください。』
役員さんは、手元にある魔道具《たんまつ》と私達の〝魂札《ライセンス》〟を接続する。
いくつか文字を打ち込んだり、指紋をとったり、署名を行ったり……
『以上で手続きは終わりです。』
「はい。」
数十分ほど手続きを進め、ついに魂札《ライセンス》を受けとることができた。
『こちら魔術を無償配布している場所の地図です。よろしければご参考に。』
「はい、ありがとうございます。」
『では、御武運を。』
「お世話様です。」
彼はそう言いながらお辞儀をして、私も同じく頭を下げた。
そして、去り際に「あ、良ければ今度お食事でも。」と冗談交じりに言った。
『職が安定なさったらお誘いください。次にお待ちの270番様~』
フラれたようだ。
「あの、あまりこういうことは言いたくないんですけど……」
「うん?」
「貴方刺されて死にましたよね?」
「あぁ。けど直ぐには拭えねェんだ。」
「そうですか……」
また刺されそうですねこの人。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

運命の剣
カブトム誌
ファンタジー
剣と魔法の世界で、名門家の若き剣士アリオスは、家族の期待と名声に押し潰されそうになりながらも、真の力を求めて孤独な戦いに挑む。しかし、心の中にある「一人で全てを背負う」という思い込みが彼を試練に追い込む。自分の弱さを克服するため、アリオスは命がけの冒険に出るが、そこで出会った仲間たちとの絆が彼の人生を大きく変える。
過去の恐れを乗り越え、仲間と共に闇の力に立ち向かうアリオスの成長の物語。挫折と成長、そして仲間との絆が織りなす感動的なファンタジー。最後に待ち受けるのは、真の強さとは何かを知ったアリオスが切り開く新たな未来だ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる