13 / 35
序章:出逢い
5:〝バウラル・スネーク〟
しおりを挟む
バウラル――
かつて、この地に三種の竜がいた。複数の頭と翼を持ち、金色の姿をした異形の竜たち。一種は大地を這い、一種は空を駆け、一種は人々の生活に潜んでいた……
時にあらゆる水分を奪い雨や霜を成し、時に乙女を糧とし食らった。
そして、彼らの唾液は輝き宝珠へと変わるという……
「という伝承がありまして。」
「うん。」
「今ツムグか駆除した蛇は、その子孫のバウラル・スネークです。」
彼は腕に刺さった牙を抜いている。
噛まれた箇所の唾液が凝固し始めており、パッパッと払っている。
「血流障害以外にも、傷口に付着した唾液によって修復が阻まれるので下手な毒より厄介です。」
「にしては凄い冷静じゃね?このままだと、オレまた死ぬんじゃないか?」
「ご安心を!」
私は彼の傷口に手を添え、どのような具合か確認する。
「私は天使ですよ!簡単な怪我ならサクッと治せます!」
「おぉ、頼もしい。」
「ただ血流に唾液が流れてると参っちゃいますが。」
「おい。」
カサカサ……
また先程と同じ音が聞こえた。
「また同じ蛇か?蛇は群れなかったと思うんだけど」
「竜だったころの遺伝で、バラウル・スネークは群れやすいです。」
「そういうの先に言って?」
彼は「服汚したらごめん」と言って、また私を庇うように構えた。
走って逃げてもいいですが、下手に動いて襲われたらたまったもんじゃない。
カサカサ……
そして現れた数は……
「多くね!?」
約10匹。シャララと鳴きながら、全員がこちらを睨んでいる。
「えっ、こんなに群れるものなの!?」
「いえ流石に……水場を好むことが多いですし、近くに獲物でもいたのでは………」
「……さっき、バウラルってやつの言い伝えなんてったっけ?」
「え?」
【時にあらゆる水分を奪い雨や霜を成し、時に乙女を糧とし食らった。】
私が頷くと、彼は私の方を指差した。
「……」
あぁ、なるほど。
「私が狙われてるんですね。」
「多分な。」
天使とはいえ下級……しかも、元は巫女だったはず。そりゃ補食対象にもなりますね。
「スィァー!」
「フシャァー!」
「やばっ!」
2匹から再び飛び付かれる。
彼は両手でその蛇たちを掴み、抑える。
しかし、また腕に巻き付かれ、強く締め付けられる。
「くっそこのっ!」
「わわわっ……!!」
ど、どうしましょう!!?
こうやって慌てている間に、蛇たちは鳴きながら此方を睨み付けている。
「シャァー!」
「だらァっ!!」
「ゥジャッ……!」
また1匹が飛び掛かってきた。彼は両腕を締められているため上手く払えそうになかったが、片足で蹴り飛ばした。
だが、腕に巻き付く蛇たちがさらにキツく締め上げたようで、彼は悶える素振りを見せた。手が怯み、今度は両方の手首を噛まれた。
「ぅあっ……!?」
「ツムグっ!!」
私が今すぐ使える魔術は何か……!!
(えっと、えっと……!!)
そう狼狽えていると、遠方より声が聞こえた。
ギィ……
「すぅ……『ヲァーネ』ッ!!」
トゥシュッ……
横から1本の矢がツムグの手首の辺りを駆け、巻き付いていた2匹の蛇頭を撃ち抜いた。
さらに続けて飛んでくる矢たち。
シュトッ…シュトシュトッッ……
「ジャッ……」
「シャー!!シャー…ッ!!?」
それらはツムグの髪1本にさえ掠れることもなく、ただただ蛇達を狩っていく。
数秒で地を這っていた蛇たちは退治されていき、その内の数匹は逃げていった。
「え、なんだ……?」
「わかりませんが、おそらく誰かの援助かと……」
矢が飛んできた方を見ると、1人の女性がいた。
赤茶のポニーテールと、燃ゆる炎のような真紅の瞳。
赤いシャツの上から黒い革のジャケットを羽織り、首にはチョーカーがつけられている。
短いズボンの下には黒いタイツを履き、暗い茶色のブーツを身に付けている。
矢筒と弓を携え、微笑みながら此方に歩いてくる。
「ノヱッ!サハ ノッネ イシ?」
かつて、この地に三種の竜がいた。複数の頭と翼を持ち、金色の姿をした異形の竜たち。一種は大地を這い、一種は空を駆け、一種は人々の生活に潜んでいた……
時にあらゆる水分を奪い雨や霜を成し、時に乙女を糧とし食らった。
そして、彼らの唾液は輝き宝珠へと変わるという……
「という伝承がありまして。」
「うん。」
「今ツムグか駆除した蛇は、その子孫のバウラル・スネークです。」
彼は腕に刺さった牙を抜いている。
噛まれた箇所の唾液が凝固し始めており、パッパッと払っている。
「血流障害以外にも、傷口に付着した唾液によって修復が阻まれるので下手な毒より厄介です。」
「にしては凄い冷静じゃね?このままだと、オレまた死ぬんじゃないか?」
「ご安心を!」
私は彼の傷口に手を添え、どのような具合か確認する。
「私は天使ですよ!簡単な怪我ならサクッと治せます!」
「おぉ、頼もしい。」
「ただ血流に唾液が流れてると参っちゃいますが。」
「おい。」
カサカサ……
また先程と同じ音が聞こえた。
「また同じ蛇か?蛇は群れなかったと思うんだけど」
「竜だったころの遺伝で、バラウル・スネークは群れやすいです。」
「そういうの先に言って?」
彼は「服汚したらごめん」と言って、また私を庇うように構えた。
走って逃げてもいいですが、下手に動いて襲われたらたまったもんじゃない。
カサカサ……
そして現れた数は……
「多くね!?」
約10匹。シャララと鳴きながら、全員がこちらを睨んでいる。
「えっ、こんなに群れるものなの!?」
「いえ流石に……水場を好むことが多いですし、近くに獲物でもいたのでは………」
「……さっき、バウラルってやつの言い伝えなんてったっけ?」
「え?」
【時にあらゆる水分を奪い雨や霜を成し、時に乙女を糧とし食らった。】
私が頷くと、彼は私の方を指差した。
「……」
あぁ、なるほど。
「私が狙われてるんですね。」
「多分な。」
天使とはいえ下級……しかも、元は巫女だったはず。そりゃ補食対象にもなりますね。
「スィァー!」
「フシャァー!」
「やばっ!」
2匹から再び飛び付かれる。
彼は両手でその蛇たちを掴み、抑える。
しかし、また腕に巻き付かれ、強く締め付けられる。
「くっそこのっ!」
「わわわっ……!!」
ど、どうしましょう!!?
こうやって慌てている間に、蛇たちは鳴きながら此方を睨み付けている。
「シャァー!」
「だらァっ!!」
「ゥジャッ……!」
また1匹が飛び掛かってきた。彼は両腕を締められているため上手く払えそうになかったが、片足で蹴り飛ばした。
だが、腕に巻き付く蛇たちがさらにキツく締め上げたようで、彼は悶える素振りを見せた。手が怯み、今度は両方の手首を噛まれた。
「ぅあっ……!?」
「ツムグっ!!」
私が今すぐ使える魔術は何か……!!
(えっと、えっと……!!)
そう狼狽えていると、遠方より声が聞こえた。
ギィ……
「すぅ……『ヲァーネ』ッ!!」
トゥシュッ……
横から1本の矢がツムグの手首の辺りを駆け、巻き付いていた2匹の蛇頭を撃ち抜いた。
さらに続けて飛んでくる矢たち。
シュトッ…シュトシュトッッ……
「ジャッ……」
「シャー!!シャー…ッ!!?」
それらはツムグの髪1本にさえ掠れることもなく、ただただ蛇達を狩っていく。
数秒で地を這っていた蛇たちは退治されていき、その内の数匹は逃げていった。
「え、なんだ……?」
「わかりませんが、おそらく誰かの援助かと……」
矢が飛んできた方を見ると、1人の女性がいた。
赤茶のポニーテールと、燃ゆる炎のような真紅の瞳。
赤いシャツの上から黒い革のジャケットを羽織り、首にはチョーカーがつけられている。
短いズボンの下には黒いタイツを履き、暗い茶色のブーツを身に付けている。
矢筒と弓を携え、微笑みながら此方に歩いてくる。
「ノヱッ!サハ ノッネ イシ?」
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる